ダンガンロンパR~おかえり絶望学園~   作:パルティアン

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CHAPTER5 (非)日常編3

キーン、コーン… カーン、コーン…

 

「おはようございます。7時になりました。今日も一日元気で頑張りましょう。」

 

もう朝か。でも今朝のモノトラのアナウンスは心なしかいつもよりもテンションが低い感じがする。恐らくだけど昨日のその大事なカギとやらを無くした件が相当響いているのだろう。まあアイツが元気ない分にはこちらが不快な思いをすることはないし大した問題ではあるまい。

 

 

俺はそう思い込んでいた。まさか昨晩のあの件があの俺にとって、いや、みんなにとって最悪の事件を引き起こす引き金になってしまうなんて気付かずに。

 

 

食堂に行くとなんだかすごい甘い匂いがしていた。最初は人数が減ってしまったことで珍しく甘寺が朝食を作ってくれているのかと思っていたが、良く嗅いでみるとチョコレートの甘い匂いは多少しないではないがそれはメインではない。うーん、これは…ピーナッツバターか?

そんなことを考えていると厨房の方から九鬼がトーストの乗った皿を持って出てきた。

 

「はよっす水島!ちょうどいいところに来た!運ぶの手伝ってくれや!」

「ああ、分かった。ところで今日は何を作ったんだ?」

「朝飯か?それならこれまでとはちょっと趣向を変えて甘い奴でも作ってみるかと思ってよ?今日はピーナッツバターとバナナとトーストだ!ちょっとチョコレートソースもかけてあるぜ?」

「だからこんなに甘い匂いがしてるのか。」

「そういうこった!」

 

これまでとは趣向を変えたトーストを運んでいるとそこにみんなが集まってきた。

 

「わー!これすごーい!」

「ピーナッツバターにバナナか。これまでとはまた違っていいんじゃないか。」

「あ、飲み物はセルフサービスなー。コーヒーでも紅茶でも好きな物をラウンジから自分で取ってきてくれ。」

 

そんなこんなでみんなで席についてトーストに舌鼓を打った。そう言えば…

 

「なあ、ピーナッツバターなんてどこにあったんだ?バナナはキッチンに置いてあるしチョコレートソースも甘寺がいるとはいえ冷蔵庫の中に入ってるのを見たことはあるんだがピーナッツバターだけは見たことないぞ?」

「あ、それあたしも思ってた!」

「それなら手作りだぜ!」

「手作り!?」

「ああ、簡単にできんだぜ?ピーナッツを砕いて砂糖と少量の塩を入れてミキサーで5分くらいガーッとやるだけだ。ピーナッツって勝手に油が出るからすぐにできんだぜ!」

「すごいなぁ。」

「いんやたまたま食堂におつまみ用ピーナッツを見つけたからどうせならと思ってやってみただけだぞ?おつまみ用って皮も剥かれてて手間もねーからな!」

「そのピーナッツってさー、それくらいあったのー?」

「あー、段ボール1箱にバカみてーに入ってたぞ?」

「ホントにー?ありがとーう。」

 

何でそんなことを久見が聞くのかはよく分からないがそんなにたくさん入っているというのであれば俺も少しくらい部屋に持っていってもいいかもしれない。

そんなこんなで時間が過ぎて俺達は片付けまで終わらせて自由に行動することにした。

 

 

 

図書室に紅茶を持ち込んで読書をしているうちに時間はもう10時。確か女子の定刻の花壇への水やりがこの時間だったはずだ。ちょっと気になるし行ってみることにしようか。

 

「あれ、輝君どうしたの?」

 

植物庭園に行ってみるとちょうど今日の担当である甘寺が水やりをしているところだった。

 

「いや、ちょうど水やりの時間がこの時間だったなと思ってな。少し気になって来てみたんだ。」

「そういうことねー。まあまだ芽が出るのだって先の話だけど結構いい感じなんじゃないかな!」

「確かに見栄えもいい感じになってるな。これは花が咲くのが楽しみだ。」

「でもまだ完成じゃないんだよね。」

 

完成じゃない?まあまだ花どころか芽も出ていないんだから仕方ないとは思うが…。

と思っていると甘寺がおもむろに何かを取り出して花壇の縁に刺した。

 

