機械音が鳴り響く。その音によって私は目を覚ます、どうやら寝ていたらしいと思って起き上がる。コウシ・ロウシは既に一心同体となっており9SとA2が戦っていた。私には気づいていない。壁際で寝ていたからか、背中が痛くて骨を鳴らしながら背伸びをした。
「応戦…する事は出来ないな。」
その前に殺されそう、なんて思っていると一際大きい金属音が鳴ってコウシ・ロウシが再起不能になる。お疲れ様なんて小声で言いながら対峙している二人の元に近づいた。
「9S、A2。」
「…I・o。」
「おっと。戦う気はないからその剣を下ろしてくれないか?」
"悪魔の穢牙"を未だに装着している手を上に向ける。9SもA2も剣を私に向けたままジリジリと進んでいた。
「ずっと騙してたんですか。」
「まぁ、君達から見たらそうかも。でも私はその計画を
「嘘をつくな。ならば何故貴様は此処にいるI・o。」
「何故って、別に此処に来る事が目的なのだから君達に話す事はないよ。」
「信じていたのに、どうして。」
「勝手に私を信じていた方が悪い。」
少し冷たいだろうか。剣が喉に刺しかかっている。どちらも私を始末してから決着をつけたい様子だった。そうか、ならば仕方がない。目の前であの9S VS A2が見れると思って来たのにと肩をすくめながら話を続ける。
「戦いたくない、けど君達が私を殺す気なら抵抗はさせてもらう。」
「…許さない。」
「そうか、分かった。」
後ろに何歩か下がり壁に背をつける。鞄からサイズの大きくなった本を開いて話しかけた。
「いつまで寝てるの二人とも。」
「すまない、N1、N2にしてやられた。」
「あいつもっと手加減しろよなぁ。」
「!アダム、イヴ!?」
私の肩に手を置いて現れたのは幽霊の二人、アダムとイヴ。彼らが本の中に戻ってきていた事は既に分かっていたので実際に登場させて9Sの方を動揺させた。
本を開いたまま鞄に固定する。神は私がこのような使い方をするだろうと想定して鞄に固定出来る場所を作っていた。有難いと思いながらも両拳を構えた。
「サポートしろ。」
「「了解。」」
私の最終戦が始まる。
*
剣と拳。拳の方が不利、間合いが剣よりも短く相手の懐に入らないと攻撃が出来ない。それに戦闘型も含む機械二人に人間が勝てるはずがない。そう彼らは思っているのだろう。
しかしこちらには機械生命体のボス二人がついている。それだけで少しは勝つ可能性はある。更に私は不死身というステータスも持っている。身体は頑丈なのでもっと勝つ可能性が上がる。
「弾幕防御シールド」
「物理攻撃防御シールド」
「逆ハッキング可能」
「うわ、チート気味…でもまぁ仕方ない。私は脆弱な人間だからこれ位はしないと。」
防御シールドが張られている身体を9Sの方へ向けて突っ込む。少しでもあの剣が身体に食いこんだらまずい、その為には使えるものは使って9SとA2を殺さないように、
逃げる。
9Sの後ろにあるエレベーターが目的の場所、あそこに辿り着いてエレベーターに乗ってしまえば私の勝ちだ。後は違うどこかで機械生命体の方々に頼んで9SとA2が戦っている姿を見れればもっといいのだが。
「そう簡単にはいかないけどなぁ。」
「ハァッ!!」
「よ、と。」
剣がシールドに触れる。弾く事はなくシールドも割れる事無く固い何かにぶつかった音がした。風圧で長い髪が揺れる。今の私はどのような表情をしているだろうかと思いながらも9Sの振るった剣を避けるように横に移動する。
何度か剣とシールドがぶつかる。私が何回か繰り出した拳の内1つの攻撃が彼の腕…2Bの腕をもぎ取り、自らにつけた腕へと命中する。剣を手放さなかったのは驚いたがそれでもダメージがあるらしく後ろに吹き飛ぶ。
私の後ろに回り込んだA2がシールドを割ろうと攻撃のパターンを変えて剣を突き刺す。甘い、それだけでシールドは割れず剣に私は拳を叩き込んだ。嫌な音がして剣が弾かれる。
「、足技ずるいなぁ!」
シールドに高く振り上げられた脚が食い込む。ミシリ、とヒビの入りそれが広がる。さすが戦闘用と実感しながら拳を地面に振るった。ある程度のダメージが入るとシールドは消える。明らかな事実であった。
