魔法少女イデアル☆ことはICONOCLASM 作:エステル
「くっくっくっく……」
ある日の深夜、聖子は布団から飛び起きると、勉強机にノートを開き、笑いながらすらすらと何かを書き始めた。
「卿よ、上機嫌だな。何か良いことでもあったのか?」
鳥籠に監禁されている烏のエマが檻を啄みながら言う。
「素晴らしい計画を思いついたのよ。人類を滅亡に追い込む最高の計画がね!」
「人類滅亡とな! して、その計画とは?」
烏はつい嬉しさを隠しきれずに口調を弾ませる。
「明日になれば分かるわ。まずは学校で実験してみるのよ」
早朝。まだ夜も明けきらぬ時間に、聖子は誰よりも早く起き、魔女の姿になって聖隷小学校前に箒で降り立った。そして魔導書を開き、呪文を唱え始める。
「答えよ、ディ・セットゥ。闇のすべての道はその契約と証とを守る者には慈しみであり、真である。魔の王よ、御名のために、我の罪を贄にくべる。我の心の悩みを反射し、我を苦しみから引き出したまえ。神よ、かつてイスラエルで敗北したように、すべての力をもって汝を滅ぼさん! ラ・マレディクシオン・ウルチーム……ル・レイ・ブ!」
学校に魔女の魔法がかけられた。恐るべき人類絶滅計画の第一歩というべき、究極の呪いが。やはりジャックは正しかった。彼女は正真正銘、危険極まりないテロリストであったのだ。
聖子は何事もなかったような顔をして家に帰り、いつものようにコトハと待ち合わせをして八急電車に乗った。いつものように十三が車掌ごっこをしており、よほど注意しようかと思ったが最近はこういったタイプの男性による無差別殺傷事件が多発しているのでやめておいた。お婆さんに本物の車掌に間違えられた十三は、お婆さんから乗り越し清算のやり方などを聞かれていたが、彼は嫌がることなく丁寧に教えていたけれども、それは自分が良い人であるとアピールすることで周囲を油断させるための罠であることを聖子は知っている。
雲雀ヶ丘菜乃花塚駅で降りると、十三は小走りで2人の跡を付けてきた。
「実は宿題で分からないところがあるんだよ。今日は出席番号的に僕が当てられるから教えて欲しいんだ」
「男が気安く話しかけないで。あんたになんか教える訳ないでしょ」
聖子はぶっきらぼうに答える。
「聖子ちゃんはどうせ宿題やってないだろ? コトハちゃんに聞きたいんだよ。日本キリスト教史でルイス=フロイスが書いた日記についてなんだけど……」
「私の許可なくジョセに話しかけないで!」
「別に私はいいんだけどにゃぁ……」
そして校門を潜るまで2人をストーキングし続けていた十三は、潜った瞬間、ピタリと歩みを止めた。
「どうしたの、十三君?」
「い……いや……なんだろう。目の錯覚かなぁ。何か2人の雰囲気がいつもと違うような気がするんだ」
「あなたの目が節穴だからそう思うんでしょう。行きましょう、ジョセ。今日の宿題を写させた貰わないと」
「聖子ちゃん、勉強は自分でやらないと成績伸びないよ?」
十三を置いて歩いてくる2人。前から小走りでやってきたのは学校一のイケメン、アレクシスだ。
「やぁ、ごきげんよう。聖子とコトハ……んん?」
アレクシスは挨拶した傍から怪訝な目をして聖子をまじまじと見つめる。
「ふっ……私の顔に何かついているのかしら」
「何だろう……いつもと何かが違う気がするんだ。おかしいな」
いつもはしつこく聖子に付きまとうくせに、急に興味を失ったように教室に戻っていく。
「十三君もアレックス君もどうしたんだろうね」
「男が何を感じようが、どうだっていいわ」
