「やっぱり駄目か。」
カチカチ、と時計をいじる音が聞こえる。
最近は聞いていなかった少年の声、世界は灰色に染まっていた。
まるで、
「ねぇ、なんで君は何も変えないの?」
問いかける冷ややかな神の目を見ながら、何故こうなったのか私は過去を辿った。
*
降下作戦の実行。イヴ戦の後、それはすぐに始まった。私が気を失ってから数時間経ったと思われる時にパスカルの村の外から騒がしい機械音がよく聞こえたからだ。
「パスカルごめん、また行かなくては。」
「…何度止めても無駄なんですね。」
「それ、9Sにも言われた。」
ここで未来は大きく変わる。2Bが死んで、9SとA2に主人公が変わる。そこからはご存知の通り波乱の展開。それでも私は改変は起こさない。
以前の戦いでボロボロになった装備をつけパスカルの村を飛び出す。無事に草原を抜け、森前の建物に着いた。確かここにA2がいて2Bを助け、殺す…
「誰だ貴様。」
「名を問う前に名乗るべきでは?」
剣が私の首を今にも斬らんばかりに接触している。声だけで分かる、2Bに似ているが2Bよりも過去を背負い、知り、信じれなくなったアンドロイド。
「I・o。君たちの言う人間。」
「!?そんなまさか。人類はとっくの昔に滅んでいる。」
「その情報をかいくぐって今生きてるんだ。それで、君はヨルハの一員か?」
「…A2。」
「あぁ、君が裏切り者の。」
私が裏切ったのではないと声を荒らげている。知ってる知ってる。だけど今はそれどころじゃないんだ。
橋側を見る。ふらふらと歩く1人のアンドロイド。来た、と思うと同時に建物内に他の汚染したアンドロイドが沸く。それらがそのアンドロイド…2Bを攻撃し始めた。
「雑魚処理は任せな。」
「面倒事を持ってきやがって…」
言葉とも言えない言葉を話ながら襲いかかっている。殴るが前より威力は下がっていた。新調は…出来ないかもな。だがレジスタンスキャンプに行けば何とかできるか?
まぁ、そんな事より。
「ここ…まで…かな」
荒い息をしている2B。黒い帯を外しその目を、紅い目を開けた。薄く笑みを浮かべていた。もう、死ぬ前だと言うのに。私は唇を噛んでいた。
「これは、私の…記憶。」
「ッ、2B。」
「I・o……皆を……未来を…お願いするね………A2も、」
途切れ途切れで私達に言い、剣を地面に突き刺す。近くに寄ろうとするがA2に止められた。その目に、映っているものが何か私には見えなかった。
剣を抜き2Bに向けて構える。そろそろ、9Sも来る。
2Bの腹に白の剣が突き刺さった。
橋に9Sがいた。信じられないという顔をしていた。
「つまんな〜〜〜〜〜〜い。」
そして、現在に至る。
*
「なんで死なせたのさ。」
「ッ……言っただろう、変えないと。」
睨み合いが続く。いや、神の方は私を空中から見下ろしているだけ。2Bや9Sの方を見るけどそちらではピタリと止まっていて、動かない様子だった。
「全く、こうも頑固だと腹が立つね。」
「この世界だからこそ変えてはならないんだ!」
「え〜〜。」
意志を伝える。奴はちゃんとは聞いてくれない、だけどこれだけは駄目なんだ。私は改変なんぞしたくない、するべきではないと主張する。その主張は今までの鬱憤も含めエスカレートしていく。
「ここはNieR:Automataだから。私は居てはならないし関わるべきじゃない!」
「んー…」
「お前が私を送らなければ良かったのに!!」
「あっそ。」
じゃあさ、
思考が歪む。いつの間にか目の前にいた奴の目に吸い込まれていくかのような錯覚を得る。じゃあさ、キミは
「この世界がただの作り物だと思っているの?」
作り物?だってここはゲームの世界だ。
そう言いたいが口を人差し指で塞がれる。それが離れた時言おうとしたが、唇が接着剤でくっついたかのように動かない。何故、と神の眼をもう一度見る。身体は強ばっていて動かない、動けない。
