『始祖』は潰えたり   作:ロス

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「2000年前にユミルブチ○せば全部丸く収まるんじゃね?」って発想から生まれました。


「進撃を望む」

 

 

 

 

 

 

 オレは生まれてこの方満たされた覚えが()ェ。

 それは小さい頃から変わらねェ事だった。

 勉強はツマラねェし、遊びもツマラねェ。

 何を食べても何を見ても何を聞いても「(ちげ)ェ」って感じちまう。

 ツマラねェ顔してたら自分より弱いモンだと思ったのが同じ歳の奴らがイジメようと手ェ出して来た。

 

 

 だからオレも手ェ出した。

 

 

 そしたら世界が変わった。

 

 

 途中までは満たされるみてェな感覚があったのに手ェ出して来た奴らの半分が逃げて半分がブチのめされる頃にはもう「ツマラねェ」が戻って来やがった。

 ……でもオレが満たされそうなモノは分かった。

 

 

 あいつらがオレより弱い根性無しだったからじゃねェかって考えたオレはとにかくそこら中の奴らに喧嘩を売りまくった。

 悪ガキ、チンピラ、用心棒、街の衛兵、どいつもこいつもその内ブチのめされるか逃げちまうからツマラねェ。

 17の時にんな事考えながら寝てたらその間に捕まって縛られてた。 

 親はとっくにオレの事見捨てて金払ってくれる奴が誰もいねェからそのまま奴隷落ちした。

 剣闘の興行主が面白ェつってオレを買い取った。満たされそうな()()がしやがったからされるがままにした。

 

 

 5年経った。

 闘技場でオレに勝てる奴はいなくなった。

 大抵の奴はアッサリブチのめせた。そういう奴らは勝手に死ぬか気絶して動かねェし、起きててもツマラねェから観客の「殺せ!」とか抜かす声は無視した。

 時々食い下がる奴がいたが最終的にはオレに負けた。そういう奴らは生き残る奴も多かったが大抵は戦意無くしてツマラねェ奴らになった。何人かは死ぬまでオレに挑み続けた。

 たまにヤベェ奴がいた。そいつらは街でブチのめした誰よりもオレを満たすのに近づいてくれた。だが長ェ事戦ってると必ずガタガタになってオレに殺された。

 

 戦える奴がいねェからオレは自由の身になった。

 随分デブになった興行主から軍隊のお偉いさんに紹介されてオレは「誇り高きマーレ軍」とやらの一員になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「暇だなヴィー」

 「ヒマだなァ」

 

 7年経った。

 オレは辺境の砦でヒマになってた。

 

 軍隊に入ってすぐオレは東のパルシアとの戦いに送り込まれた。

 戦争って奴は街でチンピラブチのめすのとも闘技場で剣闘士ブチのめすのとも違った。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 オレが何人ブチのめしても何人かは逃げてしばらく経ったらまた襲って来やがる。

 時間も場所も関係ねェ。飯食ってる時にも寝てる時にも用足してる時にも襲って来やがるから()()()()()()()()()()()()()

 オレを満たすかもしれねェ時間がいつ来るかも分からねェって事に気付いたら()()()()()()()()()()()

 深入りしすぎたら満たすかもしれねェ戦場に遅れちまうって事に気付いたら()()()()()()()()()()()()

 

 戦場はオレに大きなモンをくれたが、半年前にパルシア一の猛将とか抜かした奴とパルシアの王子って奴をブチ殺したら辺境の砦に飛ばされた。

 マーレのお偉いさんとパルシアのお偉いさんの密約ブチ壊しにしたからとかオレの上司になった軍隊のお偉いさんが教えてくれたがオレの前に居たのが悪りぃ。

 

 とにかくここはヒマだ。

 辺境つっても最前線じゃねェから蛮族とやらもここらには来ねェ。

 街からも離れてるからヒマ潰しにチンピラブチのめしに行くのもできねェ。一度長い事歩いてブチのめしに行ったら次来た時はチンピラってモンが街からいなくなってた。

 来る日も来る日も砦の巡回して飯食って寝て村の巡回して飯食って寝ての繰り返しだ。たまに砦のセンパイの賭け事に混ざったり酒飲んだりするが大筋で変わりは無ェ。

 

