とある御坂の暗部加入   作:ルシフェル

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 学園都市の地下は明るい。

 まだ昼間でありながらガンガンに照らした電球は地下の薄暗さを完全に消しさっていた。

 そして光によってここは地下街でありながら多くの人々がいる。

 その多くの雑多とした空間を美琴は走っていた。

 彼女はあるものえお追いかけていた。

 『残骸(レムナント)

 それは学園都市の世界最高のコンピューターである樹形図の設計者を復元可能な残骸である。

 今それは学園都市外部組織の手によって奪われてしまった。

 それを取り返すため暗部の正式依頼(・・・・)として美琴は奔走していた。

 

「全くこんなこういうとき私の能力が役に立たないわよねっ!」

 

 美琴の携帯には地下街を示す点が移動している。

 そのため美琴は地下街を走るはめになっていた。

 美琴の能力は攻撃やハッキング等さまざまなことに使える能力ではあるが移動するには使えない。

 能力により立体的な移動ができるが地下の電気回線がショートしたりするし、何より地下には多くの人がいる。

 先ほども相手の動きを封じるために信号機などの配電を少々いじったりしたために、地上を避け地下道を移動する人が多くなっている。

 こんな狭い所であんな立体的な移動はできない。

 運動が得意な美琴にとっては疲れの問題はないが時間がおしい。

 

「……外に出たわね」

 

 雑多とした空間からようやく抜け出せる。

 犯人が地下を移動していたのは衛星から逃れるためだろう。

 地下はカメラもあるが死角もあり、信号などの障害物などもないため移動しやすい。

 それをわざわざ出るということは次の逃走手段か目的場所近くまで来ているということだろう。

 その前に叩かなくてはならない。

 

 逃走者が出た出口から自分も出る。

 天然の明かりが肌を照らす。

 どこに行ったかなどは車のクラクションが大きくなる方向を見てすぐにわかった。

 いた。

 黒服の男たちが車道を無理やり渡っている。

 複数人のスーツ男は街中で目立つ。。

 隠れるために急いで路地裏に逃げ込んだが見えている。

 複雑に入り組んだ路地裏は逃げやすく、追いにくいものだがこちらはレーダーで追っているため問題ない。

 『残骸』を入れたキャリーケースが発信機の役割をしているため、学園都市内ならどこまででも追える。

 

 美琴も細い路地を目指す。

 ここでそろそろ追いつきたい。

 これ以上街中を引っ掻き回してほしくはないものだ。

 

「ッ!?」

 

 銃声が聞こえた。

 それも一つではない。

 複数の音が重なって聞こえた。

 間違いなく路地裏からだ。

 それが街中にまで聞こえた。

 銃声に伴って街中からも悲鳴が聞こえる。

 警備員などがよく銃などを使っているがこんな街中で銃声など誰しもが驚き怖がる。

 だが美琴は別のことに驚いていた。

 

(私以外にも狙っているやつがいる?)

 

 ここに来て仲間割れはないだろう。

 よく考えてみれば当たり前のことだ。

 樹形図の設計者を欲しがるのは学園都市内外ならばどこにでもいるだろう。

 外の企業だろうが、内の裏組織だろうが簡単に手に入るなら欲しがるものだ。

 それが少し荒事になっても。

 

「私が行くまで待ちなさいよっ!」

 

 美琴はさらに急ぐ。

 私たち姉妹のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当どうってことはありませんでしたわね」

 

 黒子は下に転がる男たちを見て思う。

 自身の能力で翻弄されそのまま倒され意識を刈り取った。

 学園都市内部の能力者ならば対抗策として色々用意してあったのだが、彼らはそんなこともせずに直れてしまった。

 銃を使ってきたが黒子の空間移動能力の前では無意味であった。

 彼らも銃頼りだったのだろう。

 路地裏での攻防はあっさりと終わってしまった。

 

「しかしこの中身は何なのでしょうかしらね」

 

 大きなキャリーケースでかばん自体もとても繊細なものを入れるもののようである。

 先ほどこのかばんでどつきまわしていたが、済んだことなので考えないようにした。

 このかばんの中身を能力で抜き取ることも可能だが何が入っているかわからないのでその方法は取れない。

 

「……初春に聞いてみますか」

 

 スカートのポケットから最近買い換えた携帯電話を取り出す。

 携帯のカメラを使い、キャリーケース全体を取る。

 それに付随していた荷札なども撮影して初春に送った。

 待つ間、倒れている男たちにヒントがないかと探してみたがとくに証拠といえるものはなかった。

 待ち時間わずか2分。

 携帯電話に着信音が鳴る。

 確認するまでもなく間違いなく初春だろう。

 と同時にドダダっと走ってくる音が聞こえた。

 ようやく警備員の到着かしら、と楽観的に考えながら電話を取る。

 

