CHAPTER5 (非)日常編1
夜中にふと目が覚めた。有浜の事件以来2回目のことだ。何となく目が覚めてしまったのだ。
「こういうときは…、図書室だな。」
布団から起き上がり、寄宿舎の部屋を出る。
やはり一番心が落ち着くのはミステリー小説を読んでいるときだな。
あんなことがあった、しかもミステリー小説と近い出来事だったにも関わらず楽しむことができるのだからきっと俺は本格的なミステリー好きなのだろう。視線を感じてふと顔を上げるとそこには久見がいた。
「うわっ!」
「うわっとはご挨拶だなー。」
「いや、なんで俺の顔をのぞき込んでるんだよ。」
「本読んでる姿ってあまりちゃんと見たことないなーって思ってねー。」
「ビックリするからやめてくれ…。それにしてもどうしてこんなところに?」
「ちょっと目が覚めちゃってー。裁判で疲れてるはずなのにねー。」
「悩み事か?」
「うーん、と言うより考え事ー?」
「考え事?何を?」
「内緒ー。乙女の秘密なのだー。ところで輝くんってあまりこういう夜更かしってしないよねー?」
「ああ、今日は珍しく、だ。」
「…だよねー。」
「…?」
「ま、いいやー。どうせ眠れないなら僕とお話ししようよー。」
「ああ、いいぞ。」
久見の一瞬見せた思うところのありそうな顔は少し気になったがそんなことは久見と話している内に忘れてしまっていた。気付いたらモノトラの朝のアナウンスが流れていた。
CHAPTER5 ビターホープ・メルトダウン (非)日常編
久見と話している内に図書室で朝を迎えてしまった俺は久見と一緒に食堂へと向かうことにした。
「はよーっす。」
「ああ、おはよう。」
「おはよー。」
「あれ?輝君、晴香ちゃんと一緒に来たの?」
「ああ。」
「朝まで一緒にいたからねー。」
爆弾投下。食堂で大爆発を起こした。空気が凍った。
「ふ、ふーん、二人とも仲が良いんだね…。」
「お、おい!久見、その言い方は語弊が…!」
「えー、どこがー?一晩中楽しかったじゃーん。図書館で二人っきりでさー?」
爆弾は連投された。こうなるともうリカバリーは不可能な気がしてきた。
「…水島、お盛んなのは構わないが場所は選んだ方が良い。」
「玉城っ!!?」
玉城まで何を言い出すんだ!!?
「たまたま昨日眠れなくて図書室にいたらちょうど久見が来たから話してたら朝になってただけだって!!何もやましいことはない!!」
心ばかりの抵抗をしてみるが周りの温かい目と甘寺の冷たい目が止まる気配はない。薬師に至っては、
「照れなくていいっつーの!!うらやましいことこの上ねえけどよ?」
などと宣っている。どうやらこの抵抗は無駄らしい。
「…おめーら何やってんだ?」
唯一朝食を作るために厨房に引っ込んでいた九鬼が朝食を持って出てきた。コイツにどうにか助けてもらおうと思ったんだがすかさず薬師に事情を言われ、
「…おめーよー、随分倒錯してねーか?」
「ちがーう!!!!!」
ただ俺達のことを誤解した人物が増えただけになってしまった。
朝食が終わった後、また一通りみんなにイジられて朝から疲れてしまった。
「さて、学級裁判が終わった、ということは分かるな?」
玉城が話題を転換させた。
「あ!そっか!新しいエリア開放だ!」
「そうだ。昨晩確認してみたら既に5階が開放されていた。少し休んだら探索して報告会をするぞ。」
「アイアイサー!!」
とりあえず玉城のおかげで助かったようだ。
5階に行くと何やら異様な雰囲気が流れていた。
「何だか気味悪いな…。」
「うーん、前の希望ヶ峰学園のコロシアイ学園生活の時には5階の生物室が死体安置所に改造されてたらしいしー、もしかしたら今回もそうなのかもねー。」
「おいおいやめてくれよ…。」
「まあまあ、とりあえず探索してみようよ!」
とりあえず階段のところで分散して探索を開始することにした。
まずは…、近いところからだな。とすると武道場か。
「あ、水島やっほー!」
武道場に入ると既に涼風が来ていた。
「とりあえず何があるのか手分けして探索するぞ。」
「おっけー!」
まず気になるものとしては…、ロッカーか。
