超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第10話(2)洗い直し

「……ふう、文字通り生き返るようだな」

 

 ジンライの呟きにドッポが反応する。

 

「ゴランクダサイ、コノケシキモゼッケイデス」

 

「ふむ、半分が屋外で、半分が屋内という、いわゆる半露天風呂というやつか……」

 

「ハンロテンブロニツイテハメイカクナテイギハアイマイナヨウデスガ……」

 

「時にドッポよ……」

 

「ナンデショウ?」

 

「今更なのだが、湯に浸かっていても平気なのか?」

 

「ボウスイカコウヲハバッチリデス」

 

「そうか、おっと……」

 

「イカガシマシタカ?」

 

「湯気が天井からポタリと背中に当たってな、冷たいと感じた」

 

「ソレモフゼイトイウモノデス」

 

「ああ、こういうのも良いものだな」

 

「良くない!」

 

 舞が大声で叫ぶ。ジンライが顔をしかめる。

 

「なんだ、大きな声を出すな、マナー違反だぞ……」

 

「出したくもなるわよ! どういう状況よ、これは?」

 

「温泉に浸かっている」

 

「それは分かっているわ! どうしてこうなったかの確認よ」

 

「元々札幌から函館に戻る際に登別に立ち寄ろうとは思っていた……それにシーズンズからこの旅館の割引券も貰ったからな、利用しなければ勿体無い」

 

「そんな呑気なことで良いの⁉ 函館が襲撃されるっていう時に……」

 

「昼間、ムラクモがそう言っていたな、ただ、襲撃は早くても明々後日という話だ、まだ慌てるような段階ではない……」

 

 ジンライはお湯を顔に軽くかけながら呟く。

 

「そんな話を信用していいの⁉」

 

「襲撃予告の件、目を通していないのか?」

 

「え?」

 

「『みっかごかよっかごに、ごりょうかくがくえんをおそいます。ひせんとういんのかたやしゅうへんじゅうみんのかたはすみやかにたいひをおねがいします。ごめいわくをおかけしますが、もうしわけございません』」といったむねのよこくせいめいがだされました」

 

 ドッポと同じような球体に手足を伸ばした形態に変形したランポが舞に説明する。

 

「そ、そうなの……?」

 

「サンメートルホドノオオキサダッタノニ、ソレクライノオオキサ二ヘンケイスルトハ……ドウイウシクミナノデショウカ?」

 

「貴様に言われたくないと思うが……」

 

「マア、ソレハベツニイイノデスガ、キャラカブリガケネンサレマス……」

 

「そんなことを気にするのだな……」

 

「ごしんぱいなく、わたしのからーりんぐはぴんくいろ。ちょうかわいくない?とじょしうけまちがいなしです。そのてんひとつとっても、どっぽせんぱいとのきゃらかぶりはまったくのきゆうにすぎません」

 

「チョットマッテクダサイ。ワタシガジョシウケシテイナイトイイタイノデスカ?」

 

「そのようないとはありませんが、そのようにうけとられたのならすみません」

 

「……開発者が同じなのだ、仲良くしろ」

 

 ジンライはウンザリした声で呟く。

 

「は、話を戻すけど、その予告声明は信用出来るの?」

 

「ムラクモとは何度も共に戦った……奴は非戦闘員などを巻き込むことを嫌う。こういう類の退避勧告を出しているのは幾度となく見てきた。例え上官の命令に背くようなことになってもな。決して己の信条を曲げなかった……その点は信用しても構わないはずだ」

 

「親友みたいなものなのね……」

 

「……少なくとも俺様はそのように考えていたが、奴にとっては違ったようだな……」

 

 ジンライが少し残念そうに呟く。

 

「帝国の打倒がどうとか言っていたでしょ? 自己の信条を曲げる可能性は?」

 

「そういう考えも無くもないが、まあ、物理的に無理だろう」

 

「物理的に無理?」

 

「奴も俺様も多くのフォームを同時に使用した。それによっての身体的負担、体力消耗がかなりのものだ……例えば明日すぐに満足に動けるはずが無い」

 

「な、なるほど……」

 

「今は奴の言っていたように、身体を休めることが先決だ」

 

「も、もう一つ、聞きたいんだけど?」

 

「なんだ?」

 

 ジンライが首を傾げる。

 

「な、なんで、アンタと私が一緒の湯に浸かっているのよ?」

 

「それは混浴だからな」

 

「だ、だからといっても!」

 

「工事中でこの湯しか空いてないというのだから仕方ないだろう」

 

「な、なんでこんなことに……」

 

「離れて入っているではないか……大体、嫌ならば入浴時間をずらせば済むことだ……」

 

「ア、アンタがのぼせたりしたら大変だから、仕方なく入っているのよ!」

 

「なんだそれは……まあいい、俺様は少し考えをまとめたい、話しかけてくれるな」

 

「考えをまとめる?」

 

