改変を望まぬ転生者   作:代理

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賭けたくない遊び

死亡フラグ、ご存知だろうか。

今まさに私が建てている。

 

「なんてこった。」

「第一声がそれかよニンゲン。オハヨウ。」

 

眩しい、目が痛くなるような白い空間。デジャヴかもなんて思って神を探すが違う声が聞こえそちらを向く。短髪の少年、イヴが私を見下ろしていた。

 

「…鎖。」

「繋がないとすぐに逃げるだろう?あと服も変えておいた。ついでにスリーサイズと色々調べさせてもらった。筋肉の付き方、平均的な体温、血管の通りなど」

「もう結構です気色悪い。」

 

こいつ、本当になんてことを。

私は腕足ともに鎖で繋がれていた。その先には壁。ここはもしかして地下にある複製された街かと見回す。例の2Bとアダムが戦った場所であり、真ん中には長めのテーブル。2人で使うのには勿体ない大きさだ。

アダムを睨む。その私の睨みさえも鼻で笑い読んでいる本をパタリと閉じた。

そして、拳を今しがた舌を噛み切らんとする私の口(・・・・・・・・・・・・・・・・・)にねじ込んだ。

 

「君は実験対象ではあるが簡単に死なれては困る。」

「んぐ、がッ…」

「私の手ごと噛み砕こうという意思は受け止めておこう。出来もしないのにな。」

 

金属の味がする。というか歯の方が損傷が酷く拳が抜けられた後の口の中にも未だに金属と同じ血の味が残っていた。自殺しようとしていた事にバレているとは思わなかった。でもそれが1番のここでの解決方法であったが故に希望は潰えた。

「しばらくはその布でも噛んでいるんだな。」

「もが、あぐあ」

「さてでは実験を始めよう。といってもただのゲームだ。イヴも暇していたところだからな。」

「今日は何するの?兄ちゃん。」

「今日は…2人でババ抜きをしてもらおうか。」

「が、ああぶき…?」

 

ババ抜き?古典的なものを選ぶなと私は思う。久々に見たトランプからアダムは3枚取り出した。ジョーカーとハートのA、ダイヤのA。

 

「ただし、互いに賭けをしてもらおう。我々は君にここから出るチャンスをあげよう。しかしもし君が我々に負けたら、」

 

指を1本ずつ提供してもらう。

 

ヒュ、と喉から音が抜ける。痛い事は嫌いだ。故に勝負はしたくない。だがこの状況どう考えても逃げることも拒むことも不可能だ。

 

「1回でも勝てば元の場所に戻してやる。これをやるかは君に決定権をあげよう。ただし1日1回限りのゲームだし内容は毎回変える。

かなり有利だと思うが。舌を噛まないと保証するならその布も取ってやる。どうだ?」

 

…少なくとも私は死なないし、殺されない。しかし死ぬほど痛い目にはあう。

極限までの緊張を私に与えどうなるかという実験になるのかこれはと汗をだらだら垂らしながら私は目を閉じる。

今思えば2Bや9S、パスカルの言う通りに待っていれば良かった。というか主人公に会った時に自決すれば良かったのではないかとやや危ない思考に陥る。

生きたいという本能には抗えないか。

 

目を開け、2人を見て頷く。私は今日1回きりの勝負に指を賭けた。

 

 

沈黙が走る。

私の手には1枚のカード、ハートのA。対するイヴの手には2枚。ゲームが始まってから数分の事である。

先攻は私だった。しかし私が外れ、イヴも外すということを3回繰り返した後現在に至る。

そろそろ私は疲れてきた。精神的に、という面で機械よりも人間の方が情緒が豊かなんだ。狂いそうな静けさに少しずつのまれていくような不安だけがカードに残っていく。

これって、ヤがつく方々の遊びにありそうだと思いつつ勇気を振り絞って右を引く。

 

「…はぁぁ〜」

 