「なんか居酒屋の靴箱みたい。」
「…言いたいことは分かる。」
武道場のロッカーは形は普通のロッカーだが、そのカギは木の札を差し込む形になっていた。
ロッカーを開けてみるとそのそれぞれに弓の入った袋と矢筒が置かれていた。それぞれを開けてみるときちんと弓と矢が入っていた。
ロッカーを閉めると次に目に付いたのが巻き藁だった。
「この太鼓の偽物みたいなの何?」
「太鼓の偽物て…。これは巻き藁だ。弓道の練習をするときに使うんだよ。」
「あ、そういうことね!」
次に開けたところに目を向けてみると桜吹雪が舞い散っていた。
「なんでこんなところに桜が…?」
「でもあたしたち入学したばっかじゃん。」
「いや、それはそうなんだがここは屋内だろ?」
「あ、確かに。」
「まあそこは置いといてもいいか。ここは武道場というより弓道場だな。まあ、剣道とか長刀くらいなら落ちないように気を付ければできないことはないだろうが。」
「そんな感じだね!」
次に行こうと振り返ると中々に立派な鎧兜が置いてあった。
「これはまた立派だな。」
「模擬刀がくっついてんだね。」
「まあ、これを使う機会はないと信じたいな。」
これでとりあえず一通りここの探索は終わっただろう。
「よし、じゃあ次に行くか。」
「そうだね!じゃ、また報告会で!!」
「ああ。」
武道場の入り口で涼風と分かれて俺は次のところに向かうことにした。
次は目の前の植物庭園に入った。そこでは玉城と薬師と九鬼が既に調査を始めていた。
「お、水島!」
「なんだ、お前も来たのか。」
「ああ。ちょうど目の前の武道場にいたんでな。」
「うし、じゃあ一緒に探査すっか!」
まず目に付いたのは何と言ってもずっと見たいと願ってきた青い空、のように見えるペイント。
「さっきモノトラが来たんだけどよ、どうやら少しでも開放感を味わえるように空のペイントしたんだとよ。」
「なんだそれ…。」
そう思うならさっさと外に出してほしいものだ。
次に目に留まったのが庭園の中央にある巨大な南国風の花だ。
「モノトラはこの花についても説明していったのか?」
「ああ。どうやら超高校級の植物学者によって品種改良されたものらしい。真偽は不明だがゴミを入れるとそれを溶かして栄養にするらしい。」
「そんなこと本当に可能なのか?」
「だから真偽は不明だと言っただろう。まあ、超高校級が作ったものであるとしたら充分に可能性はある話だと思うがな。」
まずはぱっと見で目に付くのはこの辺だろう。さて、そろそろ本格的な探索を始めるとするか。
最初に目をつけたのは小さな小屋とその近くの謎の機械。
「これは…、スプリンクラーの制御装置、か。」
機械の方にはスプリンクラーの制御装置と書いてあった。詳しく見てみると、どうやらこの植物庭園では朝の7時半に植物への水やりのためスプリンクラーが作動するらしい。このスプリンクラーの作動時間は一応この制御装置で弄ることはできるようだがその制御装置自体にカバーがつけられており、俺達が操作することはできなくなっているみたいだ。
その近くの小屋に近づくと中からニワトリの鳴き声が聞こえてきた。
「こんなところでニワトリを飼っていたのか。」
小屋の中をのぞき込むとそこには5羽のニワトリがいた。もしかしたら俺達が普段食べている卵はここのニワトリから採取しているものかもしれないな。
次に気になるところは真ん中の花壇を挟んだ反対側にあるこのニワトリ小屋とは打って変わって大きい小屋か。
小屋の中に入ると九鬼が探索を進めているようだった。
「おっす水島。」
「何か見つかったか?」
「いや、特に大きなものはみつかってねーな。どうやらここは物置小屋みてーだぜ。」
九鬼の言葉を元に周りを見回してみると確かにこの小屋は物置小屋のようだ。
「スコップに除草剤、化学肥料、花の種、あとよく分からんがツルハシも置いてあるな。」
「何でツルハシが。」
「花壇の石を砕くんじゃねーか?」
「こんな建物の中の花壇のどこに石があるんだよ?」
「…それもそうだな。何でだ?」
