とある御坂の暗部加入   作:ルシフェル

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 車体に揺られながら御坂美琴と相変わらず真っ黒のフードの被った少女は向かい合って座っていた。

 フードの少女が運転席側で、美琴が後だ。

 美琴は不機嫌で、フードの少女は少々機嫌良さそうに、対照的な面持ちでいた。

 

 美琴は路地裏ある少女と出会って、車に連れてこられた。

 脅されたりしたが彼女の目的はこちらの情報収集のようである。

 二人が乗車するとすぐに車は出発した。

 トラックの荷台には座る席と灯り、それと通信機器があるだけでだだっ広い空間だけが広がる殺風景な場所である。

 内装なんてものもない。

 ただただ移動用として使われているだけのようだ。

 どこへ向かうかは事前に決められていられていたのであろう。

 運転手はフードの少女と話もせず、さらには予定通りといった感じでその車は迷いもなく走っている。

 トラックの荷台にいるため外の景色は見えない。

 いったいどこに走っているのであろうか。

 そんなことを幾ばくか考えて数分経ったであろう。

 ようやくフードの少女が話しかけてきた。

 

「そろそろ落ち着いたかしら? 早速だけど話してもらいたいんだけどねー」

 

「そう? 私はもっとゆっくりとその景色を見て楽しんでもいいと思うわよ」

 

「……荷台だから外の景色なんてほとんど見えないでしょうに」

 

 フードの少女のペースに飲まれないようにこちらが会話の主導権を握りたい。

 そのために誤魔化しつつ、話をそらしたかのような会話を繰り広げる。

 もちろん人質もあるため限度は考えなければならない。

 それでもこれは必要なことであった。

 

「じゃあ自己紹介とかする? 私のことだけあなたが知ってるっていうのも不公平よね。名前だってわからないんだから」

 

「ふん、よく言うわ。ウチらの『別荘』をいくつも襲撃してあげくには情報をぶっこ抜いたくせに。それに今回のことは私があなたに一方的に質問してそれを答えるだけで済むのだから余計な事はいらないわ」

 

 まあ話すわけないわよね、と美琴は心中で察していた。

 用があるのは最初の件の事だけであろう。

 そうであればわざわざリスクを犯してまで自分自身のことを伝える必要はない。

 ましてや人質もとっているのであればそうであろう。

 今の(・・)美琴であれば同じことをしていたはずだ。

 だがそれと同時にやはりかみ合わないことがある。

 かぎ回っているだの、襲撃だのという言葉に美琴は記憶がない。

 もしかして暗部の仕事をしているときに間違って襲ってしまったのであろうかと考えたが、そんなことはないであろう。

 私たちがしていた仕事は主に学園都市に仇なすものの粛清をやっていただけだ。

 同じ暗部組織であればそれはないだろうと考えた。

 

「こっちだって次の要件があるから、無駄話は終了ね。これ以上引き伸ばすならわかっているわよね?」

 

「……」

 

 無言でその旨を肯定とした。

 

「『妹達』はどこ隠しているのかなっ?」

 

 いきなり核心的な質問であった。

 つまりこいつらはまたもや『妹達』を利用しようとするグループであるという。

 いや正確にはミサカネットワークであろうか。

 あれを利用するやつらは揃って悪用することにしか考えていない。

 だから渡すわけにはいかないのだ。

 

「あなたが『絶対能力進化』の計画を妨害していたのはすでに調査済みよ。御坂美琴のクローンである『妹達』もそれにともない役割は終わり。――じゃあその『妹達』はどこ行ったというのかしら?」

 

「ッ」

 

「計画が頓挫した後『妹達』の行方をあなたが知らないわけないよねっ? クローンをどこに匿ったのかなー?」

 

 その言葉で美琴が思い浮かぶのはあのカエル顔の医者がいる病院だ。

 『妹達』の多くはあそこに匿まわられている。

 あの医者や病院がどういうところなのかは美琴は知らない。

 美琴だけでなく、不幸なツンツン頭の少年、その他大勢がお世話になったことがある病院である。

 そしてあそこは今の『妹達』にとって安住の地なのだ。

 いやそれだけでない。

 誰しも安心できる場所だ。

 暗部などに縛られない場所だ。

 実験によって命を落としてきた場所とは違う。

 あそこを絶対に侵してはならない。

 

「暗部の情報に引っかからないくらいセキュリティに特化した場所に匿ってるんだからあなたにとっても『妹達』は重要ってことよね? それはあなたの母親とどっちが大切かしら?」

 

 挑発だ。

 向こうも欲しい情報である。

 やすやすと人質を殺すようなことはしない。

 そして『妹達』の噂を思い出す。

 あれは彼女の組織に捕まったというわけではないのであろう。

 捕まえたのであればここまで執着するはずもない。

 

(ということは他にも組織が動いているというの……?)

