新世紀エヴァンゲリオン for Mothers ~母親達の戦い~ 作:朝陽晴空
<真希波・マリ・イラストリアスの研究室>
白い光に包まれた後、シンジ、アスカ、ユイ、キョウコの4人は、機械がたくさんある部屋の中へと立っていた。
呆然と立っているシンジ達の前には、白衣を着た赤いフレームの眼鏡を掛けた、ユイやキョウコと同じ年頃の女性と、消えたはずのレイが立っていた。
「綾波!?」
「彼女は使徒リリス。でも、ユイさんの顔が気に入ったから設定を変更させてもらったよ」
シンジの驚きの声に、白衣を着た女性は笑顔でそう答えた。
「自己紹介をしなくちゃね。あたしは真希波・マリ・イラストリアス。長いからマリと呼んでくれていいよ、ユイさん?」
馴れ馴れしく近づいて来たマリに、ユイは少し体を引いた。
「ちょっとユイさんに近づき過ぎでは無いですか?」
「ヤキモチ焼かせちゃったかな。ゴメンゴメン」
キョウコに咎められて、マリは身体をユイから距離を置いた。
「ここは私の研究室。そして私は『惑星移住計画プロジェクトチーム』のリーダーさ。メンバーは私とノア君しか居ないけどね」
マリはそう言って、部屋に鎮座している大型のコンピュータを指差した。
ディスプレイには『私はノア、宜しくお願い致します。』と表示されている。
「立たせっぱなしでゴメンゴメン。そこの段ボール箱にでも座ってよ。この部屋、私以外に人がほとんど来ないからさ」
シンジ達は『みかん』『りんご』『ぶどう』『スイカ』と書かれた段ボール箱を取り出して座った。
アスカは「何でママがスイカで、アタシがりんごなのよ……」とぼやいていた。
このようなシチュエーションは、使徒レリエルの時に体験済みである。
「また長ったらしい授業を始めるの? ウンザリよ」
「まあまあ、これで最後だから我慢して聞いてよ」
マリはそう言って、アスカをなだめた。
「このスーパーコンピュータのノア君の中にあるのが、ユイさん達が住んでいる『地球』だよ」
マリがサラリとそう言うと、ユイ達は驚いて言葉を失った。
「だからユイさん達にとって私は母親、創造主兼管理人みたいになるのかな? 私が『地球』を作った目的はね、『惑星』に人間が住むとどうなるのか、実験をしてみたかったんだよ」
「ふざけんじゃないわよ! アタシ達はアンタのモルモットだったわけ!?」
マリの言葉に怒ったアスカは、今にも殴りかかりそうな勢いで席を立ちあがった。
「ここは堪えてよ、アスカ!」
シンジはアスカを身体を張って押えた。
愛するアスカが創造主の逆鱗に触れて消去されるわけにはいかない。
「君達を実験データに使ったのは悪いと思っているよ。でも、あたしには叶えたい夢があるから。それは、人が再び惑星に移り住む事」
マリはそう言って、研究室の壁を透明化させた。
外には宇宙空間が広がり、月と地球のような星がある。
しかしその地球はシンジ達が知るような青い星ではなく、真っ赤に荒れ果てた星だった。
「あたし達人類のほとんどは今、地球と月の重力点、ラグランジュ・ポイントに建造されたコロニーに住んでいるの。地球を汚染し尽くした人類はエクソダス計画で地球を脱出したんだ」
「これが私達地球の未来の姿なのね?」
ユイの質問に、マリは困った顔で頷いた。
「ノア君に何度も人類と地球が生き残る方法を計算させたんだけどね。『全滅』って計算結果が出るばかりで、みんな愛想を尽かして『惑星移住計画プロジェクトチーム』はあたし1人だけになっちゃった」
マリはそう言ってため息を吐き出した。
表情は明るいままだったが、疲れた様子のため息だった。
「だからね、あたしはノア君に計算じゃなくて『本物の地球』を創るように頼んだんだ」
『マリさんのお願いには私も骨が折れました』
コンピュータに骨があるの? とアスカは心の中でツッコミを入れた。
「ノア君は、あたしに馴染みがあるゲームのような形で地球の世界を再現した。あたしは最初は深く考えないで、1万倍速モードで進行したり、モノリスで火の使えない水棲族に文明を持たせたりしたんだけど……」
「それじゃあ、破壊者シバや使徒って、アンタの仕業なの!?」
アスカはシンジが止める間もなく近くにあったメモ帳をマリに向かって投げ付けた。
「危ないなぁ、マグカップだったらあたしが怪我をしていたよ」
マリはアスカの蛮行にも怒ってはいないようだった。
そうされても当然だと、マリはそう覚悟してユイ達をこの部屋へと召喚したのだ。
「ユイさん達が冬月先生のゼミに入った頃には、あたしも再生速度を1倍速にして真剣に見守っていたよ。『イスカリオテのマリア』と言うアカウントを使って生のユイさんを見たいってログインした事もあるよ」
ちょっとマリは偏愛的な所があるとシンジまでも感づいた。
「ユイさん達は、あたしが産み出した『人間族のシバ』も愛の力で倒しちゃうし、感動しちゃったよ。ノア君の計算結果と違う奇跡が出たんだもん。ノア君ってば、殺人ロボット軍団を作って人類を根絶やしにしようとか提案して来たんだよ。それじゃあ実験の意味が無くなるでしょうって」