 舞が首を傾げる。ジンライが呟く。

 

「各フォームについての洗い直しだ……ドッポ」

 

「ハイ、マズハ『ノーマルフォーム』デス」

 

「ノーマルフォーム……スピードに重きを置いた『疾風』モードと、パワーに重きを置いた『迅雷』モードがあるが、どちらも使用タイミングを間違えてしまうと、効果的ではない」

 

「バランスヲジュウシシテミテハ?」

 

「バランスか、結局そうなるか……次は『バイオフォーム』。々な生命体の能力を駆使して戦うことが出来るフォームだが、現状『狂犬』モードと『怪鳥』モードしかないな……」

 

「ソレデシタラ、コノトキノセントウガヒントニナルノデハ?」

 

 ドッポは映像データを再生する。ジンライはそれを見て頷く。

 

「ん? ふむ……確かにな、睡眠時に脳内にインプットさせる。データをまとめておけ」

 

「カシコマリマシタ」

 

「『メタルフォーム』、様々なウェポンやマシンを駆使して戦うことに長けたフォームだが……現状ウェポンの貧弱さが否めんな」

 

「マシンもドッポが変形したバイクだけね」

 

「口を挟むなというのに……」

 

「補足くらい良いでしょ?」

 

「はあ、全く……」

 

 舞の言葉にジンライがため息をつく。

 

「ソレニツイテハハカセカラコノヨウナデータガオクラレテキマシタ……」

 

「何? ! ほ、ほう……こ、これは……」

 

「どうしたの?」

 

 やや言葉を失ったジンライに舞が声をかける。

 

「い、いや、なんでもない……確かにこれならばウェポンの貧弱さとマシンの不足をある程度は解決できるが……思い切ったことを考えるな、大二郎も」

 

「よく分からないけど、逆転の発想ってやつ?」

 

「まあ、そう言えるかもな」

 

「さすが、天才科学者のおじいちゃんね」

 

「戦うのは俺様なのだが……このデータもまとめておいてくれ」

 

「ハッ」

 

「『ジャイアントフォーム』だが……単純なパワーアップ、巨大化だけでなく、常識をはるかに超越した能力を発揮して戦うことが出来るということだったが……」

 

「アマノムラクモハネンリキヲモチイテタタカッテイマシタ」

 

「悔しいが俺様はあそこまでには達していない、個人の向き不向きもあるのだろうが……」

 

「ん?」

 

 ジンライの使っていた桶がプカプカと宙に浮かび、舞の桶に重なった。

 

「これくらいしか出来ん……」

 

「いやいや、十分凄くない⁉」

 

 舞の驚きに満ちた声に対し、ジンライは首を振る。

 

「実戦レベルではない……このフォームは消耗も激しい、多用は避けた方が無難だな」

 

「デハ『カラフルフォーム』デスガ……」

 

「五色の中からどれか一つの色を選ぶことで、人間の持つ五感の内の一つを最大限に引き出すことが出来るフォーム……しかし、ムラクモが六色目を出してくるとはな……」

 

「アンタも出せばいいじゃない」

 

「簡単に言うな……第六感を研ぎ澄ませと言っているようなものだぞ、それが出来たら誰も苦労はしない」

 

「ハカセカラコノヨウナテイアンガアリマスガ?」

 

 ドッポがモニターに表示した文章を見て、ジンライが首を捻る。

 

「それは可能なのか?」

 

「リロンテキニハカノウダソウデス」

 

「そうか、ではそれも睡眠ラーニングデータにしておけ」

 

「リョウカイシマシタ」

 

「次は『クラシックフォーム』か。『サムライ』と『ニンジャ』と『トルーパー』があるが、ムラクモは『ガンマン』モードを使用してきた。接近するのは容易ではないな……」

 

「コウイウモードノテイジガアリマス」

 

「ふむ……なるほど、かえって虚を突けるかもしれんな」

 

 モニターを確認して、ジンライは笑みを浮かべる。舞が口を開く。

 

「お次は『マジカルフォーム』ね」

 

「それは別にいい」

 

「なんでよ?」

 

 舞が笑いながら尋ねる。ジンライはムッとした声で呟く。

 

「わざわざ洗い直す気になれん……ということを差し引いても魔法の術式というのはかなり複雑な仕組みだ。一朝一夕でどうにか出来るものではない」

 

「え~見たいのにな~あの恰好」

 

「見世物ではない……最後は『マンガフォーム』か」

 

「向こうは『コミックフォーム』を使っていたわね、どうするの?」

 

「コミックも勿論良いが、マンガが劣っているとは思わん。俺様は漫画の力を信じる」

 

「策はあるの?」

 

「一応な……さて、洗い直しはこんなところか、そろそろ上がるか」

 

「私も上がろうかしら……うん? ランポのモニターが……お母さんから通信⁉」

 

「何⁉」

 

 ジンライは舞の方に視線を向ける。

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