窓から光が差し込み、朝を迎える。あの大敗北から三か月たった。僕のけがはすっかり良くなったが、僕らの活動拠点であった明星共和国は、あの戦いの敗北をきっかけに、滅亡することとなってしまった。
明星共和国の生き残りは日清帝国から船に乗り、海の向こう側にある大国、東洋水産合衆国に逃げ延びていた。当然だが、僕もその生き残りの一人である。
東洋水産合衆国は麺づくり族、マルちゃん族、ごつ盛り族、赤きつね族、緑たぬき族の五大民族によって治められており、それぞれの民族の代表数名が、これからの合衆国の政策について話し合う”連合議会”が月に一度開かれる。
そして、今月の連合議会では、我々明星共和国からの移民たちに対する政策の話をするらしい。今までは敗戦国ということもあり黙認されていたのだが、流石に三か月を越えてくるとなると、国としても僕らの存在を無視できなくなってきたということだろう。今回の連合議会の結果次第では合衆国から追い出される可能性もあるということだ。
「タン次郎、早く起きろ。もうすぐ会議が始まるぞ!」
兄が僕に言う。会議は数万人が入ることができる専用の会議場で大々的に行われており、誰でも聴くことができる。
「彼らは差別を受け、さらに戦争にも敗北しました。弱者である彼らを助けない理由などあるだろうか。合衆国として、ラ王朝の差別を許すわけにはいかない」
そう語ったのは麺づくり族代表のM・メイクだ。僕らを擁護してくれているみたいで少し安心した。他の民族も賛同してくれている様子を見せている。よって、僕らは現状維持ということになり、これからも合衆国に住んで良いこととなった。
「いやー、良かった」
会議の帰り道に一平ちゃん乃介が安堵した表情で呟いた。このおっさんは随分お気楽なようだ。
「このままずっと合衆国にいていいのだろうか」
僕は呟いた。僕らは戦いに負けてしまい、土地も失われ、多くの命も失ってしまった。すぐに取り返しに行きたいと言う気持ちがあっても、日清帝国、特にメン=ショクジンには全くかなわない。
すると、一平ちゃん乃介が
「悩み事か。タン次郎君」
「僕ら、本当にこのままでいいのでしょうか。もっと強くならないと」
「それならマルカ王国に行ってみたらどうだ。そこにいるぺヤン・ランスにあって来るといい」
と言って僕に地図をくれた。
「ぺヤン・ランス、もしかしてペヤン・グンスの知り合いなの?」
「ペヤン・ランス。グンスの双子の兄で何を考えてるのかわからない奴だ」
ペヤン・グンスは転生者だった。もしかしたらこいつも転生者かもしれない。
その日の夜、僕と兄は父にマルカ王国に行き、ぺヤン・ランスに会いにいきたいということを話した。反対されると思っていたのだが、一平ちゃん乃介が先に話を通してくれていたようであっさり許可が下り、三日後出発することに決まった。
「いよいよ明日出発だ。タン次郎、準備はできてるか?」
「もちろんさ、兄さん」
そう言うと兄は寝室に入っていった。僕も寝室に入る。僕は、ベッドの上でぺヤン・グンスの事を思い出していた。蒙古神久は自分とメン=ショクジンとの戦いが唯一の不確定要素と言っていた。となるとぺヤン・グンスが負けることも予期していたのかと、ふと疑問に思う。蒙古神久とぺヤン・グンスも何かしら関りがあったのかもしれないな。そんなことを考えつつ僕は眠りについた。
翌朝、僕たちは合衆国を出てマルカ王国へ向かった。
マルカ王国までは馬を走らせても1週間かかる。長い旅になりそうだ。
国境を抜け、しばらく走っていると大きな門と人影が見えてきた。
「クックック、ここからは遠さないでやんす」
出発初日から面倒なことになりそうな気がする。
「我々はマルカ王国に向かっているものだが、地図によるとここからしか行けないみたいだ。通してくれないだろうか」
兄がお願いする。
「ここからは我が王クッタ様の領域。通すわけには行かねぇですよ。さあ帰った帰った!」
癖の強いやつだな。クッタ様って任○堂かよ。
「地図にそんなものは載っていないはずだが……」