壺職人憑依記 ~壺がデスサイズで何が悪い~   作:パラスチミン

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魔壺 ポッド兄妹

 こちらを見る純粋無垢と言っても差し支えない瞳、彼らか彼女らなのかは分からないけど俺の魂の波長はこの小さな子供たちを指し示した。一応確認するけど…うん、やっぱりついてるね。胸元に武器を現すバッジがついてるのが見えた。こりゃ確定的だなあ。

 

 「君たち、武器なのか?」

 

 ぶんぶん、とほとんど同じ動作で首を縦に振る二人、どうやらまだ誰にもパートナーの申し込みは受けていないらしい、けど。俺よりだいぶ年下だよなあこれ…しゃがんで話しかけてみるととても嬉しそうにしている。もしかして誰にもスカウトも話しかけてくれないから退屈してつまらなかったのかな?まあ武器の見た目も重要視する職人もいないわけではないけど、俺はそんなの気にしないし。きちんと戦う覚悟があって、デスサイズになりたいと思っているのなら、年齢だって問わないつもりだけど…そもそも分かってるのかな?

 

 「俺はキリク・ルングっていうんだ。君たち名前は?」

 

 そう尋ねるとちょっと困った顔をした彼らは二人して顔を合わせてあせあせと何事かを伝えあってる。ジェスチャーで。そのやり取りはなんとも微笑ましく可愛らしいものだけど、もしかして…

 

 「話せない?」

 

 それっ!とでも言わんばかりの感じで二人して指を俺に刺した。なるほど、話せない。それは困ったなー、なんで話せないんだ?言葉は理解してるっぽいし…このままだと名前すらわからなくて困っちゃうよ。多分俺と同じ黒人で白金のショートヘア、水色の大きな瞳に白のオーバーオールの彼らは俺が困ってるのが伝わってるらしくあせあせとまた慌てている。これは、困ったな。どうしようか、そう考えているとぬっと俺の後ろに大きな影が差した。

 

 「ポット兄妹か、目の付け所は悪くないんじゃないか?」

 

 「シド先生、知っているんですか?」

 

 「死武専が保護している孤児だからな。魔女にやられた大地の祈祷師の末裔だ。話さないのも宗教的な理由、年齢も見た目相応だが武器としては生半可な実力のものじゃ釣り合わない。お前なら使いこなせるだろう」

 

 俺の後ろに気配を殺して現れたのはシド先生、どうやら彼らの事を知っているらしく彼らのプロフィールを教えてもらった、武器としては強大な力を有しているがそれに伴って使い手も選ぶらしい。なんと職人が武器に振り回されるという逆転現象がこの前発生してから誰も誘わなくなったとか。だから、俺が話しかけたらすごく嬉しそうにしてたのか、なるほど合点がいった。

 

 「シド先生、この子たちの名前は?」

 

 「兄がポット・オブ・ファイア、妹がポット・オブ・サンダー。強い武器たちだ。この年ですでにEATに所属できるのだからお前にはそれがよくわかるだろう。あとは当人同士で話し合え、俺は余計な真似はしない、そんな男だ」

 

 そう言ってシド先生は去っていった。残されたのはキメたドレッドヘアをかく俺と不安そうな双子。んー、まずはコミュニケーションからかな?俺の腰ほどしかない身長で俺を見上げるのはつらいだろうし、しゃがみ込んできちんと話すことにしよう。

 

 「ファイア、が君で、サンダーが君か。俺はデスサイズを作りたい。お前たちに戦う覚悟はあるか?」

 

 ぶんぶん、と勢いよく縦に振られる首、これ多分両方パートナーにしなきゃいけないやつだな。ということは集める魂も2倍か…いいね、ビリビリ燃えてくる。じゃあ一番重要な質問をしよう。

 

 「お前たちはどういう武器なんだ?」

 

 そう質問した俺を双子たちは手を取って引っ張り出した。促されるままについて行った先にあるのは会場の調度品の一つ、しきりにそれを指さす赤いベレー帽のファイアとファイティングポーズを取って空中を殴る黄色ベレー帽のサンダー、とりあえず俺が理解したのは…

 

 「壺、か?壺を両手につけて殴る?」

 

 正解!と二人して手で大きく〇を作った。なるほど…武器じゃなくね?いやまて一応括りとしては鈍器なのか?いまいち何ともわからんけど、やってみないことにはわからない。とりあえず仮のパートナーとして試すのも悪くないだろう。

 

 「じゃあ、ちょっと試してみるか?」

 

 そういうと二人の顔がキラキラと輝いた。へー、こんなに小さいのに立派にEATやってんだな、そうと決まれば話は早い。俺は異様に盛り上がっているところへ二人を抱き上げて向かう。なんで盛り上がってるかって?そりゃ今組んだ職人と武器のペアが試合してるからだよ。死武専は超実力主義、命を懸ける武器と職人のペアの相性をその場で確かめないわけないじゃないか。毎日保健室は大回転、保険医のメデューサ先生も大変だ。

 

