チャイムの声を聞いた俺たちは困惑していた。まずモニターに映ったおよそ人間のものとは思えないシルエットに不快になる変な声と話し方。これら全てひっくるめて俺たちの頭はこんがらがっていた。
「何ですかね、これは?」
まず口を開いたのは青山だった。
「知るかよ!」
答えたのは九鬼。この二人の言葉を皮切りにみんながざわざわとし出すが、誰もこの困惑に対する答えなど持ち合わせてはいなかった。ただ、口に出すことでこの困惑を少しでも収めたかっただけなのだ。でもホントはみんな分かっていたんだ。こんなところで話していたところで何の解決にもならないなんて事は。
それを打ち破ったのは玉城だった。
「こんなところで話していても仕方ないだろう。俺は体育館に行くがお前等はどうするんだ?」
その言葉でシンと静まりかえる。
「確かにそうだね。とりあえずここにいても状況は変わらないよ!」
静寂を切り裂いたのは甘寺。
その言葉に誰も返す言葉は出てこない。
「行くしかない・・・か・・・。」
薬師がポソッと呟いたことは結局のところ俺たちみんなが心のどこかで思っていたことだった。
こうして2人の言葉を聞いた俺たちはとりあえずのところであるが体育館に向かうことになったのである。
とりあえず、体育館に来たは良いものの、やはり不安は拭えない。どうしても尻込みをしてしまう。
「何をしてる。早く入れ。」
玉城が急かす。
「そんなに言うなら君が開ければ良いじゃないか。君が言い出しっぺだろうに。」
アンリが言い返す。
「おれもそう思うぜ?」
二木も同調する。
ため息を吐いて玉城は仕方がないと言わんばかりに体育館の重い扉を開けた。
体育館に入った俺たちはまず俺たちを呼び出した本人がいないことに気づいた。もう訳が分からない。そんな俺たちは呆然と立ち尽くしていた訳であるが、その数秒後、どこからともなくそれは聞こえた。
「ぐぷぷぷぷ、じゃあそろそろ始めようぜ!!!」
ステージの上、一般的な学校なら校長が話す場所、そこから“それ”は飛び出してきた。
「なんだい、あれ?」
「ぬいぐるみじゃねーの?」
急に飛び出てきた“それ”に俺たちは驚きと困惑を隠せない。
「ぬいぐるみじゃねーぜ?モノトラ様だ!!!」
モノトラと名乗った“それ”は不遜な態度で俺たちを見下ろしている。
「なんだテメェ!?」
「だからモノトラ様だっつってんだろ!!」
これではらちがあかない。感情的になっている九鬼を抑え、久見が尋ねた。
「君が僕たちをここに閉じ込めたのー?」
端的かつ俺たちが一番知りたいこと。それを彼女が問うてくれた。
「そうだが。何か?」
モノトラは悪びれもしない。
「目的は何ー?」
「あー、なんだ、アイツみてえに回りくどいのは苦手だな。言っちまえ!オレらの目的は“絶望”ってところだな。」
この一言を聞いて俺たちは体を強ばらせた。それもそうだ。数年前、この希望ヶ峰学園を襲ったコロシアイ事件、その首謀者集団の名前は「超高校級の絶望」なのだ。俺たちはどうしてもそれを想起せざるを得ない。
「つまり、俺たちコロシアイをしろと?」
臆面もなく玉城が聞いた。
「ぐぷぷ、話が早えじゃねぇか。そうだ。オマエラにはコロシアイをしてもらう。つってもただ殺し合わせるんじゃつまんねえからな。ルールを用意した。」
やっぱりと思った矢先、コロシアイのルールなどというある意味矛盾した言葉も聞こえてきた。
「簡単だ。誰にもバレねえように殺せ。バレずに殺れたやつはここから出してやる。バレたらダメだ。そいつはオシオキだ。」
「そのオシオキっつーのは?」
「人1人の命を奪うんだぜ?分かってんだろ?処刑だよ。」
「悪趣味なっ・・・!!」
モノトラの言うことに腸が煮えくりかえりそうだった。あまりにも自分勝手すぎる。
「ま、別に殺し合わなくても良いんだぜ?そんときは一生ここから出られねえがな。ただ、ここからでねえっつーならまあ、オマエラが死ぬまで面倒は見てやるよ。」
どういうことだ?殺し合わせたいのに殺し合わなくて良い?コイツは一体何を言っているんだ?