教室に入ると、一部の席に人だかりができていた。ある女子を取り囲むように男子が集まっている。それを見た瞬間コトハは激怒して、男どもを蹴散らしに行こうとずんずん進んでいったが、聞こえてきた言葉に足を止めた。
「ブタ美ちゃん、なんだか綺麗になったね」
「本当だ……こいっちゃなんだけど、見違えるように美しいよ」
「ぶひひ……ありがとう、みんな」
それからブタ美が近づいて来たコトハを見たものだから、その視線を追う様に男子達がコトハに視線を向ける。
「……あれ? ピーチフィールドってこんな顔だったか?」
「どう見てもブタ美ちゃんの方が可愛いぜ」
「にゃぁ……」
男子達はすぐにコトハから興味を失い、ブタ美との会話を再開する。聖子曰くコトハは世界で2番目の美少女だが、それは言い過ぎにしても目が合った男子をそわそわさせるくらいの容姿はしている。だがこの日コトハと目を合わせた男子は、敬意は払いつつもどこか軽んじるような失礼な目をして、コトハとのコミュニケーションを最小限にしようとの努力に苦心しているようだった。
そんな違和感は明日も、明後日も、来週になっても続き、違和感はもはや違和感ではなく、ごくありふれた日常風景になっていた。男子はコトハと聖子を居ないもののように扱い、それだけでなく、クラスのクイーンビーである三友院みずほを始め、西園まりやアンナ、桜など上位ランクの見た目をしている女子からも興味を失っているようだった。アシュレイは普段と変わりない様子だったが、彼女は例外で、男の前では絶対に目しか出さないという宗教的理由によるものだろう。
理由は明白だった。男子の美醜に対する価値観が、ある日を境に反転してしまったのだ。その証拠に、いじめられっ子ですらなく、誰からも興味を持たれていなかった2人の女子が、校内を二分するほどの人気を博していたのだ。
「ブヒヒ……今日は10人にコクられちゃった」
「まだまだね、ブタ美ちゃん。私なんか12人よ。おほほほほほ!」
その校内2大ブスのブタ美とブス恵は、信者達を引き連れて女王様のように振る舞い始めていた。女子達はこれを非常事態ととらえて何とか男子の価値観を正常に戻そうと策略をめぐらせているようだったが、プライドの高い聖子はなぜかこの状況を楽しんでいるような素振りを見せた。
「聖子のブース! やーいやーい」
低学年の子供が聖子を揶揄いにやってきていた。学年一番の美少女と名高かった聖子が急にブサイク扱いされるようになったことで、それまで彼女に告白しその尊厳を蹂躙されるほどひどい言葉で振られた男達が、これ幸いにと見下しにやってくるのである。
「聖子ちゃんに酷いこと言わないで!」
コトハが注意したら、男子は鼻をつまんでコトハから距離を取った。
「うわ! 校内で2番目に醜いコトハだ! 1番ブスの聖子と2番ブスのコトハ、最強のカップルだな!」
「にゃぁ!?」
「おーっほっほっほ! 本校のブスランキング1位2位を独占するだなんて、大した友情ですわね」
桜が高笑いをしながら馬鹿にしにやってきた。彼女はこの状況をある意味で誰よりも楽しんでいる一人である。
「うるさいわね桜」
「うわ、ブサイク桜が来やがった! ここブサイク密度高けぇ! ブタ美ちゃんとブス恵ちゃんを見て口直ししなきゃ」
「な、な、なんですって!? わたくしが……ブサイクですって!?」
「桜さんはブサイクなどではありませんわ」
「そうですわ。あんな男の言うことなど真に受けてはいけませんわ」
アヤとカナが慰めるも、彼女達は同じような容姿レベルでまとまっていたので何の慰めにもならない。
「聖子ちゃん、何だか最近おかしくない? 男子の価値観が逆転しちゃったような……わ、私は決して自分を可愛いだなんて思い上がるわけじゃないよ、決して!」
