言い訳はしません
遅くなって申し訳ないです
「はぁ? なんて言った?」
「お願い! 私の買い物に付き合って!」
「なんで私がそんなのに付き合わねぇといけねぇんだよ」
ある日のアジトでの一室でのこと。
美琴は黒夜に頼みごとをしていた。
「私の部屋に何もないのよ」
アジトの中で美琴の話をしばらく聞いていた黒夜。
なかなか切り出さない美琴にイライラして、話を無理やり聞きだすとこういうことであった。
やはり年下に頼むとしては少々気恥ずかしいかったらしくなかなか話さなかったのだ。
「なんだ家具でもそろえるのか?」
「違うわよ。そんなのは部屋に備え付けのやつで十分。欲しいのは衣服とか日常品よ」
食料はもちろん、美琴の宛がわれた部屋には備え付けの電化製品以外置いていなかった。
衣服や日常品もない。
普段は制服で過ごせるが、さすがにパジャマ等替えの服もないので全くないというのは困りものだ。
寮に戻ればあるのだが、体外的に永久の休学となっている美琴が親しんでいた後輩たちに見つかるというのはいささかまずい。
(言い訳も成り立たないだろうし……)
そのためには美琴からしてみれば黒夜にどうにかしても手伝ってもらわなければならない。
「そんなのは一人でいけばいいだろ。荷物も送ってもらえば問題でもないし」
一方黒夜は話を聞いて後悔していた。
まさか私に頼みごとをとは思わなかったからである。
しかもその頼みというのが買い物に付き合えだという。
ふざけているのか?と黒夜は思った。
暗部に入ってこのかた依頼や脅迫まがいの上からのお願い《・・・》なら受けてきたが、この様なお願いなどされたことない。
黒夜はとりあえず何かしらの理由をつけて断るつもりではいるのだが。
「別に荷物持ちをしてほしいわけじゃないわよ。まあそれが全くないっていうわけじゃないけど……」
美琴も引かない。
美琴も年下にここまでお願いしているのには理由が理由だからだ。
「じゃあなんだっていうんだよ」
「知り合いにあったらめんどくさいから逃げるときの時間稼ぎだけでもして欲しいのよ。お願い!」
ますます黒夜には意味がわからない。
それこそ他のやつに頼めばいいではないか。
黒夜は思うのだがここまでくると回りに回って黒夜にきたのだろう。
それでも一応聞いてみる。
「……それなら布束でいいじゃねぇか。なんで私なんだよ」
「私もできればそうしたかったわよ……でも仕事って言ってどっか行っちゃったわよ。今はどこにいるかも不明だし」
美琴はまだ暗部に来たばかりだ。
黒夜みたいに前々から暗部にいるのなら別だが、美琴にはつてなどこっちの世界にはない。
かといって表の世界の住人と一緒にというわけにもいかない。
今会う資格など美琴自身ないと知っているからだ。
「めんどくせー」
「お願い!」
「やだって言ってるだろ」
それでも黒夜はyesとは答えない。
当たり前だ、何のメリットがあって手伝わなければならないのか。
むむむと美琴は渋っ面になる。
ソファーにすとんと腰を下ろし、部屋に常備してあるお菓子を一つ摘む。
美琴もため息をつきながら何気なく呟く。
「じゃあパフェとか奢るから……」
「……仕方ないな。そんなに頼まれたら行くしかねぇな」
ガタッと立ち上げるのは黒夜だ。先ほどまでソファーの上で不動だった彼女は今姿勢良い立ち姿だ。
「……」
「なんだよ」
「別に」
「言っとくが仕方なくだぞ! 仕方なくな!」
「はいはい」
出で立ちや風貌はともかく黒夜もまだ子供で女の子なのだ。
まさか釣れるとはそういうことだろう。
無論黒夜は仕事の対価としてもらうはずなので。美琴も余計なことは言わない。
余計なことを言って機嫌を損ねたくはない。
「ほら、さっさと行くぞ!」
黒夜は照れ隠しなのか、部屋を即座に出る。
美琴は口に入れていたお菓子を飲み込むと黒夜の後を追い、部屋を後にした。
「で次はどこに行くんだ?」
お互いの右手側にそれぞれ髪袋が一つずつ。
ファミレスで向かい合って座っているのは美琴と黒夜だ。
部屋を後にした二人は早速買い物に向かった。
衣類をある程度揃え残りの買い物ももう少しといったところ、黒夜はパフェを請求してきたため近場にあったファミレスに寄った。
初めはちゃっちゃと買い物を済ませるつもりであったが黒夜がごねてそれでもって機嫌を損ねるのはまずいので寄ったというわけだ。
休憩がてらと思って寄ったのだが今になって思えば一息つくというのも悪くなかった。
