壺職人憑依記 ~壺がデスサイズで何が悪い~   作:パラスチミン

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課外活動

 課外活動、それは各国の税金で運営されている死武専に各々の国から依頼される依頼を生徒が自主的に受け、解決するというEATの至上命題である魂集めのためのシステムだ。もうほとんど薄れてしまった前世の記憶には死武専のしの字もなかったし、魔武器どころか職人もなかったけど、いまや世界の警察扱いされる死武専になくてはならない行事なのである。

 

 今回俺が受ける依頼はとある弱小マフィアの殲滅、そう、逮捕ではなく殲滅。正確にはリストに載っている幹部格全員を殺して魂を回収して来いという話だ。下っ端は生死問わず。何でもそのマフィアは勢力が小さく、拡大をするための力として人間の魂に手を出した。人の魂は吸収すると力を得ることが出来るのでこういうことはよくあることらしい。俺たちが集めている悪人の魂より食った時の強化率が高い善人の魂を食ってるらしく、死神様のリストにそのマフィアの名前が載った、というわけだ。

 

 「ファイア、サンダー…こっからは人の姿に戻るなよ」

 

 そのマフィアのアジトを見下ろす建物の屋上で、すでに武器に変わっている二人にそう言い含めておく。初めての実戦、俺はこれから悪人とはいえ人を殺すんだ。繋がった魂から二人が頷くのが伝わる。死武専の情報局が集めた情報によるとターゲットたちはアジトの最上階で集めた魂を食らっているはずだ。だから、建物の上から屋根ぶち抜いて奇襲をかける。ファイアとサンダーの破壊力なら、できる。

 

 

 「すぅ~~~は~~~~…おしっ!行くぞ!魂の共鳴!」

 

 俺と二人の魂が共振する。ごうごうと右手から炎が噴き出した。助走をつけ、建物から飛び降りる。部屋の間取りを参考にして、幹部格が集まるダイニングへ、自由落下で加速する体をひねり、屋根に向かって思いっきり燃える拳を叩きつけた。

 

 轟音、衝撃、豪華な屋敷が盛大に揺れたのだろう。俺は思った通りダイニングに突っ込めたようだ。しかもテーブルのど真ん中、周りを見ると唖然とする男が10人、情報通り全員いる。そして皿の上には青い球体…善人の魂だ。しかも…50人分はある。立ち直る前にかたをつけよう。正面へステップ、左のサンダーを振り下ろす。帯電した拳をまともに食らった正面の男は黒焦げになる。さらに拡散した高電圧の雷がその両隣の男たちをショック死させる。

 

 「何者だぁ!?がああっ!?」

 

 「ちくしょう!なんだってんっ!?」

 

 反転し、残りの男たちへ二人をふるった。常人ではあり得ないほどの威力の攻撃をまともに受けて次々と体から赤い魂を吐き出していく。銃を抜いた男に対してすぐさま距離を詰め、右でボディブロー、肉が焼ける音と骨と内臓を砕く感触が拳から伝わった。これで9人、最後の一人は、腰を抜かして後ずさりしていた。出口への扉側に立ってるのは俺、男の後ろのは壁がある。逃げ場は、ない。

 

 「な、ななんだよお前!?俺たちが何なのか分かってんのかっ!?」

 

 「死武専。これだけ言えばわかるだろ。やりすぎたな、お前の魂、回収させてもらう」

 

 「し、ぶ…せん…!?ちくしょう!ちくしょうちくしょう!やっとここから…がぐっ!?」

 

 それ以上俺は何も語ることなく男に向かってサンダーを振るった。一瞬で黒焦げになった男の体からまた赤い魂がぼうっと浮き上がる。二人から手を引き抜くと、壺らしく口から魂を吸引していった。善人の魂を残して残らず悪人の魂を吸い込んだのを確認して俺は善人の魂をバックの中へ詰める。こっちは死武専に持って帰って死神様に渡す必要がある。俄かにドア前が騒がしくなってきた。ファイアとサンダーを腕に装着して、窓をぶち割って逃げる。

 

 あとはさっきからファンファンと盛大にサイレンを鳴らしているここの警察にお願いしよう。死武専の方から連絡行ってるはずだし、俺が奇襲かけるから騒がしくなるって。着地して敷地外に出ると盾を構えた機動隊員が屋敷を取り囲んでいた。突入も始まってるらしく下っ端が悪態をつきつつ連行されてるのも見える。俺にも銃が向けられるので一応両手をあげる。

 

 近くに来た警官の一人にポケットから出した死武専の生徒手帳を見せる。ハンドサインが送られ銃が降ろされた。あとはまあ、帰るだけ。初めての課外活動にしたら大成功と言って差し支えないだろう。まあ、今の俺の気分はいい気分だとはとても言えないんだけど。いずれ繰り返していくうちにこの何とも言えない重さも消えてくんだろうか。

