キーン、コーン… カーン、コーン…
「おはようございます。7時になりました。今日も一日元気で頑張りましょう。」
朝、か…。昨日とは打って変わって何だかしっかり眠ることができた気がする。昨日は九鬼が朝食を作ってくれたし、今日は俺が朝食を作るか。
キッチンで朝食を作っているとそこにちょうど九鬼が入ってきた。
「おー、水島!今日はお前が朝飯作ってんのか!」
「ああ。昨日は九鬼が作ってくれたからな。」
「あー、まあ、飯作れるメンバーがもうオレとオメ-くらいしかいなくなっちまったもんなぁ。」
そう、しかもこれまではかなりの割合で畔田が食事を作ってくれていた。その畔田を喪って、俺達は、特に食事担当もする俺と九鬼の2人は特にその存在の大きさをあの学級裁判から2日目にして感じている。ショコラティエである以上甘寺も料理はできるのだがいつもおいしいデザートを作ってくれている分余計な負担はかけさせまいということで他の料理できるメンバーが交代で食事を作っていたのだがいつの間にかその料理できるメンバーも俺と九鬼の2人になってしまっていた。
「前々から思ってたがよ、やっぱオメー手際いいな。」
「まあな。うちは母子家庭だったからな。母さんが仕事で忙しい時には俺が結構食事を自分で作ったりしてたしな。」
「そういうことか。なんかオメーの飯からはお袋の飯みてーな暖かさを感じるんだよなー。すっげーホッとする。」
「そうか?それなら嬉しいんだが。っと卵焼きができたから持って行ってくれ。」
「おう!任された!」
そんな話をしながら食事の準備をしているとだんだんの内にメンバーが集まってきて人数は少なくなってしまったけれどそれなりに賑やかな朝食を囲むことができた。
朝食を食べ終わって片付けをしようかと思ったその時、九鬼が男子に声をかけた。
「おう、男共!!」
「なんだ?」
「片付け終わったらちっと顔貸せや!」
本当になんだ?ボコられるとでも言うのだろうか?発言が不穏すぎる。まあ、気にしても仕方ないし、とりあえず食器の片付けを済ませてしまおう。
片付けを終わらせて食堂に戻ると既に他の女子はどこかに行ってしまっていた。
「で、結局何の用だ?」
「おう!ちっとオメーらに頼みてー事があんだ。」
「頼みたいこと?」
「ま、続きは言ってから話すわ。とりあえずオレと一緒に植物庭園まで来てくれや!他の女どもはもう先に行ってんだ!」
何だかよく分からないが逆らってもいいことにはならなさそうだしついていくことにしよう。他の女子も集まっているならそこまでひどいことにはならないだろう。
植物庭園に行くと九鬼の言葉通り女子が既にみんな集まっていた。
「そんで頼みたい事って?」
「これから花壇を作るんでオメーら手伝え!」
「何だ、そんなことか。」
「バカか。それなら先に言え。着物じゃ作業できんだろう。」
「あ、わりー。」
それもその通りだ。実際他の女子は既にみんな倉庫に置いてあったジャージに着替えている。薬師はまだ普段からユニフォームだからいいとして俺も制服のまま来てしまった。さすがにこのまま作業をしたら学ランが汚れるし、その洗濯は骨が折れる。
ということで俺と玉城が着替えて戻ってくるのを待ってもう一度具体的な説明をしてもらうことにした。
「それで花壇を作るんだって?」
「ああ!ほらあそこの花壇見てみろよ!」
九鬼が指さした先を見ると花壇の一部が何も植えられずに放置されていた。
「あそこ何も植えられてなくて寂しいだろ?だから昨日女全員で相談してあそこに学級花壇みてーなもんを作ろうって話になったんだ!」
「なるほどそういうことか。」
「事情は分かったけど俺達必要か?」
「いやー実はねー、昨日1回作業しようと思ったんだけどー、あそこの部分が結構壊れちゃってるんだよねー。」
近づいてみると花壇の縁を囲んでいるレンガが一部壊れてしまっており、そこからかなり土がこぼれてしまっていた。そのせいで下のタイルが見えてしまっている部分があった。
「ほら、さすがにアレを4人で修復するってのは中々骨が折れんだろ?だからオメーらにも手伝ってもらおうと思ってよ!」
「まあそういうことなら手伝おう。」
「仕方あるまい。」
「任せとけ!」
まずは…、レンガを積み直すところからだな。と言ってもただ組むだけでは崩れてしまうからセメントか何かで固める必要があるだろう。とは言ってもセメントなんてどこにあるんだ?