終わらない。相手に見えないように後ろ手にシャッフルして長いため息をついた。イヴは飽きてきたらしいのかかなり眠そうだ。

くいっ、と左を出す。ここで私の指1本がかかっている。どこをもぎ取られるのかは分からないがこの待っている間が怖い。先程から汗が止まらなくなっていた。

 

「お前、そんな事していいのかよ。」

「…?別にこれがジョーカーか当たりかなんて分からないでしょう。」

「そうだな。」

 

普通はだけど。

そう言うと目がカチカチという音を発していた。なんだ?今すぐにこのカードを引っ込めた方がいい気がする。だが引っ込めただけで何か変わるか?

 

「ニンゲン…いや、I・oと言ったか。まずは左手の小指をもらおう。」

「まだあいつは引いてもいませんが?」

「イヴはね、私よりも勘が鋭いんだ。そして私よりもよく物を見る(・・・・)。」

「…まさか、」

「今更左のカードを引っ込めてもムダだぞ。分かったからな。」

 

イヴがニヤリと笑う。兄と同じような笑いをするなと私は左手の小指を見る。

もし、イヴが既にカードの柄の特徴を隅々まで観察し、区別がついているのなら。

それは私の負け戦であり、この小指を提供するだけの遊びだ。最初の3ターンで私はジョーカーではない方を引かなければならなかった。

クソが。

 

「ゲームセット。アンタ弱いな。」

「〜!!気分としては最悪、ですね!」

 

ひらりと手からハートのAが抜けていく。揃えた方は普通に勝った事に嬉しいのか先程とは違う爽やかな笑顔をしていた。

 

「では手を出してもらおう。」

「ぐぅ…」

「なるべく綺麗に保存したいので、これで切断する。取り押さえておいてくれイヴ。」

「りょーかい。」

 

そう言い取り出したのはメス。拾って研いでといたとか言っているから切れ味には問題ないんだろう。

あぁ、さよなら私の指…これから来る痛みに私は耐えられるだろうかと止まらない指の震えを見て、アダムを見て、私をがしりとホールドするイヴを見た。

 

「いつ切るか言うか?」

「親切心かそれは。それともただの嫌がらせでしょうか?」

「どちらもだ。」

 

最悪な表情してるよ、あんた。

小指にメスが触れる。一気にやるらしくそれを振り上げて、指が、

 

「ぐ、あぁああぁああぁあぁッッ!!!!!!」

 

宙を舞う。切断部分から血が滴り綺麗な白い空間を赤で汚した。拷問するなら指がいい、何故なら1番痛いのを感じれる場所だから。誰かが昔にそう言っていた気がするがこれ程とは。切った後に視認した手も赤に染まり、熱く猛烈な痛さを訴えていた。

 

「ほう、ニンゲンの表情はそうなるのか。」

「話をする暇あるなら止血をしろ…!!!」

「イヴ、飛んで行った指と止血用の物を。」

「はぁい。」

 

語尾が崩れる。激痛は収まることなくうめき声が無意味に出てくる。汗は尋常じゃないほど。そんな私の顎を引っ掴んで観察するアダムは本当に研究熱心というか流石というか賞賛するしかない。

 

「素晴らしいな、実に綺麗な指と表情だ。」

「褒めても、もう指はあげませんよ、…!」

「もうゲームはしてくれないのか?」

「当然、」

 

自分の身体賭けてまで逃げ延びようとかもう思わなくなった。以前の私は急な転生やらなんやらでとち狂っていたのかもしれないと反省をする。

ある程度血が止められた左手に包帯が巻かれる。これで私は4本指の左手を持つことになった。

 

「どうせなら我々もヒトに似たような生活をしてみるか。なぁイヴ。」

「うーん…兄ちゃんがそれでいいならいいけど。」

「めんどくさいですよ、人の暮らしというのは。」

 

機械とは違い食事をしたりするから。

私は、とりあえず主人公達がストーリーを進めなければここから出る事は出来ないだろうと1人悟ったのであった。

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