「黒子……?」

 

 後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。

 思わず耳に当てていた電話を下に落とす。

 驚いた。

 いやそれよりとても嬉しかった。

 それはとても久しぶりに聞く声であった。

 落とした携帯電話から初春から心配の声があがっていたがそれはもう黒子の耳には入ってきていなかった。

 振り返ると私と同じ常盤台の制服を着た少女がたたずんでいた。

 

「……お姉様」

 

 ずっと再び会いたいと願っていた御坂美琴であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒子が驚き固まっている中、御坂美琴当本人も同じ状況であった。

 

「黒子……?」

 

 思わず声に出てしまった。

 何も言わずに隠れていればまだ見つからなかったかもしれないのに声を出して姿を現してしまっていた。

 警備員や風紀委員がいるということを考慮していなかったわけではない。

 確かに表の世界でも巻き込まれているのならば学園都市にある表の治安部隊がでないわけではない。

 だが今回は私たちは暗部の依頼を受けてきたのだ。

 後処理を請け負うならわかるが、まさか先に到着しているとは思わなかった。

 だがそれは目の前にいる優秀な()後輩ならば納得せざるえないだろう。

 私にひたすらアプローチをかましてきた変態な後輩であったが、彼女の優秀さは周りの多くは認めていた。

 それは美琴自身も同様である。

 しかし事実確認したところで状況は変わらない。

 美琴の目の前に黒子がいる。

 会いたくなった人物が目の前にいるのだ。

 自分たちが狙っていたキャリーケースは黒子の足元にある。

 どうするべきかと思案していたが先に黒子が動いた。

 

「……お姉様どこに行っていたのですの?」

 

 真っ先に核心を聞いてきた。

 それはそうだろう。

 黒子からすればいきなり消えたのだ。

 同室でありそれもかなり親しんでいた良い先輩後輩関係であったのだから。

 

「それはっ……」

 

 だが黒子の問いに美琴は答えられない。

 いつ答えられるかどうかもわからないが、今は答えることはできない。

 黒子に暗部のことを教えるわけにも行かないのだ。

 少々感づいているかもしれないが、自分の口から言うというのははばかれる。

 その間にも黒子は美琴にジリジリと近寄ってくる。

 下に倒れている男や仕事のことなど忘れたかのようにゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「来ないで!」

 

「えっ……」

 

「お願いこっちには来ないで!」

 

 黒子を止める。

 表の意味でも裏の意味でも今はこっちに来て欲しくない。

 美琴は呼び止める。

 黒子の悲痛な気持ちが表情から伝わってくる。

 せっかく再会したというのに拒否される。

 多大な信頼と尊敬、そして友情があったのにだ。

 

(私だって……)

 

 美琴自身もちろん辛い。

 だが今知られるわけにはいかない。

 

 

 

 ――――と、

 ドンッ!とそれぞれの肩に何か食い込んだ。

 食い込んだなどと生易しいものではない。

 皮膚や筋肉が焼ききれるかのような激痛が走っている。

 互いが互い何か起きたのかと困惑し、痛みが発する所を見る。

 それはワインのコルク抜きであった。

 美琴も黒子も痛みで膝を地面につくが同時に周りに警戒の目を向ける。

 二人が互いに他のことに集中を欠いていた時の強襲だ。

 犯人は間違いなくタイミングを見計らったのだろう。

 

「ごめんね、面白いところ所をお邪魔してね。もちろんそのまま続けてもらっても良かったんだけど、私も仕事があるからお邪魔しちゃった」

 

 声が黒子と美琴の後ろ。

 道路の方から女の子が声とともに唐突に現れていた。

 彼女は嫌らしい笑顔を浮かべ、美琴と黒子を交互に上から見下ろしていた。

 

「全く私自らキャリーケースを回収なんて、本当使えない連中ね」

 

 敵だ。

 痛みを抑えながら黒子は思った。

 どこかの学校の冬服のブレザーを肩に引っ掛け、同じ学校のものであろう短いスカート。

 そして胸はさらしのように布で胸を隠しただけのまるで痴女のような女であるが、間違いない。

 敵意をむき出しで睨むが少し高いところに立っているというだけで優位の立場にいるかのように彼女は余裕漂う笑みを浮かべるだけだ。

 美琴は彼女を知っていた。

 

「まあレベル4と5を同時に相手して逃げ切れっていうのも外の人間には無理な話かしら」

 

