新世紀エヴァンゲリオン for Mothers ~母親達の戦い~   作:朝陽晴空

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第十五話 ミサトの人類最終決戦、実況中継!

 

【挿絵表示】

 

 

<ネルフ本部 作戦会議室>

 

 シンジが初号機からサルベージされた事で、ネルフ本部は落ち着きを取り戻した。

 しかしロシアと言う大国が消えてしまった事は、日本を含む世界の人々に大きな影響を与えた。

 キールの立ち上げた宗教団体、ゼーレに入信して生きようとする事自体を諦めてしまう人々。

 そして自らの保身に走るアメリカでは大事件が起きた。

 

「北アメリカ大陸が消滅!?」

「そう、アメリカのネルフ支部を爆心地としてね」

 

 驚くミサトの言葉にリツコは感情を殺してそう答えた。

 

「アメリカネルフ支部では陸号機の強化実験が行われていたそうよ。捕獲した使徒をエヴァと融合させようとして、大爆発を起こした……」

「良く分からないものを無理して使うからよ」

 

 リツコの言葉に、ミサトは悔しそうな顔でそう呟いた。

 しかし自分達も、シンジがシンクロ率400パーセントを出してシン化していなかったら使徒にやられていたのだ。

 

「もう地球の人口はだいぶ減ったんでしょう! いつまであたし達を苦しめるつもりなの!?」

「人類が滅亡するまで使徒は止まらないよ。そのうちあなたの好きなビールも飲めなくなるね」

 

 机に両手を突いて叫ぶミサトに、カヲルはそんな皮肉を言った。

 カヲルの出自をリョウジに調べさせたが、何も情報は掴めず。

 エヴァのパイロットだから仕方無くネルフに居る事を許可しているだけだった。

 

「作戦会議室に皮肉を言うだけのエヴァのパイロットは不要よ、帰りなさい」

「じゃあそうさせて貰おうかな」

 

 今までミサト達の慌てふためく様子を楽しそうに眺めていた制服姿のカヲルは、手を振って作戦会議室を出て行った。

 

 

 

<第三新東京市 コンフォート17 シンジの家>

 

 日本の人口が減り、ゼーレに入信して労働を放棄する人々が増え出すと、シンジ達の通う第壱中学校も教育機関として機能しなくなった。

 教職員も労働意欲を無くして授業はすべて自習、ホームルームの出欠確認も無くなって、生徒が勝手に学校の施設を使うと言う状況になっていた。

 トウジ達は運動をするために体育館へと行く事はあったが、受験勉強をする生徒など全く居なくなった。

 レイも司書の居ない図書室から勝手に本を持ち出している。

 

「スーパーからも、どんどん物が無くなっているわね」

「ワシの好きやったBリーグチップスも無くなってもうた……」

「予約していた美少女仮面ポワロのフィギュアも販売中止かぁ」

「2人とも、そんな事言っている場合じゃないでしょう!?」

 

 トウジとケンスケが嘆くと、ヒカリは怒鳴った。

 

「クミンやコリアンダーが買えなくなったから、カレーも作れなくなっちゃうよ」

「そんなもん、ルーを買えばええ話やないか! 贅沢言うな!」

 

 シンジにも料理に関する悩みは尽きないようである。

 

「確かに我々は、豊かな生活をしようと努力を重ねて来た……それが悪い事とは言わん。だが地球の環境破壊をしてまでも手に入れるものでは無いのかもしれんな」

 

 ゲンドウは窓から灯りの少なくなった第三新東京市を見て、そう呟いた。

 コンフォート17に面する道路でも、ゼーレの信者がデモ行進をしている。

 トウジとケンスケは不快そうな表情でその行進を見ていた。

 

「私、ゼーレの主張している事が全部悪いとは思えないんだ……」

「何や、働くのがそんなに嫌だなんて思うとるんか」

 

 ヒカリがそう呟くと、トウジは気持ち悪そうな顔でヒカリを見た。

 

「そうじゃなくて……ほら、ずっと黒い煙を上げていたあの工場も、今は働く人が居なくなって綺麗な星空が広がっている……」

 

 ヒカリはそう言って窓の外の工業団地を指差した。

 確かジェット・アローンとか言うロボットを作っていたシロウ博士のスポンサー企業、日本重化学工業共同体の工場だったとゲンドウは記憶していた。

 

「我々人類が協力すれば、地球環境を改善して行く事が出来る、そう信じよう」

 

 ゲンドウはそう言って、シンジの肩に手を乗せた。

 

「まだそんな甘い事を言っているのかい? 葛城博士のお弟子さんである碇ゲンドウ君?」

 

