超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第12話(1)ノット正攻法

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「へえ、わりと良い所に出られたわね……」

 

 何も無い空間に発生した小さい黒い穴から、やや長い赤髪で右目を隠し、露出の多い黒のボンテージスーツに身を包んだ女性が五稜郭の北東の堡塁付近に現れる。

 

「時空の流れが安定していた為と思われる……」

 

 赤髪の女の背後から、やや長い青髪で左目を隠し、露出の多い黒のボンテージスーツに身を包んだ女性が現れ、顔が自身と瓜二つである赤髪の女に考えを伝える。

 

「そういう時空の小難しいことは私には分からないわ」

 

「ウリュウ、時空賊の一員として、それは果たしてどうなのか……」

 

 青髪の女の呆れる声にウリュウと呼ばれた女は両手を大袈裟に広げて答える。

 

「良かないでしょうけど、成果を出せば問題ないでしょう?」

 

「まあ、それはそうだ……」

 

「そういうこと、じゃあ行きましょうか、サリュウ」

 

「一つ言っておくことがある……」

 

「何?」

 

「五稜郭内でもタイムホールの反応は見られるが、はっきりとしたポイントは分からない。そして、現在のこの状況だ……」

 

 サリュウと呼ばれた女が淡々と説明する間にも、周辺で激しい音が聞こえてくる。それを聞きながらウリュウが肩を竦める。

 

「他の勢力も動いている……状況がどのように変化するかは分からないってことね」

 

「そうだ。このポイントを覚えておけ。ここから入って、ここから撤退するという可能性が高い。恐らく五稜郭内部で悠長にタイムホールを探している余裕はないだろうからな」

 

「ふ~ん……」

 

「相手も他の勢力もここが勝負所だと見ている……油断するな」

 

「分かっているわよ。各地に点在していたNSPが一か所に集められたということ……確保に向けてこれ以上ないほどの好機だわ……ここで決めてみせる」

 

「ふむ、分かっているのならば良い……」

 

「NSPという未知なるエネルギーを手にすれば、私たちラケーシュが時空賊だなんて名乗らなくても良い世界線が生じる可能性がある……」

 

「ああ……」

 

 真剣な顔つきで呟くウリュウを見て、サリュウが頷く。

 

「防衛している連中が他勢力の奴らに気を取られている隙に、NSP頂くわよ!」

 

「そうはさせないわ!」

 

「⁉」

 

 ウリュウたちが視線を向けると、ショートボブの髪型に赤色のカチューシャを付け、黒のトップスに赤いフレアスカート、黒いストッキングを身に着けた長身かつスレンダーな体型の女性が立っている。サリュウが顔をしかめる。

 

「アンタは……」

 

「『北日本の名探偵』、平凸凹、愛称デコボコよ! おとなしくお縄につきなさい!」

 

「いつもの迷探偵か……それにしても、察しが良いな?」

 

「『この五稜郭にあるNSPを頂きに参上する』という予告状が届いたからよ!」

 

「ウリュウ、またか……」

 

 サリュウがウリュウを睨みつける。

 

「だ、黙って持ち去るのはコソ泥みたいで嫌なの! スタイリッシュに決めないと!」

 

「恰好にこだわっている場合か?」

 

「ミッションには多少のスリルも必要よ!」

 

「スリルねえ……」

 

「もっとも、あの迷探偵相手じゃあ、ちょっと拍子抜けだけど!」

 

「さっきからイントネーションが若干気になるんだけど⁉ 名探偵よ! 名探偵!」

 

 デコボコが唇を尖らせる。

 

「アンタと遊んでいるヒマは無いの!」

 

「!」 

 

 ウリュウの右腕が巨大化し、長く鋭い爪が生える。

 

「今度こそこの竜の爪の餌食にしてあげる!」

 

 ウリュウがデコボコに向かって走り出し、右腕を振りかざす。

 

「凸凹護身術!」

 

 デコボコが地面を叩くと、彼女の周囲一帯の地面が隆起したり、沈下したりする。

 

「ふん!」

 

「なっ⁉」

 

 ウリュウが地面の隆起を利用し、高く飛び上がる。

 

「不思議な手品は一回見たら十分! さっさと退場して頂戴!」

 

「くっ⁉」

 

「貰った!」

 

「テュロン!」

 

「ぐっ⁉」

 

 高く飛んだウリュウの更に上から攻撃が加わる。攻撃を喰らって、体勢を崩したウリュウは地面に叩き付けられる。デコボコが叫ぶ。

 

「マコト!」

 

「すみません! 遅くなりました!」

 

 青色と白色を基調とした、独特な文様の衣装を身に纏い、やや長い髪を後ろに一つにしばった小柄な少年が超大型犬を一回り大きくした位の灰色のケモノに跨って着地する。

 