この後に予定があるわけもないため不用意に知り合いに会わなければ別に早くも買い物を済ませる理由はないのである。
「えっと、次は……」
「あっ、御坂さんおはようございます。お久しぶりですね。お友達と一緒ですか? 一緒の席でもよろしいでしょうか?」
美琴が次の目的地を調べようとしていると出会ってしまった。
今まで争いごとなどしたことないような優しそうな話し方で、そして気遣うように話しかけてきた男が来た。
「うっ、海原さん……」
さりげなく彼は美琴の隣に座ろうとしたので、美琴はささっと黒夜の隣の席に移動する。
海原光貴。
理事長の息子でここ最近会えば話しかけてくる。
男なので美琴の学校生活は知らないので、学園からいなくなった理由を説明はしなくていい。
「……」
「……」
「どうかしたの?」
海原とい黒夜は初対面だ。
普通なら挨拶くらいはするもんだが、黒夜どころか海原はなぜかそれすらせずお互いににらみ合っているだけである。
「なんでもねぇよ」
「すみません、挨拶が遅れましたね。初めまして海原光貴と言います。以後お見知りおきを」
しばらく睨みつけていた二人に不思議に思った美琴は聞いてみるがはぐらかされる。
海原もここで挨拶をするが美琴にはさっきの間がわからなかった。
「でこいつはなんだ、お前の彼氏か?」
「ちっ、ちがっ……」
「はは、まさか。違いますよ。私はただのお友達です」
美琴はこの男が苦手である。
基本的に美琴はこういう相手は苦手だ。
上条当麻みたいに誰にでも砕けた話し方ができる人ならば美琴としては全然大丈夫なのだが、普段からこういう立ち振る舞いを素でする人とは美琴として苦手意識としている。
「なんだ、つまんねなぁ」
「ああえっと……(ちょっとパフェ奢ったんだから何とかしなさいよ!)」
ここで黒夜の出番だ。
不服そうな黒夜とともに海原に背を向ける。
海原に失礼だが美琴からすればそんなこと言ってられない。
この空間から抜け出したいのだから、ここは黒夜を理由にしない手はないだろう。
理由はどうであれ黒夜にはこういうための目的で連れてきたのだから使うべしである。
「(なんだ、別に悪いやつじゃねぇだろ)」
「(雰囲気が苦手なのよ……。私にはさわやか過ぎるというか……。ともかくなんとかして!)」
「(ったく……わかったよ)」
黒夜はしぶしぶ了承する。
お代は先ほど頂いた。
お相手がどうであれ依頼主が言っているのだ。
めんどくさいと思いつつも、口を開く。
「はぁ……おい、お前。これから二人で女の子の場所を回るんだ。男には辛いだろ? だから気にしないでくれ」
定番の断り方だ。
男なら誰しも躊躇してしまう場所には行きづらい。
これならいけるだろうと黒夜も想像していたのだが。
「? 私は大丈夫ですよ。荷物持ちとしてでも付いていきますよ」
それは全くと言っていいほど、無駄なことであった。
この人にはやましい気持ちなどないのだろうか。
動揺など一切なく彼は言いきったのだ。
『!?』
美琴たちもこれには驚きを隠せない。
下手したら変態とも言えない発言になりそうなものだが、彼からは少なくともそういう感じには取れない。
純粋に手伝うという気持ちでいるらしい。
「(おい、こいつ全然動じねぇぞ。実力で排除するか?)」
「(ダメに決まってるでしょ。一般人なんだから)」
またしても美琴たちは海原に背を向ける。
黒夜は早くも最終手段として実力排除を提案するが、美琴はそれを当然とばかりに否定する。
黒夜からすれば赤の他人であり、依頼さえこなせば問題ないと思っている。
対して美琴は表の住人には手を出したくはないのだ。
だから黒夜の意見は却下をするしかない。
「(一般人ねぇ……)」
「(どうかしたの?)」
「(いやなんでもない。じゃあ仕方ないか)」
美琴の「一般人」という言葉に黒夜は訝しく思ったのだが、黒夜は言わなかった。
今ここで言うのは余計な手間を増やすだけである。
そして黒夜は一息つくと美琴の手と荷物をガッと掴み海原に言った。
「すまん、急用を思い出した。急ぐからまた今度な」
「あっ、ちょっと」
「そうですか。残念です。お代は私が全て払っておきま……」
美琴は何か言いたげであったが、黒夜はさっさと出る準備に入っていた。
海原は失礼な態度に文句どころかおごってくれるそうだ。
海原の言葉を最後まで聞かずに美琴はファミレスを後にした。
「またすぐに会えるでしょうね」
海原は頼んでいた紅茶を飲みながら呟く。
