前哨戦とも言える結標の部下との対決から一転した
周りには人どころか生き物の気配もすっかりなくなった静の空間。
その空間での対決で学園都市ならではの動の対決が行われていた。
その戦いは驚くことに空間移動、つまり白井黒子が優位に勝負を進めていた。
「くっ」
御坂美琴は飛ばしてくる瓦礫を持ち前の反射神経で避けている。
その瓦礫はズドンッ、と夜には似つかわしくない音が辺りに時折響かせる。
もちろん黒子の攻撃はそれだけではなく、背後からいつも携帯している金属製の矢を放ち美琴の動きをとめさせないように攻撃していた。
美琴もそれを読んで消えた瞬間に背後を警戒して電撃を放つ。
電撃によって空気が急速に膨張し、雷鳴に似た大きな音が鳴る。
音とともに迫る雷撃。
だがそれすらも黒子はさらに読んでは避けていた。
フッと消えた黒子は距離を取る。
避けた電撃はあらぬ方向にて道路などに当たり電気を散らした。
「ハァハァ」
息が上がってきた。
結標と戦っていた場所からすでに1km以上は離れていると感覚ではある。
それだけ移動しながら戦っていたのだ。
さらに言うとすでに美琴は2戦連続、今日で3戦目だ。
さらに決して深くない怪我を応急処置でのみ戦闘を続行している。
体力消費も激しいであろう。
いくら
あくまで普通の人らよりは多いというだけである。
黒子も緊迫した状態の中息をあげており、一見拮抗しているように見えるが現状黒子が押している。
近・中・遠オールマイティに富んだ美琴に対し、黒子が取った行動は遠距離からの攻撃を徹底していた。
美琴の身体能力はとても高い。
そのための黒子は近距離戦にはこの戦いになってから一度もしていない。
美琴もすぐにわかるぐらい徹底していた。
美琴も度々攻撃しているのだが如何せん黒子は空間移動者だ。
ヒュンとした音とともに避けられる。
「ンッ!!」
今度はそのお返しとばかりに大きな鉄骨を落としてきた。
位置を特定されにくいようにできるだけ声には出さないように黒子は気をつけているがどうしても力んだ瞬間だけは少しもらしていた。
当たらない。
この轟音の戦闘の最中声が聞こえたというわけではない。
美琴の予測が次第に上手になってきているのだ。
遠距離からの攻撃からのため避けるのも楽になっているのだろう。
「タァァァ!!」
美琴自身は空間移動で直接攻撃食らわないように動き続けて反撃しているのに対し、黒子は能力を発動させて攻撃と防御を行っている。
お互いまだ決定打をもらってはいない。
がそれでも美琴には細かな傷が目立ってきた。
出血による疲労は体力も気力も落す原因になる。
前回の戦闘による怪我もまだ治っていないのだ。
無理はできない。
もちろんそれは黒子にも言えることであるがなぜ黒子が有利に進められているのか。
能力差もあるというのに。
それは簡単なことだ。
お互い見据えている方向が違うからだ。
美琴は黒子を見ずにその先のこと、結標のことを考えて行動している。
対して黒子は美琴だけを見ている。
今は
そのため黒子は美琴に対して全力で、ある意味後先考えずに全力で攻撃することができるのだ。
覚悟の差でなければここが決定的な違いであろう。
黒子は能力の力と自分との差を理解し、その対策としての攻撃を全力で行動に移している。
総評として美琴にとっては黒子は敵としかなり苦手な部類に入るだろう。
慢心や油断なども対美琴ならばありえないだろう。
「ッ!!」
結標を追わなければならないためはやりたい気持ちはあるが、反撃のチャンスは訪れるはずだと攻撃しながら避け続ける。
しかし避けるだけでは幾分たってもその時は訪れはしない。
所詮千日手とばかりに行動は同じことを繰り返すだけである。
だから、美琴は動いた。
「!!」
黒子は驚く。
走っている途中に電撃を使い急激な反転、黒子に無理やり接近しようと迫る。
特攻というには稚拙な行動。
黒子に無理やり近づいたところで能力で移動させられるだけだ。