それは俺にもよく分からないがそのツルハシをよく見てみると日本最大の暴走族のチーム名が彫ってあった。そう言えば昔のコロシアイに参加させられた生徒の中には超高校級の暴走族の名前があったな。もしかしたらその生徒がここに持ち込んでいたのかも知れないな。校舎を改築したのにわざわざこれも残したのか。
小屋の外に出てみるとそこには袋入りの土がいくつか積み重ねられていた。
「結構しっかり管理できるようになっているみたいだな。」
「どうせだったら学級庭園みてーなのもやってみてーな。」
「それはそれで面白そうだな。」
これで一通りこの植物庭園は調べ終わったか。
「じゃあ俺は次のところに向かってみるよ。」
「おう!じゃあな!」
九鬼と分かれた後薬師と玉城に出ることも伝えて廊下に出た。廊下が途中で分岐して校舎の奥の方に向かう廊下の曲がり角のところに1つ教室があった。
「ここは何の教室だ?」
教室に入ってみるとそこは何の変哲もない普通の教室だった。だけどそこでは久見が何か思うところのありそうな顔で立っていた。
「何してるんだ!?」
「わっ、輝くんどうしたのー?」
「いや、探索してるんだが。」
「それもそっかー。」
「それで何してたんだ?こんなところで。」
「うーん、ちょっとこれを見てほしいんだけどさー?」
そう言って久見は1つのファイルを俺に見せてきた。それは図書室の奥の書庫に置いてあった希望ヶ峰学園再建計画、通称・プロジェクトRのファイルだった。
「…これ、持ち出していいのか?」
「モノトラに許可を取ってるから大丈夫だよー。」
「そうなのか…。」
そんな話はどうでも良くて、とりあえず彼女が見せてきたページをのぞき込んでみると、それは凄惨な殺人現場の写真だった。
「…なんだよこれ…?」
「人類史上最大最悪の絶望的事件って覚えてるー?」
「…ああ。」
「それには前段階があったんだけどー、それが“希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件”。当時の希望ヶ峰学園のメンバーが“超高校級の絶望”江ノ島盾子にけしかけられてコロシアイ、いや殺し合いを行った。それをきっかけに後の事件に繋がってくんだけどー、その殺し合いの現場がこの教室ー。」
久見の話を俺は黙って聞いていた。いや、黙っていることしかできなかった。
「まあ校舎が改築されてるわけだしその跡が残ってるとは思ってはなかったんだけどー、でもやっぱり何となく思うところはあったよねー。」
「そういうことか。」
「よーし、じゃあー、次のところ行こっかー。あとどこに行ってないのー?」
「あとは生物室だな。」
「おおー、それは勇気あるねー。」
「いや、さすがにあっちも普通に戻ってるだろ…。」
「ま、それもそっかー。」
さすがにまた死体安置所になってるとは思いたくない…。
教室を出て廊下を奥に進むと件の生物室があった。扉の前には甘寺が立っていた。
「あ、輝君!輝君もこっちに来たの?」
「ああ、ラストだ。」
「まあ、あんな話聞いちゃうとね。」
「ああ、少し後回しにしてた。」
とは言ってもずっとそうしているわけにも行かないので扉の取っ手に手をかけた。
少し覚悟を決めて扉を開けると俺は拍子抜けした。
「…普通だな。」
「…普通だね。」
生物室は生物室だった。何を言ってるか分からねーと思うが。要は死体安置所なんかにはなっておらず、普通の生物室だったのだ。
「なんか怖がって損しちゃったね。」
「ああ、その通りだ。」
結局生物室を探索して回ったが、生物の実験で使いそうな薬品やメスや鋏、ホルマリン漬けになった標本と、普通の学校よりは充実しているかなくらいの設備が置いてあっただけだった。
モノトラの奴がみんなの死体をどこへやったのか、その真実は終始分からなかったが、まあ、下手げに見つけてしまうよりかは遙かにマシだろう。
「よし、じゃあ戻るか。」
「そうだね!お昼食べながら報告会だね!」
ということで俺達は食堂に戻り、昼食を食べながら5階の探索の報告会をやった。
「と、今回の報告はこんなところだな。」
「いや、もう1つ抜けているところがある。」
「抜けているところ?」
「気付いていないのか?校舎の他の部分にはあって5階にはなかったものがあっただろう。」