 そう言ってシンジの家のリビングに姿を現したのは、学生服を着たカヲルだった。

 

「せっかくシンジ君達と一緒に学校に通ってみたかったのに、制服だけで残念だよ」

「葛城博士の事を知っているとは、君は何者だ?」

 

 ゲンドウが警戒した様子でカヲルに問い掛けると、危険を察知したシンジはアスカを抱き寄せた。

 

「ちょっとシンジ、いきなり何するのよ!」

 

 いきなりシンジに抱き締められたアスカは顔が真っ赤になる。

 やはりいざという時に真っ先にシンジが守りたい存在はアスカだった。

 

「葛城博士の調査隊は、僕が目覚める前に南極で眠りに就いていた『人間族のシバ』を発見してしまった。キール・ローレンツが先祖代々受け継いでいた『死海文書』の信憑性は疑われていたが、これで真実だと証明された。葛城博士のチームは、今は『人類救済委員会』と呼ばれている組織の力を借りて、古代アトランティス文明の研究を始めた」

 

 ゲンドウはカヲルの言葉を否定したり遮ったりしなかった。

 ヒカリやトウジ、ケンスケは根府川先生の社会の歴史の授業を聞いているような気分になっていた。

 シンジは油断せずにカヲルからアスカを庇うようにしていた。

 自分の魂が告げているような気がした、カヲルは倒すべき敵だと。

 

「葛城博士は目を覚ました僕に頭を下げて頼んで来たよ。人類を滅ぼさないでくれって。でも僕は人類が地球に毒を流し続けたから、生み出されたんだよ。だから僕は博士の頼みを拒否して、争いになった。だって地球の命は残り15年ぐらいしかなかったからね」

「地球の命が残り15年って、アンタバカァ!?」

 

 今まで黙って居たアスカがカヲルに向かって怒鳴った。

 シンジはカヲルを刺激してはいけないと、シンジはアスカを押し留めた。 

 カヲルを怒らせてしまっては危険だと感じていたからだ。

 

「シンジ君は僕が人間族のシバだと気が付いたようだね。アダマイトを持った魂が反応したのかな? 惣流さんはもう少し冷静になった方がいいね。それじゃあ敵が接近しても気付けないよ」

「シンジに抱き締められて冷静で居られる訳が無いじゃない!」

 

 アスカの自爆発言により、場の空気はほんの少しだけ和んだ。

 

「使徒がアダム樹を発生させていなかったら、地球には人類の活動により大規模な災害が引き起こされていたはずなんだ。人間族だけでなく、他の生物も巻き込んでね。その後地球で生き残れる生物はおよそ8パーセント」

 

 カヲルの宣告にシンジ達は言葉を失った。

 

「2千年前のアトランティス人は、『酸素工場』や『バイオ工場』を作り上げて地球環境を救った。だけど君達新人類はどうだい? 南極で倒された僕が、再び力を取り戻すために眠っていた15年間でガイアナイザにはなれずに、エヴァと言う兵器を造るだけで精一杯だった。地球は人類だけのものじゃない。生命みんなが互いに助け合って地球を住みやすくするべきなんだよ」

 

 自信たっぷりの表情でカヲルが言い放つと、圧倒されたシンジ達とは違って、アスカは怒った顔で言い返した。

 

「アンタの言ってる事は矛盾しているわ! 人類だってこの地球で暮らしている命じゃない! それを勝手にアダム樹なんかに変えて良いって言うの?」

 

 図星を突かれたのか、カヲルは少し苛立った表情になって声を震わせた。

 

「もういい、議論は尽きた。全て終わりにしよう」

 

 カヲルがそう言うと、突然テレビの電源が入った。

 テレビ局は世界の街の様子を中継している。

 

『大変です! 大量の使徒が突然上空に出現しました! 我々はどこへ逃げれば良いのでしょうか!』

 

 外で中継をしているレポーターが狂乱して金切り声を上げている。

 悲鳴を上げて逃げ惑う人の中には、ゼーレの教祖となったキールの姿もあった。

 

「全てはゼーレの言う通りになった。慌てる事は無い、これは定められた事なのだ!」

 

 声高らかにそう宣言するキール自身も、使徒の攻撃を受けて周囲の人々と同じくアダム樹となった。

 放送しているテレビ局の建物も、使徒の攻撃を受けたのか、緑色の閃光の後はテレビの画面は白黒の砂嵐となった。

 コンフォート17の外からも緑色の閃光と人々の悲鳴が聞こえて、トウジもヒカリを抱き寄せて身体を震わせた。

 