「おーおー、困惑してやがんなぁ!そりゃオレらの目的は“絶望”、オマエラが死ぬこと自体ではねーからな。オマエラが絶望した顔が見られれば何でも良い訳だ。まあ、同じ絶望してもらうんなら派手な方が良いからな。もちろんコロシアイが起きるように仕向けさせてはもらうぜ?だから、オマエラは殴殺撲殺刺殺斬殺毒殺絞殺轢殺焼殺射殺銃殺扼殺暗殺忙殺薬殺圧殺溺殺氷殺抹殺爆殺縊殺礫殺焚殺呪殺何でも好きなようにやってくれ。」
コイツッッ!!俺たちみんなが奴に対する憎悪を向けていた。その瞬間。足下に何かが投げつけられた。何だこれ?
「アブねー!!渡し忘れるところだったぜ。そいつは電子学生手帳。オマエラの全部の情報も載ってれば、色んなとこのカギにもなる。絶対なくすんじゃねーぜ!あと、そいつん中の校則も確認しとけよ?破ったらオシオキだぜ?じゃーな!!!」
「おいっ!待てっ!!!」
言いたいことだけ言っていなくなってしまったモノトラに俺たちは怒りを隠しきれなかった。
だが、冷静になれ。奴の言うことも一理ある。余計なとこで死ぬのは損なんてモノじゃない。まずは校則を確認しておくべきだろう。そう思い、電子学生手帳の校則のページを開いた。
【校則】
1.生徒達はこの学園内で無期限の共同生活を行うこと。
(ほんとはこれを最初に言うつもりだったんだがめんどくさくなったんだろうなぁ。)
2.夜10時から朝7時までを夜時間とし、その時間内には一部立ち入り禁止区域を設ける。
(なるほど、この時間は気をつけなければ一番破ってしまいかねないな。)
3.就寝は寄宿舎内の個室及びラウンジのソファにてのみ可能とする。それ以外の場所での故意の就寝は罰の対象となる。
(寝落ちには気をつけなければな。)
4.希望ヶ峰学園について調べるのは自由とする。特に行動に制限は課されない。
(これで安心して出口を探せるな。)
5.モノトラへの暴力及び監視カメラの破壊を禁じる。
(やはり逸らなくて正解だったな。)
6.仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となるが、自分がクロだと他の人に知られてはならない。
(これがモノトラの言っていたコロシアイか。)
7.生徒間で殺人が起こった場合、その一定時間後に生徒全員の参加が義務づけられる学級裁判が行われる。
(学級裁判・・・?こんなのモノトラは一言も言ってなかったぞ?)
8.学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、クロだけが処刑される。
(要はこれがモノトラがバレるなって言ってた奴とオシオキか?)
9.学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合、クロだけが卒業となり、残りの生徒は全員処刑となる。
(なっ・・・!ただ犯人が逃げられるだけじゃないのか!?かなり命がけって事か・・・。)
なお、校則は順次増えていく場合がある。
なるほど、校則はこんなところか・・・。
「水島君、怖い顔してどうしたの?」
「っ!」
ビックリして飛び退いてしまった。どうやらただ甘寺が話しかけてきただけのようだ。
「すまない・・・。ただ校則の確認に集中してしまっていたんだ。」
「もう、こっちがびっくりしたよ・・・。」
「ホントに申し訳ない。」
まだ困惑が隠しきれない俺たちに対して玉城が口を開いた。
「さて、喫緊で一番の問題はお前達全員な訳だが。」
「は?」
つい聞き返してしまった。
「分からないのか?この現状で、誰が今のモノトラが言ったことを真に受けるか分かったもんじゃないんだぞ?この中の誰が誰を殺してもおかしくない。」
「そんな訳・・・」
「無いと言えるか?俺たちはまだ出会ったばかりでお互いのことを全く何も知らないというのに。」
みんなが口をつぐんでしまった。誰も思わなかったわけじゃない。お互いに対してまだ一切の信用が無い状態。その中でここを出るためにコロシアイをしろと言われたら誰も信用することができないだろう。
「何より、一番信用ならんのはお前だぞ、水島。」
「っ!!!」
「そうだろう?さっき薬師がお前の才能を聞いたとき、お前言葉に詰まったな?自分の才能もすぐに答えられん奴のことを俺は信用することはできん。」
そうだ。俺にはその問題もあった。俺は自分の才能が思い出せない。それにも関わらずこんな状況に放り込まれてしまった。