床になっていた白いブロック状の細かい物質が浮かびあがる。それを拾い上げA2の目に向かって投げつけた。A2の目潰しは出来たが9Sのポッドからレーザーが発射されて私のシールドは砕けた。そこに追い打ちをかけるように歪んだ顔をした9Sが剣を振るう。拳で受け止めるも私は呆気なく後ろに倒れ込んだ。あぁ、痛いな。まだ弾幕を防ぐシールドは砕けていないが物理攻撃防御シールドがなくなった。
「ぐ、ぅッ!?!!」
「もう終わりにしよう。」
A2の剣が肩に突き刺さる。痛い、焼けるような熱さに汗が吹き出る。抜けた時に血も出てきてそれが床にぼとぼとと垂れ流れた。
「は、はは。終わりにしよう、て?私もこれで終わりになれた、ら、どれほどいい、か。」
立ち上がる。肩をおさえて二人を睨みながら笑ってやる。アダムとイヴが心配しているがどうでもいい、思考が上手くまとまらない。
「なぁ兄弟、この建物の物質は操れるか。」
「可能だ。」
「じゃあさ、」
「言いたい事は分かる。やるぞ、イヴ。」
「おう!」
白いブロックが私の周りに集まる。肩に重心的に集まり身体を覆う。ゴツゴツとしたそれを身にまといもう一度笑う、驚いて少し悲しい表情を浮かべている二人に笑う。
「第二ラウンド、だ。」
身体への負荷が大きい装備だ、素早く動く事は出来ないがその分パワーがある、二人の後ろからブロックを引き寄せて攻撃を仕掛ける。それにいち早く気づいた9Sは避けれたがA2は気付かずに喰らう。そのまま私の方に飛んでくるものだから私はひらりと躱して走る。
エレベーターにさえ着けばいい、邪魔をするな!
「ウオオオァァアアッ!!!」
「!?なんだ…」
9Sが捨て身の攻撃に走る。剣を構えて私の腹へと突き刺そうとする。無駄、と呟いてガードする。当然、剣は弾かれるどこかへと飛んでいく。それだけで彼は何もしないと思っていた。
「ハッキング!」
「む?」
「アダム!」
「兄ちゃん!」
私自身にハッキングは効かない。そして逆ハッキングは可能と言っていたアダムが疑問の声を上げる。次の瞬間、ブロックが私から離れる。重力を得てパラパラと落ちていく。まさか、私ではなくブロック本体にハッキングを仕掛けた…!?
「うぉ、と!?」
「とっとと死ね!!!!」
ブロックが崩れてしまったが直ぐに立て直す。ポッドのレーザーがもう一度私を襲うがそれも横に転がり回避。
「アダム、ブロックへのハッキングに注意しろ。」
「分かっている、次はヘマをしない。」
「俺も手伝うよ兄ちゃん。」
ブロックが生き物のように動く。腕を這い上がってきたそれが拳を"悪魔の穢牙"を更に包む。まるで以前戦ったイヴ戦の時のような腕が出来上がった。
ぐーとかパーにして動きを試した後、私は無意識にも笑顔を浮かべていた。まるで私が悪役みたいだと言わんばかりに。ほんの少し宙に浮いた身体がミシミシと軋んでいた。
「さぁ、そろそろ逃げ切らねば。」
腕をバネのようにして9Sを乗り越えた。すぐそこまで行ける、大丈夫。私は此処から逃げ切る!
A2が私の目的に気付いたように声を上げる。間に合わないとおもったのか走って投槍のように私へと剣を投げる。9Sがハッキングを試みる。一瞬崩れるが全てブロックで防ぐ、予想通り。
「終末へ、」
あと数歩、前に動くだけ。
「待て、早く背後を守れI・oッ!!」
「?」
警告。
条件反射で身体を捻り腕を突き出す。その腕からはパラパラとまたブロックが崩れているがあの投げた剣がもう届いているのか?ならばこの武器で受け止めるまで。
そう、思っていたのに。
「I・oに向かって投げたんじゃない!!」
「え、は」
「早く!!I・o!!!」
スローモーションになった空間。叫び声がやけに大きく聞こえて、私の頭に嫌な予感がよぎる。防御シールドの張られていない開いたブロックの中へ、私の腹部へと剣が入り込む。私に投げて刺す訳ではない?ならば剣はどこへ。
私が走って逃げようとしていた後ろで
「 」
腹に突き刺さる、白い剣。2Bと9Sの両腕がそれを掴んで妙な音を立てる私の身体を貫いていた。