「おーい水島ー!ちっと手伝ってくれー!」
そんなことを考えていると遠くから薬師が俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
「どうした?」
「土と一緒にセメントが置いてあったから運ぶのを手伝ってくれー!」
どうやら物置小屋の外に置かれていた土の中にセメントなんかも一緒に置かれていたらしい。1袋とは言え中々な重さがあったので薬師と協力して花壇の近くまで運んできた。
「よーし!じゃあ作るか!」
「その前にたらいか何か持ってこないと練りようがないだろ?」
「それもそうだな!」
と2人でたらいの捜索を始めると、
「生物室に置いてあったぞ。」
「マジか!助かる!」
と玉城がいつの間にかプラスチック製のたらいを持ってきてくれていた。
玉城が持ってきてくれたたらいにセメントの粉を空け、近くの水道から水を調達して来た。さすがに左官道具までは置いてなかったので仕方なく物置小屋のシャベルを3人分持ってきてそれで混ぜた。
そうしている内にいい感じに混ざったのでそれを使って崩れたレンガを積み重ねた。意外と3段くらいにはなり、それなりに高さのある花壇になりそうだった。
「うっし!それなりにはなったんじゃねえか?」
「わーすごーい!ありがとーう!」
「まあこれくらいはな。でも固まるまで時間が掛かるぞ?」
「具体的にどのくらいだ?」
「えーっと、この袋を見ると…、“モノトラ謹製速乾セメント”、普通なら1日以上掛かるところを約6~8時間で固めることができます、だってさ。」
「そりゃすげえな…。そんな技術存在してたのか…。」
「俺は聞いたことないがな。」
「それじゃあ一旦片付けて解散だな!今が10時だから…、早めに6時くらいに夕飯食ってからまた8時くらいからまた作業しようぜ!」
「まー、あとは土入れて、肥料撒いて、種植える、だから夜時間になる前にゃ終わんだろ!」
セメントが固まるまでは自由時間と言うことにして、また早めに夕食を食べたあとにもう一回集合することにした。
「うっし!じゃあ汗もかいたことだし風呂でも入るか!!」
「確かにー。動き回ったら汗でベトベトだよー。」
…風呂だと…?
「じゃあ4人で入ろうよ!」
「いいね!じゃあ流しっこしよっか!」
…流しっこだと…?
確か俺の部屋に数日前モノトラに押し付けられた…
(オメーにこれを渡しとくぜ!持っておくといいことがあるぜ!!)
“男のマロングラッセ”が置いてあったな…。
「おい、水島…!」
小声で薬師が話しかけてくる。
「思ったんだけどよ、これまでこんだけずっと男女1つ屋根の下で暮らしておいてあのイベントがねえのはおかしいと思う訳よ。」
「あのイベント?」
「覗きだよの・ぞ・き!しかもあれだけの美人揃いがまとめて同じ風呂に入ろうってんだぜ!?覗かねえってのは悪い冗談だろ!?」
「…見つかったらただじゃ済まないぞ?」
「なあに、死ぬことはねえ。それに危険を冒さなきゃ“ロマン”は手に入らねえんだぜ?」
「ロマン、だと…?」
…そうだ、俺は、俺達は、ロマンを手に入れなければならないんだ!!
女子が風呂に向かっていったのを確認して俺達も静かに脱衣所への侵入を試みる。そしてそこにはいつの間にか玉城がくっついてきていた。
「…お前何してんだ?」
「…お前達こそ。俺を仲間はずれにしようというのか?」
コイツがこの手のイベントに参加するというのは意外だ。なんだかんだコイツも健全な男だということだろう。
「2人ともそろそろ静かにしておかないと声でバレるぞ。」
「おう、そうだな!」
静かに、静かに。そろーりそろーりと脱衣場をのぞき込む。どうやら4人とも既にお風呂場へと向かっていったらしい。お風呂場の方からは何やら楽しそうな会話が聞こえてくる。
4人に気取られないようにゆっくりと脱衣所とお風呂場を隔てる扉を開けていく。そして湯気の中から見えてきたその景色はまさに“理想郷”。天女の水浴びを覗いた昔話の男の気持ちも今ならよく分かる。
「わっ!心愛ちゃんおっきい!!」
「え、そうかな?」
「いや、こりゃでっけーな…。」
「でも久見ちゃんも充分おっきいよ!いいなぁあたし小さいからさぁ。」
「んなこと言ったらオレだってそんなデカくねーぞ?」
「いやー、海波ちゃんのは引き締まってるって感じでしょー。モデル体型でうらやましいよー?」
「あんま気にしたことはねーんだけどな。」
なんと素晴らしい光景か。他の3人もその光景から目を離せないでいる。…3人?