後ろを取られてそのまま攻撃されるだけ。
と黒子は一瞬そう考えるがそんな単純なことをお姉様がするだろうか、と再考する。
そんな一時の中でも美琴は勢いよく近づいてくる。
少し慌てて、後ではなく右斜め後ろ辺りに転移する。
ゴンッ、と甲高い金属がぶつかる音が聞こえた。
鉄骨。
美琴は磁力を使い鉄骨を後ろからひっぱりながら移動していたのだ。
そのまま後に転移すれば鉄骨にぶつかり攻撃をくらいそのままダウンしていただろう。
「甘かったですわね」
だが黒子は避けた。
そのまま攻撃に転ずる。
美琴の移動先に障害物として瓦礫や鉄骨を飛ばす。
もちろんそれを美琴は読んでいて横に飛び避けた。
あくまでもこれは隙を作るため攻撃を誘ったのだ。
相手の行動は逆算すればある程度予測できる。
後方に電撃を放ち牽制する。
だが美琴にとってまた膠着するわけにはいかない。
急いで決着つけなければならないのだ。
だから追撃する。
黒子が移動した先。
「これでどうだッ!」
美琴が黒子に向かって叫ぶ。
砂鉄の波。
路面に薄く広く砂鉄をこびつかせていたものを怒涛の如く押し寄せる。
その波はただの波ではない。
高速で振動させた殺人ブレードである。
全方位から襲う黒色の波は黒子を的確に覆い、一気に飲み込もうと迫っていた。
美琴は移動した先に罠を張っていたのだ。
どこに飛ぶのかという予想を最初から立てていて、それを読んでいた。
「先ほどの一連の攻撃もブラフというわけでしたのね!……けれども」
しかしそこで終わる黒子ではない。
ピンチなど今までも多々あった。
色々と真っ先に動くタイプの風紀委員なので危険な仕事を多くこなしてきた。
初春や先輩から情報を、実働部隊として自身が様々所にでかけていた。
そして
(ピンチの時には助けてもらっていたのですわよね……)
今戦っているまさに御坂美琴に助けてもらっていた。
自分だけではできなかったこともお姉様である美琴に多々助けてもらったことは事実である。
風紀委員でもないのに首を突っ込んできて、それでいて多くの事件を解決してきた。
まさに白井黒子にとってはヒーローとも思えるような存在で、今まで慕ってきたのはそういうところも感じ取っていたのだろう。
本当に嫌な話だなと黒子は思う。
けれども今は自分が美琴を
だからこの攻撃も冷静に対処する。
転移。
相変わらず能力便りであるが、レベル5である美琴に勝つには自分の出せるだけの力を全力を出すしかない。
だから上に飛んだ。
けれども――――
――――それが仇となった。
「ハアァァァ!!」
黒子の腹に電撃を纏った拳が上からささる。
誰の拳か?
いやそれは考えずとも美琴以外にありえないであろう。
痛い、いやその痛みすら一瞬でもはや痛覚という感覚も今はなくなっていた。
応急処置で塞いでいた傷からドクドクと脈が打っているかのような、血の流れも感じる。
間違いなく傷が開いているであろう。
それでも痛みというものが失っていて、ただ地面に突っ伏しているということだけを感じ取っていた。
今は顔を上げることもできず、地面を見る形でいるため美琴を実際見ることはできないが影が写っているのがわかった。
だがそれも意識しないうちに瞼が次第に閉じてきて姿が見えなくなってきた。
でもなぜ……と意識が薄れていくのを頭で感じながら考えていた。
だがそれも理由がわからぬまま意識は失ってしまった。
「終わった……のよね……?」
静寂。
先ほどまでの轟音が嘘かのようにそれは静けさを取り戻していた。
しかし周りには廃墟と化した建物、もはや原型を留めていない建物や鉄骨、車などの瓦礫の山。
はたから見ても病院へ搬送されるくらい傷を負っている女の子が二人。
決して平穏とはいえないような場所であるが。
そんな中勝者である美琴は黒子が倒れている目の前で立ち尽くしていた。
「本当ぎりぎりだったわね……」
美琴は作戦を思い返せば一種の賭けだったと感じる。
美琴はなぜ黒子に攻撃を当てることができたのか?
