両手一杯の花々   作:シゲル団長

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非日常、あるいは団長のいつもの私室

 騎士団の仕事は戦う事だけではない。

いや、ある意味孤独な闘いでもあるか。

我が騎士団の副官は優秀、と言う言葉だけでは全然足りないほど素晴らしい働きをしてくれるのだが、どうしても団長である自分が目をしっかり通さなければいけない書類というのもあるのだ。

何人かの一緒に手伝いましょうか?

と言うありがたい申し出を泣く泣く断り、今に至っている。

疲れた目をこすりながら自室の扉を開け、灯りをつける。

ふらふらとベッドの方に向かうと、なぜかベッドが膨らんでいる。

すぐさま回れ右をしようとすると、掛布団から頭がでてきた。

「だんちょー。どこに行こうとしてるの?」

仕事の手伝いを申し出た花騎士の1人、プルーンだ。

今回は手伝ってもらうことがなく、帰ってもらったはずなのだが…

「だんちょーをいたわろうと思って、ここにもぐっていたんだ~」

と言いながらなかなか布団から出てこようとしないプルーン。

思わず顔をそむける。

「えへへ♪ ん~? だんちょー、どうしてこちらをみないのかな~?」

イタズラが成功したような声を出すプルーン。

「あの時はだんちょーをマッサージしていた時だよね♪」

そう、騎士団長としてあるまじきだが、男としては仕方がないというか…

もちろん、責任は取るつもりだし、実際に指輪も渡している。

だが、さすがに今日は疲れている。

明日の仕事もあるし無理はしたくないというのが本音だ。

彼女の機嫌を損ねずに、どうにかこの場を切り抜けたいが…

トントン。

急に扉が叩かれる。

思わずプルーンの方を見てしまう。

彼女は首を横に振る。

知らないようだ。

口で隠れていて。と彼女に伝えると、うなずいて出していた頭を引っ込めてくれた。

こんな夜分に誰だ?と思いつつも急な用件の可能性もあるため、返事をして扉を開ける。

そこにはレモンが立っていた。

「団長さん、ただいま。」

花騎士は騎士団に所属しながらも何かの仕事を持っているものも多い。

レモンもまた、果実輸送護衛部隊、オレンジ隊にも所属している。

甘い果実は害虫を引き寄せやすいため、専門の輸送部隊として各国に重宝されている部隊だ。

おかえり、お疲れ様と声をかけながら、予定より帰還が早いことに気付く。

と言うより、貞操観念の高い彼女が夜遅くに挨拶に来ること自体、珍しいのでは?と思い至り、思わず彼女の肩を両手で軽くつかみ、何かあったのか?と尋ねたとたん。

「ひゃぁぁぁぁ、触っちゃダメぇー。心配は嬉しいけれど、まだ結婚していないから抱きしめちゃダメなのー」

顔を真っ赤に染めて声を抑えながらも叫ぶレモン。

すまない。と言いながらすぐさま手を放す。

「もうっ、団長さんは本当に破廉恥なんだから…本当に…こんなの…ふしだらだよ…」

うつむきながら小声でつぶやくレモン。

改めて謝罪の言葉を述べ、何かあったのか?と再度問いかける。

「え?あ、うん。いや、その…思ったより早く帰れたから団長さんに挨拶しておこうと思って…」

ならよかったとホッと胸をなでおろしたとき、後ろから

「やほー♪ レモンちゃん♪こんばんは♪」

プルーンが布団から顔だけ出して話しかけてきた。

その途端、空気が凍ったような気がしたのは果たして気のせいだったのだろうか…

ギギギギギとでも聞こえてきそうな、ゆっくりと団長の顔を見るレモン。

「団長さん?寝室に連れ込んでなにを?」

爽やかな笑顔を見せてくるレモン。

そして、少しずつ、本当に少しずつ部屋の奥に、プルーンのいるベッドの方にと詰め寄られる。

「プルーンさんもふしだらだよ!結婚もしていないのに寝所を共にしようとするなんて!」

「ん?だんちょーがすっごく働いていたから、マッサージをして労わろうと思っていたけど?そのあとはだんちょーしだいだけど」

キョトンとした顔で言うプルーン。

レモンに睨まれた…

「団長さん!どういうことなの!?あたしが婚前交渉拒むから!?ねぇ、ねぇ!」

首を絞められながら前後にゆすられる。

「ちょ、ちょっとレモンちゃん落ち着いて落ち着いて」

プルーンがレモンを抑えてくれたようだ。

その間になんとか呼吸を整える。死ぬかと思った…

「もう、だんちょーがそんな人でないのはレモンちゃんがよくわかっているでしょう」

「だってだってだって」

「だいたいレモンちゃんだって、こんぜんこーしょー?したんでしょ?だからだんちょーがレモンちゃんに指輪を送ったんじゃないの?」

プルーンの言葉が心にグサッと刺さる。

いつの間にか腕の中にいたレモンが、顔を真っ赤にしながらこちらを睨みつけながらも話しかけてくる。

「ねぇ、団長さん。あたしたち、結構大声出しちゃったけど、他の娘たちに聞こえてないかな?」

扉をみると、いつの間にか閉まっており、誰も来ないところを見ると、幸いにも他の花騎士たちにこの騒ぎが聞こえていない…と思いたい。

「そうだ♪」

どこから持ってきたのか、自分のシャツを着ていたプルーンがいい事を思いついたように、にっこりと笑う。

「仲良くするためにいっしょに寝よう♪」

「「なんでそうなるの!」」

団長の夜が長くなったのは仕方がない事だった。

 

to be continued...

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