暗部落ち
――暗い。
暗いまどろみの中、頭の中で言葉だけ反芻していた。
その言葉は私の楔として今でも残っている。
「――実験動物ですから」「――ミサカは殺されるために作られたのですから」
それを戒めとした楔だ。
酷い、今でも酷く思う。
私が未熟だったから。
私が愚者だったから。
私が原因だったから。
あんなことが起きてしまった。
事は簡単。
「君のDNAマップを提供してもらえないだろうか?」
私が簡単に信じちゃったから。
大人の言葉を簡単に信じたのが悪かったのだ。
DNAマップはマップ筋ジストロフィーの治療に使われるとある医者が言っていた。
しかし現実はそれを元に私のクローンが作られただけだった。
もちろんあの医者がそもそも悪者ではなかったという可能性がないわけではない。
でも、それが原因で学園都市の上層部に目をつけられクローンを作られたのは間違いない。
そう私が原因だ。
私がきっかけ。
何もか、全て。
「――私が悪い」
「嫌なもんを思い出してしまったわ……」
過去はもう戻らない。
そんなことはわかりきっているのに、未だに未練があるのかそんなことを思い出してしまう。
嫌だったことの過去を切り離すことができない。
「あ? どうかしたのか?」
「なんでもないわよ。あんたは次の
「けっ、今さら考えることなんかねぇよ」
自分の呟きが仕事仲間に聞こえたみたいだ。
心配というより暇で話しかけてきただけだろう。
というよりこの仕事仲間が心配するようなタマじゃない。
いやこの世界ではそんなやつの方が断然少ない。
「スキルアウトの
「……じゃあ、ちゃっちゃと済ませるしかないわね」
――そして今こんな結末を進んでいる私も嫌いだ。
御坂美琴――
中学二年生にして常盤台中学のエース。
七人しかいない超能力者(レベル5)の第三位。
発電系能力者の頂点に立つ最強の
勝気に活発で可愛いものが好きな女の子だ。
彼女はある失敗をした。
失敗。
そうただ一つの失敗だった。
実験を中止させるために研究所に潜り込んだところまではよかった。
しかし御坂美琴は研究所の地下で自分と同じレベル5である麦野沈利と対決して敗北してしまう。
何も抵抗しなかったわけではない。
それまでに能力を使いすぎたのだ。
麦野と同じ『アイテム]のメンバーであるフレンダ=セイヴェルンとそれまでに戦っていた美琴はすでに限界を感じていた。
いやそれだけではない。
深夜通しで寝る間も惜しんでひたすら研究所を壊し続けていたのも無理がたたった。
いかにレベル5の美琴でもあれだけ長い間休憩も少ないままで能力を連発すれば枯渇していまうのも無理はないだろう。
さらにそこに追い討ちの原子崩しとの対決である。
負けてしまうのも無理はなかった。
意識はその研究所で途絶えてしまう。
そしてようやく美琴は目を覚ました。
目を覚ました先には――
『おはようございます。早速ですが少――』
バチッっという音がしてすぐに破壊音が聞こえてきる。
美琴が能力を使って、壁からなっていたスピーカーを破壊した音だ。
先ほどのはなかったかのようにベットで寝かされていた美琴は無言で立ち上がり、そこで初めてここが『どこだ?』という疑問がわいた。
部屋一体を見渡すとそこは白一色の小さな部屋だった。
どこかの研究室みたいなところにベットを置いただけのようなところだ。
それに置いていたのは美琴が寝かされていたベットに先ほど破壊した残骸のスピーカーだけ。
美琴は自分の服装を見て少し驚いた。
コインロッカー代わりにしていたホテルに置いてきていたのだが、 いつの間にか常盤台の制服を着ていた。
ともあれそんなことを気にしている場合ではないと、扉があるので近づく。
再び能力を行使してみたが開かない。
レベル5の能力で開かないということは何か細工しているのだろう。
『状況整理できましたか? おっと、今度は壊さないでくださいね』
再び聞こえた透き通る耳障りな声に美琴は構えていたが、先に注意され構えを解く。
「早く、外に出してもらえない?」
『その前にこっちの話を聞いてもらえないでしょうか』
「そんなこと言って聞かされるのは強制なんでしょ」
美琴からすれば一分一秒と時間がおしいが、向こうの話が終わるまでここから出られないのだろう。
丁寧ながらゆっくりと話す声の主に苛立ちながらも一応耳を傾ける。
『ありがとうございます。電撃使いの最高峰であるあなたに
「お礼なんかいいから。こっちは急いでいるのよ。早くして」
