「いっ……」
薄暗く殺風景な一室。
痛みを堪える声が響いていた。
「派手にやってたみたいだけど、大丈夫よ。一見大怪我にでも見えるけど、鎮痛剤と包帯さえ巻いとけば動けるわ」
「それは戦闘に支障ない?」
「それはあなたの頑張りしだいかしら」
「そう……」
あるアジトの一室で布束に手当てをしてもらっている。
といっても簡単なものだ。
刺さっていたコルク等を引き抜き、出血を止める。
あとは痛み止めをすれば完成という学園都市の携帯救急キットに入っているもので簡単に済ますことができる。
自分でもできるといったのだが布束が無理強いにでもさせてと言ってきたので任せている。
この怪我の原因である敵との戦闘。
それは完敗であった。
敵に残骸を奪われ、負傷し、挙句の果てには元後輩にまで傷をつけられた。
許さない。
そう思うのは傲慢だろうと関係ない。
痛みで胸を締め付けられる。
この気持ちの落とし前をつけなければならない。
「ここであなたを止められない私が情けないわね」
「いいわよ。お互い得意分野があるんだし」
情けないと呟く布束だがこれに美琴は笑顔で返す。
これには仕方ないと思う。
得手不得手があるので役割分担だ。
美琴は戦闘で、布束はバックアップで。
言わずとも最初からわかっていたことだ。
何も恥じるようなことなどない。
「これで大丈夫よ」
「うん、ありがとう」
肩などを回す。
体の調子を確かめる。
違和感は少し感じるが戦いに支障にはならないと思う。
ただ先ほどの応急キットなので傷を穿り返されるなどされなければだが。
今は怪我を抜きにしても十分に休息して挑みたいところではあるがそんなこと言ってられるわけがない。
すぐにでも追わなければならない。
深呼吸を一回。
息を整え、切り出した。
休憩は終わりここからまた戦いが始るのだ。
「で、あいつが何だかわかった?」
「また曖昧な表現ね。わかったって言っても場所とちょっとした情報だけよ」
布束は自分の役割をわかっている。
そのため美琴が帰ってくるまでの間、先ほど美琴が戦っていた少女の情報を調べていた。
特徴は怪我を負った美琴から聞いたため情報としてはおぼつかないが、こっちは暗部だ。
情報としては割かし深いところまでもぐれる権限を持っている。
布束は少しだけだが探し当てることができた。
霧ヶ丘女学院二年、結標淡希。
空間移動系統であるが、後輩にいた白井黒子とは少し違う。
最大の特徴は座標Aにあるものを座標Bに送ることができるという始点がいらない能力者だ。
レベル5とでも認定されそうなものですが、彼女には欠点があった。
「暴走事故ね……」
そう結標は暴走事故により、自分の体を移動の制限を余儀なくされていた。
もちろんできなくはないが、それでも自分の体を移動させる度にトラウマが蘇り自分の精神が参ってしまうようであった。
いざというときには使ってくるかもしれないが、美琴にとってはうれしい情報だ。
前の戦闘で自分自身に能力を使わなかったのには手加減でもされているのかと思ったが、彼女自身に問題があったようだ。
これで勝てるとは思わない。
だが勝つための要素の一つとしては有用な情報であろう。
さらにいうなれば美琴の勝つ条件は『残骸』を壊すことだ。
相手を倒す必要はない。
もちろんそれで美琴の腹が収まるかといえばそういうわけにはいかないが。
「わかった。ありがとう」
痛みもだいぶ引いた。
情報を不十分ながらそろった。
相手の予測ルートも先ほど教えてもらった。
手当てのために脱いでいたソックスと靴を履きなおす。
靴下は汚れたために新しいのを用意してもらった。
制服も洗濯済みの清潔なものをわざわざ用意してもらい、身も心も綺麗な気持ちに切り替える。
もっともやる仕事といえば汚れ仕事なのだが、と美琴は自虐だと思ったが口には出さなかった。
「じゃあ行くわ」
美琴は部屋から繰り出した。
外は日がすでに落ちていた。
公共の乗り物はすでに終わっており、現在動いているものは夜遊びを重ねるやんちゃな若者と逆に年を取った大人たちだけだ。
昼間とは違い圧倒的に数は少ない。
美琴はその中を走っていた。
いくら予測ルートに先回りする形で動いているといってもすぐに追いつくわけではない。
向こうも動いているのだから接触するまで時間がかかるだろう。
美琴は暗部の車を使ったが、途中から走っている。
帰りの足がなくなるのは困るため、戦闘に巻き込まないところまでで下ろしてもらった。
さてどこにいるものか。
と前後左右を確認しながら移動する。
相手は空間移動能力者なのでどこにいるのか全く想像できない。
