この世に、後悔はないかと問われたら大勢あると私は叫ぶだろう。
20代ヲタクの私にとってゲームをやりアニメを見、本を読みファンアートを漁りはたまた違う沼にハマりという繰り返しが生きがいである。未だに知らないものがあると気になって仕方がない。まだまだ人生もこれから、推し活を楽しもうと躍起になって若干ブラックである企業を去り仕事探しをしながら引きこもりと化していた。
「まぁ、突然の死には抗えないが。」
紛れもなく私が出したため息が誰もいない砂漠に消え去った。
*
「汝、我に何を望むか。」
私があっさりと交通事故に巻き込まれ死んだ後に聞いた第一声は低く圧のある声だった。
ゆっくりと目を開け眩しさに慣れる。飛び込んできた風景は白1面の空間にポツンと置いてあるテーブル、椅子2つ。
そして、そこに座る耽美なショタ。
「あー…えと、こんにちは?」
「…望む物を言え。」
「い、いやいや。ちょっと状況把握。」
「時間ならいくらでもやろう。」
「質問は?」
「構わん。」
「じゃあ遠慮なく…あなた何者、ここどこ、私死んでどうなったの、最初の言葉は」
「待て待て待て。ゆっくり行こう。」
「じゃあ5秒ごとにしてきまーす。ちゃんと答えてね。」
「だーから、ちょい待ち!もう!何なのこいつ!!!!」
鬼畜問答をしようとしたら怒られた。ついでにあの少し高圧的な態度と声が変わる。年相応の少年の声と慌てた様子に安堵を覚える。
「君さぁ…ついさっき死んだ人間とは思えない冷静さだね。」
「冷静に見えるんですかこれが。」
「えぇ…まぁいいや。まずちゃんと話をしよう。ほら座って?」
「では失礼します。」
敬語を使いながら椅子に座る。ピンク髪の少年はにこりと笑い言葉を紡ごうとしていた。
「まずは、僕について。僕は神様。この世界にとって絶対的存在であり僕を越える者はいない。」
「…厨二病?」
「ちょっと!!信じてよ!?」
神、と来たか。
唸りながらも奴を見る。偉そうにしたかと思えば焦り叫ぶ姿はどう見てもただの少年。そもそも神なんぞ存在するのかと聞かれれば私はいないとキッパリ言う派の人間なので疑って当然である。
「はぁ、はぁ…話を進めるよ。口を挟まず聞いてね。」
「了解です。」
「えっと、ここはこの世とあの世のつなぎ目。死後の世界とかではなく僕が君を引き留めるために創った。最初に言った言葉はこの後君と取引をする為に使おうと思ったんだ。あまり深い意味はないよ。」
「…その取引とは。」
話を飲み込みながら次の話題への促す。が、私の言葉を聞いた途端、笑顔の質が変わる。まるで楽しい事が起きるような、しかしどこか黒い笑みに。
「いくつかの"物語"を変えて欲しい。」
「?」
意味が分からないと首を傾げる。クスクスと笑う姿は神等とは違う悪魔のようだ。
「君が今までに見たゲーム、アニメ、漫画、小説…僕もそのようなものに興味があってね。その中で好きな作品を選んで君に未来を変えてほしいんだ。」
「…げ、原作改変ということですか?」
「はっきり言えばそう。堂々と言えることでもないけど僕は違う結末を知ってみたいんだ。君もそうだろう?あの人が生きていたら、死んでいたら、ハッピーエンドなら。」
確かに、そう考えた時もある。二次創作を漁り誰かの死を思い誰かの生を望む。人間誰しもそうな気がする。
私は黙り込む。その前で愉悦に歪んだ笑みを浮かべて神とやらは話し続ける。
「どうだい?TRUEではなくHappyに。最高の幸せを彼らに味わらせたくないかい?その為に君をその"物語"に送り込み変えてもらう。それが頼みだよ。聞いてくれるよね?」
「…嫌です。」
「そうかそうか君ならそう言うと……は?」
「拒否します。このまま成仏させてください。」
予想外、と言わんばかりのあほ面を晒す少年。一方私は顔を歪めて絶対やらないとため息をついた。別にあの世界観に行きたいとかはならない。推しは遠くや画面越しで眺めるのが好きだし、変えるのには抵抗がある。
「なんで!?!?こんな上手い話ないよ!?!?!!!」
「いや…乗り気じゃない。」
「えぇーー!?!?君しか居ないから頼んでるのに!!!!!」
適性がー、とか叫んでいる。
関係ないと私は席を立ち背伸びをする。ここから出たいなと思いながら少年を睨む。
「…でも、僕は君に拒否権があるとは言ってないもん。」
「え、は?」
今度は私が驚く番のようだ。それを見て彼はニタリと笑う。私の反応を見て面白がっているなこいつ。
「絶対に行ってもらうよ!さぁ行き先を選べ!!!時間はないよ!!!」
「ちょ、どういう、」
目の前に三つのタイトルが出る。私がよく知る作品だ、いやそれよりも時間がないだと。
「じゃ、じゃあこれで。」
「了解!死なないように色々与えよう。例えば…」
ステータスを練るといったところか、適当に選んだタイトルロゴを見ながらやれやれと頭を振る。
まさか、最初に選ぶのがこれになるとは。
「では、NieR:Automataへ。」
そこで白い空間が崩れ、私の意識は霞んでいったとさ。
もしかしてその人生、ハードモードと思った時は既に暑すぎる砂漠で目が覚めた後であった。