「そっか、まだまだそう思ってるんだ。それじゃあ君のその左手の小指は何さ、その痛みは?それも作り物だって言いたいのか?違うもんなぁ、ちゃんと痛かったでしょ?今もこうしてぐりぐりとすると痛いよね、そうだよね?」
小指の付け根をぐっと押す。痛い、痛みが広がる。そこをカリカリと爪でいじり、押し潰すようにされ痛みが増す。嫌だ、やめてくれと首を振るが奴はやめる様子もなくそれを見てニコリと笑った。
「ここはもうゲームの世界じゃないんだよ。君次第で全てが変わる、君も死ぬ。ストーリーだとかステータスだとかも一切ない生きた世界。分かる?それなのに君は見殺しにしてるの、機械で出来た人間を。とんだ悪人だね。2Bが死んだ今君が干渉してもこの世界は変わらぬものとなった。悲しいなぁ、こんなに悲しい世界があってたまるかって感じ。僕自身は干渉出来ないから本当に君の事を恨むよ。」
「!!!、!!、!」
ぶつぶつと私の脳髄まで響く言葉。直接切り刻まれているかのように、頭に残る。生きている世界、それを私が?それにもう、変わらないと。痛い、苦しい、それ以上にこの声を聞きたくない。身体が拒否反応を示している。
「そんな悲しい世界、取り残された君という悪人に僕からペナルティをあげよう。たった2つ君を変えるだけさ。もっと苦しんで、僕を楽しませてよ。」
小指の付け根から手が離れる。が、その手は私の首を掴んだ。ガシャン、と何かがのしかかったような重みを感じ首を見る。そこには鈍い金色の大きな首輪があった。なんだ、これは。得体も知れない恐怖に駆られる。
「まず君には
いらない。断じていらない。私は青ざめた顔をしているだろう。首を横に振るが金属音が鳴るだけである。嫌だ、こんなもの。
「次に、死んだ主要人物の魂を記録し幽霊として会話や見れる本を授けよう。これで死んだ2Bや、アダム、イヴとお喋り出来るよ。どう?僕ってやっぱり天才神様?」
狂っている。安らかに眠るはずだった魂を記録する?それこそ私や彼らが頑張った意味が失われる。こんな本、燃やしてどこかにと思っていると思考を読まれたのか首を傾げて神は言う。
「燃やしたりなくしたら彼らを苦しめるよ。その本は彼らの実体でもあるから傷つけたりなんかしたら大変だね。君の意志次第で大きくしたり小さくしたりも出来る優れものだからちゃんと保管してね?」
カバーもしてるから風化したりはしないけど。と言いながら小さい鞄に入れて私にかける。重くなく、軽い本。これの中に彼らがいると考えるとゾッとした。
「ペナルティだからこれ位はしなきゃね。君にとっての苦痛は僕やコレを見ている人にとっての幸福であるから。」
コレを見ている人?誰、私や神以外にも誰かいるのかと眼だけで問いかけるも神は無視した。1発では足りない怒りが沸いてきていた。絶望が、怒りが、悲しみが私を包んで離してはくれない。
では時を動かそう、なんて言いもう一度人差し指を口に当てる。それでやっと声が出せる、しかし出た声は掠れて恐ろしさに耐え難いような、小さな声だった。
「アデュー!頑張れ主人公!!」
時は、動き出した。
*
9Sがこちらに走ってきていた。
だが、それどころでは無い。
A2が剣を抜き髪を切る。
それどころでは無い。
地面がゆらぎ膝から崩れ落ちるように倒れる。
それどころでは無い。
それどころでは無い。そう思っていた私は、意識を失っていた。
ここから先、作者も展開が未だに読めてません。今までもそうでしたがこれからはもっと分からない事になるでしょう。
原作キャラは予定通り死んでいますが死んだ奴らも普通に話しかけてくるのでご注意下さい。夢要素なども恐らく多分きっと出てくるかもしれませんのでそちらにもお気を付け下さい。
あんの神様め。