我が瞳、映すは勝利のみ【完結】   作:ぼっちクリフ

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第四章 ウインザーノットとニホンピロウイナー

コースに出たシンボリルドルフは、自分に視線が集まるのを感じていた。

秋の天皇賞、府中芝2000m。あらゆるレース関係者から指摘される「内枠有利、外枠不利」の鉄則。府中2000mはゲート直後に急なカーブがあり、どうしても外枠は不利になってしまう。そしてシンボリルドルフが引いたのは、よりにもよって17人中17番という一番大外。

 

(たとえシンボリルドルフと言えども、府中2000の外枠は不利。ひょっとすれば、ひょっとして……)

 

もし、現役最強であるシンボリルドルフを倒せば、惜しみない賞賛と輝かしい栄光が手に入る。いや、それどころかトゥインクル・シリーズの歴史にその名を刻む事ができるかもしれない。

その野心が、多くのウマ娘を打倒皇帝へと駆り立てていた。中でも、この2人。

 

「あらルドルフ、もう怪我の調子はよろしくて?」

「待っていたよ、お前が来ないと始まらない」

 

純白のドレス風勝負服を着たウマ娘ウインザーノットと、同じく白地に黄色い袖の着物風勝負服を着たウマ娘ニホンピロウイナー。この2人こそ、秋の天皇賞で皇帝のライバルとなりうると見られていた。

 

「あぁ、今日は調子が良いんだ。良いレースをしよう」

 

ルドルフはにこやかに笑って2人に応える。

 

ウインザーノットは昨年と今年、函館記念を連覇した2000mのスペシャリスト。由緒正しい血筋の名門お嬢様であり、得意な距離でなら皇帝に勝てるかもしれないと言われていた。

ニホンピロウイナーは昨年のマイルCS、今年の安田記念と既にGⅠ2勝を果たした、通称「マイルの皇帝」と呼ばれるウマ娘。もしマイル戦ならば皇帝シンボリルドルフですら叶わないのではと言われている。今年は2000mのGⅢチャレンジカップにも勝ち距離の壁も克服、この秋の天皇賞で打倒皇帝を宣言していた。

 

 

しかし、その2人を相手にしてもなお人々は皇帝シンボリルドルフの勝利を疑わず、圧倒的な1番人気。2番人気のウインザーノット、3番人気のニホンピロウイナーにしてみれば、面白くない事この上なかった。

 

(見ていなさい、吠え面かかせて差し上げますわ!)

(お前の本領は2400m以上、この府中2000でしかも枠はこちらが有利なら――チャンスはある!)

 

静かに闘志を燃やす2人のウマ娘に、ルドルフは内心安堵していた。

天皇賞はトゥインクル・シリーズでもっとも権威あると言われるレース。そのレースを回避するウマ娘が相次いだというのは、由々しき事態だった。中には重賞も勝っていない、記念参加のようなウマ娘すらいる。

もしこれで誰も自分を見ずに、つまらないレースになってしまえば――その時こそ、人々はレースを「魅力の無いもの」と断じてしまうだろう。

しかし、この2人は、そして他にも幾人かのウマ娘達は、皇帝シンボリルドルフの首を取ろうと刃を研ぎ澄ませている。それでこそウマ娘、それでこそGⅠレースだ。

 

高らかにファンファーレが響く。

秋の天皇賞、ゲートインの時間だった。

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