『私はマスターの意見しただけで、マスターの意向には従います』
マリの言葉に、ノアはディスプレイに文字を表示させてそう答えた。
「ネルフのみんなも、使徒と戦いながらも地球環境の事を考えてくれていた。きっと一部の悪い人間が、戦争とか引き起こして地球を追い詰めたんだよ。だから、あたしとノアは君達に地球を任せてみる事にしたんだ」
「アダム樹にされてしまった人々や、使徒との戦いに巻き込まれて死んでしまった人はどうなるの?」
ユイに尋ねられたマリは困ったなぁとおどけた表情をしながらも笑顔で答える。
「デバック作業が大変な事になるけど、あたしとノア君で復旧させると約束するよ」
『やれやれ、また骨が折れる作業になりそうですね』
マリが笑顔でユイに答えると、ノアはそう文字を表示させた。
「これもユイさんとキョウコさんの子供のシンジ君とアスカちゃんが愛の形を見せてくれたお礼だよ。使徒もエヴァも存在しない世界にするから安心して」
「ど、どうもありがとう……」
顔を近づけて話すマリに、ユイは少し引いた感じでお礼を言った。
「この地球はあたしがお腹を痛めて産んだものではないけど、あたしにとっては子供同然なんだ。大切にしてね」
マリのその言葉を最後に、シンジ達の視界は白くぼやけて来た。
帰されるのだろう、マリの創った『地球』へと。
そして全てのエヴァンゲリオンと別れを告げる時が訪れた。
「今までありがとう母さん」
「ママがアタシ達を守ってくれるために頑張った事、感謝してる」
「私達はこれからも、あなた達を守ってあげるからね……」
真っ白な光の中で、ユイはシンジを、キョウコはアスカを抱き締めた。
<京都市 国立地球環境研究所>
西暦2015年、地球も人類も存在を続けていた……。
国連は『宇宙船地球号』と言う考えが、エコファシズムに繋がらないように注意しながら、人類の繁栄への道を模索していた。
「今日は畑で育てたナスが食べ頃ね」
「京野菜でまた何か料理を作りたいな」
アスカとシンジは研究所が管理するナス畑の様子を見に行くように副所長のユイに言われて、やって来た。
するとカラスがナスを食い荒らしている場面に遭遇した。
「こらーっ! あっちへ行きなさい!」
アスカは石を拾ってカラスに向かって投げ付けた。
「姫、農産物は地球が産んでくれたものなんだから、他の生物にも分けてあげないとダメだよ」
背後から忍び寄ったマリがアスカの腕をつかんで止めた。
マリはユイのストーカーの様にこの地球へとやって来てしまったのだ。
「このナスはアタシ達が育てたのよ! カラスに食べられるなんて悔しいじゃない!」
怒ったアスカがナス畑を走り去って研究所の建物の中に入ると、シンジも慌ててアスカを追いかけた。
「やっぱり人類は、そう簡単に考えを変えられないね……でも、地球号の循環サイクルは、あたし達が保って行かなければならないんだよね、『ノア』……」
マリはそう言って青空を見上げた。
その視線の先にはノアが作り出した宇宙があり、火星があった。
国連は人類繁栄のため、200年以内に火星に移住できるようにするプロジェクトも立ち上げた。
国立地球環境研究所には宇宙開発支部もある。
シンジとアスカとレイは先駆けとして、宇宙飛行士になる訓練を始めた。
所長として職務に励むゲンドウ。
そしてシンジ達と同じ学校に通うトウジやケンスケ、カヲルも宇宙飛行士になる事を志願している。
幻となった恐ろしい『使徒戦役』は人々の心に教訓として刻まれ、人類と地球の共生は以前よりも改善されていた。
しばらくした後行われた宇宙初の結婚式は、碇シンジと碇アスカの2人によって行われた。
胎児に悪影響を及ぼさないように一度地球へと降りたアスカは、母親になっても宇宙飛行士に復帰すると意気込んでいた。
「ミライ、マサキ……あなた達は、母さんが守るから」
アスカは大きくなったお腹に向かって、そう語りかけた。
短い本文ですが、これで最終話です。
設定の解説が長すぎたのか、物語を読むのを止めた方もいらっしゃったようです。
LAS要素を増量してみたのですが、それでも再興には至らないようです。
去って行った人の心を戻すのは難しいですが、改善点をアンケートしてみます。
とりあえずの完結ですが、悪かった部分は直して行こうと思います。
『新世紀エヴァンゲリオン for Children』
https://syosetu.org/novel/260681/
と双璧を成す作品にしたかったのですが、気力が尽きてしまいました。
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LASがまだ足りない
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