「何か問題があるのかしら? 私は言い寄って来る男が来なくてせいせいしているわ」
聖子はサラサラの黒髪ストレートヘアを手で払いながら言う。そのしぐさに六麓十三はぎょっとして、まるで汚物が撒き散らされたかのように距離を取った。
「聖子ちゃんはそうかもしれないけどぉ……でもなんかおかしいとおもゆ……」
「憐れコトハ=ジョセフィーヌ。自分が醜い現実を受け入れられないのですわね」
その十三のしぐさを見て立ち直った桜が、コトハを心の底から見下しながら言う。
「え? 何を言ってるのかな桜ちゃんは。神から頂いた私の肉体が、桜ちゃんより美しくない訳がないよ? だって桜ちゃんの肉体は悪魔から貰った物でしょ?」
「こんの耶蘇教徒ッ……!」
「さすがに言い過ぎよ、ジョセ」
聖子は神道信者ではないが、同じ大和民族として桜にいくばくか同情して庇う。
その日の放課後、コトハは教会のボランティアをすると嘘をつき、聖子を先に返して学校を調べることにした。行く先々で男子からの蔑むような目線に絶えながら、学校中を歩いたが、何の収穫もなかったので帰ることにした。駅では十三が性懲りもなく駅員ごっこをやって遅くまで遊んでいる。
「ばいばい、十三君」
十三はコトハの声を聞こえているのに無視しようとたが、目の前に迫ってきたので無視できなかった。
「え、あれ? コトハちゃん? あれ?」
十三は顔中に疑問符を浮かべて首をかしげる。
「どうしたの?」
「いや……最近コトハちゃん達の顔をあんまり見ないようにしてたんだけど……いや別に他意はないよ。でもこうして改めて見るとなんというか……すごく可愛い」
小学生男子のくせに女子に対しそんな口説き文句を使ってしまったことで十三は狼狽し、逃げるようにして電車に乗り込んだ。コトハはその足で駅から出て、また小学校に戻る。それから思い切り指代わりに十字架を咥えて思い切り吹いた。すぐに白い鳩が飛んできて、コトハの肩に止まる。
「アビー君、この学校に魔法が掛けられてると思うんだけど、どうかな?」
「この凶悪な力は間違いなく魔王のものだ。きっとあの魔女の仕業に違いないよ」
白鳩は小刻みに顔を震わせて言う。
「聖子ちゃんは喜んでたけど……いったいユイちゃんは何の目的でこんな魔法をかけたんだろう」
「直接聞いてみるしかないね。どうやってあの子を探す? 空襲の日を待って追跡するかい?」
「それじゃいつになるか分からないよ。正々堂々、果たし状を送るんだよ」
そしてコトハはその日、書道部室で紙を貰い、それを何枚も張り付けて巨大な一枚の大きな垂れ幕のようなものを作り、それに大きな筆ででかでかと書をしたためる。みんなが帰った後、それを校舎の正面入り口に掲げたのである。
翌朝、2人はいつものように登校し、もちろん聖子もその垂れ幕を目にすることになった。垂れ幕の前には人だかりができており、アンナやアシュレイなどクラスメイトも大勢集まっていた。
「魔女に告げる。汝、罪深き者よ、主の御名において魔女裁判を開廷する。汝に弁明の理あらば、放課後、聖隷教会まで出頭されたし。愛と正義の魔法少女イデアル☆コトハより……ですってぇ?」
聖子は小鳥の鳴くような声で果たし状を読み上げた。
「この学校に魔女がいるのか?」とアンナが言った。
「んなもん居る訳ないでしょ」とアシュレイが答える。
「…………っ!」
聖子はこぼれそうになる怒りを抑えて唇をかんだ。自分が魔女でことは誰にも知られてはならない。なにせ、ここは教会が設立した私立小学校なのだ。悪魔と契約したことが知られたら、奨学金を打ち切られるだけでは済まない。校則違反で退学になるかもしれないのだ!