「ぐぷぷぷぷ…!こりゃ絶景だな…。」
なぜここにっ!?
「てめえモノトラなんでここにいやがるっ!!?」
「バカ、お前、こんなとこで大声出したら!!!」
撤退っ!!と思ったのも束の間、既に手遅れだった。目の前に立っていたのはさっきまで引き締まった素晴らしい体を見せていた天女改め海賊。
「ほぉテメーら随分いい度胸してんじゃねーか。」
怒りで血が上っているのか体を隠すことなく額に青筋を浮かべてその指をポキポキと鳴らしている。これはこれで絶景…、じゃなくて終わった…。
「ちょっと3人とも何してんのさ!?モノトラまで!!?」
「もう、輝君ったら覗きなんかしなくたっていってくれればいつだって見せるのに。」
「あー、ずるい!!僕だって輝くんならいつでも見せるよー!」
「サイッテー!!覗きなんて最低だよ!!」
約2名変なことを言っているが、涼風は真っ当に怒り心頭のようだ。
「玉城っ!俺はコイツが妬ましいっ!!」
「そんなことを言ってる場合ではないだろう!?」
隣で薬師が俺のことを指さしながら玉城に何かを訴えかけているがそれは一旦無視することにしよう。喫緊の問題は目の前の修羅の形相を浮かべた九鬼だ。さすがのモノトラも今回ばかりは1発殴られるのを受け入れた顔をしている。
「安心しろよ。俺も死にたかねーんで死なねー程度にフルタコにしてやるからよ。」
ああ、拝啓母上。僕は自分の健康の代わりに何物にも替えがたいロマンを手に入れました。そのことについては一切後悔しておりません。だけどもし死んでいたら先立つ不幸をお許しください。
「「「「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」」
無事モノトラ含めた4人は九鬼によってフルタコにされたのであった。
その後俺達は3人で保健室へと向かいお互いの手当をした後、それぞれで自由時間を過ごすことにした。
さすがに九鬼に殴られたところが痛くて外に出る気にならず部屋で1人で過ごしているといつの間にか午後の5時になっていた。あの覗き事件の後罰として女性陣から今日と明日の食事の準備と片付けを全部やることを命じられたのでさすがに準備をしに行かないわけにはいかなかった。
さすがに同じことを思っていたのか俺がちょうど食堂に着いたタイミングで薬師と玉城もやってきていた。
「おーっす、お前らも準備か?いっつつ…。」
「さすがにな。うぐ…。」
「とは言え俺しか料理はできないし2人はできた物を運んでくれ…。いてて…。」
体中が痛かったが女性陣への謝罪の意を込めてごちそうを準備させてもらった。その後食堂に来た4人は満足して夕食を食べ終えてくれたようなので良かった。
夕食を食べ終わった後は当初の予定通り花壇作りの残りの作業を行うことにした。
ジャージに着替えて植物庭園に入るとまずはレンガを積むのに使ったセメントが固まっているか確認した。
「…よし。しっかり固まってるみたいだ。」
「ほんとになんでこんなに早く固まるんだろ…。」
「よく分からん。」
「よーし、じゃあ土を運んで入れちゃおう!!」
物置小屋の隣に積まれていた土をどんどん運び込んでいく。赤玉土に腐葉土、普通の土を運び、それぞれを花壇の中に流し込んでいく。土と一緒に物置小屋の方から持ってきたスコップを使って今流し込んだ土が均等になるように混ぜ込んでいく。いい感じになったところで更に肥料を撒いて中に混ぜ込む。体中が痛い状態では中々の重労働だが花壇の土ができあがっていくのは何とも達成感がある。
「こんなところか。花壇の土はできあがったぞ。」
「お、いい感じじゃねーか!そんじゃ種を撒こうぜ!」
「了解!」
物置小屋に種類ごとに分けて置かれていた植物の種を3種類ほど持ってきて区画ごとに分けて種を撒いていく。そもそも花が咲くまでは相当時間が掛かるし、俺達がこの学校を脱出するまでの間に花が咲くところを見られるかどうかは分からないけどこうやってみんなで1つの物を完成させたという事実が俺達に結束力を与えてくれるだろう。
一応1日一度のスプリンクラーはあるけどこの区画はあまり水が届かないのできちんと1日1,2度女子が持ち回りで水やりをすることに決めた。そしてその記念すべき第1回目をなぜか俺がやった。
もちろんこの作業の後も汗をかいて風呂に入らなければいけなくなるわけだが、女性陣は昼間の反省を活かして自分の部屋のシャワーへと向かっていった。さすがに2度目はホントに命がないと思うのでもし大浴場に向かっていったとしても覗きはしないと思うが。
