スプリント戦線は今日も晴れのち地獄っす   作:冬眠復帰

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名前の通り冬眠から復帰できました。


年末年始は華やかにっす!

「うえーい! かんぱーいっす!」

 

 トレーナー室でカレンチャンさんとおまけでトレーナーも一緒にちょっと遅めのクリパの始まりっす。私のレースのせいで遅れちゃったのは申し訳ないっすね。

 

「お前今俺のことおまけ扱いしただろ。顔に出すぎなんだよ」

 

 何のことだかわかんないっすねー。トレーナーには財布役っていう大事なお役目があるんすから居てもらわないと困るっすよ。

 そんな風にトレーナーとおちゃらけてるとカレンチャンさんが優しい、でもちょっと拗ねてるよな? そんな何とも言えない表情でこっちを見てるじゃないっすか。ほらー、トレーナーのせいで笑われちゃったじゃないですか。

 

「お兄ちゃんよりも君の方が面白いから安心していいよ? でもこの前のレースの後あんなだったのにもう立ち直っちゃったね。これなら日付通りにパーティーやっても良かったかも」

 

 いやはや、その節はなんともお見苦しいところをお見せしてしまったっす。恥ずかしさと申し訳無さが混じって何とも言えない気持ちになっちゃった。いやはや自分のことながらトレーナーにも言われたのに負けて取り乱すなんて精進しないといけないっすねー。ん? どうしたんすか、トレーナー。そんな苦虫を噛み潰したような顔して。嫌いな食べ物でも有ったんすか?

 

「……自分の不甲斐なさに情けなくなってな。カレンは自分のことをコントロールできる賢いウマ娘だ。それに頼りっぱなしでここまで来て、お前にもろくなフォローもできず結局はカレンに助けられてしまった。ただでさえお前は強くて普通のトレーニングだけでもどんどん強くなっていく。その上メンタルケアまでこのザマだと何のために俺が……」

 

「今日はハレの日なんすから湿っぽいのはなしっすよ。それにあの時一人にしてくれって言ったのにカレンチャンさんを入れたのはトレーナーでしょ?」

 

 口からウジウジ吐き出してるトレーナーの口に大きめのチキンを放り込む。なんとか咀嚼しようしながら私の質問に首肯してくる。

 

「ならそれがあの時できる一番のメンタルケアだったんで大正解っすよ。出しゃばるわけでもなく、一人にし続けるわけでもなく。私が必要としていたものを渡してくれたんですから。あっ、でも一番は優しくハグして慰めてくれたカレンチャンさんっすよ!」

 

「はいはい。ならいい加減さん付けやめてみよっか?」

 

「分かりました! カレンチャンさん!」

 

 ペシンと頭を叩かれてしまった。トレーナーもやっとチキンを飲み込んでマシな顔になったすね。そもそもあれは私が慢心したのが一番悪いんだし、トレーナーはちゃんとしてくれてましたよ?

 

「ありがとな。それでもトレーナーって生き物は傲慢でな。もっとなにか出来たんじゃないか、勝たしてやれたんじゃないかって考えちまうんだ。それにお前みたいな才能が服着てバカ面ぶら下げてるようなウマ娘だと全部自分のせいに思えちまうんだ……イタイ!」

 

「乙女に向かってバカ面とはなんすか。見てくださいよこのプリティなお顔を。カレンチャンさんもそう思うっすよね!?」

 

 あんまりにも失礼なトレーナーのスネを蹴り上げてやる。だけど。

 

「うーん、今のはお兄ちゃんがダメダメすぎるけど、カレンがいつも見る君はプリティだけどちょーっとだらしない顔してるかな?」

 

 もうだめっす……。カレンチャンにだらしないって言われたっす。もう生きていけない……。

 それから冗談だよー。って頭をなでてもらって再起動した私は改めて三人でクリスマスパーティーを楽しんだ。美味しいケーキも食べたしカレンチャンさんとプレゼント交換したり、トレーナーからもプレゼント貰ったりいやー、ほんと楽しかったっす。宴もたけなわな頃、トレーナーが珍しく真面目な顔して話してきた。

 

「改めてだが本当に大丈夫か? カレンのお陰でマシになったと思っているが負けたレースが原因で調子を落としていったり、立ち直れなかったりするウマ娘も少なくない。特にお前は今回が初めての敗戦だ。情けない話だがカレンに頼りっぱなしでそのあたりの経験も少なくてお前の状態を判断しきれない。だからもう一度聞かせてくれ。本当に大丈夫なのか?」

 

 うーん、考えすぎな気がするんスけどね。まあでもあんなに暴れたら心配されても仕方ないっすね。結局あの後トレーナー結構怒られたらしいし、こっちには口頭注意だけで済んだのもトレーナーが頑張ってくれたからでしょうし。ああ、脱線しちゃった。ともかく私の状態っすよね。

 

「ほんとに大丈夫っすよ。ほんとは生涯無敗なんてちょっと夢見たっすけど、ブルボンちゃんに目を覚まさせられたっす。現実は甘くないって。もちろんこれまでも手を抜いてたつもりはないっすけどここからはもっと死にものぐるいで行くっすよ」

 

 ちょっと恥ずかしいけど信頼しているトレーナーに本心を伝えたら「そうか」、なんて一言と頭をポンポンと叩かれた。その後カレンチャンさんにも「がんばろうね」ってなでてもらえたからテンション最高潮っすよ!