「今何を刺したんだ?」

「実はね、さっき朝ご飯の後に久見さんが水やりのときにこれを刺して来てって!」

 

今甘寺が刺した物をよく見るとそこには“新1期!!”と書いてあった。どうやら画用紙に描いたものをラミネートしたいわば看板のようだ。

 

「…どこでラミネートなんかしたんだ…。」

「太宰君の部屋にあったんだって。」

「本屋のポップ作りでもしてたのか…?」

 

まあ経緯はさておき、久見が作ってくれた看板はかわいらしくて分かりやすく、それでいて花壇の景観を邪魔しない、そんな絶妙なバランスで作られていた。まあ、この後再び新しく生徒が入ってくるかどうかは分からないからこの看板に意味があるかは分からないけど、“俺達が作った花壇”として俺達の結束力を更に高める物としては十分な役割を果たすことだろう。

 

「さて、水やりも終わったし戻ろっか!」

「ああ、そうだな。」

 

とりあえずじょうろを物置小屋に戻して一緒に寄宿舎の方に戻った。その途中で偶然であった久見がだいぶものすごい顔をしていたのは忘れることにしよう。

 

 

 

先ほどまで読んでいた本を図書室で出しっぱなしにしてしまったということに気付いたので俺は図書室に戻ってきていた。片付けをしてもう一度寄宿舎に戻ろうとすると唐突にチャイムが鳴った。

 

 

ピンポンパンポーン…

 

 

「オマエラ至急体育館に集合してください。」

 

どういうことだ、急に集合なんて?そう思いながら体育館に向かうとその途中で玉城と出会った。

 

「玉城、これどういうことだと思う?」

「まあ、前の裁判から3日が経った。そう考えると恐らく今回の動機の発表じゃないか?」

 

その玉城の言葉にもう1週間以上前、美上が殺された事件の動機となったあの出来事を思い出す。あのときは生き残っていた14人の大切な人を拘束し、翌日正午までに殺人が起きなければ全員を殺す、ただしその中に本物の大切な人は1人しかいない、という物だった。その動機が発表されたとき、俺達は確かに体育館に集合させられてその拘束されている映像を見せられた。

 

「…もしかしてまたあんな外の誰かをターゲットにした動機を…?」

「さあ、そこまでは分からん。ただろくでもない動機であることは確かだろうな。」

 

体育館に入るといつもは全員が集合してから演台から飛び出してくるモノトラが既に演台の上で仁王立ちしていた。やはり昨日無くしたカギの件が随分尾を引いているらしい。かなり機嫌が悪そうで開口一番、

 

「遅え!!」

 

と俺達を怒鳴りつけた。

 

「遅えって5分くらいのとこじゃ来ただろ?」

「何イライラしてんのさ!」

「口答えするんじゃねーぜ!!」

 

どうにも話を聞いてくれる雰囲気ではないようだ。腹立たしいことこの上ないがここは一旦我慢してコイツの話を聞くことにしよう。

 

「イライラしてるのは構わないけど用件はスパッと話してくれ。」

「ああ、それもそうだな。このイライラもこの後の事を想像するだけでスッとするしな!」

 

さっきまでとは裏腹に急にニヤッと笑い出すモノトラ。不気味で仕方がないがそれは言うまい。

 

「それでなぜ俺達を集めた?いつもの動機とやらか?」

「動機?あー、そこまでは考えちゃいなかったがまあ、これが今回の動機でも全然問題ないんだぜ!!」

 

動機じゃないけど動機になる?一体どういうことだ?

 

「今回オマエラを集めた理由はとある発表をするためなんだぜ!」

「とある発表?」

「ああ、オマエラには衝撃の事実かも知れねーな。」

 

衝撃の事実だって…?

 

「オマエラ、以前の学級裁判の後に俺がうっかり口を滑らせたこと覚えてるか?」

 

モノトラがうっかり口を滑らせたこと?考えを巡らせていくとモノトラのある言葉が思い当たった。

 

 

『ほいじゃおつかれさん!さっさと部屋に戻って寝るんだぜ!もしかしたら今すぐにでもオレの息が掛かった奴がオマエラの命を狙ってるかもしれねーんだからな・・・。』

 

 

もしかして有浜の事件の後の“裏切り者”のことか…?