「君達3人が初号機と弐号機と零号機に乗って戦おうとしても無駄だよ。これだけの数の使徒を倒せるはずがない」

 

 カヲルはシンジとアスカとレイの方を見て、そう言い放った。

 ゲンドウは表面上は落ち着いた表情を崩さなかった。

 アスカはシンジの腕の中で、カヲルを睨みつける。

 

「くっ、それならさっさとアタシ達も樹にしてしまいなさいよ!」

 

 カヲルも少し苛立った感情をもう隠さずにアスカに答えた。

 

「そうしたいところだけど、母さんから言われているからね。どうしてシンジ君と惣流さんにアダマイトが宿るなんてバグが生じたのか。……僕はネルフ支部の訓練場で伍号機に乗って待っている。遠回りになるけど、そこで決着を付けよう」

 

 カヲルはそう言うとシンジの部屋を出て行った。

 使徒も攻撃を止めたようだった。

 しかし窓から外を覗くと、街の様子は一変していた。

 街を歩いていた人々はほとんどがアダム樹に変えられ、都市はジャングルと化していた。

 もう地球上には人類の8パーセントしか生き残っていないように思えた。

 

「ネルフのみんなは無事なのかな……」

「彼の言葉が真実ならば、お前たちがエヴァに乗る事を望んでいる。ネルフの主要スタッフには手を出していないだろう」

 

 シンジの言葉にゲンドウはそう答え、トウジ達もネルフ本部に来るように言った。

 使徒の攻撃を意図的に反らされたコンフォート17の中でも混乱が起き、自棄になって暴れている関取もいるようだった。

 

 

 

<ネルフ本部 実験場>

 

 ネルフ本部のスタッフ達は、カヲルに脅される形で伍号機の出撃準備を整えた。

 逆らおうとした人間は、目の前でアダム樹に変えられた。

 樹になった人にすがり付いて泣く女性職員の姿もあった。

 

「早く来ないかな、シンジ君達」

 

 伍号機のエントリープラグの中で呟くカヲルの姿を、リツコやミサト、リョウジやコウゾウ、オペレータ達は苦い顔で見つめていた。

 やがてゲンドウの運転する車でシンジ達がネルフに到着すると、初号機、弐号機、零号機の出撃準備が開始された。

 

「レイ君に残された時間も少ない。下手な時間稼ぎは止した方が身のためだよ。それだけ戦力が減るからね」

 

 皮肉めいたカヲルの言葉が伍号機の通信から発せられると、ネルフのスタッフ達は顔をしかめた。

 伍号機の通信など切断したい気分だったが、カヲルにシステムを掌握されていて、それは出来なかった。

 

「綾波……」

「もっとたくさんみんなと一緒に話したりしたかった」

 

 シンジに声を掛けられたレイは涙を流してそう答えた。

 

「レイ、アンタはどんな姿になっても、ずっと友達よ!」

 

 アスカはそう言ってレイを抱き締めた。

 ヒカリやトウジやケンスケ達もレイに言葉を掛ける。

 その間も、ネルフのスタッフ達によりエヴァの起動準備は進められていた。

 

「悔しいわ、作戦部長として何かできる事は無いのかしら」

 

 今回行われる戦いは、閉鎖空間の中で行われるエヴァ同士の接近戦だ。

 戦略が活かされる場面は少ない。

 腕組みをしたミサトは苦い顔で呟いた。

 

「葛城、俺にお前にしか出来ない作戦があるんだが」

 

 リョウジはそんなミサトに声を掛けた。

 耳打ちでリョウジの作戦を聞いたミサトはカヲルに気付かれないようにエヴァの出撃とは別の準備を進めた。

 

「私はお母さんのお腹の中で最期を迎えられそうで、嬉しい……」

 

 零号機に乗り込んだレイのその呟きは、赤木ナオコだけではなく、ネルフの皆の心を打った事だろう。

 

「これより、初号機・弐号機・零号機と、伍号機の決闘を開始する」

 

 ゲンドウが厳かにユイ達とカヲルの乗るエヴァとの戦いの始まりを告げた。

 これは人間族の破壊者シバであるカヲルの茶番であり、どんな結果になっても人類の滅亡は避けられない。

 しかし一矢でもシバに報いて欲しいと、見守るネルフのスタッフ達は願った。

 

「さあ皆さんご覧ください! 今、人類の存亡をかけた戦いが始まります!」

 

 重たい雰囲気をぶち壊すかのような声で、ネルフ広報部長としてマイクを握ってリョウジの撮影するビデオカメラの前に立ったのはミサトだった。

 