レベル5である電撃使いに精神操作が効かないのは
そんな建前に時間を使われたくないと美琴は相手を急かす。
『何をそんな急ぐことあるんですか。
息が詰まるかと思った。
美琴はそのとき動き、思考とともに一瞬止まるほどその言葉を理解するのに時間がかかった。
「ハア!? 終わったってどういうこと!?」
何が、どうして、どうやって。
何もかもが美琴からしたら意味不明だった。
私が寝ていた間に何があったというのだろうか。
「まさか全員をっ!」
『いえ終わったのは完遂したというわけではなく、プランは見直しのため事実上実験中止になったということですよ』
終わったというのは中止という意味だった。
それを聞いただけで美琴は少しほっとしてしまった。
まだ油断ならない状況だというのに、その言葉を今まで聞きたかったのだ。
――妹達を救う。
美琴はそれのためだけを目標に体を酷使していたのだ。
しかし急ぐ必要がなくなったというわけではない。
帰るのもそうだが、声の主が言っていたことが本当かどうかもわからない。
自分の目を使って実験が終わったことを確認しないと気がすまない。
美琴からしたら信用たる人物ではない声の主は姿すら見せてないのだ。
『さて本題といきたいのですがよろしいでしょうか』
かといって事態は好転などしない。
とりあえずは声の主のことを聞かないことには前に進まないのだ。
ようやくとばかりに少しため息を吐きつつ、本題を切り出した。
『今回の事件の顛末をどうお考えでしょうか』
「素直に終わってよかったと思うわよ。あなた達みたいに糞上層部にいいようにされなくてね」
皮肉ではなく素直に悪口を声の主にかける。
そもそも原因はそちら側だ。
勝手に美琴のDNAマップを使い、実験をしたのだ。
『手厳しいですね。まあそれはともかくそれはあなたの感想ですね。ですが私たちは違います。研究のための機材、研究費の損害費及び中止のための費用。その他情報操作のための費用、その他もろもろ』
「……何が言いたいの?」
『つまりあなたには仕事を請け負ってもらいたいんですよ』
「あんたっ! 私に暗部の仕事をしろっていうの!?」
『その通りです』
「ふざけないでっっ!!」
美琴は激昂した。
当たり前だ。
今回の事件の原因はなんだ、暗部だ。
その暗部がおこがましく美琴に仕事を手伝えといってきたのだ。
怒らない方がおかしい。
他にも美琴は正義感の強い女の子だ。
対立したり抵抗したりすることはあっても、協力することがない。
これまでそう思って行動してきていた。
正義感からよく手伝っているのもあるのだ。
その御坂美琴がどうして暗部を手伝うというのだ。
普通に考えてあるわけないだろう。
『まあまあそこまでご立腹にならずとも。悪い話ではないと思いますよ。あなたはレベル5ですから
美琴は苦虫をつぶすように顔をゆがめているが、スピーカーから流れる声をゆっくりと聞いている。
『それに――あなたが守りたかったものを再び壊したくはないでしょう?』
「最終的には脅しね……こんな子供によくそこまで大人の本性を出せるわね」
『大人ですからね。でどうしますか? 仮に私たち学園都市に頼らないで生きていける自信があるのならかまいませんよ』
暗部が指しているのは間違いなく
日本、世界中、さらにいうと学園都市でも許されていない国際法で禁止されている人間のクローンである彼女たち。
彼女たちは『外』には居場所がないのだ。
そんな彼女たちを全て自身の力だけで守ることができるのか、と囁いている。
御坂美琴が守ろうとし、他の誰かが守ってくれた妹達をこのまま壊してしまう訳にはいかないのだ。
必要悪というべき学園都市。
もうこうなっては答えは決まっていた。
「――わかったわ」
『ようこそ、暗部へ』
美琴は落ちた。
どうも初めましての方、初めましてルシフェルと申します
今回久しぶりの作品、とある御坂の暗部加入(ダークストーリー)を投稿しました
ちょっとずつ書いてた作品なんですが、なんか府に落ちない部分あるんだよなぁ
なんか設定が甘い気がするけど、久しぶりの投稿ということで投稿しちゃった
投稿してないとサボり癖ついちゃいそうでしたし
時間がないんで完全に不定期投稿(しかも一話が短い)ですが、最低一ヶ月以内には投稿したいなぁ
次回はちょっと書いてるんでまだ早いと思いますが…
まあそれはともかくこれからもよろしくお願いします
では感想・評価・誤字・疑問等お願いします