超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第14話(1)超カワイイヴィラン

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「久しぶりだね」

 

「ああ、そうだな……」

 

「心配したんだよ? 連絡が全然取れなくなるし」

 

「そうか」

 

「一体なにがあったの?」

 

「話すと長くなるのだが……簡単に言えば、配下に裏切られた」

 

「ああ、人望ないもんね~」

 

「なっ⁉」

 

 ジンライが戸惑い気味の視線を赤色のミディアムヘアーの女の子に向ける。

 

「え? 自覚なかったの?」

 

「……全くないわけではないが、お前にまでそう言われると多少ショックだな」

 

「アタシの部隊に合流すれば良かったのに」

 

「当然、それを考えたが、この地球に不時着してな……」

 

「えっと、ここは……日本っていう国の北海道函館市だっけ?」

 

 女の子は端末を取り出し、情報を確認する。ジンライは頷く。

 

「ああ、そうだ」

 

「不時着の際、ケガでもしたの?」

 

「いいや」

 

「それじゃあ、すぐに飛び立てば良かったのに」

 

「船でクーデターを起こされ、脱出ポッドを利用したのだが……」

 

「壊れちゃったの?」

 

「こうなった……」

 

 ジンライは手足が伸びて、目と口がついている、小型の銀色の球形ロボットを指し示す。

 

「な、なにこれ?」

 

「ハジメマシテ、『ドッポ』トモウシマス。イゴオミシリオキヲ」

 

 ドッポは会釈する。女の子は困惑しながら答える。

 

「は、はあ、どうもご丁寧に……」

 

「ポッドがこうなってしまってな、動くに動けなくなってしまった……」

 

「ふ~ん?」

 

 女の子が頬杖をつく。ジンライが戸惑う。

 

「な、なんだ?」

 

「本当にそれだけが理由?」

 

「他になにがあるというのだ」

 

「嘘だね」

 

「う、嘘ではない」

 

「じゃあ……さっきから睨んでくるこの女は何?」

 

 女の子はちゃぶ台を挟んで自身の目の前に座る黒髪ロングで眼鏡を掛けた女の子を指差す。ジンライが答える。

 

「この『NSP研究所』の所長である疾風大二郎(はやてだいじろう)の孫娘、疾風舞(はやてまい)だ」

 

「ふ~ん……結構な美人ね」

 

「! ど、どうも……」

 

「まあ、アタシの足元にも及ばないけど」

 

「なっ⁉」

 

 舞が露骨にムッとする。舞の隣に座る白髪で豊かな髭を蓄え、よれよれの白衣を着た穏やかそうな初老の男性がそれをなだめる。

 

「まあまあ、舞。一応褒めてはくれているから……」

 

「おじいちゃん、そうは言ってもね……」

 

「そちらがこの研究所?の所長さん?」

 

「ああ、そうだよ。舞の祖父、疾風大二郎だ」

 

「あまり研究所っぽくないわね……見たところこの国の一般的な家屋に見えるのだけど」

 

 女の子が端末を確認しつつ周りを見まわす。大二郎が苦笑する。

 

「予算がなくてね……自宅兼研究所なんだ」

 

「……つまり、貴方は科学者ってことね?」

 

「そうだよ」

 

「この大二郎にポッドの修理を依頼したら、このドッポが出来上がったというわけだ……」

 

 ジンライが呆れ顔でドッポの頭をポンポンと叩く。大二郎が後頭部を掻く。

 

「いや~つい出来心で……」

 

「ふざけるなよ、お陰でこの星から脱出する術をなくしてしまったのだぞ……」

 

 ジンライが大二郎をにらみつける。女の子が笑う。

 

「まあ、いいじゃない。アタシのポッドは大丈夫だから。一緒に帰れるわよ」

 

「! そ、そうか……」

 

「何よ? 嬉しくないの?」

 

「い、いや……」

 

「じゃあ、そろそろお暇しましょう」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

 舞が慌てて声を上げる。女の子が目を細める。

 

「……なによ?」

 

「あ、貴女、誰なのよ! ジンライをどこに連れていくつもり⁉」

 

「え? アタシはドトウ。ジンライお兄ちゃんの妹よ」

 

「い、妹⁉」

 

 ドトウと名乗った女の子の言葉に舞が驚く。ドトウが首を傾げる。

 

「なによ、そのリアクション? 妹が珍しいの?」

 

「い、いや、だ、だって、さ、さっき、キ、キ、キ、キスを⁉」

 

「別に普通でしょう? 親愛の情を示したの。地球ではやらないの?」

 

「きょ、兄妹なら、ほっぺたとかにでしょう! く、口づけだなんて!」

 

「ああ、アタシとお兄ちゃんは血の繋がりはないから、その辺も別に問題ないわ」

 

「ええっ⁉」

 

 舞の反応にドトウが軽く頭を抑える。

 

「いちいちやかましい女ね……まあ、いいわ。帰りましょう、お兄ちゃん」

 

「う、うむ……」

 

「ま、待って! ジンライを連れていかれちゃ困るのよ!」

 

「呼び捨てだなんて、馴れ馴れしいわね……」

 

 ドトウが端正なルックスの顔をしかめる。

 

「大体、どこに連れて帰るつもりよ⁉」

 

「決まっているでしょう。アタシたちの母国、『ドイタール帝国』よ」

 

「え? そ、その軍服みたいな服は……」

 

「みたいじゃなくて軍服よ。真紅のパワードスーツに身を包み、幾つもの堅固な宇宙要塞を陥落させ、数多の屈強な種族を倒してきた、ドイタール帝国第十三艦隊特別独立部隊部隊長、『超カワイイヴィラン』、ドトウとはアタシのことよ!」

 