「お前が何者かは知らんが、もし最初に殺しが起こるとしたらその時お前は被害者かクロ、どっちかでは関わっていることだろうな。」
「おい・・・!」
薬師が玉城を制止した瞬間、玉城が既に宙を舞って吹っ飛んでいた。そこにいたのはフーッ、フーッと息を荒げた九鬼だった。
「おい、さっきから聞いてれば何だよその言い草はよぉ!!!オレはテメェみてぇな奴が一番気に食わねぇんだよ!!!」
「九鬼も落ち着けって!!だけど玉城も玉城だぞ!気ぃ立ってんのは分かるけど水島に当たんのは違えだろ!?」
どうにかその場を収めようとしているのは薬師だった。
「フン。得体の知れない不審者と海の厄介者、お似合いじゃないか。どうかさっさと消えてくれ。」
「おい、玉城!!!」
捨て台詞を吐いてさっさと出て行ってしまった玉城とその背中を追おうとする薬師。全く、面倒なことになったものだ。
呆れる俺とまたキレそうな九鬼。2人のもとにやってきたのは太宰だった。
「2人とも、あんまり気にしない方が良いよ?何よりこういうときって真っ先に死ぬのはどっちかって言うと玉城くんの方だしね。」
「本の話、だよな?」
「もちろん。それにそもそも僕らは逆にお互いの才能くらいしか知らない。どうせお互いの理解度なんてほぼ0なんだから。気にするだけ無駄さ。」
「そーそ、アイツの勝手な言い分なんて無視しちまえばいいって!!」
太宰と二木が俺たちを励ましてくれる。だが、太宰の言ったことは半分ホントで半分がおべっかだろう。本心としては「どうせお互い信頼できないんだから才能が分かっているかどうか、どんな才能を持っているかなんてことは関係ない」といったところだろう。
だが、そんな中でも俺たちの事を気遣ってくれる2人の優しさには正直救われた。
「2人ともありがとう。」
「すまねえ、どうしても我慢ならなかった。」
「九鬼も水島を思ってのことなんだろ?なら誰も責めやしないって!」
「九鬼も、ありがとう。」
「いいってことよ!」
少しだけみんなの雰囲気が和らいだ気がした。
学園に閉じ込められて、コロシアイをしろなんて言われて、玉城が好き勝手言って、こんな状況になって初めて少しだけみんなとの距離が近づいた気がした。
でもやっぱりこの段階でも俺たちはまだ気づいていなかったんだ。
この学園での生活には絶望しかないということに。
【生存者】
超高校級の??? 水島輝(ミズシマアキラ)
超高校級のショコラティエ 甘寺心愛(アマデラココア)
超高校級の射撃選手 薬師弾(ヤクシダン)
超高校級の棋士 玉城将(タマシロショウ)
超高校級のサッカー選手 二木駆(フタキカケル)
超高校級の長距離ランナー 涼風紫(スズカゼユカリ)
超高校級のドラマー 山吹巴(ヤマブキトモエ)
超高校級の女優 有浜鈴奈(アリハマスズナ)
超高校級の資本家 アンリ・シャークネード
超高校級の執事 畔田鋼之助(クロダコウノスケ)
超高校級の漫画家 久見晴香(ヒサミハルカ)
超高校級の図書委員 太宰直哉(ダザイナオヤ)
超高校級の画家 美上三香子(ミカミミカコ)
超高校級のテーラー 青山蓬生(アオヤマホウセイ)
超高校級の海賊 九鬼海波(クキミナミ)
超高校級の空手家 比嘉拳太郎(ヒガケンタロウ)
残り16人
さて、ここでプロローグが終了となります。モノトラは何となく僕自身があのモノクマの悪趣味さを出し切るのは難しいんじゃないかと考え出してみたオリジナルのGM役です。コイツは一体どのように物語に関係していくんでしょうか・・・?
次の本編は第1章に入り、遂に本番という形です。楽しみにしていただければなと思います!
その前に、まずキャラ紹介を挟みたいと思うのであしからず
そして今回の最後に。
今後の都合上大きく構造を変化させた寄宿舎1階のマップを載せておきたいと思います。希望ヶ峰学園再開に向けた改修の際に再設計した、とでもお考えくださいませ。
他の場所はせいぜい体育館とプールの奥のところにそれぞれを繋ぐ階段が追加されている、とだけ認識していただければ幸いです。
{IMG96625}
最終盤まできておいてなんですが、皆さんの推しを教えてください!!
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水島輝
-
甘寺心愛
-
薬師弾
-
玉城将
-
二木駆
-
涼風紫
-
山吹巴
-
有浜鈴奈
-
アンリ・シャークネード
-
畔田鋼之助
-
久見晴香
-
太宰直哉
-
美上三香子
-
青山蓬生
-
九鬼海波
-
比嘉拳太郎