ある戦いから一夜明けて。
それはある病院の一室。
その病院は上条当麻がもはや何度もなじみとなっていまっていたところと同じだ。
ただそこの病室はいつもの病院と違うような雰囲気をかもし出していた。
目立たないような病院の端っこ、まるで隔離されたかのような位置取り、窓もこじんまりとしたものが一つだけ。
彩といえば誰かがいつの間にか置いていっていたフルーツの籠が一つポツンッと佇んでいるのみ。
そんな中に今は二人の少女がいた。
「お疲れ様」
「……」
「気落とさなくてもいいわよ。結果的には阻止されたんだからね」
布束に答えることもなく窓から外では風が強いのか青々と茂っている葉が大きく揺れているのを見ている。
今は何も答えたくないのか美琴は黙りこくったままだ。
布束も返事を聞かないままに声を続ける。
「戦況報告。建物被害、建築中ビルが三戸が完全倒壊及び十戸あまりが修復必須の被害」
「重軽傷者百人弱、死者なし」
美琴は何も言わない。
布束も淡々と今回のことの顛末を話し続ける。
「その後の情報操作により暗部のことは隠蔽済。ニュースも能力者の喧嘩による暴走と報道」
「なお今回の事件の呼称残骸事件と命名、首謀者結標淡希は
美琴は『誰か』という言葉に少し反応するが、布束の方を向きはしない。
そもそも今回のことは完全にとは言わないが自分自身がやったことなのだ。
ある程度の被害状況は把握できている。
聞くまでもない。
それでも続けて布束が話しているのはこれも仕事だからであろう。
あくまで形式にのっとり話しているのだ。
「これで報告は終わりだけど何か聞きたいことあるかしら?」
一通りは言い終わった。
そう言うかのように今度は美琴に質問があるか聞いてきた。
ここで美琴は初めて口を開いた。
「私って何か役に立ったのかな」
そう、それは美琴に取って大事なことであった。
美琴が戦ったことの意味。
それは妹達のために戦い始めたことであった。
それが今回の美琴たちが起こしたきっかけである。
だが美琴は先日のことを思い返すと戦いが役に立っていたとは思えないでいた。
美琴が『残骸』を追いかけていて、不意打ちによる奇襲による怪我。
その後の怪我の治療後の戦闘。
だがそれも黒子の乱入によってうやむやになり、結標を逃してしまった。
その結標といえばどこかの人により撃破されていた。
自分が怪我を負い、倒れている間に事件は終了していた。
「前回と同じで私なんていなくなって勝手に事件が解決してたんじゃないかって思うのよね」
そう、前回も同じであった。
前回の妹達編でも美琴は倒れて気を失っている間にどこかの正義の味方が事件を解決していたのだ。
前回も今回も手助けしようとして最終的には自分の手では何もできなかったことが心にひっかかていた。
自分の行動はどれも無価値であったのであろうか。
現場をかき回しただけで、基本的には美琴が動かなくても事件は解決していたのではないであろうか。
それが美琴の心情である。
「それにこんな怪我してまでやって自分の成果といえば、結標の足止めをしただけ。その足止めも大した役には立ってなかった。本当何がしたかったのかしらね……」
この事件の結果はとてもいいものであった。
残骸が悪用されることもなく、主犯の結標も拘束された。
それで全て終わった。
だがそれはやはり美琴がどの部分においても活躍していたという所がない。
第三者の目からしてもそれは思えるであろう。
だからか失望したかのような言い方であった。
無駄であったのかと。
やったことは無意味であったのかと。
「何がしたかったのかなんて明白なことよ。あなたの妹達を助けたかった」
無駄じゃない、とは布束も言わない。
美琴が慰めて欲しいからと言葉を吐き出しているわけではないと布束自身がわかっているからだ。
ただただ今の気持ちを吐露しているのだと、知っているからである。
それは布束も痛感していることであるのだ。
だから事実だけを言う。
「それに足止めが役に立たなかったことなんて結果的なことよ。今回はただそうなっただけ。いくらかの因果が重なって、最終的にはあなたが活躍する場がなかっただけよ。私だってほとんどできなかったもの」
そう何もできなかったのは美琴だけではない。
それは同様に布束もできることは少なかったのだ。
もちろん情報などのできることは提供した。
サポートという点ではしていただろう。
だが実際に戦ったわけでもなく、その情報も必要最低限なものが多かった。
美琴と同じとは言わないができなかったことが多かったのも事実だ。
