「思い詰めた表情をしてますよ、I・o。」
「…パスカル。いや、考え事をしていただけ。」
「それは、貴方が敬語を消した事に関係ありますか?」
「まぁ少しは。」
パスカルの村にて。救出された私は2Bにずっとここにいてと説教された。久々に正座で3時間、床に座らせられた。我々の守るべき人間に対してこのような事は良くないけどそれ以上にあなたが敵に攫われたりとかする方が良くないんだとこってり絞られた。
「2B、てさ。マジで可愛いし綺麗だし冷静だし優しいし服装もめちゃくちゃにヤバいしもう全部好き。推しになって君に会えて良かった。」
「?褒めても何も出ない。」
「可愛い。好き。」
長い説教後、私が疲れ果ててとんでもないヲタク発言をしていたなんてのは忘れたい記憶でもある。
冒頭の話に戻ると私が思い詰めた表情をしていたのは彼らとの生活を振り返っていたからである。まぁ数日も前に一緒に暮らしていた奴らが死に、敵に回るというのは中々苦しい。メンタル的にキツい。
「どこに行ったんだろうか。」
「此処から出ちゃいけませんよ?」
「しないしない。もうあんなのは懲り懲りだ。」
「…後で一緒に工場廃墟に行くんです。なんでもあそこにも機械生命体の集まりがあるとか。」
あぁ、ミンナシンデカミニナルね。
あそこ長くて結構苦手だったんだよな。自爆する機械生命体の攻撃何度喰らったか。そして何度義体回収をしたか。
「まぁ頑張れ。」
「ただ話をしに行くだけですよ?」
「そか。」
そこで、私たちの会話は終わる。
*
パスカルが帰ってきた。それはもう命からがらといった感じで。やはり疲れるような事だったのかと思いながら行かなくて良かったと安心する。森の王、信仰団体の部分は私的にも関わりたくないしストーリー上変化があっても大きなブレは生じないと思っているので心配なさそうだ。
それよりも、此処からが重要。
イヴ戦について、奴はどう出るか。
アダムの始末はしたがそれを回収しないはずがない。そしてアダムを殺した私に何もしないはずもない。つまり、このままだとパスカルの村にまで被害が出るという事だ。それはいけない、つまり離脱する必要がある。
更に言えば奴はきっと本来の強さを超えるだろう。それはもう兄の仇、機械生命体の敵を殲滅するべく怒り狂いながらネットワークの暴走も引き起こす。
「んじゃパスカルまた行ってくるわ。」
「えぇ!?駄目ですよ!」
「いやいや今回は引けない理由があるんだよ。」
「前もそう言って帰ってこなかったじゃないですか!」
「それはそれ、これはこれ。今回はちゃんと帰ってくるから安心しな。」
ほとんど逃げるようにパスカルの村から出ていく。ついでに2B達が駆除するはずのパスカルの村付近の暴走した機械生命体を私装備用の"天使の聖翼"で片していく。人間用に重さなどは変えているが威力は変わらない。吹っ飛ぶ奴らを見て私はレジスタンスキャンプへと向かった。
案の定と言うべきか、私はイヴに早めに会うことが出来た。それはそれは凄い形相の。本来戦う途中で黒くなっていくはずなのにもう真っ黒。レジスタンスキャンプでの人の救出と、あの丸い機械生命体の処理はどうなるんだろうか。
「…えと、もしかして私の動きを読んでたとか。」
「……」
「逃がしてはくれないだろ、きっと。」
「そりゃ、兄ちゃんの仇だからな。」
「あは、ははは…」
重苦しすぎる空気。とりあえず2B達が来る前にこいつに殺されないようにしなければならない。私はそこまで戦闘が得意な訳ではないから渡り合えるか…
「シネ。」
「お断り。」
イヴが変形する。いや、周りに何かを纏う。それはゲームの中でも見たあの丸い形の機械生命体。名前は…何だっけか。だがこれで未来は変わらない。とっととレジスタンスキャンプ前まで移動しなくては。