夜時間になる前に紅茶を飲もうとラウンジに行くことにした。ラウンジでティーバッグとティーカップを取り、部屋でお湯を入れに戻ろうとすると、モノトラが何やら機嫌の悪そうな様子でそこに立っていた。
「何してるんだ?」
「おう、オマエに聞きてーことがあんだぜ。」
「聞きたいこと?」
「ああ。オマエ、俺の大事なモン見なかったか?」
「大事な物って…。それが何かも分からないのに心当たりも何もあったもんじゃないだろ。」
「まーそりゃそうだな。要はカギの束なんだが見てねーか?」
「さすがに見てないな。お前が保管するようなカギなんて見てたら分からない訳ないし持ってたら持ってたで言うわけがないだろ?」
「まーそれもそうだ。引き留めて悪かったんだぜ。さっさと部屋に戻って寝るんだぜ。」
「ああ、そうさせてもらうよ。」
コイツが素直に謝罪するなんて気持ち悪いことこの上ない。それにコイツが探してるカギってどこのカギだ…?いくつか心当たりはあるけど結局それがなんなのかは分からなかった。
そのまま部屋に戻り紅茶を飲むとすぐに夜時間になった。
キーン,コーン… カーン、コーン…
「10時になりました。ただ今より夜時間となります。食堂はロックされますので速やかに退出してください。それではよい夢を。お休みなさい。」
【モノトラ劇場】
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「さすがに奴は調子に乗りすぎたんだぜ。」
「多少の言動は目を瞑ってきたがこれはダメだぜ。」
「という訳で明日は報復をさせてもらうんだぜ。」
「目には目を歯には歯を、って奴だぜ。」
「ぐぷぷ…。ぐぷぷぷぷぷぷ…。」
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【生存者】
超高校級の幸運? 水島輝(ミズシマアキラ)
超高校級のショコラティエ 甘寺心愛(アマデラココア)
超高校級の射撃選手 薬師弾(ヤクシダン)
超高校級の棋士 玉城将(タマシロショウ)
超高校級の長距離ランナー 涼風紫(スズカゼユカリ)
超高校級の漫画家 久見晴香(ヒサミハルカ)
超高校級の海賊 九鬼海波(クキミナミ)
残り7人
何やら不穏な雰囲気になってきましたね…。モノトラは一体何を企んでいるのでしょうか…?その辺りの話はまた次回と言うことで!
それでは今回の設定裏話です!
今回は第4章のサブキャラ紹介です!今回紹介するのは副島灰次さんです。
まあ、誰だコイツ、という話だと思うのですが、前章の最後の方を思い返していただけるとちょっと心当たりがある方もいらっしゃるかと思います。そう、アンリさんの会社経営における右腕です!彼は元々畔田君同様シャークネード家の執事を務めていました。ですが事務処理能力の高さを買われてアンリさんの秘書に任命されていました。日常生活が畔田くん、仕事が彼、というイメージです。しかし、アンリさんがいない間に彼女の会社が全て潰れたことの対応に追われることとなります。結果、彼はアンリさんに責任を負わせないよう自らが全ての責任と共に命を絶ち、アンリさんが戻ってきたときにまっさらな状態から再び会社経営を始められるような素地を整えていきました。ですがそんな彼の願いももう叶うことはありません…。
ということで今回はここまでです!また次回のこのコーナーでお会いしましょう!!!
最終盤まできておいてなんですが、皆さんの推しを教えてください!!
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水島輝
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甘寺心愛
-
薬師弾
-
玉城将
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二木駆
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涼風紫
-
山吹巴
-
有浜鈴奈
-
アンリ・シャークネード
-
畔田鋼之助
-
久見晴香
-
太宰直哉
-
美上三香子
-
青山蓬生
-
九鬼海波
-
比嘉拳太郎