もちろん普段は能力など使わずにぶらっと歩いているだろうが、現在は美琴たちが追いかけると予想して地上を移動しない場合も考えられる。
同じ空間移動能力者である黒子はどう行動していたのかと想像を働かせるが、能力事故による自身の転移は多用できないことを思い出し考えるのをやめた。
同じ空間能力者でも能力は違うし、性格も違う。
参考にはならないだろう。
だが注意は怠らない。
不可能ではないのであれば注意をするに越したことはない。
だが美琴は思っていた。
(でもあいつの性格からすれば……)
瞬間、前髪から火花を散らし能力を発動させ無理やりな動作で横に移動した。
ズドン!!と元いた場所から土煙とともに大きな音が聞こえた。
その音の正体を見る。
鉄骨。
どこかの工事現場からでも盗んできたのかとばかりのゴツゴツとした鉄骨でそれは人力では動かせないようなものであった。
怪我の影響からかいつもより数秒遅れての能力発動であったが、その鉄骨から逃れることができた。
急に上から降ってきた鉄骨。
これは誰が動かせるのであろうか。
もちろん能力を使えば動かせる人物は多くいるだろう。
たがこんなピンポイントで美琴を狙ってくる人物など今は一人しかいない。
確信した。
こんなものを動かすことができてなおかつ不意打ちともいえる強襲を美琴に仕掛けてきた人物。
それは、
「思ったより早い再会だったわね」
「結標淡希ッ!」
大能力者、結標淡希ただ一人である。
美琴は結標を見ていた。
いや睨みつけるでは足りない、確かな殺意を混ぜた眼光を彼女に向けていた。
彼女がいるのは鉄骨の上。
工事途中であろうビルの3階に豪胆に立っていた。
彼女の周りには数人の黒服の男が待機しており、こちらに銃を向けている。
同じように路地裏やビルの裏側からも銃を構えた男女が現れた。
こちらは私服の人たちも混じって、銃を持っているのが幾分不似合いに感じるが紛れもない敵だ。
一部私服で銃を構えていないのは学園都市の能力者だろう。
そんな男をはべらす悪女のように立つ結標はクスクスと笑いながら話しかけてきた。
「あらあら、怖い顔で睨んだら可愛い顔も台無しよ?」
「ふん、そんなこと思ってもないくせによくほいほい言えるわね」
「実際可愛いとは思ってるわよ。そしてその顔をぐちゃぐちゃに歪めたいともね」
バチッと再び頭に火花が散る。
その火花に反応して男たちが構えなおすが撃ってはこない。
結標の指示待ちなのであろう。
美琴は相手の煽りに反応してしまったために、無駄に電気を散らしたがゆっくりと心を静める。
無駄な焦りや怒りは油断を生むだけだ。
「単刀直入に言うわ。『残骸』を返してくれない? 今ならまだ間に合うかもよ?」
「もちろん嫌よ。こっちにも事情があるんだから」
もちろんわかっていた。
一応の事実確認だ。
そんなことで諦めるなら最初から事件など起こしていない。
意思が弱きものが暗部に逆らうことなどすれば1日もすれば握りつぶされる。
強いものでも失敗すればどうなるかわかっているはずだ。
だからこその今の結果だろう。
敵対してでも逃げ切る気でいる。
それを止めるのは今回は美琴である。
美琴も引けない。
暗部であること以外にも絶対能力進化計画の阻止がかかっているのだ。
互いの衝突はさけれるはずもなかった。
「じゃあね」
さもまた会えるような言いようで結標は言い放った。
一斉に銃音が鳴り響いた。
彼女は移動していた。
点と点との移動。
80メートル進み、次の地点へまた80メートルの移動。
空間移動。
応急処置はしたがボロボロの体で、歩くのも厳しい。
そんな彼女の移動手段として空間移動は重宝している。
彼女は徐々に近づいていた。
意識を首を振って取り戻しながら自分の同僚に電話をかける。
途切れ途切れながら優秀な同僚から様々な情報を聞く。
とゴガンッ!!といった轟音とともに天からの閃光がある一箇所に落ちたのが見えた。
雷が落ちた。
あの一帯は停電でもしているだろう。
その方向に空間移動しながら彼女は思った。
あそこで戦っている。
敵である結標、そして
「お姉様……」
白井黒子と御坂美琴の二度目の再会は刻々と近づいていた。
どうもルシフェルです
三ヶ月ぶりです
就活本当忙しいですw
まあ今月は3,4月に比べて多少マシになったので投稿できた感じですかねぇ…
ただやはり短い4000弱くらいしかかけなかった…
さて今回は一回戦後二回戦前の間の話
原作でいう8巻3章あたりですね
黒子も近づいてきてるのでどうなるのか…
次の投稿も就活中なので未定
ただ早く投稿はしたいw
では感想・評価・誤字・疑問等お願いします