 

 

 楽しくなってポーズまで決めたのに、その後はお片付けとなってしまったっす……。不完全燃焼っすね。

 

 

 

 

 

 

「そんなわけでパーティーっすよ! パーティー!」

 

「えーと、ライスそんなわけを先に教えてほしいかな?」

 

「前提条件が不明瞭ですので詳細な情報をお願いします」

 

 不完全燃焼のモヤモヤをそのままぶつけたら当たり前な回答が返ってきてしまったす。ブルボンちゃんはそういう性格だから問題ないっすけどもち米ちゃんはもうちょっと柔らかくならないとひび割れちゃうっすよ?  

 考えてることが漏れたのかもち米……ライスちゃんにジト目で睨まれちゃった。まあともかくせっかく仲のいい友達が寮に残ってるんですしパーッとしましょ?

 改めて話した感じ二人共OKな感じで万々歳。フラワーちゃんとかマチタンちゃんは実家に帰っちゃってますし、後はバクちゃんすかね? 確か寮に残ってるはずですし探してくるっすか。二人はパーティーの計画をお願いするっすね。そうお願いして二人から了解を貰ったのでバクちゃんを探しに学園内をバクシーン! するとしましょっか。

 

 

 

 

 

 そう言ってまあまあな時間学園をウロウロしてたんすけど、見つからなくてもはや散歩になっちゃってるっすね。それでも諦めずに歩いていると向こうから生徒会の人たちが歩いてきてるじゃないっすか。

 

「やあ、師走のこの時期になっても君は元気だな」

 

「貴様、またトラブルを起こすんじゃないだろうな」

 

 うーん、この対応の温度差、風邪引いちゃいそうっす。まるで私がトラブルメーカーみたいに言ってますけど私はどこからどう見てもひんこーほーせーな優等生っすよ?

 

「ルドルフちゃんに副会長ちっすちっすです」

 

 いつも通りに元気に挨拶したらルドルフちゃんは苦笑い、副会長はすごい顔してるっすね。はて? どうしたんすかね。

 

「き、たわ、きさ……このたわけが!!」

 

「……っ! うっさいっすよ! もう、ウマ娘のお耳は敏感なんすからね!」

 

 いきなりあんまりにあんまりな仕打ちをしてきた副会長に非難を込めて涙目を送る。残念ながら効果は無いみたいで顔色を赤くしたら青くしたりしながらすごいことになってる。おかしいっすね、まだ怒られるようなことは何もしてないはずなのに。そんな事を考えてるとやっと落ち着いたのか顔色がまともになったっすね。

 

「貴様が! 会長を! ちゃんづけするからだろうが!! 年上に対する敬意ぐらいまともにできんのか!?」

 

 うーん、ちょっと日本語おかしいしまだ混乱してるんすかね? それにちゃんづけだって。

 

「でもルドルフちゃんがいいって言ったんすよ? 友達なら問題ないって」

 

 私の発言が予想外だったのかすごい勢いでルドルフちゃんの方を見たけど、その勢い首痛めないっすか?

 

「いやね……? 彼女は入学早々私のところに話を聞きに来てくれてね。その時に友達と言われてしまったんだ。私としてもやぶさかではないので公の場でなければと許可を出したんだ」

 

 そうそう、せっかくトレセン学園に入れたんだしお話したくて速攻で遊びにいったんすよね。実際レースの話や学園での話は面白いものばっかりでつい友達になりましょ、って言っちゃったんすよね。あー、でもダジャレだけはジュニアクラスからやり直したほうがいいんじゃないっすかね? 流石に直接は言ってないっすけど。

 

「……納得は出来ませんが、会長がそうおっしゃられるなら私はもう何も言いません。だがな……貴様はもっとちゃんとしろ!!」

 

 み、耳がああ……。それから私は悪くないのにお説教をされてしまったっす……。

 

 

 

 

 

 うーん、未だに耳が痛いっす……。お説教の後にバクちゃんは今日は外出してるって教えてもらってそろそろかなーって門の所でまってたら向こうからバクちゃんがトレーナーと一緒に帰ってきたっす。でもあれ……? なんかいつものバクちゃんらしくないと言うか元気がなさすぎるというか。