 相変わらず独り言のように話しかけてくる。

 とその一瞬美琴の方に向いた瞬間黒子がお馴染みの金属矢の数本を空間移動で攻撃する。

 標的の座標に直接移動するため音もない。

 移動能力者である黒子による攻撃手段だ。

 だが

 

「そんなものわかっているわよ」

 

 避けられた。

 ただ一歩横に場所に移動していただけだ。

 ただそれだけであるが空間移動の特徴として地点を少しでも移動すれば避けることができるのだ。

 そして

 

「二人にお返しするわね。あとおまけ」

 

 刺さる。

 今度は二人の両足に刺さった。

 元々黒子の武器である落ちていた金属の矢と追加のコルクだ。

 

「ぐっ、この能力……あなたも空間移動能力者……」

 

「ちょっと違うわね。私のは『座標移動』、そこの風紀委員のと違って実際に触れなくても移動できるの。すばらしいでしょ?」

 

 美琴が呻き声をもらしながらも目は結標の方に向けたままだ。

 この学園都市でも珍しい空間移動だが、さらに彼女は昇華したというべき能力である。

 だがそれでも臆さずコインをポケットから取り出す。

 だが

 

「なっ」

 

 コインを取り出し、打つ。

 その瞬間に黒子が目の前にいた。

 いや美琴が黒子の前に移動していたのだ。

 構えを解くどころかコインが落ちる。

 コインの落ちる高い音が路地裏に響く。

 

「だから言ったでしょ。触れなくても移動できるって。コインをこそっと出してもばれてたら意味ないわよね」

 

 打つ前に能力で移動させられたのだ。

 必殺の手段を簡単に封じられる。

 打つ瞬間など普段なら一瞬だが痛みによって演算能力が鈍っていたのだ。

 美琴は座標移動されてから気づく。

 黒子が空間移動しないのも痛みと混乱により演算ができないでいるからであろう。

 

 その間にも肩や足に突き刺さった痛みを我慢しているが全身の力が失っていくのがわかる。

 血が流れているのが肌から垂れており、その痛々しさは互いに伝わってきた。

 相変わらず嘲るように笑う彼女は後ろ向きに歩きながら路地裏の入り口に向かって歩いていた。

 

「もう少し遊んであげてもいいんだけど、ちょうどお迎えが来たんでこれで引き上げるとするわ」

 

 表通りから響くエンジン音。

 逃走用の車と思われる黒い車が見えたが、美琴と黒子は動けない。

 体力がなくなったわけではない。

 美琴と黒子、そして敵といった様々な状況が交じり合い混乱が生じ、そしてそれは思考を確実に鈍らせていた。。

 序盤の攻防も痛みがなっかたからこそ思考がまとまっていたものだ。

 最終的に敵は攻撃を受けることなく悠々と出口に向かって歩いていった。

 

(早く追わなきゃ……)

 

 息も絶え絶えになりながら美琴は追いつくことを考えていた。

 負傷し、意図せずの再会とさまざまなことがあったがまだ事件は解決していない。

 むしろ敵が残骸を奪っていったので急いで追わなければ。

 負傷しているためいったんアジトに戻って治療しなければ。

 鈍化した頭で考えをまとめる。

 負傷し動きも鈍っているが、能力を自分の体内に送る。

 電気(・・)信号として痛みを少しでも和らげる。

 

「お姉様……まだ……」

 

 弱い。

 何もかも弱弱しくなっている黒子は追いかけようとする美琴の足首をつかむ。

 これなら簡単にほどけそのまま追いかけることができるが、美琴は立ち止まる。

 

「ごめんね、黒子」

 

 黒子の目を見ずに詫びだけを入れ振りほどく。

 

「――――」

 

 最後に黒子は何か言った気がした。

 だが美琴は振り向くことなくその場を後にした。

 その場を逃げ出すようであった。

 




どうもルシフェルです

ということで8話目
何とか3月までに更新できました
次の更新は未定です
余裕があれば書いていきますが時間があるかどうかすらわかりませんw

美琴、黒子、結標の3人ですが今回は原作とは違い美琴も暗部側ですからねぇ
そういうところをうまく書けたらいいなぁ
あと戦闘描写がんばらないとなぁ
今まで他の作品でも避けてきたけど苦手なんですよねぇ…

あと原作設定で美琴と結標とすでに会ってる感じの描写があるのですが、その日に何回も会ってるのか以前に何回も会ってるのかわからなかったのでここでは初対面ということになってます
まあ美琴が暗部に入って未来が変わったと考えれば…


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