「それに何がどうなったかの過程より結果よ。失敗したならまだしも解決して文句を言うのはおこがましいことだわ」
「……」
わかっている。
まだ経験が少ないだけで、こういうことも一生の内に何回でもあるだろう。
暗部での仕事だけ、しかもまだ入って幾ばくかの時間でしかないのだ。
それで全てわかったという気持ちなど美琴も思っていない。
けれどもそれでも文句を言わずにはいられなかったのだ。
「思いつめていてもいいけど、次の仕事にまで引っ張らないでね。とりあえず今はゆっくり休みなさい」
そう言うと別れ際の挨拶だったようで、何事もなかったかのように出て行った。
あれでも彼女なりに心配してくれているのだ。
ただ様子を身に来てもう大丈夫だと安心したので帰ったのであろう。
といつの間に用意していたのか。
窓辺にあったフルーツの籠の中の林檎を剥き切って皿に盛りつけていた。
柄にもないことをしたからなのか何も言わずに出て行ったのかもしれないと美琴は思った。
せっかくわざわざ切ってももらったのだ。
ここで食べないのは失礼だろう。
用意されていた爪楊枝を使ってしゃくっと噛り付き食べる。
想像よりも大きく一口で食べずに二口にわけて食べる。
「美味しい……」
病院にある味薄い料理にはないフルーツ特有のさっぱりとした味が体に染み渡る。
続いて二切れ目、三切れ目と食べる。
彼女は窓の外をぼっと見ながらしばらく食べ続けた。
学園都市には窓のないビルがある。
ドアも階段もない。
普通には入ることができない建物としての欠陥を多く抱えたビル。
そこには大能力者の一つである空間移動を保有しているものがいない限り入ることは許されない。
壁も学園都市ならではの素材で使われた特注ものでまさに要塞だ。
その中に直径4メートル、全長10メートルにもなろうかという円柱のガラスが鎮座していた。
いやただ鎮座されているだけではなく、中には赤い液体と緑色の手術衣かのようなものを着た人間が逆さで浮かんでいた。
学園都市総括理事長、『アレイスター』。
映画の中で生かされているだけの植物人間かの存在のように佇む『人間』は意思疎通ができた。
体の大半の機能を機械に任している人間だが反応もするし応答もできた。
(……そろそろ、来るか)
アレイスターが何かを思った瞬間彼女は現れた。
窓も入り口もないビルでどこから現れたのか。
簡単なことだ。
彼女が能力者でありさらに空間移動の能力を持っている人物だからだ。
茶髪のツインテール、学園都市でも屈指の有名な学校である常盤台中学の制服を着た女の子。
その子はここに来てからいまだに一言も発しない。
いやむしろ何も話すことないと、憮然とした態度で立っている。
「ふむ、これから君にはここで働いてもらう」
有無は言わさないというよりは、事前承諾していた彼女はやはり憮然とした態度で頷くだけだ。
(これで私のプランは1045から1382まで短縮できる)
アレイスターも彼女の態度は気にしていない。
考えるのは自分の計画だけだ。
もはや彼女のことは見えていないかのように、顔すら合わしていない。
彼女がなぜ学園都市の裏側に来たのか。
彼女が慕っていた人を知るためにその身をもって自分も落ちた。
怪我を負ってまで止めようとしたが
その後ある病院で学園都市の裏側である暗部のことを、そしてこっちの世界への勧誘があった。
すでに彼女には迷いはなかった。
風紀委員と兼任できることや実際に
知らず知らずのうちに自分もこっちの世界に足を踏み入れてしまっていたのだ。
その場の感情など忘れ堕ちた。
それをアレイスターは理由は聞かないのだ。
すでに聞いていたのかもしれないが、頂点に立つ人物として自分の周りにいる人物に注意を払わないのだろうか。
いやアレイスターからすれば反抗する気などないとわかっているからだ。
彼女もそれがわかったのか、後に振り返り能力を使い去っていく。
(ようこそ)
アレイスターは心の中でつぶやいた。
また一人暗部へと落ちていった。
どうもルシフェルです
前半部分で何回も書き直しててこずりました
後半はすんなりいったけど、前半難しかった…
しかもまだ自分の中では完全には納得してないという
それはともかく8巻までの話は終了です
文は短いのに結構時間かかりましたね…
まあ書くのが遅いからなんですが
次は予定通り原作9巻、漫画7巻の大覇星祭に入っていきます
ただ卒論が迫ってるんで今度は今回の空いた期間より時間かかると思います
申し訳ございません
では感想・評価・誤字・疑問等お願いします