それも上からの直撃を、寸分の誤差もなく。
それはいたって簡単なことである。
相手の空間転移を誘導させただけだ。
電撃、磁力、砂鉄と様々な攻撃方法で黒子に追い詰めていた。
どれもが黒子の空間転移には決定打にはなりえない。
ただしそれはあくまで単一的な攻撃の場合だ。
波状攻撃、連続攻撃それも相手の転移地点や移動地点を予測しながら戦えば話は別である。
空間転移をするにはかなりの演算能力を必要としており、その演算をするものが転移する地点をさらに予測しなければならずそれはかなりの困難を極めるであろう。
しかし予想した人物は
レベル5はただ単に能力の強さだけではない。
それは同時に優れた頭脳を持っていることを表している。
つまりは学園都市に7人しかいない超能力者は強さだけではなく、頭の賢さも表しているのだ。
そんな一角の一人である御坂美琴。
転移地点に自分の能力発動による攻撃を同時に行えることができたのは彼女だからできたことだと言えるだろう。
ただそれだけでは直撃を、それも一寸の狂いもなく当てることはできないだろう。
下手したら黒子の転移先に移動して結標淡希の事故より悲惨なことになりかけない。
できた理由は皮肉なことに黒子との長い間いた経験によるものであろう。
黒子が美琴いた経験から動いていたように美琴自身も経験から黒子の動きを予測できたのだ。
転移していたところを間近で見て、さらには自身を空間転移させてもらって。
だからこそできたことであろう。
これが他の超能力者では直撃とはなかなかいかなかったであろう。
美琴だから、いや美琴にしかできなかったことだ。
だから勝利することができたのであった。
対して黒子はどうであったであろうか。
結果的には敗北してしまったが
少しも油断はしていなかった。
単純な方法で、しかし確実な方法で美琴をジワリジワリと追い詰めている。
はずだった。
しかしながらそれでも勝つことはできなかった。
戦略、作戦、戦術でとお互い立てていたものが、少し美琴側に傾いた。
少しではイレギュラーな動きをしていれば今までとは違うことに美琴は気づいてしかけることはできず、タイムアップさせてることができたかもしればい。
けれどできなかった。
黒子も美琴がどういう風に動くかわかっていたために、それに順応した動きしかできなかったのだ。
能力だけでなく、その場での対応力の差がこの勝敗の分け目であったのであろう。
「ハァハァ……」
美琴は勝利した。
だがそれもぎりぎりの戦いであった。
戦術もしっかりとしており、黒子が美琴を思う気持ちというものがひしひしと感じられそれが美琴も辛かったためである。
そういう躊躇してしまうようなものが向こうの作戦の一つだったのかもしれないが相手が相手である。
できるだけそういうことは考えないつもりでいた。
やはりここで思ってしまうのは甘いからであろう。
それでも本来であれば余裕とは言わないまでも厳しい戦いにはならずに勝てたはずであるが、あとのことを考えできる限りの力を制限しなければならなかったからであろう。
「そうだ、追いかけないと……」
改めて自分の目的を思い返し、息を整え立ち上がろうとする。
そうだ、こんなところで止まっていてはいけないのだと。
なんのために戦っていたのだと。
だから立ち上がる。
と――
「――へ?」
立ち上がれない。
いや立ち上がろうとして倒れた。
自分でも不思議な感覚であった。
まだ追いかけるくらいの力は残っているはずだと感じている。
つまずいてこけたというわけでもなく、なぜか立ち上がることができない。
なぜだろうか?
と足を見る。
刺さっていた。
鉄の棒が刺さっていた。
それは間違いなく黒子が空間転移によって刺したものであろう。
(いつ……?)
そう彼女は気づいていなかったのであろうが、黒子は戦いを始ってすぐに刺さっていたのだ。
普通ならばすぐにでも気づきそうなものであるが、美琴は気づかなかった。
なぜなら結標に刺された同じ箇所に刺されていたのだ。
そのため美琴は気づかないうちに出血と疲労が蓄積されていたのだ。
治療した箇所の痛みを和らげるために電気を流して無理やり動かしていたのも原因であろう。
自分の能力がまさにアダとなったのだ。
立てない。
そして出血により、体の力が抜けてきた。
自身の怪我を自覚するとそれは唐突に訪れた。
つい先ほどまで何事もなかった。
だが今はどうだ。
怪我したところだけではなく、足全体に痛みが広がっていた。
まさに激痛。
痛い。
地べたを這うようにいる美琴は痛みに耐えている。
一度解除してしまった能力は痛みによって、再発動することができない。
彼女にはすでに痛みから逃れることも、追いかけることもできない状態だ。
悔しい、そして苦しい。
折角能力を使えるだけ残しておいたのに、何もすることもできないのだ。
またあのあの子たちが被害をあってしまう。
だが事実として美琴はここでリタイアであろう。
もはや一歩も動くことができず、能力も使用することもできない。
しばらくは匍匐前進ともいえないような手だけで体を引きずっていたが、その体力すらなくなってきた。
さらには怪我も深く、それにより彼女の意識は虚ろとしてきたのだ。
黒子と同様彼女も意識を失いかけくる。
気を失ってはダメだと首を振り、意識を覚醒させようとするがそれも効果が薄い。
今も黒子は数メートル離れた地面に倒れていた。
瓦礫と瓦礫の間におり、改めて確認する服もボロボロで傷も美琴と同じくらい酷いことになっている。
心配するのと同時にこんなところで留まるわけにはいかないのだと思うが、それでも体は言うことを聞かない。
また――嫌だ――諦めたくない――。
だがら自分の協力者に電話をかける。
助けをもらうために。
しかし美琴は電話がつながる音が聞こえる前に気を失ってしまったのであった。
どうもルシフェルです
今回は美琴と黒子の対決でお送りしました
本当戦闘シーンが難しい…
まあとあるだからこれからも戦闘続くだろうし、なれないとなぁw
正直今回も上手く動かせてるんかわからないんで、何かおかしい点があれば報告してくれれば幸いです
次は8巻エピローグです
それが終われば原作9巻、漫画7巻の大覇星祭に入っていきます
まあオリジナルが入らなければですけど
では感想・評価・誤字・疑問等お願いします