超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第10話(1)やのあさって

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「舞? もしや……?」

 

 ムラクモが怪訝そうな声で呟く。ジンライが身体を半分起こして尋ねる。

 

「そ、その搭乗型のロボットスーツ……まさか、大二郎が開発したものか?」

 

「ええ! ドッポのAIなどを流用して開発してもらった、『ランポ』よ!」

 

「ランポ……」

 

「昨日完成したっていうから、念の為にこちらに向かわせてってお願いしていたの!」

 

「何やらこそこそと話し合いをしていたのはそれを作っていた為だったのか……」

 

「そういうこと……よ!」

 

「ぐっ!」

 

 舞がランポの腕を操作し、天ノ叢雲の剣を押し返す。

 

「よし! 力ならそう劣ってはいない! イケるわ!」

 

「イケない! 危険だから下がっていろ!」

 

 ジンライが叫ぶ。それに対し、舞が不服そうな声を上げる。

 

「なんでよ!」

 

「なんでもだ!」

 

「以前のロボットスーツよりは遥かに高性能よ。こういうことだって出来るんだから!」

 

「!」

 

 ランポの長い腕がさらに伸びて、鋭い勢いで天ノ叢雲の身体に当たる。直撃を受けた天ノ叢雲が後方に吹き飛ばされる。舞は得意気な顔をジンライに向ける。

 

「見なさい! パンチのスピードもパワーも段違い、リーチだって自由自在よ!」

 

「余所見をするな! まだ決着はついていない!」

 

 舞が視線を戻すと、ゆっくりと立ち上がる天ノ叢雲の姿が見えた。

 

「ならばこれよ!」

 

 ランポの頭部から小型のミサイル数発が正確に天ノ叢雲に向かって飛んで行く。

 

「……!」

 

 ミサイルが爆発する。舞は快哉を叫ぶ。

 

「やったわ! ……なっ⁉」

 

 舞が驚く。ミサイルの直撃を受けたはずの天ノ叢雲が無傷のまま立っていたからである

 

「……」

 

「そ、そんな……市街地での戦闘を想定して、威力低めのミサイルだったとはいえ、全くの無傷だなんて……ありえない!」

 

「剣で斬ったのだろう……」

 

「え⁉」

 

「爆発をよく見ていなかったのか? 奴の左右が吹き飛んだ。ミサイルを全て真っ二つに切断して、直撃を避けたのだ」

 

「そ、そんな芸当が……」

 

「奴にとっては簡単なことだ……来るぞ!」

 

 天ノ叢雲が徐々に早足になってランポに迫ってくる。

 

「くっ! このランポはパンチを高速でラッシュ出来るわ! この連打の雨を躱せる⁉」

 

 ランポが左右の腕を素早く、連続で放つ。ムラクモは小さくため息をつく。

 

「はあ……」

 

「なっ⁉」

 

 舞は固まった。自らの鼻先に剣を突き付けられたからである。

 

「パンチスピードは確かに凄いけど、パターンとリズムが単調だから読み易い。躱すのは結構容易だよ。コンビネーションをもっと工夫しないと」

 

「ぐっ……」

 

「後、剥き出しのコックピットというのは感心しないね。万が一の事態を考えて、ガードをもっと固めておかないと」

 

「ぐぐぐ……」

 

「舞!」

 

「動かないでくれ、ジンライ。今、このお嬢さんの命運は僕が握っている」

 

 ムラクモは冷たい声色で告げる。

 

「お、おのれ……」

 

 ジンライはムラクモをキッと睨み付ける。まだ立ち上がれてはいない。しゃがみ込んだ中途半端な体勢のままである。ムラクモはそんなジンライを見て、フッと笑う。

 

「お願いするまでも無かったかな? ボロボロで満足に動けないんだね?」

 

「なにを!」

 

「おっと、待った! お嬢さんに危害を加えるつもりはないよ」

 

 立ち上がろうとするジンライをムラクモは制す。ジンライは首を傾げる。

 

「どういうつもりだ?」

 

「二つ理由がある」

 

「二つ?」

 

「ああ、まず一つ。僕も実は結構限界でね。このパワードスーツを着て戦うのは初めてに近い状態なのに調子に乗って飛ばし過ぎた……。来たるべき時の為に無理はしたくない」

 

「来たるべき時?」

 

「それは後で話そう……もう一つの理由は、このお嬢さん……疾風舞さんには極力危険な目には遭わせるな、とお願いされていてね……」

 

「お願い?」

 

「ああ、このパワードスーツを提供してくれた協力者たちだ」

 

 ムラクモがスーツを指差しながら淡々と話す。

 

「協力者たちだと? そいつらも地球の研究者か?」

 

「おっ、鋭いね。まあ、流石にそれくらいは見当がつくか……」

 

「誰だ、そいつらは?」

 

「それは内緒……と言いたいところだけど、別に秘密にしろとは言われていないからね……いいよ、教えてあげよう。天ノ川博士夫妻だよ」

 

「⁉ お父さんとお母さん⁉」

 

「なに⁉」

 

 舞の言葉にジンライが驚く。ムラクモが笑う。

 

「そうだよ、君は母君によく似て美人だね。父君に似なくて良かった」

 

「二人は今どこにいるの⁉」

 

「それは教えられない……というか、僕も直接顔を合わせたのは数えるほどだから分からない。ほとんどモニター越しのやりとりだしね」

 

 舞の問いにムラクモは肩を竦める。

 

「二人は一体何を企んでいるの⁉」

 

「……それも正確には分からない。あくまでお互いの利益や目的が一致したから手を組んでいるに過ぎないからね」

 

「互いの利益や目的?」

 

「こちらはNSPという強力なエネルギーを手にすること、あちらはそのNSPという未知なるエネルギーを解明すること……協力関係というよりはお互いの目的を果たすために利用しあっているという感じかな。僕にとっては面倒事が増えたしね」

 

「面倒事?」

 

 ジンライが首を捻る。

 

「そうだよ、君のパワードスーツを開発した疾風大二郎にNSPの鉱石を売ったのは他ならぬ天ノ川夫妻だからね。僕は反対したんだけど」

 

「⁉ な、なんだと……?」

 

「今日のところは退くとしよう。ジンライ、精々そのスーツのポテンシャルをもっと引き出せるようにしておくんだね……ある場所で来たるべき時に再び会いまみえるだろうから」

 

「ある場所だと?」

 

「函館だよ。正確に言えば五稜郭学園を襲撃する予定だ」

 

「⁉ そ、それで来たるべき時とはいつだ⁉」

 

「明々後日か弥の明後日かな」

 

「ば、漠然としているな⁉ そういう時は明日じゃないのか⁉」

 

「明日と明後日はどうしても都合が悪くてね……それまでに身体を休めるなり、準備をしておくんだね。勿論、逃げてもらっても構わないけど」

 

「誰が逃げるか!」

 

「……そう言うと思ったよ。まあ、三、四日後にまた会おう」

 

 そう言って、天ノ叢雲は姿を消した。

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