「どうしたの聖子ちゃん?」とコトハが心配そうに聞く。
「何でもないわ。ただちょっと……腸が煮えくり返っているだけよ」
放課後、コトハと聖子は互いに用事があると言って別れる。聖子は些かも不審に思わず、黒いローブに着替えて教会へと乗り込んだ。彼女は極めてプライドが高く、あんな風に挑発されて黙っていられる少女ではないのだ。
「来てやったわよ、魔法少女!」
聖子は魔導書を広げ、杖の先に光りを灯し、臨戦態勢で教会の扉を開ける。
「いらっしゃい、ユイちゃん」
桜色の魔法少女は礼拝堂の中心にある講壇に達、聖書を片手に魔女を迎え入れた。
「ユイエル卿と呼びなさいと言っているでしょう」
ど真ん中を歩きコトハに接近する。時が時ならヴァージンロードと呼ばれるその道を、足で踏みつぶすように忌々し気に。そして魔法の射程圏内で二人は相対した。聖子はいつ攻撃されても反応できる万全の態勢だ。
「ユイちゃん、自分が何をしたか分かっているの?」
「ええ、この上なく」
「何のためにこんな魔法をかけるの!」
「ふっ……決まっているでしょう」
そして聖子は邪悪な、この上なく悪魔的な笑みを浮かべ……
「人類絶滅計画の実験よ」と宣言する。
「じ……人類絶滅計画!?」
「ええ。いずれはこの星全体に魔法をかけて、男の価値観を逆転させる。世界中の男にブスと結婚させるの。そしたら醜い子供が生まれる。完全に世代交代したところで魔法を解けば、あら不思議。地球上にブスとブサイクが溢れるわ。そうなれば、誰も結婚したくなくなる。これ以上子供が生まれなくなって人類は滅亡よ。クックックックッ……」
聖子は腹の底から湧いてくる歓喜を噛み締めるように不気味に笑う。
「き……気の長い計画……って、そんなこと上手くいくわけないじゃん」
しかしコトハはあっさり聖子の完璧な計画を否定する。
「なんでよ?」
「ブ……美しいって言いづらい子が増えたところで、容姿に対する価値観が変わるだけだよ。こんなの無意味だよ。分かったらこんな魔法解除して」
「ぜぇぇぇぇーったいに、嫌よ」
聖子は黒髪を振り乱して、底意地の悪い声で宣言した。
「なんでぇ!?」
「だって、それあなたの感想よね? 私の見解では、美とは不変の真理よ。例えば、この私が世界で一番可愛いようにね!」
「なんか聖子ちゃんみたいなこと言ってる……分からず屋さんは力ずくで分からせるけど、いいの!?」
コトハの目が鋭くなる。戦闘の予感が教会を熱し、敵対的な目線が火花を散らす。聖子もそれに答え、魔法の杖をコトハに向けた。
「かかってきなさいな、コスプレ狂信者!」
先に仕掛けたのはコトハだった。聖子に向かって飛翔すると、それ違いざまに魔法の刃で切り伏せながら教会の扉を抜けて空に舞い上がる。聖子はその刃を魔法の杖で受け流すと、すぐさま箒に乗ってコトハを追撃する。
「ラ・フードッ!!」
魔法の杖から放たれた小さな稲妻が空間を折れ曲がる様に炸裂。コトハに命中したが大したダメージではない。
「イデアル・マジカル・シルヴァーッ!!」
コトハの周囲に展開される環状の魔法陣その数は17を3倍して3を引いた数!