「うーん、あ、階段のことー?」
「その通りだ。」
「階段がなかったっつーことは、これで校舎は全部開放されたっつーことか?」
「ああ。まあ、寄宿舎の2階はまだ残っているがこちらは基本的に寄宿スペースの1階と構造は変わらん。大した発見はないだろうよ。」
「ま、寄宿舎だしそうだよなー。」
「うっしじゃああとはのんびりすっか!あ、甘寺!涼風!久見!ちょっと残ってくれ!」
「?いいよ?」
報告会が終わると九鬼が女性陣を呼び出していたが、とりあえず俺達男子には関係なさそうなので俺達はそれぞれ部屋に戻って各々自由に過ごすことにした。気付いたら夜になっていて夕食を食べたあとはまたそれぞれの部屋に戻って夜時間になるまで時間を過ごした。
キーン、コーン… カーン、コーン…
「10時になりました。ただ今より夜時間となります。食堂はロックされますので速やかに退出してください。それではよい夢を。お休みなさい。」
【モノトラ劇場】
「本能寺の変ってのは結局のところ何が原因だったのかってのは未だに分かってないらしいぜ?」
「一昔前は信長によるパワハラに耐えられなくなった光秀が…、なんて話が主流だったみてーだがよー、」
「信長自身は相当光秀の事を重用していたらしいぜ。」
「他にも比叡山の焼き討ちが原因だったとか、実は朝廷と裏で繋がってたとか色んな説があるがよ、」
「結局のところこれが原因だ!ってのは判然としてねーんだぜ。」
「まあ結局何を言いたいかっつーとよー、」
「人っつー生き物は何が原因で裏切るか、他人を殺すかわからねー恐ろしい生き物だっつーことだな。」
「ぐぷぷぷぷ…。」
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【生存者】
超高校級の幸運? 水島輝(ミズシマアキラ)
超高校級のショコラティエ 甘寺心愛(アマデラココア)
超高校級の射撃選手 薬師弾(ヤクシダン)
超高校級の棋士 玉城将(タマシロショウ)
超高校級の長距離ランナー 涼風紫(スズカゼユカリ)
超高校級の漫画家 久見晴香(ヒサミハルカ)
超高校級の海賊 九鬼海波(クキミナミ)
残り7人
はい、ということで今回から第5章開幕です!なんだかんだここまで来てしまいました!1年近く前、これを書き始めたときにはここまでこれるとは思っていませんでした(エピローグを迎えてから言え)。前回のラストの衝撃情報がみんなに伝えられるのいつになるのでしょうか…?乞うご期待です!!
それでは今回の設定裏話に参りましょう!ここからは数回にわたって第4章の裏話です!
今回は第4章タイトル編です!
さて、第4章のタイトルは「死に逝く者に蜘蛛の糸を」でした。これは畔田が自らの死を以てアンリの救いを望むけどそれは救いにはなりえなかった、という今回の事件のあらましを詰め込んだタイトルです。ただ、これには元ネタも存在しています。それは某黒い執事が出てくる漫画のセリフです。そこにおいては蜘蛛の糸は人間の執念の象徴のような言われ方をしていましたが、そこはそれ、ダンガンロンパですので救いのようで救いにはならなかったものとしてタイトルに入れさせてもらいました。
ということで今回はここまで!!それではまた次回!!
最終盤まできておいてなんですが、皆さんの推しを教えてください!!
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水島輝
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甘寺心愛
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薬師弾
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玉城将
-
二木駆
-
涼風紫
-
山吹巴
-
有浜鈴奈
-
アンリ・シャークネード
-
畔田鋼之助
-
久見晴香
-
太宰直哉
-
美上三香子
-
青山蓬生
-
九鬼海波
-
比嘉拳太郎