 

 しばらく黙っていて、答えないのを確認したのか向こうからまた問いかけがあった。

 何を企んでいるのか、追撃するのではなく別の質問である。

 

「もう一つ質問。あたながウチらの拠点をいくつも襲撃したのはなぜかしら?」

 

「……人質もあるから誤魔化すようなことはしないから先に言っとくけど私は襲撃してないわよ。一時期襲撃してたのは『絶対能力進化』実験の関連する施設だからね。その施設のことを指してるならごめんなさいね」

 

「違うわ。実験終了後、しばらくして最近のことよ。なぜまた実験が頓挫がしてもウチラのところを襲撃したのかしら?」

 

「実験が破綻したあと襲撃なんかしてないわよ。暗部の仕事ならともかくね」

 

 もちろん誤魔化す云々は嘘であるし心の底から謝罪しているわけでもない。

 だが今回の言っていることは真実だ。

 身に覚えのないことに嘘をついても意味はない。

 相手の少女も頭を少し下げ、考える素振りを見せる。

 それも一瞬、次の質問を投げかける。

 

「質問を変えるわ。あなたじゃなくても、あなたの仲間もしくは同業者、協力者が拠点を襲撃したんでしょ?」

 

「……私の周辺を疑っているようだけどそれもないわよ。私にも隠して動いていたならわからないけど、そんな動きは見れなかった」

 

 これも本当だ。

 そんなことまでして動くことはない。

 実験は終わったのだ。

 わざわざ蒸し返してまで襲撃するメリットはない。

 美琴からすれば『妹達』のことは静かにしておいて欲しいのだ。

 意趣返しとも取れるような行動は取る必要はないのである。

 

 そして彼女はまた考えこんだ。

 美琴の言ったことを吟味しているのだろう。

 そして彼女は唐突にハッと気がついたように、顔を上げ通信機器を手に取り叫んだ。

 

「目的地変更よ! 場所は例の場所には行かないで!」

 

 顔がチラリと見えたが、それも一瞬で何を思ったのか運転席にいる暗部の協力者に怒鳴りこむように声をかけていた。

 やはり美琴をどこかに連れていく気であったのであろう。

 だが彼女は美琴の言葉だけで何かに気がついたのであろう。

 目的地の変更を告げる。

 

 いったい何なのだ。

 美琴の思考は追いつかない。

 いや美琴には情報が足りなすぎるのだ。

 路地裏でまたもや『妹達』が巻き込まれたことを知った。

 そしてそのまま目の前にいる暗部の少女に車に詰め込まれたのだ。

 情報も何もないであろう。

 案の定相手は何も話してこないのだから。

 

 その間にもフードを被った少女は叫んでいる。

 

「次の場所は――」

 

 しかしそれはできなかった。

 なぜなら……

 

 

 

 

 

『それはできません。女王の命令は絶対ですから』

 

 ――明らかに声質が違っていた。

 

「チッ」

 

 フードの少女は察知した。

 その声を聞いた途端に手に持っていた通信機器をほっぽり出して荷台の扉の前に退避した。

 そしてそのまま美琴を置いてフードの彼女はトラックの扉を開け強引に脱出する。

 美琴を置いて逃げたということはそれだけ彼女はやばかったのであろう。

 

 対してその当人である美琴はいまだに状況を飲み込めない。

 すぐに脱出しなければならない状況であろうか。

 外を見ればフードの少女は液体の人形を使い、着地の衝撃を和らいでいた。

 いやそういう場合ではないと、そうこう思考しているとこの劇的変化の原因を作った運転手が床に落ちている通信機器を通じて話しかけてきた。

 

『安心してください。私はあなたの味方です』

 

 思ったよりも焦っていたのであろう。

 話しかけられて少し頭が冴えたのか、先ほどの言葉を思い出す。

 『女王』と彼は言った。

 そんな呼び方をさせている人物を美琴は一人知っていた。

 この学園都市でも美琴からすればそんな馬鹿な呼び方をさせているのは一人しかいない。

 

「あんた、『食蜂操祈(しょくほうみさき)』の使いなの?」

 

『その通りです』

 

 『食蜂操祈』

 それは御坂美琴と同じく名前の知らないものはいないと思われるほど有名な人物である。

 なぜならば常盤台中学における最大派閥を率いる少女、そして何より彼女も超能力者(レベル5)の少女であるからだ。

 能力は『心理掌握(メンタルアウト)』、学園都市最強の精神系能力だ。

 記憶操作、洗脳などの得意とする彼女に、運転手も操られているのであろう。 

 

「そう……私を助けたのはなぜかしら?」

 

 助けたのはなぜか。

 もはや常盤台ではなくなった彼女に接点などなくなったといっていいほどに彼女とは関係が希薄であるのだ。

 

『助けたのではなく、協力体制をしこうとしているだけです。あとのことは食蜂様から聞いてください。私も詳しくは聞かされていませんので。今は食蜂様のいるところに向かっています』

 

(協力体制ね……)

 

 あくまで一時的にであろうが、あまりいい気はしない。

 なぜなら彼女とは昔からそりが合わないとお互いに思っていたからだ。

 それほどに今回の案件は重要なことなのであろう。

 

「……もう一個だけ。私のママと妹達は?」

 

『そちらは別働隊が動いているのでおそらく安心でしょう』

 

「そう、わかったわ。今はおとなしくしといてあげる。理由は本人からゆっくり(・・・・)と聞かせてもらうわ」

 

 それで安心したのか、美琴は最初に乗ったときと同じように落ち着いて元いた場所に座った。

 どうせ目的地は運転手が案内してくれる。

 理由も本人から聞く。

 ならばと彼女は少しの時間ばかりの休息をするのであった。

 




どうもルシフェルです

前回から続く大覇星祭編ですがすでに漫画9巻目に突入です
しかし大覇星祭の時系列と整合性が難しい…
黒子とかいないからあの人の相手とか、暗部に加入しちゃったせいであの人の参加とかががが
どう整合していくのが見物ですね()


次回は目がしいたけの人が出てくるのでかなり原作よりの話になりそうです


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