 あ、こっちに気がついてくれたみたいっすね。いつもと違いすぎる姿に首をかしげながら挨拶をする。だけどもやっぱりいつものバクちゃんじゃなくて、なんだろ? すごく元気がなさすぎる。心配だし気になるけどもしかしたら聞かないほうがいいことかもしれないしどうしようかと思ったら、バクちゃんとトレーナーが小声で会話した後場所を変えようと言ってきたっす。多分話してくるんだろうけどほんとに聞いていいんすかね? 目線で聞いてみても返ってきたのは無言だけだったっす。

 

 

 

 

 

 

「脚部の不安で走れないかもしれない?」

 

 バクちゃんのトレーナー室で聞いた話は寝耳に水なんてものじゃなかったっす。今日も病院に行っていたみたいでそこで断言はされなかったけどもしかしたら、なんて話をされたみたい。バクちゃん本人は気づいてなかったみたいだけどバクちゃんトレーナーが違和感を感じて発覚したらしいっす。本人も気づかないレベルの違和感を見つけるのはさすがとしか言いようがないけど。それで言われたのがさっきの内容っすね。

 

「今まで健康診断以外で病院のお世話になったことがない私ですが、まさかこんなことになるとは……」

 

 流石のバクちゃんもショックを受けてるみたいで委員長トークにならない。詳しく聞いたら走れないってのは最悪のケースで今のところそこまでではないみたい。だけども年が明けてまだメイクデビューが出来ていないのも合わさって結構メンタルに響いちゃったみたいっすね。

 言いたいことはあるけれど言っていいのか迷ってしまう。どうしよっか。うん、バクちゃんなら大丈夫だよね?

 

「ねえ、バクちゃんは諦めるの?」

 

「い、いえ、ですが……」

 

「大丈夫だ。俺がどうにかする」

 

 バクちゃんの言葉を遮ったのはバクちゃんトレーナーだ。今はバクちゃんの口から聞きたいんだけどそう思って睨みつけるつもりでそっちを見たらそこに居たのは新人とは思えない、もっとおかしいなにかにしか見えないバクちゃんトレーナーだったっす。

 

「俺がどうにかする。決して君の走りを止めたりしない。必ず……必ず俺がサクラバクシンオーというウマ娘を頂点へと連れて行く……!」

 

 静かな、だけどとっても鈍く熱い決意表明だ。ギラギラと輝いているわけじゃないけど、確かに熱を持ったなにかがそこに居た。

 

「バクシンオー、諦める必要はない、君が走りたい場所を走れる道を探す。だから君はいつもみたいに委員長として全力で走ってくれ。俺が全てを準備する」

 

「トレーナーさん……」

 

 ……すごいね、私もちょっと気圧されちゃった。ちょっと愉快で優しい人だと思ってたけど蓋を開けてみればすごいもんを抱え込んでたんすね。

 

「……いいでしょう! 委員長たる私としたことがお医者様に言われたからと落ち込んでしまいました。ですがトレーナーさんご安心ください! あなたのサクラバクシンオーはもう大丈夫です!」

 

 うーん、また耳が痛くなるっすね。でもバクちゃんが元気になってよかったすね。これ以上は私も野暮になりそうっすから退散退散っと。

 こっそりと部屋を出ようとしたらバクちゃんに話しかけられて振り返ればいつも通りに元気な……、でもどこか違うバクちゃんがいたっす。

 

「あなたにも心配をかけてしまいましたね。ですが私はもう大丈夫です! 委員長の権化たるこの私、サクラバクシンオーはもう悩みません! どうぞ私の走りを楽しみにしてください!」

 

 ……ああなるほどっすね。熱は近くのものに移っていくものっすもんね。今までみたいに元気なバクちゃん、だけどそれだけじゃないなにか覚悟のようなものが見えったっす。じゃあ私もちゃんと返事しないとね?

 

「元気になったようで良かったね。でも最強のスプリンターは私だから。たとえバクちゃんでも私の前は走らせないからね」

 

「素晴らしい気迫です! ですが私はその上を行きましょう! サクラのウマ娘として、驀進という名前にかけて最強を証明してみせましょう!」

 

 どうやら熱は私にも流れてきたみたい。あーあ、バクちゃんの背中を押しちゃったかな。でもいっか。そんなバクちゃんに勝ってこそ私が最強だと言えるんだから。

 

「バクちゃんと走れるのが楽しみだよ。じゃあね」

 

 それ以上何も言わず、振り返ることもなく部屋を後にする。ああいい気分だ。今から1200を走りたいぐらいだ。

 それから少し歩いて大事なことを思い出してバクちゃんの部屋に戻る。

 

「バクちゃん! ライスちゃんとかブルボンちゃんたちとパーティーするんだけど来るよね?」

 

「おお! それはいいですね! 委員長としてこのサクラバクシンオーぜひ参加させてもらいましょう!」

 

 良かった良かった。それから二人で予定の確認とかしていたらバクちゃんのトレーナーがすごい顔でこっち見たっすけどどうしたんすかね?

 まあいいや、それよりもパーティー楽しむっすよ!!

 




なんか主人公が強くなりすぎそうだからライバル強化イベント
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