 

「それって“裏切り者”のことか?」

「まあ、そういうこったな!今回はその裏切り者の正体を発表させてもらうんだぜ!」

 

正体を発表だって?俺達の命を狙わせているのに、か?ふと周りを見回すとみんな困惑したような表情を浮かべていたが、その中でも特段玉城がモノトラを鋭い目でにらみつけていた。

 

「…玉城?どうしたんだ?」

「いや、なんでもない。なんでもない。」

 

2回もなんでもないを繰り返すなんてコイツらしくない。一体何を思っているんだ…?

 

「それじゃ発表させてもらうんだぜ!!オレの息が掛かり、オマエラの中に潜り込ませていた裏切り者、その正体は…!!!玉城将なんだぜ!!!」

 

すぐに今の玉城の表情と言葉の意味が分かった。だけどその事実を俺達が受け入れるには時間を要した。

 

「…は?テメー何言ってんだよ…?玉城が裏切り者?んな訳ねーだろ!!!コイツがオレ達の命を狙ってるって!!?ふざけるのも大概にしろよ!!!」

 

最初に言葉、いや怒声を発したのは九鬼だった。九鬼が怒るのも理解できる、いや、俺も一緒になってモノトラを怒鳴りつけてやりたいくらい、モノトラが今言ったことはタチの悪い冗談にしか思えなかった。

 

「わざわざそんな冗談なんか言わねーんだぜ。」

 

俺がモノトラを怒鳴りつけることをしなかったのは、そう、奴は俺達を怒らせるような冗談を言うことはない、ということをこのコロシアイ学園生活の中で嫌というほど思い知らされてしまっているからだった。

 

「だって、オマエラ冗談でこんなこと言ったら怒るだろ?でもオマエラを怒らせたってオレにとって何のメリットもねーんだぜ。それに、ずっと一緒に戦ってきて、絆を育んできて、仲間だと思っていた奴が実は“裏切り者”だっていうシナリオが純然たる事実であった方が、」

 

そう、こいつが俺達に与えようとする物は怒りなんかじゃない。こいつが俺達に与えようとするものはいつだって…

 

 

 

「オマエラ、絶望してくれるだろう?」

 

 

 

その後アイツが何を言っていたのかは覚えていない。怒りと混乱と、“絶望”と。色んな感情がない交ぜになって気付いた頃にはもうモノトラは俺達の前から姿を消していた。

体育館に取り残された俺達はしばらく沈黙を貫いていた。そんな中で最初に口を開いたのも九鬼だった。

 

「…おい、玉城。オメー、ホントに裏切りモンだったのか…?」

 

絞り出すようなその一言に込められていた想いはどれほどの物だっただろう。だが、その言葉に対する返答はない。

 

「…何か、言えよ…。」

 

それでも言葉は返ってこない。すると突然体育館の床が爆ぜるような音がした。

 

「何か言えって言ってんだろ!!!テメーはホントに裏切りモンだったのかって訊いてんだよ!!!!」

「おい九鬼、やめろって!!」

 

九鬼は床を強く蹴って距離を一瞬で詰めると、玉城の胸ぐらを掴み怒声を浴びせかける。その九鬼を薬師がどうにか引き剥がそうとしてる。そこに俺と涼風が加わってどうにか3人で九鬼を抑えつける。

俺達3人に取り押さえられた九鬼は息を荒げている。

 

「テメーオレ達をずっと騙してたのかよ!モノトラに振り回されてるオレ達を見て最初っからずっと陰で笑ってたのかよ!!?」

「ぐっ!!力強えっ!!」

 

暴れる九鬼に対して玉城は一言も発さないどころか身じろぎ1つしない。

 

「玉城、どうなんだ。お前は、本当に裏切り者だったのか?本当に俺達を、陰で殺そうと動いていたのか?」

「…ああ、その通りだ。俺はモノトラに命じられてコロシアイ参加者の中に潜り込んでいた。それは、事実だ。」

 

それだけ言うと玉城は俺達に背を向ける。

 

「…俺は()()()と関わるべきではなかったな。」

 

そう一言漏すと体育館を出ていった。その背中に九鬼は、

 

「オレはよ…、最初はお前のこと気にくわねーと思ってた…。だけどなんだかんだ色んなことやって、バカ騒ぎして、少なくともお前のこと、仲間だと()()()()()。」

 