 ドトウは立ち上がって叫ぶ。

 

「……」

 

「な、なによ、その薄いリアクションは⁉」

 

「いや、なんか凄いデジャヴが……」

 

「……ドトウ、この地球には我が帝国の威光は届いてない」

 

「えっ? どんな辺境よ……まあ、どうでもいいわ、そろそろ帰りましょう」

 

「う、うむう……」

 

「だから待ってよ!」

 

 ジンライの腕を引っ張るドトウを舞が立ち上がって制止する。ドトウが少し驚く。

 

「な、なんなのよ……」

 

「ジンライは連れていかせないわよ! 私たちの大事なヒーローなんだから!」

 

「は? ヒーロー?」

 

 ドトウがジンライに視線を向ける。ジンライが鼻の頭をこする。

 

「……成り行き上、そうなった」

 

「ちょっと待ってよ、漆黒のパワードスーツに身を包み、幾つもの堅固な宇宙要塞を陥落させ、数多の屈強な種族を倒してきた、ドイタール帝国第十三艦隊特殊独立部隊部隊長、『超一流のヴィラン』、ジンライお兄ちゃんがヒーローですって⁉」

 

「……それって必ず言わなきゃならないの?」

 

 舞が呆れ気味に呟く。ドトウがジンライに問う。

 

「成り行きってどういうことよ?」

 

「うむ……この地球、いや、この国のこの地方にはNSPという特殊なエネルギーを発している鉱石が多数ある。そのエネルギーを上手く活用すれば、この星のあらゆる問題が解決し、また科学分野の成長・拡大に繋がると見られている」

 

「ふ~ん」

 

 ジンライはドトウに耳打ちする。

 

「……恐らくだが、そのエネルギーを確保するのが帝国の狙いで、それで俺様をこの辺境の星へ派遣したのだろう。ところが、俺様はクーデターによって失脚してしまった。帝国で復権するためには、NSPの確保が必要不可欠だ」

 

「……ふむふむ」

 

 ジンライはドトウから離れ、再び普通の声量で話す。

 

「だが、NSPを狙う勢力はこの星にも多い……秘密結社に、巨大怪獣を操る軍団、異次元からの侵略者に魔界の住人、未来から来たとかいう奴らに古代文明人……現在確認出来ているだけでも、7つの勢力がこの研究所を虎視眈々と狙っている」

 

「ず、随分と大人気ね⁉」

 

 ドトウが驚く。ジンライが話を続ける。

 

「そして、この北海道地方から南にある、いわゆる東北地方に『MSP』というエネルギーの存在が確認された。俺様はそのエネルギーも守らなくてはならない」

 

「えっ⁉」

 

「? どうした?」

 

「い、いや、なんでもないわ……」

 

 ドトウが首を左右に振る。

 

「まあ、そういった理由で現在、ここから離れるわけにはいかない」

 

「そんな……⁉」

 

 警報が鳴り響く。舞が叫ぶ。

 

「『レポルー』の戦闘員連中が庭先に来たわ!」

 

「またか、まったく凝りもせず!」

 

 ジンライが飛び出す。虹色の派手なタイツに身を包んだ者たちがいる。ジンライがパワードスーツを取り出し、スイッチを押す。すると、ジンライは黄色いスーツに身を包まれ、目の部分にバイザーが付いた黄色いマスクを着用した姿になる。それを見たドトウが驚く。

 

「あ、あのパワードスーツは⁉」

 

「コードネーム、疾風迅雷(しっぷうじんらい)、参上! 貴様らの邪な野望は俺様が打ち砕く‼」

 

 ジンライは派手にポーズを取る。

 

「かかれ!」

 

レポルーの戦闘員たちが飛びかかる。

 

「ふん!」

 

「ぐはあっ!」

 

「はあ!」

 

「うぎゃっ!」

 

 ジンライの繰り出すパンチとキックで戦闘員たちはあっけなく吹き飛ばされる。

 

「くっ……どうしますか、隊長⁉」

 

「て、撤退だ!」

 

「りょ、了解!」

 

 戦闘員たちはその場から去っていく。ジンライが呟く。

 

「戦闘員にしては、多少はタフだったが、偵察のようなものか、舐められたものだな……」

 

「ジンライ、大丈夫?」

 

「ああ、問題ない」

 

 駆け寄ってきた舞にジンライが答える。ドトウが尋ねる。

 

「……今の連中がNSPとやらを狙っている勢力?」

 

「ああ、世界征服を目論む悪の秘密結社『レポルー』の戦闘員たちだ」 

 

「NSPを狙っていつも庭先で好き勝手に暴れるの! もう日常茶飯事よ!」

 

「えっ、日常的に秘密結社が庭先に来るの⁉」

 

 舞の言葉にドトウが驚く。

 

「まあ、こんなわけで、今の俺様はヒーローをやっているのだ」

 

「……そのパワードスーツはNSPから生成したもの?」

 

「流石に察しが良いな、そうだ、元のパワードスーツでは、この環境下ではうまく能力を発揮出来ないようだからな。最近はもっぱらこのパワードスーツを使っている」

 

「そう……」

 

 ジンライが再びドトウに囁く。

 

「ドトウ、お前に頼みがあるのだが……」

 

「なに?」

 

「一旦帝国に戻って、義父上……皇帝陛下に俺様の無事を伝えてくれないか?」

 

「うん……」

 

 ドトウは自身が乗ってきたポッドに近づくと、ポッドをおもむろに破壊する。

 

「⁉」

 

「あ~手が滑っちゃった。ポッド壊れちゃった。これじゃ帰れないわね~。というわけで、アタシもこちらにお世話になるわ♪」

 

「「ええっ⁉」」

 

 笑顔で舌を出すドトウにジンライと舞が驚く。

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