「ここでネルフのエバーが使徒の親玉である破壊者シバを倒せば、使徒は消え去り、人類は生き残れるのです! だから皆さん、希望を捨てずにエバーを応援しましょう!」

 

 カヲルを倒せば使徒は消えるなんて根拠の無いミサトのハッタリである。

 ゲンドウやコウゾウ、リツコも驚いてミサトの演説を聞いていた。

 

「良くもそんな事を思い付くね。今すぐ人類を絶望の淵に落としても良いけど、希望を持たせてあげてから落とすのも悪くないね」

 

 カヲルはシンジ達にだけ聞こえるようにそう呟いた。

 

「カヲル君、どうして君はそこまで人間を憎むの?」

「勘違いしないで欲しいな。僕は地球に毒を流し続けた人類は嫌いだけど、互いに愛し合うシンジ君と惣流さんの姿には好意を持っているよ」

 

 シンジの質問に、カヲルはそう答えた。

 カヲルの乗る伍号機からは触手のようなものが伸び始め、怪物のような姿へと変化した。

 

「破壊者シバがその正体を現しました! まるで悪魔のような姿です! 『デビルエバンゲリオン』とでも言えるのではないでしょうか!」

 

 ミサトはそう言って視聴者を煽った。

 生き残った僅かな人類は携帯テレビなどを通してこの放送を観ていた。

 

「人類の存在が、地球破壊の最大の原因なんだよ!」

 

 デビルエバンゲリオンは両目の部分から細かいエネルギー弾を出して初号機に向かって攻撃する。

 初号機はA.T.フィールドでその攻撃を防いだ。

 直撃を受けた部分に痛みを感じるが、使徒ゼルエルほどの威力は無い。

 初号機、弐号機、零号機はそれぞれ『トライデント』を装備していた。

 3機で息を合わせて攻撃する、トライアングル・アタックが一番威力があると考えたからだ。

 そのためにはデビルエバンゲリオンを3機で3方向から取り囲まなければ行けない。

 初号機はデビルエバンゲリオンを挑発するように正面に立った。

 

「さあ来い、カヲル君!」

 

 エントリープラグの中のシンジも、カヲルを挑発するように声を掛けた。

 デビルエバンゲリオンは不敵にもエネルギー弾攻撃を止め、初号機へと近づいた。

 そして首を触手の様に伸ばして、初号機に向かって頭突き攻撃をして来た!

 間一髪でデビルエバンゲリオン・ヘッドの攻撃を交わした初号機。

 その間に弐号機と零号機はデビルエバンゲリオンの後ろへと回り込む。

 

「今度はアタシ達の番よ!」

「碇君、私達に合わせて!」

「「「トライアングル・アタッーーーク!!!」」」

 

 ヒトデ型の巨大使徒を倒した必殺技、トライアングル・アタックが見事に決まった。

 デビルエバンゲリオンは肉片レベルよりもさらに細かい、細胞片レベルまで粉砕され、実験場の地面へと水たまりの様に融解した。

 

「おーーっと、初号機、弐号機、零号機の必殺技が見事にデビルエバンゲリオンに決まりました! しかし、こんなに簡単に決着が着くはずもありません。それでは三文小説以下です! さて、どうなるか観てみましょう!」

 

 ミサトの実況中継の声が大きく響き渡る。

 ゲンドウ達も息を飲んで、何が起こるか静かに見守っていた。

 すると水たまりの様に溶けていたデビルエバンゲリオンの残滓は、実験場の地面を取り込んで、岩石と特殊装甲板の混じったゴーレムのような姿になった。

 デビルエバンゲリオンが居た場所には大きな窪みが出来た。

 

「驚いたかな? 細胞レベルに粉砕されても、回復・吸収・発展能力を持っているんだよ」

 

 カヲルがそう言うと、メタルゴーレムエバンゲリオンは身体を爆発させて、石つぶてを四散させた。

 

「なんと! メタルゴーレムエバンゲリオンは自爆しました! ネルフのエバーとの相討ちを狙ったのでしょうか!」

 

 エヴァ3機はA.T.フィールドを張って、石つぶての雨を耐え抜いた。

 

「ヤツは決闘を望んでいたのに、自爆するとはおかしいと思わないか?」

 

 見守っていたコウゾウの言葉に、ゲンドウも頷いた。

 

「痛っ! 何で後ろから攻撃が来るのよ!」

「アスカ、地面に落ちた石が動いているよ!」

「そう、この無数に散らばった石全部が、僕自身なんだよ」

 

