超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第11話(1)縦横無尽

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「いかが致しますか⁉ ドクターMAX様!」

 

 虹色の派手なタイツを着た、世界征服を目論む悪の秘密結社レポルーの戦闘員が白衣姿でショートボブの金髪にサングラスをかけた小柄な女性に問う。

 

「……どうやら他の連中も動いているみたいね。厄介だけど、むしろこれを幸運と捉えましょう。まずはこの半月堡に設置されたNSPを早急に回収するわよ!」

 

「はっ!」

 

 戦闘員たちは一の橋を渡って、半月堡に向かおうとする。半月堡とは,五稜郭の正面入口を守るために築かれた出塁である。五稜郭は、水堀で囲まれた五芒星型の堡塁と一ヶ所の半月堡からなっている。堡塁には土塁が築かれ、内側に建物が建てられている。半月堡は南西に位置する。五稜郭学園の学生や関係者が主に通行するのがここである。

 

「防備を固めているかと思ったけど、ほぼ手薄ね……私にも運が向いてきたかしらね」

 

 ドクターMAXは顎に手をやってニヤリと呟く。

 

「ここでNSPを確保出来れば大きいですな」

 

 戦闘員の隊長がドクターMAXに語りかける。

 

「ええ、我が組織は世界的には着実に成果を挙げている……ただ、その中にあってこの極東支部は長きに渡ってお荷物扱いされてきた……その汚名を返上することが出来るわ」

 

「な、長年の苦労が報われそうです……」

 

 隊長が顔を抑える。マスクで覆われていて分からないが、感極まったようである。

 

「泣くのはまだ早いわ。まずは作戦を成功させてからよ」

 

「はっ、これは失礼しました!」

 

 隊長が敬礼をして、戦闘員たちの後に続く。

 

「……私もこのまま失敗続きで終わるわけには行かないのよ……」

 

「ぐわっ!」

 

 戦闘員たちが数人倒れ込む。

 

「何事⁉」

 

 ドクターMAXが視線を向けると、橋の向こう側に赤茶色で短髪の少年が立っていた。

 

「だ、誰だ⁉」

 

「仁川実直だ! 俺の愛する五稜郭学園でこれ以上好きにはさせんぞ! 甲殻起動!」

 

 掛け声とともに少年は頭部がカニで、両腕が大きなハサミを持った姿になった。

 

「あ、あいつは……」

 

「この世の悪を挟み込み! 正義の心で切り刻む! 『クラブマン』参上!」

 

「以前も邪魔してくれた奴ね。この道南エリアで頭角を現してきた地元ヒーロー……」

 

「そうだ! 頭角を現している! カニだけに!」

 

「そういうのいいから。ほら、あんた達、数では優っているわ! 冷静に対処なさい!」

 

 ドクターMAXが叱咤すると、隊長が指示を出す。

 

「そ、そうだ! 包囲しろ!」

 

 体勢を立て直した戦闘員たちがクラブマンを取り囲む。クラブマンがフッと笑う。

 

「取り囲んだくらいで良い気になるなよ?」

 

「何⁉」

 

「『高速縦横無尽歩き』!」

 

「なっ⁉」

 

 クラブマンは体の向きを器用に変え、縦横斜めに高速に動き回り、ハサミを繰り出す。

 

「喰らえ!」

 

「どわっ!」

 

 クラブマンの攻撃を受け、戦闘員たちが次々に倒れる。隊長が驚く。

 

「ば、馬鹿な! 横歩きしか出来ないのでは無かったのか⁉」

 

「ふっ、ある男の助言で、俺は生まれ変わった! どの方向にも高速で歩けるぞ!」

 

「な、なんだと……」

 

「お願いだから馬鹿馬鹿しいやりとりやめてくれる? 頭が痛くなるから……」

 

 ドクターMAXが頭を抑えながらゆっくりと前に進み出てくる。

 

「お、お前はレポルーの科学者的な女!」

 

「科学者的って、他になにがあるのよ……一応、我が組織のサイボーグ手術を受けているのよね、戦闘員たちの手には余るか……しょうがない、少し早いけどアンタの出番よ」

 

「⁉」

 

 ドクターMAXが指を鳴らすと、亀の顔をした怪人が現れる。

 

「怪人亀コーラ、ここに……」

 

「組織の裏切り者……でもないか、ええっと……はみ出し者を始末しなさい」

 

「了解……しました!」

 

「おっと!」

 

 亀コーラがクラブマンに勢いよく殴りかかる。クラブマンはなんとか横に躱す。

 

「ち……」

 

「あ、案外素早い動きだな! 亀の癖に!」

 

「カニ男には言われたくないな……」

 

「こちらから仕掛ける!」

 

「ふん!」

 

「なっ⁉」

 

 クラブマンはハサミを繰り出すが、攻撃があっさりと弾かれてしまう。

 

「……その程度か?」

 

「な、なんという硬さ……」

 

「全身がこの背中の甲羅と同じ硬度を持っている。並大抵の攻撃は通用せんぞ」

 

「ぐっ……」

 

「……吹けよ、疾風! 轟け、迅雷!」

 

「!」

 

「疾風迅雷、参上! 貴様らの邪な野望は俺様が打ち砕く‼」

 

 パワードスーツを着用した疾風迅雷が駆け込んでくる。ドクターMAXが叫ぶ。

 

「さ、運命の君!」

 

「はっ⁉ じ、『迅雷』モード! 喰らえ!」

 

「ふんぬ!」

 

 疾風迅雷が蹴りを繰り出すが、亀コーラが事も無げに弾く。疾風迅雷が舌打ちする。

 

「ちっ! か、硬いな!」

 

「湿布完売! 来てくれたか!」

 

「疾風迅雷だ! 貴様だけではあまりにも心もとないのでな!」

 

「今の通りで並大抵の攻撃は通用しないぞ」

 

「並大抵か……」

 

 疾風迅雷がクラブマンをじっと見つめる。

 

「な、なんだ、どうした?」

 

「一か八か、試してみるか……『ジャイアントフォーム、適用』!」

 

「ええっ⁉」

 

 クラブマンが驚く。自らの両のハサミが巨大化したからである。疾風迅雷が頷く。

 

「よし、想定通りだ!」

 

「嘘をつけ! 一か八かとかなんとか言っていただろうが!」

 

「とにかくそのハサミなら硬い甲羅も挟み砕けるはずだ!」

 

「う、うう……お、重い!」

 

「ぐわあっ!」

 

 クラブマンが重さに耐えきれず、思わず振り下ろしたハサミが亀コーラを叩き潰した。

 

「は、挟め! 誰が叩き潰せと言った!」

 

「重すぎるんだ! どうせなら身体も大きくしろ!」

 

「まあいい、結果オーライだ! 後は任せたぞ!」

 

「ま、任せるって……」

 

「追って舞から指示がある! それに従え! 俺様は他にも行く所がある!」

 

 疾風迅雷はその場を走り去る。隊長がドクターMAXに指示を仰ぐ。

 

「か、亀コーラ様のコアは回収出来ましたが、どうしますか⁉」

 

「『キスかハグか、抱きしめてみるか』なんて……大胆な……そこがまた素敵……」

 

 ドクターMAXは赤面する顔を両手で抑える。

 

「な、何を言っているのですか⁉」

 

「おい、リップ塩梅! このハサミはどうやったら戻るんだ⁉」

 

 隊長とクラブマンの叫びが虚しく交差する。

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