超一流ヴィランの俺様だが貴様らがどうしてもというならヒーローになってやらんこともない!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第3話(1)下校途中

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「函館もすっかりあったかくなってきたわね」

 

「……」

 

「今日はまっすぐ帰らずに街の方をブラブラしていかない?」

 

「……」

 

「ねえってば」

 

「……」

 

 下校中、駅まで歩く舞とジンライだったが、舞の問いかけに対してジンライは無言である。

 

「ちょっと、聞いてるの?」

 

「聞いていない……」

 

「聞いてるじゃない」

 

「……なんだ、俺様は読書で忙しいのだ」

 

「読書?」

 

「お、おい」

 

 舞がジンライの持っている端末を覗き込むと、そこには漫画が表示されている。

 

「なんだ、読書って漫画じゃないの」

 

「読書と言っても差支えないだろうが」

 

「銀河に名だたる超一流のヴィラン様ならもっと御大層な本をお読みになるかと思ったわ」

 

 舞の呆れる声にジンライは反論する。

 

「なかなか馬鹿には出来んぞ……文章だけではなく、絵があることにより視覚的にも得られる情報が多い。また絵の表す意味や次の展開について考えることは想像力を高めることにつながる。さらに扱うテーマも多岐に渡っている。この星の社会文化を知る上でも便利だ」

 

「随分と漫画贔屓になったのね」

 

「ここ数日は様々な漫画を読みふけってしまったな」

 

「もしかしてだけど……授業中も読んでなかった?」

 

「ああ、あの程度の授業を受けるより漫画を読んでいた方が今の俺様には有意義だからな」

 

「……アンタ、今の立場分かっているの?」

 

「五稜郭学園の生徒だが?」

 

 なにを今更という顔でジンライは答える。

 

「そう、高校生よ。高校生の本分は何?」

 

「恋愛か」

 

「な、なにを言っているのよ⁉」

 

 ジンライの思わぬ言葉に舞は困惑する。

 

「高校生活というのはほんの一瞬で過ぎ去ってしまうもの……だけれどもそんな今でしか出来ない恋がある……と、ある漫画では言っていたぞ」

 

「ど、どんな漫画を読んでいるのよ⁉」

 

「高校に通うのならば、高校生活をテーマに描いた漫画に目を通すべきだと思ってな」

 

「ジャンル、『アオハル』デケンサクシ、イクツカピックアップシタサクヒンヲゴショウカイサセテイタダキマシタ……」

 

 ジンライの肩に乗るドッポが呟く。

 

「そ、それって、いわゆる少女漫画ってやつじゃないの?」

 

「ソノヨウニカテゴライズスルコトモデキマスネ」

 

「ちょ、超一流のヴィランが読むものかしら?」

 

「超一流のヴィランが少女漫画を読んで一体何が悪いというのか?」

 

「ま、まあ、別に悪くはないけどね……じゃなくて! 高校生の本分は勉強よ! それじゃあ勉強が疎かになってしまうわよ!」

 

 舞の言葉にジンライはウンザリしたような視線を向ける。

 

「さっきも言ったように、あの程度の授業内容ならわざわざ耳を傾けなくともとっくに頭の中に入っている。理科分野も数学もな……」

 

「国語や社会分野は⁉」

 

「ドッポに教科書を読み込ませ、そのデータを睡眠時間中に全て頭に入れた。問題は無い」

 

「す、睡眠学習ってやつ⁉ ズルい! そんなのあったらテスト勉強もしなくていいじゃない! 私にもドッポ貸して頂戴よ!」

 

「睡眠学習というものは子供の頃から慣れてないと効果はほぼないぞ……今の貴様がやっても付け焼刃にもならん……無駄なあがきだ、ちゃんと勉強しろ」

 

「一夜漬けみたいなことしている奴にちゃんと勉強しろって言われた!」

 

 舞が悔しそうに両手で頭を抱える。

 

「おい! お前ら!」

 

 声がしたので二人が立ち止まって振り返ると、そこには仁川実直が立っていた。

 

「なんだ、ジッチョクか……」

 

「高速横歩き男か……」

 

 二人はため息をついて前を向き、再び歩き出す。

 

「おおい! 無視するな!」

 

 ジッチョクが慌てて二人についてくる。

 

「無視してないわよ、一応反応してあげたでしょ……」

 

「一応って! ほとんど無視だからな、それ!」

 

「立ち止まってやっただろう……それなりの関心は向けた……」

 

「漫画見ながら言うな! 関心限りなくゼロだろう!」

 

「うるさいわね……何の用よ」

 

「お前ら、なんで当たり前のように一緒に帰っているんだ⁉」

 

「そ、それは……」

 

 舞は思わず目を逸らす。

 

「……一つ屋根の下に暮らしているわけだからな、当然だろう」

 

「なっ⁉」

 

「な、なんで言うのよ!」

 

「クラスの連中には即バレただろう、そしてその話はすぐに学校中に広まった。知らないのはコイツくらいじゃないのか?」

 

「お、俺が、中庭の大木を芸術的に剪定してしまった罪で謹慎処分を喰らっている間に……」

 

「そんな訳分からん理由で謹慎させられるなんてどんなヒーローだ……」

 

「二人はそこまで進んでいたというのか……」

 

「な、何も進んでなんかいないわよ! 変な誤解しないで!」

 

「同じ家に住んでいるのは紛れもない事実だがな」

 

「余計なこと言うな!」

 

「くっ、それは確かに……」

 

「ゲンジョウハジンライサマガオオキクリードシテイマス」

 

「お、お前はあの時のちびロボ!」

 

「ドッポトイイマス、イゴオミシリオキヲ……」

 

「あ、ああ、よろしく……そうか現状は不利か……なんとか覆せないものか」

 

「何を張り合おうとしてんのよ!」

 

「ヨコアルキシテイルカラ、モクヒョウカラハトオザカルバカリナノデス」

 

「ドッポも変に煽らないでよ!」

 

「二人の間にハサミを入れられないだろうか? カニだけに!」

 

 ジッチョクはドッポに尋ねる。

 

「……ショウブヲシテミテハイカガデショウ?」

 

「勝負? そうか、その手があったか!」

 

「無いわよ!」

 

「ふっ、面白い……ヒーローとしての格の違いを教えてやる……」

 

「アンタも何で乗り気なのよ!」

 

「い、いや、ヒーローが私闘はマズい……ここは高校生らしい戦い方をしようではないか!」

 

「……高校生らしい戦い方とは?」

 

「……さあ?」

 

 ジッチョクは間の抜けた顔で首を傾げる。

 

「……時間の無駄だったな」

 

「ま、待て!」

 

「待たない」

 

「ゴホッ、ゴホッ……なんだか面白そうなことしてるじゃん、ウチも混ぜてよ」

 

「? 誰だ?」

 

 ジンライたちが視線を向けた先には五稜郭学園の制服を着た白い髪の女子が立っていた。

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