A2。裏切り者にしてヨルハの事をよく知っている古株。彼女は2Bのように優しい存在であり冷静なアンドロイドであった。機械生命体を倒した後に私にちゃんと謝罪をし、9Sの様子を聞くあたりから本当に優しい機械だと実感した。
"神の箱"攻略後、私は9Sの元に向かいアクセス用認証キーをその手に握らせる。それから一人で"塔"へと向かった。
「さてと…アダム、イヴ。ここに私という人間を入れる事は出来るか?」
「不可能では無い。しかし時間はかかるが出来るだろう。」
「時間なら余裕があるから大丈夫だ。」
「ならばやろう。」
「はーい。」
簡単な返事をしてから彼らの声はすっと消える。"塔"の中にいるのだろうかと思うがそんな事より手帳に取り残された2Bにバレていないか不安になってきた。彼女に話しかけて9Sについて聞いてみた。
「最近見てないけど大丈夫だろうか。見たり聞いたりしようとは思っているのだがあのアダムとイヴが邪魔をして何も分からない状況だ。」
「あー、うん。OK。」
「元気そう?…ナインズ。」
「頑張ってA2と仲良くなろうとしてるよ。」
「それは良かった。」
…すまない2B、嘘をつかせてもらう。さすがに今の精神状態の9Sを伝えたりするのは酷だろうということで仮定の話を進める。真剣になって聞いてくる彼女に罪悪感が芽生えた。
「こんにちは、I・o様!"塔"へのアクセスを認めます!」
「うわ、聞いた事ないアナウンス…」
どうやら上手くいったらしい、入口のシステムが消えてドアが開く。そのままエレベーターに乗って白い建物の中に入ろうと思った。
が、
「おい、何をした。」
「……ん?」
後ろから武器を向けられている様子。警戒する声に振り向くと赤髪の少女二人が睨んでいた。2Bに隠れてと合図をして、デボル、ポポルと言う前に彼女の片割れが口を開いた。
「おかしいとは思っていたのよ。太古の昔に滅んだ人間が何故まだ生きているのかって。」
「それが本を通して会話している。そして"塔"に入れるように催促した。明らかに怪しいんだよあんた。」
「…NieR:Replicant。」
「!」
「今更だから教えてあげよう。」
少しだけ私の事を話すという試みをする。彼女達は私が出した言葉に動揺しながらも聞こうとしてくれた。
「私のいる世界ではね、君達はゲームなんだ。だからね、君達が9Sに対して何をしようかも分かる。その中の異物が私。滅んだ人類の後にどこからかやってきたのが私だったんだ。」
「、何を言って」
「君達の罪は知っている。」
NieR:Replicantの方も私はやっていた。彼女達の暴走を私はこの目で見た事がある。入口の方へと気付かれないように下がりながら話を続ける。
「それはそれは酷い有り様だった。いや、君達を責める訳ではない。私だって君達と同じような罪を背負っている。」
「罪、だと?」
「あぁ。アンドロイドを見殺しにきて機械生命体を殺し戻ると言っていた所に戻らなかったという罪。この世界にて命を軽く見ていたという罪。そしてそれはこれからも、」
「何を言っているの。」
「ごめん、もう話せないや。」
後ろに飛び込む。私がエレベーターへと吸い込まれていくのに気づいた2人は走ってくるがもう遅い。その扉がしまう前に私は彼女らに笑いかけた。
「ここからはその罪を精算する。罰を受けてこの世界を去ろう。」
*
前言撤回。
この世界を去る気はさらさらない。それこそ私のやった事は良くない事ばかりだが痛いのは嫌だし死んだら今度こそどこに飛ばされるか分からない。あの神の事だから死んだら違うところで改変しろと言いながら私を無理やり違う世界に向かわせるのだろう。それならここで、Eエンドを迎えて平和に暮らす方がマシである。
静かにエレベーターが開く。手厚い歓迎、と言っていいのか汚染されたヨルハがこちらを見ていた。アダムとイヴはまだ本に戻っていない様子、とすると赤い少女の邪魔が入ったか。
「まぁ、これも後から来るやつらの為にはなっているのか?」
階段を上がりながら一人一人対処していく。この高さから落ちたら流石にアンドロイドでもぐしゃぐしゃになるだろうと思いながら"塔"の外へと押し出す。9Sへの嫌がらせとして部屋いっぱいの2Bがいるという場所にはまだ2Bがいなかったのでスルーした。
階段を駆け登り、行き着いたのは図書館を模したような場所。本がズラリと並んでいてどれも貴重な情報なのだろう。私にはハッキングなんて出来ないため何も分からないが。
「さてと…それで、どうしようか。」
この先どう行くか分からない。確かA2が此処に来た時はコウシ、ロウシのどっちかが上から降ってきて戦闘になって…あ、真ん中の扉が開いてるんだっけ。
目をそちらに向ける。だが扉は固く閉じられていた。首を傾げる、と同時に低い男性の声が聞こえた。
「はじめまして、最後の人類よ。」
「…赤い少女さんか。」
「いかにも。」
「アダムとイヴは。」
「眠ってもらった。それより…何者だ。」
「何者?見ての通り生き残った人間。もう聞き飽きたよ本当に。」
「そういう事ではない。質問を変えよう、
「…君達神を見た事あるのか?」
「神と自称する少年の事なら。其奴から全てを聞いた。」
そんな質問が来るとは思っていなかった。いや、可能性はあるとは考えていたが予想外の展開だ。まさか神にも会っているなんて。
「じゃあそいつから聞いていないか?私は送り込まれた存在だって。」
「?何の事だ。」
「成程、あの神所々抜かしながら教えたな?」
「…詳しく話せ。」
私は私がこの地球に来てからの事を全てを話した。いい理解者になるかはどうかは分からないが相槌を打ちながらも彼女(?)達は最後まで聞いてくれた。長いのでそこは割愛させて頂こう。
「…この先何が起こるかも知っているのか?」
「知っているけどそれを伝えたら意味が無い。君は未だにアンドロイドや人間を敵と認識しているのだから私からこれ以上伝える事は無い。」
「そうか、それならいい。」
用はないと言わんばかりに背をむけて情報集合体の彼女は消えた。その様子を見ていたら扉が開く音。次に進めると思いその扉を抜けるが爆発音を聞いて足を止めた。
「9Sが来たか。」
ならば此処にA2が来るのもすぐだろう。扉をちゃんと閉めて少し進んだところにあるエレベーターに乗る。そろそろこの物語も終盤か。9Sはきっと私を恨むんだろうな。A2は私にあまり興味がなさそう、だけど心配はしてくれている。
エレベーターが相当高い場所まで来た。空気が薄いのか息がしづらい。敵が降ってこないから余計長く感じられた。一人だけで乗るには広すぎる空間、私は座り込みながら最上階まで行くのを待った。
「着いた。」
空間を白が占める中、黒い球体が二つ存在していた。コウシ、ロウシ。真ん中が赤く光り私を捉えているが攻撃してくる感じはしない。ターゲットはきっと9SとA2。多脚を動かしながらそれぞれに違う方向へと落ちていった。
「何をしよう、彼らが来るまで。」
手帳をひらく。2Bの姿は見えず、アダムやイヴもいない。2Bはきっと壊れてしまった身体へと魂が戻って、この本には戻らない。一人になって目を閉じてこれまでを振り返った。
フィナーレには相応しい舞台。A2と9Sが此処に来てコウシ・ロウシを倒すまであと―――