 あれ?あの柱でぐでってるの…マカじゃね?何してんだあんなところで?いや、パートナーが見つからなかったのか。

 

 「マカ、大丈夫か?何やってる?」

 

 「キリクくん…ち、違うの!これは鎌の子がいなかったから落ち込んでるだけであって決して断られたわけじゃ…」

 

 「断られたんだな…」

 

 「断られてない!」

 

 あたふたと両手を動かして必死に説明するマカの恨めしそうな視線の先にはけだるそうな銀髪で赤い目の男子が一人で黄昏てた。何というか、擦れたいみたいな感じの空気だな。ふーん、マカが目つけたってことは間違いなく鎌だしこいつは根性があって諦めが悪いからことあるごとにアタックしに行くんだろう。いつ根負けするかね?あの男子は。

 

 「そ!それよりも!キリクくんのパートナー候補って、その子たち?」

 

 「ああ。試してみようと思ってな。今やってんのは、ブラ☆スターか。ちょうどいい」

 

 「…いいなー…」

 

 どうやら二人とも人懐っこい性格らしく、ファイアは俺に肩車を要求、サンダーはそのまま抱っこがいいらしい。まあ好きにさせてやろう。視線の先には鎖鎌を持って他の即席パートナーたちに対して無双をしているブラック☆スター、元から強かったやつに武器がついて鬼に金棒ってか?ほんとに死屍累々の100人組手になってるじゃねーか。

 

 「ひゃっはっは!流石は俺様!誰にも負けねえ!」

 

 「おい、ブラ☆スター。調子に乗ってるところ悪いが付き合ってくれ」

 

 「キリク!お前も見つけたのか!?いいぜ!歯応えなくて退屈してたんだ!」

 

 「おっしゃ、じゃあ二人とも武器になってくれ」

 

 俺がそう声をかけると二人の姿が光に変わり、右手にファイアが、左手にサンダーがやってくる。光が晴れるとそこには壺と戦闘用グローブを掛け合わせたという感じの手甲がそれぞれあった。それぞれの手の甲部分には「Pod of Fire」と「Pod of Thunder」の銘が刻まれている。付けている感触は極めて軽く、俺が何も調整してないのしっくりくる。魂の波長がばっちり合ってる証拠だ。二人同時に合うことなんてなかなかないぞ。やはり兄妹だから波長が近いのだろうか?

 

 「いくぜ」

 

 「おうよ!」

 

 宣言と同時に懐に潜り込んで右のストレート、ブラック☆スターは腕で防ぐが、みしりという音に顔を変えてバックステップで威力を殺した。さっきまで余裕綽々だったブラック☆スターの顔が警戒に滲んでいるのはちょっと達成感があるな。そして、今の威力。驚いた。俺がただ殴るよりも何倍も威力が高い。俺の動きに合わせて武器のファイアもサポートしてくれたからだ。何も伝えてないのに、俺の魂からそれを読み取って合わせてくれた。しいて言うなら阿吽の呼吸。すっげえ、これが本当に波長の合う武器との戦闘か!口の端に笑みがこぼれた。

 

 「椿、油断ならねえぞ。小回りが利くモードは?」

 

 『はい、ブラック☆スター。これを』

 

 鎖鎌だった椿の姿が変わる。短刀、日本刀の短いやつだ。それを逆手に構えたブラック☆スターが一足飛びに俺にかかって刀を振り下ろしてくる。右手で刀を受ける。武器同士で受けたのでお互いの魂の波長が反発しあい甲高い音を立ててぶつかり合った。もちろん俺は二人武器を使ってるのでサンダーの左手が残っている。選択するのは最速のパンチ、手首で放つフリッカージャブ。首をかしげて躱すブラック☆スターの頬が切れて血が流れる。

 

 「椿!」

 

 『はいっ!』

 

 そう合図をしたブラック☆スターの右手から突如膨大な煙が生まれた。煙幕…!一体いくつの形態を持ってるんだ椿のやつ!?当然煙に紛れてブラック☆スターは距離を取る。そして、煙が消える前に何かをこっちに向かってぶん投げた!煙を切り裂いて現れたのは、手裏剣!どんだけあるんだと思いつつと左のアッパーカットで跳ね上げて無効化、したと思ったら攻撃直後で無防備な俺の土手っ腹に向かって肘撃ちの構えを取ったブラック☆スターが突っ込んできていた!このっ!

 

 「ひゃっはー!もらったぜキリク!必殺!黒星☆ビックウェーブ!」

 

 「舐めんなっ!」

 

 すぐさま態勢を立て直して右手を思いっきりぶち込む。力み過ぎたせいか魂の波長を送りすぎたらしくファイアから名前の通り炎が噴き出した。ブラック☆スターの肘には膨大な魂の波長が宿っている、あれが魂威か!まずい、これ両方ともクリーンヒットするぞ!?大怪我は免れない!クソッ調子に乗りすぎたかお互い!