「はっや!!?」
恐ろしく速い。大玉が転がってくるような感覚、よくある洞窟の罠とかはこんなんなのだろうか。バウンドしながら近づいてくるそれ、どう考えても追い付かれると焦りを露わにした私。
「ちょ、一時的退避。」
崩れているビルによじ登る。現在地点の確認、私はパスカルの村から出て鉄塔付近でイヴと遭遇、その後レジスタンスキャンプに向かって疾走。今はその途中にある崩れたビル内、そこまではOK。
屋内には入れないだろう、奴は私を潰すためにでかくなりすぎた。
「ふぅ…さてとここに留まるなんて事は考えちゃ駄目だな。」
「ニンゲン、コロス。」
「オマエ、ニイチャンノカタキ。」
「コロス、シネ。」
暴走した機械生命体が取り囲む。ここで私は死ぬのか?なんてつまらない冗談をボソリと呟いて拳を構える。
そして、機械生命体が襲ってきて
その身を爆発させた。
「!?」
「I・o!なんでこんなところに!」
逆に聞きたい、と機械生命体を爆発させたアンドロイドを驚きの表情で見る。復帰が早いじゃないか。
「9S…」
「もう!パスカルの村で大人しくしてて下さいよ全く…!」
*
安全運転の飛行ユニットに乗りながらレジスタンスキャンプに向かう。後でちゃんと話しますからねと言いながらも彼は心配してくれている。優しい奴め。
それよりも早く2Bの場所へと私は言う。イヴは私を諦めてはいないが一旦保留という形で去っていったのだろう。
「私がパスカルの村に残っていたらあいつらにまで被害が及ぶ。そう考えると私がわざと外に出た方がいい。」
「それでも貴方は唯一のニンゲンなんですからもっと自分を大切にして下さいよ!」
「疑問:I・oの無謀さ。」
「ははは。ほら、見えてきたぞ。」
ずっと怒る9Sとポッド。今が正しく2つのエンドに向かう正念場だということを忘れるほどに緊張感のないかいわであった。
そして、空から2Bを見る。やはり苦戦しているかのようだ。暴走しているからステータス的にも底上げされていると予測する。
「ところで何故パスカルの村に私を連れていかなかったんだ?」
「急いでますしそれにどうせ置いてきたところでまたこの場に戻ってくるんでしょ?」
「結果:無意味。」
「そうだな。」
上から飛行ユニットをぶつけて奴を殺ると言って近くの草むらに私を降ろす。どうやら中にイヴがいるなんて事は知らないらしい。気をつけろよと声をかけてからその衝突を見守った。
「…!お前は!」
「許サナイ、アンドロイド!!!全部、全部壊シテヤル!!!!!」
第2形態、と言うべきか。機械生命体が集まり空中に渦を巻く。ちょっと集合体恐怖症の方々にはキツい見た目をしていた。
「イヴはどこに行った…まぁいい。攻撃を続けているとコアが出てきそうだ。加勢する。」
「I・o!?あれほど村にいてと」
「ハイハイあとで聞くから。」
私の姿を見て動揺する2B、そして同じく私を見てさらに動きを速くする機械生命体の集まり。
3回ほどコアを出現させそれをタコ殴りにする。その後また、違うコアが更に多くの機械生命体を巻き込んで宙に浮いている。パスカルからの通信は来ていない事からあちらの被害は収められたと思っていいだろう。
キリがない。拳を機械生命体に叩き込みながら叫ぶ。
「おいキリがないぞ!どうする!?」
「多分機械生命体を統括しているユニットを倒せばこの暴走は止められるはず。」
「イヴか。」
「ポッド!イヴの位置を特定できる?」
「報告:位置は既に特定。地図にポイント完了。」
「ぐう有能!」
「私たちがイヴを倒す。」
真ん中へと向かう。1つの大きな区切りへと私は気合いを入れ直した。