もちろんもういない美琴たちには聞こえていない。
「今日は全く酷い目にあったわ」
「なんだ? 自分は依頼通りに仕事をこなしただけだぜ?」
「それは感謝してるけど、もうちょっとマシなやり方はなかったわけ?」
「ああいう、アドリブは苦手なんだ。あれでもマシな方だと思うぞ」
「そうかなぁ」
日は暮れ始め街が夕焼けに染まる中、二人は地下街を歩いていた。
もうすぐ学園都市の完全下校時刻になるため、いつも賑やかな地下街も今は人が少なくなっていた。
今地下にいる人らは元々守る気などないやつや自分独自の帰る手段があるやつなど様々であるが、もちろん二人にとっても下校時刻など関係ない。
二人の手荷物は昼間に加えてまた多くなっていた。
美琴たちは海原と別れると残りの買い物を済ませていた。
これと思うものがなかなか見つからなく、少々長引いてしまってたがようやく帰ることができそうである。
他愛無い話をしてながらの帰り道、バス等の公共機関は完全下校時刻とともに止っているため歩いてかえることになるがここからはアジトの一つまでそう遠くはなく普通に歩いて帰れる距離だ。
ただ少々黒夜のうだうだと文句を聞くはめになるかもしれないが。
「だけどあそこは……ん?」
と美琴は横を見ると黒夜がいない。
あの一瞬でどこいったと、周りを見回すとちょうど真後ろに黒夜はいた。
どうやら何かに気を取られ、立ち止まっていただけのようである。
それはなんだろうと後ろからゆっくり覗くと美琴から自然と笑みが出ていた。
「これが欲しいの?」
「バ、馬鹿こんなの欲しいわけないだろ」
「なんかツンデレみたいになってるわよ……別にイルカの人形を欲しがってもいいと思うわよ。年相応じゃない」
彼女が見ていたのはイルカのビニール人形である。
大衆向けのクレーンゲームで、アームを使い取ればゲットできるというシンプルなゲームである。
それを黒夜はじっと眺めている。
誰から見てもこの商品が欲しいのだろうなという目が訴えていた。
「いいわ。取ってあげるわよ」
美琴はそういうと100円を入れ、クレーンのアームを動かす。
始めは横に次に縦に。
一寸のも迷いなく場所を定め最後のアームを落とすボタンを押した。
落としたアームはイルカの人形にすっぽりとはまり、しっかりと人形を挟んだ。
「本当に一発かよ……」
「まあかなりやりこんでいるからね」
イルカの人形はその後も引っ掛かる等なく手元に落ちてきた。
それを欲しがっていた黒夜にその人形を渡す。
始めはいらないとかいっていた黒夜だが、少々驚いていおりそんなこも忘れ素直に受け取っていた。
美琴の代名詞であり異名である『超電磁砲レールガン』のコインはどこから捻出しているのか?
それを考えれば簡単な話であるのだが、彼女のコインはゲームセンターのを使っている。
そのためしばしば美琴はゲーセンに入れ浸りすることがあるのでたいていのものは得意なのであった。
もちろん学園都市ならではのオリジナリティーの溢れるゲームもあるためそういうのはまちまちではあるのだが。
「良かったわね、イルカもらえて」
「ああ」
「……で、お礼は?」
「ちっ、珍しく恩を売ったからか……」
素直に渡す美琴。
だがそんな正直に終わるわけはないく、美琴は黒夜の顔をニヤニヤしながら覗いてきた。
今の美琴は珍しく優位な立場で且つ黒夜の珍しい一面に出会ったためにやつかずにはいられない。
(取ってあげたのだからこれくらいはいいわよね)
もちろん普段はこういう立場にはなることないため、ちょっとした加虐心がないわけではないが母性的なものもある。
つまりどういうことかというと。
「あっ、ありがとよ」
「可愛いところあるじゃない」
「馬鹿! 頭を撫でるな!」
やはり可愛い女の子なのだから年相応の可愛さというものが黒夜にもあったのだ。
暗部では先輩であるのだがこういうときくらい伸ばしてもいいだろう。
最後に良いもの見れたとまたたまには来たいと思う美琴であった。
どうもルシフェルです
ということで5話目
めちゃくちゃ申し訳ないです
言い訳するわけじゃないですが就活やら色々あったんですよ(決してモンハンやってたわけではry)
今回は一応8月31日より前の話
書きたかった話(イルカのあれ)と8月31日の前日譚?みたいのかけたので満足
次回はどうするか悩み中
ようやく本編の方に進むか、ちょっとした番外編か
まあ明日中には考えをまとめておきます
では感想・評価・誤字・疑問等お願いします