 

 「そこまでっ!」

 

 「ぐっ!」

 

 「がっ!?」

 

 お互いの攻撃が相手にぶつかる瞬間に俺たちは瞬時に組み伏せられた。やったのは、シド先生だ。正直助かった…解放してもらって立ち上がる。やりすぎたな、と思っているが向こうはそうじゃなかったらしく続けさせろとぎゃんぎゃん喚いていた。これ以上は多分決闘許可がいるからごめんだな。

 

 「これ以上はしゃれにならん。今日はやめておけ。パートナーとの相性の確認はすんだだろ?」

 

 「はい、ブラ☆スター、付き合ってくれてありがとな」

 

 「おう!俺様はBIGな男だからな!大物にはいつだって頼っていいんだぜ!」

 

 そうして彼らから離れて、ポッド兄妹が最初にいた場所に戻ってきた。両手を見る。いまだ武器のままのポッド兄妹に戻っていいよ、と声をかける。すると武器が二人の子供の姿に戻った。ファイアはどうだ!と言わんばかりの自信満々な顔、だけどちょっと不安そう。サンダーも同じくそんな感じ。そっか、前は職人を引っ張っちゃってコンビ解散になったんだったな。まあ俺の言うことは決まってるんだけど。

 

 「二人とも、これからよろしくな。俺がお前らの職人になる」

 

 そういうと、二人はお互いに抱き着いて飛び上がった。相当嬉しいらしい、何とも可愛らしい二人のパートナーができたなと考えていると、二人して俺に向かって飛びついてきた。まあ正直あれだけ魂の波長が一致したんだからよっぽどの事でもない限り離す気はないんだけど。とにかくこれで1歩だ、職人見習いから俺も職人に足を踏み入れたことになる。さっそく気に入ったらしい抱っこをせがんできた二人を抱き上げながら俺は談笑するブラック☆スターと椿のもとへ足を進めるのだった。

 

 

 「あー、そういえばキリク。お前は二人と一緒に住むつもりなのか?」

 

 「そうですけど?まあ可愛い弟と妹ができたと思えば別に。もともと部屋は余ってますからね」

 

 翌日の事、正式なパートナー申請をするためにシド先生のもとを訪れた俺はその問いにそう即答した。俺はEATの生徒が住んでいる寮に入っているが、職人と武器はお互いの魂の波長をよく理解するために共同生活を営むのが通例となっているのでファイアとサンダーを呼んで一緒に暮らすつもりであった。

 

 「そうか、じゃあ二人の分の小遣いもお前が管理しろ。渡しておく」

 

 「今まではどうしてたんですか?」

 

 「死武専の保育所で面倒見てたからな、小遣いはなかったよ。それを離れるわけだから生活費が出るのは当たり前だろう」

 

 死武専の生徒には生活費として毎週200ドルのお金が支給される。前借りできない生活費であるそれをやりくりして暮らすのが死武専の生徒だ。まあなくなったら死武専が斡旋するバイトをすればいいんだけど働けない二人の事を考えるとまあ難しいだろう。俺がしっかりしないとな。

 

 「ありがとな…あの二人を選んでくれて。昨日、お前が帰ってから大喜びで準備してたぞ。パートナーが出来て嬉しかったんだろう」

 

 「いえそんな感謝されるようなことはしてません。俺はあの二人をデスサイズにします。そのためにあの子たちにパートナーの申し込みをしました」

 

 「それでもだ。職人が付かない武器は錆びていく。無論そうさせないために俺たちがいるが職人がいるに越したことはない。大事にしてやれ」

 

 「当然です」

 

 シド先生に書類を提出して二人の分のお小遣いを受け取った俺はその足で二人が待ってる死武専の保育所へ向かう。昨日のうちに話は済ませてあるのですでに二人は自分の荷物を詰めたリュックサックを用意していた、一緒にいたのはナイグス先生、彼女が主に面倒を見ていたらしく非常に懐かれている様子。ポッド兄妹は俺の姿を見るとナイグス先生にぎゅっと二人で抱き着いてから俺の方にちょこちょこ走ってやってきた。

 

 「これからよろしくな。ナイグス先生、預からせてもらいます」

 

 「いいえ、預かるんじゃないわ。対等な立場として一緒に暮らしなさい。いいわね?」

 

 「わかりました。一緒に歩いていきます」

 

 「よろしい。じゃ、いってらっしゃい」

 

 そう言われて送り出された。死武専のクソ長い階段をこの小さい子供に上り下りさせるのは拷問なので俺が抱き上げて毎日登下校することになりそうだ。ま、いいけどな。けど、まあ今は一緒に歩いていこう。手を差し出して二人が俺の手を握る。そのまま二人の歩調に合わせて俺はゆっくりと寮に帰っていった。




 大体今の時期はノットの1年前くらいですかね。時系列的にノット→ソウルイーター本編みたいな感じだと思うのでシド先生は生きてるしメデューサ先生は優しい保険医のままだしシュタイン博士はまだ研究所で引きこもってます。

 次話から魂狩りスタートってことで!

 よければ感想評価よろしくお願いいたします。
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