その言葉に玉城からの返事はない。何も言わないまま玉城は体育館を後にした。俺達はもう何も言うことができなかった。

 

「…なあ、ホントに玉城って俺達のことを殺そうとしてたのかな…。」

 

再び続いた沈黙を破ったのは薬師だった。

 

「最初の頃ならまだしも、どうしても今の玉城が俺達のことを殺そうとしてたようには俺には思えねえよ…。」

「…オレだって、思えねえよ…。」

 

薬師の言葉に九鬼が絞り出すように応える。その言葉には悔しさが滲み出していた。他の誰も言葉を発さなかったけれどみんなの思いは同じだったように思う。けれど玉城が話してくれないのであれば俺達はもう何もすることはできなかった。

また少し黙りこんだ後、俺達はそれぞれの部屋に戻ることになった。

 

 

 

昼食の時間、またみんなが食堂に集まってきたけどそこに玉城の姿はなかった。玉城が食堂に来ないのは最初の頃もそうだったけれど、あの頃より人数が減ってしまった分、その空白はとてつもないほど大きな物に感じられた。

ただ当の俺達も仲良くおしゃべりという雰囲気ではなくなってしまい、黙りこくったままの食事となった。その後はそれぞれがそれぞれの部屋に戻り、また夕食の時間になるまで誰1人部屋から出てくることはなかった。そうしてそのまま夜時間を迎えることになった。

 

 

 

【モノトラ劇場】

 

「どうやらオレが放り込んだ爆弾は随分な威力になったみてーだな。」

 

 

「オレが想定していた以上だぜ…。」

 

 

「さてさて、アイツらは単独行動を取ってるみたいだが、」

 

 

「ソイツは果たして正しい選択なのかどうか…。」

 

 

「1人っつーのは」

 

 

「誰かに襲われても助けてもらえねーし、」

 

 

「疑われたときにゃ」

 

 

「誰にもアリバイを証明してもらえなくなっちまうんだぜ…。」

 

 

「ぐぷぷぷぷぷぷぷ…。」

 

                   ・

                   ・

                   ・

 

【生存者】

超高校級の幸運?      水島輝(ミズシマアキラ)

超高校級のショコラティエ  甘寺心愛(アマデラココア)

超高校級の射撃選手     薬師弾(ヤクシダン)

超高校級の棋士       玉城将(タマシロショウ)

超高校級の長距離ランナー  涼風紫(スズカゼユカリ)

超高校級の漫画家      久見晴香(ヒサミハルカ)

超高校級の海賊       九鬼海波(クキミナミ)

 

残り7人




さてさて、遂にモノトラの口から玉城君が裏切り者だという事実が水島君達に明かされてしまいました。いつの間にかどんどん他のみんなもバラバラに…。はてさて、みんなの心が又1つになる日は来るのでしょうか…?



それでは設定裏話に参りましょう。今回は第4章のおしおきのお話です。
第4章、アンリさんのおしおきは「My Fire Lady」です。タイトルの元ネタはミュージカルのタイトルやロンドン橋のワンフレーズとして有名な「My Fair Lady」です。元ネタの方の意味は「我が麗しの貴婦人」といった感じなので、おしおきの方のタイトルは無理くり訳すなら「我が炎の貴婦人」といったところでしょうか。これは屋敷を模したおしおきの舞台の最奥で死んで尚、主を待ち続ける畔田君の視点から見た言葉になっています。炎の中畔田君を探し、たどり着く直前に息絶える、そんなアンリさんの絶望的な最期をいい感じに表現できているのではないかと思います。


さて、それでは次回は(非)日常編の4回目ということでそろそろあのお時間が…?ということで今回はここまでです!!

最終盤まできておいてなんですが、皆さんの推しを教えてください!!

  • 水島輝
  • 甘寺心愛
  • 薬師弾
  • 玉城将
  • 二木駆
  • 涼風紫
  • 山吹巴
  • 有浜鈴奈
  • アンリ・シャークネード
  • 畔田鋼之助
  • 久見晴香
  • 太宰直哉
  • 美上三香子
  • 青山蓬生
  • 九鬼海波
  • 比嘉拳太郎
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