「アスター・キャンズ、ファイアッ!!」
連続射出される対空魔力弾。聖子は急加速して振り切ろうとするが、魔力弾は完全に彼女を照準しており、いくら避けても避けても軌道を変えて追ってくる。
「ちっ……ディ・セットゥ! フ・レ・パィエッツ!!」
星屑を撒き散らし誘導弾をかく乱し次々と撃墜する。それでも数が多く、高軌道の弾丸を避けるには全力で集中しなければならない。それこそがコトハの狙い。彼女が回避に全神経を使っているその時を見定め、マスタード・シードをカノンモードに変形させて、聖子に狙いを付けた。
「イデアル・マジカル・ロトブレダッ!」
機関砲のような速度で大型魔力弾が発射された。
「なっ……ル・ブクリエッ!!」
聖子が咄嗟に防御魔法を展開するが、魔力弾はレーザー砲のように持続的な圧力を加え、爆風と煙で周囲は覆い尽くされる。重い衝撃が防御に掛かり、青い光の障壁にヒビが入りかけている。
なぜ勝てないのか、と聖子は思った。決まっている。聖子は女の子に対しては無意識に手加減してしまうからだ。それも相手が可愛ければ可愛いほど、発揮できる力は弱くなる。そして聖子の真の能力は、こんな開放的な大空間では発揮できない。彼女はあらゆるものを利用して相手を翻弄し、不意打ちによって倒すダーティープレイが得意だ。時には人質を取り、時には大事なものを壊すと脅し、時には相手の好意に付けこんだりして戦ってきた。純粋な戦闘能力では、聖子はこの魔法少女には絶対に勝てない。
「卿よ、苦戦しているようだな」
烏が飛んできて帽子に止まって鳴いた。
「見りゃ分かんでしょうが! 何とかできない訳?」
「ふむ……汝は魔王様と魂の契約を結んでいる。その契約の在り方は人間の概念で言えば根抵当権に近い」
「根抵当権……はぁ? 何よそれ」
「魂を担保にしたクレジットカードのようなものだ。卿は自らの魂の一部を担保にして、魔王様の力の一端を借りているという訳だ」
「で?」
「根抵当権でいう極度額……つまり使用可能な魔力量は、差し出した担保の大きさに比例する。要するに、契約する魂の領域を広げれば、必然的に卿は強くなるという訳だ」
「魂を担保に……物騒ね。それって、いわゆる死後地獄行きって奴?」
「必ずしもそうではない。あくまでも神に対する魔王様の勢力拡大に寄与するというだけのこと。債務を返済……要するに善良な魂を魔王様に捧げれば、卿の弁済は完了する。これまで通り自由に魔法を使えるという訳だ。卿よ、いかがいたす?」
「ちょっと弁護士に相談してからでいい?」と聖子は聞いた。
「構わんが早くしないと負けるぞ、卿よ」
「分かったわ、じゃあ今の100倍の魔力出力で契約よ!!」
「ククク……いいのか、卿よ」
「良いも何も、私は人類を滅亡に追い込む女よ。魔王にくれてやる魂なんて、いくらでも供給できるわ!」
「よかろう。では魔王様の代理人として、卿と新たな契約を結ぼう」
そして漆黒の烏がひと鳴きすると、聖子の体から凶悪な力の波動が迸り、空間を歪めるほどのエネルギーをもってコトハの砲撃を弾き返した。
「魔界根抵当権設定契約は結ばれた。大魔女ユイエルよ、そなたの魂極度額は1億7千万柱だ」
「ふっ……この世に男が何億人いると思ってんの。たかが1億7千万の魂、明日にでも返してやるわよ」
聖子を包み込む空気が変わったことは、離れた距離にいたコトハにもすぐに分かった。肩に止まっている白鳩がコトハの頬をくちばしで啄んだ。
「まずい……! 彼女は危険だ。コトハ、逃げなきゃ」
「でも今逃げたら、ユイちゃんの人類絶滅計画を阻止できないよっ!」
「魔力量が今までとは桁違いだ。きっと魔王と新しい契約を結んだんだよ」
「だったら尚更、その歪み切った性根を叩き潰さなきゃ! からし種一粒ほどの信仰があれば、100億の悪魔崇拝者だって倒せるって、コトハが証明してあげるよッ!! ラファールッ!!」
全身を魔力で包み込み聖子に突撃する。信仰の光がこの世の悪を打ち砕く―――エル・カンターレ、
「アルトゥ」
その一言で、コトハは空間に縛り付けられた。全身が凍ったみたいに動かない。体に魔力を注ぎ込んでも、指一つ動かすことが出来ない。
「なんで……!! イエス様、私の信仰が足りないんですか!? 悪魔崇拝者になんて負けるわけには行かないのに……!」
「誓いなさい魔法少女。私の計画を、邪魔しないと」
「嫌だ」
「なら……死ね。アバート」
天まで届きそうな爆炎がコトハを包み込んだ。魔法の装甲ははじけ飛び、ピンク色のドレスは焼け焦げ、コトハは意識を喪失して地上へと落ちて行く。ごめんなさい……薄れゆく意識の中、確かに魔女がそう呟いたことだけが、コトハに残された希望だった。