 カヲルの勝ち誇ったような言葉が、実験場に響き渡った。

 3機のエヴァは石つぶての雨から身を守る事しか出来ない。

 

「こうなったら、僕を倒す事なんて無理だろうね。無数の石を同時に消滅させるなんて、不可能だろう?」

 

 もはや打つ手なしか、と思われた時、零号機が実験場の中心に立った。

 

「綾波、何をする気なの!?」

「碇君、これから『集気法』を使って、シバの身体を零号機に吸着させるわ。そうしたら、零号機ごと初号機と弐号機の最大の必殺技を使ってシバを倒して」

「そんな、零号機を犠牲にするなんて出来ないよ!」

 

 レイの言葉を聞いたシンジはそう叫んだ。

 

「お母さんもこの方法に賛成してくれた。リツコお姉さん、ごめんなさい。あなたのお母さんを犠牲にする事になって」

「あなたが謝る必要なんて無いのよ、レイ」

 

 リツコは涙を流してレイにそう答えた。

 零号機の身体にシバの身体である岩石が吸着し始めた。

 攻撃を仕掛けるタイミングが早くても遅くても、シバを倒すことは出来ない。

 シバの石が空気中に浮遊して残っていてはいけないし、零号機がシバに吸収されてからでは遅いのだ。

 

「アスカ、どうしよう? 僕達2人の必殺技をぶつけろって言われても」

「アタシに聞かれたって困るわよ!」

 

 エントリープラグの中で困惑するシンジとアスカに、とんでもない事が起こった。

 初号機と弐号機が正面から身体を寄せて抱き合い、初号機と弐号機のエントリープラグが衝突した後、合体して一つのエントリープラグとなったのだ。

 突然エントリープラグの中で抱き合う形になったシンジとアスカは驚いた。

 

「母さん、これってどういう事?」

「ママっ!?」

 

 シンジとアスカは初号機と弐号機である母親のユイとキョウコと話すことは出来ない。

 初号機と弐号機は身体をピッタリと合わせたまま、顔を標的であるメタルゴーレムデビルエバンゲリオンへと向け、肩を抱きながら互いの指を合わせてハートの形を作った。

 シンジはユイの言葉は聞こえなかったが、何をするべきか分かった。

 エントリープラグの中で、シンジはアスカの顔を持ち上げると、唇を重ねた。

 その様子はモニター越しにネルフの発令所の大型ディスプレイに、そしてリョウジの持っているカメラから全世界に放送された。

 そして初号機と弐号機の指が作ったハートから、ピンク色のハート形の光線が発射され、メタルゴーレムデビルエバンゲリオンを包み込み、炎が燃え上がった!

 

「初号機パイロットのシンジ君と、弐号機パイロットのアスカに情熱的なキスによる必殺技、『結婚前提ラブラブファイアー』が炸裂しました! 愛の炎によって燃え上がったメタルゴーレムデビルエバンゲリオンはひとたまりもないでしょう!」

 

 必殺技の名前はミサトが即興で考えた。

 放送を観ているほとんどの人間は、パイロットがエヴァを動かしていると思い込んでいるため、大歓声を上げた。

 

「君達の愛の力に完敗だよ、シンジ君。愛は良いねえ」

 

 カヲルの声が響くと、デビルエバンゲリオンは使徒と共に消滅した。

 

「破壊者シバは倒されました! 人類の勝利です! 我々は生き残ることが出来たのです! 以上、現場から葛城ミサトがお送りいたしました!」

 

 ミサトの実況中継が終わり、ネルフ本部は静けさに包まれた。

 

「シンジ君、もう終わったんだから、アスカから口を離して良いのよ」

 

 ミサトがそう言うと、シンジとアスカは顔を真っ赤にして身体を離した。

 ネルフの発令所に笑い声が響いた。

 しかし、直後にネルフ本部全体を大きな揺れが襲った。

 

「パターン緑、使徒です!」

「場所は、セントラルドグマです!」

 

 マコトとシゲルの報告に再びネルフ本部に緊張が走る。

 第二使徒リリスが完全体になったのだ。

 実験場の地面が割れ、そこから浮かびあげるように現れたのは綾波レイの顔をした白い大きな巨人だった。

 

「マリア母さんがあなた達を呼んでいるわ、行きましょう」

 

 レイの声が響くと、初号機と弐号機は白い眩い光に包まれた。

 そして光が治まった時、初号機と弐号機の姿は消えていた。

 

「ジェットアローン改、使徒を倒すためにネルフ本部に推参!」

 

 場違いな時田シロウ博士の声が、全てが終わった実験場に響き渡るのだった。




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