 今もこうして砦巡回の二人組組んだ奴とアホみてェな会話してんだが……

 

 

 

 

 「……おっ?」

 「どうしたヴィー?」

 

 変な気配を感じて遠くを見てやりゃあ最前線の砦がある方に()()()()()()()

 ゴマ粒みてェな大きさだが()()()()()()()()()()()()()()()()に見えるってのは明らかにヤベェ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事だ。

 

 「……んん?なんか見えんな。なんだあれ?」

 「隊長んトコ行って知らせて来た方がいいぜェ?()()()()()()()()()

 「え?マジか?…………なんかでっかくなって来てんな……。ちゃんと見とけよ!」

 

 目ェ離す訳無ェだろ。

 きっと()()は今までのどんな奴よりオレを満たすのに近い奴だ。

 

 

 

 

 そうだろ?どこの誰とも分からねェ『巨人』さんよぉ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 古代マーレ帝国史、そして世界史上でも極めて異質な戦いとして名高い「カンブリケ砦の戦い」の始まりは当時砦の隊長だった人物の文章が後の世に伝えている。

 

 「『何か巨大なものがこちらに近付いて来ている』という歩哨の曖昧で具体的では無い報告があったのは昼下がりだった」

 「はっきりしない報告を聞く事しばらく、自分の目で見ても良いかと思い立って腰を上げた」

 「外に出て目をやれば確かに遠方に『何か巨大なもの』がこちらに近付いて来るのが見えた」

 「兵を集めるように指示する間にもそれはどんどん近付いて来た」

 

 

 

 

 「それは這いずるようにして動く『巨人』だった」

 「女の死体のような姿をした山と見紛うように巨大な何かだった」

 「我々は自分がいかにちっぽけであるかをこの時思い知らされた」

 

 

 

 

 歴史にのみ名を残す超巨大生命体『巨人』。

 その進軍に辺境最前線の砦は抵抗も許されずに()()()()、間を置かずに第二線と言える地域に位置していた砦へとその歩みを進めた。

 千剣を費やし、万岩を砕けさせ、マーレ帝国の衰退にさえ影響したとされる「カンブリケ砦の戦い」、通称『千剣の戦い』は巨大すぎる『絶望』の到来から幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「『なぁ、あれオレがブチ殺してもいいか?』」

 

 「そう問うて来る声の方を見るとそこでは()()ヴィリオが満面の笑みを浮かべていた」

 「……私は()()ヴィリオが満面の笑みを浮かべている事に何よりも絶望した」

 

 そして後にマーレ最大の英雄と称された男、ヴィリオの最期の戦いもまたここに幕を開けた。

 




「2000年前の時点で倒せば歴代の九つの巨人とかいうクソ強雑兵もいないしエルディアが禍根残す事も無いしめっちゃ楽じゃん!(簡単では無い)(そもそも巨人倒せる武器も無い)(始祖ユミルがどんな戦いしたかも分からない)(あとユミルに救済が無い)」

……まぁ書けるだけ書いてきます。


:ヴィリオ
…主人公。進撃の巨人を根底からブチ壊すなら闇落ちとは無縁そうな奴がいいよなって思った。戦闘狂になった。『勉強』ができるくらいには良い家の出身だったが投げ捨てるように喧嘩に明け暮れた結果縁を切られてる。「ヴィリオ」という名前も剣闘士としてのニックネームをそのまま使ってる。(ちなみに「ヴィリオ」は北欧神話のユミルを殺したヴィリ・ヴェー・オーディンの合成として考えた。……ヴェーが抜けてしまいましたが)


:地名について
…『パルシア』は「ペルシア」と「パルス」の合成。本編の中東連合と同じあたりの位置を想定。
 『カンブリケ』はマーレのモデルであろうローマ帝国風の名前が出て来なかったので適当に。多分ローマが進出したブリテン島のイメージが絡んでる。
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