「お前は……時空キーパーズの……」

 

「デ、凸凹探偵事務所所属の探偵助手、無二瀬マコトです! それ以外にありません!」

 

 サリュウの言葉を遮るように、マコトという少年は慌てて声を上げる。

 

「やってくれるじゃないの!」

 

「おっと!」

 

「なに⁉」

 

 倒れていたウリュウが起き上がり様に少年が跨っているケモノを狙って攻撃したが、ケモノは小さいリスほどの大きさになって、それを躱し、マコトの肩に乗る。

 

「偉いぞ、テュロン」

 

 マコトは自分の肩に乗ったテュロンという不思議なケモノを優しく撫でる。

 

「ちっ……」

 

「隙有り!」

 

「むっ!」

 

 デコボコが地面の隆起した部分を四つほど手に取って縦一列に並べ、棒状にし、ウリュウに殴りかかる。不意を突かれたかたちのウリュウは再び倒れ込む。

 

「よし! とどめ!」

 

「させん!」

 

「どわっ⁉」

 

 左腕を巨大化させたサリュウが手を叩くと、爆発的な空気振動が起こり、それを受けたデコボコが吹っ飛ぶ。マコトが叫ぶ。

 

「デコボコさん!」

 

「うっ……」

 

 デコボコが僅かながらも反応しことにマコトはホッとする。サリュウが舌打ちする。

 

「ちっ、しぶといな……ただ、動けんだろう。実質二対一だ、こちらが有利だな」

 

「くっ……」

 

「それはどうかな?」

 

「なっ⁉」

 

「その声はジンライさん!」

 

「『バイオフォーム』! 『奇蝶』モード!」

 

「ちょ、蝶⁉」

 

 ウリュウが驚く。蝶のような派手な羽根を背中に生やした疾風迅雷が飛び掛かってきたからである。ウリュウ同様、一瞬戸惑ったサリュウだったが、嘲笑交じりに叫ぶ。

 

「蝶が竜に敵うとでも思っているのか!」

 

「正攻法では無理だろうな!」

 

「なっ! 何よ、これは⁉」

 

「り、鱗粉か⁉」

 

 疾風迅雷が羽根をはためかせると、怪しげな色をした鱗粉がウリュウたちに掛かる。

 

「くっ、あ、足がふらつく……」

 

「お、恐らく、あの鱗粉によるものだ、あれを躱せ! ぐっ⁉」

 

「きゃっ⁉」

 

 ウリュウたちが足を踏み外して、五稜郭の堀に落ちる。疾風迅雷も堀に入る。

 

「な、なんだ⁉」

 

「『電鰻』モード!」

 

「うぎゃあっ!」

 

 鰻のようにヌルっとした肌質になった疾風迅雷が堀に電気を流し込み、ウリュウたちは感電し、悲鳴を上げる。

 

「お、おのれ!」

 

「む⁉」

 

 サリュウが下に向かって手を叩き、衝撃波を発生させて、水面から勢いよく飛び上がる。その際に左腕を伸ばし、ぐったりしているウリュウの身体を掴む。

 

「小賢しい真似を! 今度は覚えていろ!」

 

「流石に竜だな! 非常にタフだ!」

 

「蝶や鰻にやられてたまるか!」

 

「ならばこれならどうです……」

 

「しまった⁉」

 

「はっ!」

 

 飛んでいたマコトが両腕を交差しながら振り下ろす。炎がサリュウたちを包み込む。

 

「こ、これは……鳳凰の爪⁉ ま、まさか、お前も……」

 

「……ひょっとしたら立場が逆だったかもしれませんね」

 

「ぐうっ!」

 

 サリュウが手を叩いて、その反動でさらに吹っ飛ぶ。地面を転がるように着地すると、空間に開いた黒い穴にウリュウ共々飛び込む。穴はすぐに閉じた。

 

「……久々に使ったから、致命傷を与えるまではいきませんでしたか……」

 

 地面に降り立ったマコトは己の手を見つめつつ呟く。後ろからジンライが声を掛ける。

 

「色々訳ありのようだが……手を貸してもらえないか?」

 

「何かと立て込んでいるようですね……そうしたいのですが、デコボコさんが……」

 

「この地点に行けば治療出来る」

 

 ジンライが情報端末を取り出し、地図を表示する。

 

「そうですか、分かりました。体勢を立て直し次第、ご助力致します」

 

「頼むぞ。俺様は行くところがある」

 

 そう言ってジンライは忙しなく走り去る。

 

「テュロン! デコボコさんを運ぶぞ!」

 

 マコトも踵を返して歩き出す。

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