超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第17話(2)乱入

「……」

 

 紅が構えを取る。

 

「こ、これは……」

 

 光八が困惑する。

 

「ガンガン行きなさい!」

 

 セコンドについた杏美が声をかける。

 

「そ、そう言われても……」

 

「カーン!」

 

「あっ……」

 

 ゴングが鳴らされる。

 

「………」

 

「…………」

 

「……………」

 

「………………」

 

 紅と光八が距離を取ったまま見つめ合う。

 

「おい! なにやってんだ!」

 

「やる気あんのか!」

 

「金返せ!」

 

 観客からヤジが飛ぶ。

 

「ちょっと! なにをやってんのよ!」

 

 杏美が光八に苛立つ。

 

「し、しかし……」

 

「しかしもかかしも無い! いつも言っているでしょう⁉ リングというのは三本ロープのジャングルなのよ!」

 

「初耳ですが⁉」

 

「……来ないのならば、こちらから参ります……!」

 

「!」

 

 紅があっという間に光八との距離を詰める。

 

「はっ!」

 

「うおっ⁉」

 

「ふっ!」

 

「ぐおっ⁉」

 

「ほっ⁉」

 

「ぷおっ⁉」

 

「おおおっ!」

 

 紅がパンチ、チョップ、キックと先制攻撃を立て続けに仕掛け、観客が沸く。

 

「くっ……」

 

「反撃しなさい!」

 

「で、ですが……」

 

「光八さん、戸惑っているわね……」

 

「それも当然だろう、両者の体格差が圧倒的だ。ここで下手な反撃をしたら、BENIとやらに大怪我を負わせかねない……」

 

 観客席に座る舞の呟きに隣のジンライが応える。

 

「お、おっと……」

 

 光八がよろめいた振りをして杏美の側に近寄る。

 

「なにをやっているの⁉」

 

 怒る杏美に光八が囁く。

 

「い、今さらながら、こればミスマッチというやつでは?」

 

「そんなことは百も承知よ!」

 

「ええっ⁉」

 

 光八が驚く。

 

「技をかける方もプロ! かけられる方もプロ! 相手を信頼なさい!」

 

「……! わ、分かりました! え、えーい!」

 

「‼」

 

「あっ、しまった……!」

 

 光八が思い切り腕を振り回すと、それが紅に当たり、紅が勢いよく吹っ飛ぶ。

 

「ああ! 吹っ飛ばされた!」

 

 ジンライの隣でドトウが声を上げる。

 

「いいや、よく見てみろ!」

 

 ジンライも声を上げる。

 

「えっ⁉ ああっ⁉」

 

 ドトウが視線を戻すと、紅がロープの反動を利用して、高く舞い上がる。光八が唖然とそれを見つめる。

 

「なっ……」

 

「ふん!」

 

「ごはっ⁉」

 

 舞い上がった紅は空中できりもみ回転をして勢いを加え、光八の太い首に強烈な蹴りをかます。不意の一撃を喰らった光八はよろめく。

 

「もらいました!」

 

 華麗に着地をした紅が光八に追い打ちをかけようとする。

 

「……ウオオッ!」

 

「むっ⁉」

 

 光八の唸り声が会場全体を揺らす。

 

「! な、なんて迫力……まるで獣ね」

 

「まるでというかそのものなのだが」

 

 舞の呟きにジンライが突っ込みを入れる。

 

「BENIの動きが止まったわね……」

 

「ああ、ベアーマスクの反撃だ……」

 

 ドトウの呟きにジンライが頷く。

 

「ウオオッ!」

 

「きゃ⁉」

 

 光八が腕を振るう。当たりはしなかったが、風圧で紅は倒される。

 

「ウウ……」

 

 光八が倒れた紅にゆっくりと迫る。

 

「な、なんか、ヤバくない?」

 

 舞がジンライに問う。

 

「BENIが予想以上に強かった為、ベアーマスクがマジになってしまったようだな」

 

「ヤ、ヤバいじゃない!」

 

「まあ、どうなるか見てみよう……」

 

「な、なんで、そんな冷静なのよ! ああっ⁉」

 

 舞がリングに視線を戻すと、深蒼のコスチュームに身を包んだ、やや長めの黒髪をオールバック気味にした中肉中背の体型の女性がリングに飛び込み、光八の左半身に対して豪快なドロップキックをかます。

 

「ウオッ⁉」

 

「よっしゃあ!」

 

「ら、乱入者⁉」

 

 舞が驚く。

 

「あれはきりたんぽプロレスの常務、高西蒼(たかにしあおい)……リングネームはAOIだ……」

 

「知っているの、お兄ちゃん⁉」

 

 ドトウが尋ねる。

 

「ああ」

 

「なんで?」

 

「パンフレットに書いてある」

 

 ジンライが冊子をピラピラとさせる。

 

「な、なんだ……あっ!」

 

「1、2,……3! BENI&AOIの勝利!」

 

 蒼の乱入で2対1となったきりたんぽプロレス組が数的優位を活かして、ベアーマスクを抑え込んであっという間に勝利を収めた。

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