 

 

 

 「はい、確かに彷徨える善人の魂、預かったよ~ん。課外活動、おつかれちゃん。キミは成功したんだね~」

 

 「俺は成功、ってもしかして…」

 

 「うん、ブラック☆スターは失敗。暗殺任務なのに目立ちたがり屋が我慢できなかったみたい~」

 

 「そ、そうなんですね…」

 

 とりあえず泊ってるホテルに帰ってきた俺は曇らせた洗面所の鏡に42-42-564と指で書いて死神様の部屋、デスルームへ連絡を取る。本来だったら報告だけで終わるはずだったんだけど、ちょうどいたらしいデスサイズの一人、魔鏡テスカトリポカさんのおかげで直接善人の魂を死神様に預けることが出来た。あとブラック☆スターは失敗したらしい。あいつが、失敗…怪我は、ないんだろうな。普通に暗殺任務なのに正面から殴りこんだに違いない。

 

 「キミの場合~、武器は二つ、集める魂も2倍、魔女のあん畜生も2人殺らないといけない。ワタシは魔女の戦闘だけじゃなくそこへ至る前の悪人との戦闘でも命を落とす武器と職人を山ほど見てきた。焦らずじっくり、ゆっくりやっていくんだよ~。特にキミの武器は~、まだ幼い」

 

 「はい、頑張ります」

 

 「うんうん~よろしい。それじゃ、これでね~ゆっくり休みなさい」

 

 鏡通信が切れて、普通の鏡に戻る。そこには、いつも通りの俺の顔が映っていた。今日は疲れたし、このまま寝ることにしようとすでに寝落ちしている二人の隣のベッドへ、勢いよく俺はダイブした。

 

 

 ベッドから起きる。課外活動から帰った翌日である。今日はEATは休みなので俺は趣味の打楽器を持って二人を連れて出かけることにした。要は気分転換である。行く場所はデスペイン広場、ここでは毎日のようにデスバザーと呼ばれるフリーマーケットが開催されるのでよく賑わっている。俺も掘り出し物を探すためによくいくけど今日はストリートミュージックをしに行こうかなって思う。2人は初参加だから楽しくしてやりたいし。

 

 デスペイン広場、スペインの市場を意識したらしい町並みが特徴、そこで出してる出店は多種多様、物騒なうたい文句の薬莢、人を切り殺したらしい剣なんてデスシティー特有のものから日用品やレコードなど普通のものも売っている。二人はきょろきょろして物珍しそうに周りを見渡している、けど俺から離れてどっか行くってことはなさそうだ。こいつらがよっぽど興味を惹かれるものがなければ、だけど。

 

 目的に広場についた。既にギターやらなんやらが音を奏でる広場には見物人たちが腰かけたりして音楽に耳を傾けている。俺が来るといったん演奏が止んで全員がにやりと笑う。よく俺もここで演奏するから常連とは顔馴染だし誰かが来たら演奏止めてセッションしだすのもいつもの光景。

 

 「キリク~しばらくぶりじゃねえか~。このチビたちは?」

 

 「俺の武器、脅かすなよあんた顔怖いんだから」

 

 「ひっで~。お前も入ってけよ」

 

 「もちろん」

 

 座った隣でアコギを奏でていた男が声をかけてきたので適当に返して俺の楽器、コンガを取り出す。ここのストリートのルールは一番最後に来た奴が合図を出すルールなのでテキトーにコンガを叩いてリズムを作る。楽譜は適当、アドリブの嵐だ。さっきまでのジャズセッションじゃなくてどっちかというとアイリッシュ風の演奏。観客の中にはここで奏でられる曲で踊ることが目当ての人もいたり。死武専生もちらほら。

 

 最初は俺の隣で座ってお行儀よく首を揺らしながらリズムを取っていたファイアとサンダーも演奏が盛り上がっていくうちにうずうずと我慢できなくなったようで俺のコンガの前に立って踊りだした。彼らの一族の踊りらしく動きは見たことないけどなんだかとても様になっている。小さなダンサーの登場にヒューヒューと周りから口笛と歓声が飛ぶ。音楽が好きだとは思ってたけどどっちかというと踊りたかったのかとまた一つ二人の事を知れて嬉しくなった俺のコンガの音が増える。二人もノってきたらしく二人一緒にバク転なんかしてるわ。

 

 

 「楽しかったか?」

 

 何曲か演奏を終え、その間ずっと踊ってた二人。周りから大人気だったが、動きっぱなしは疲れるだろうということで休憩に入った。俺の問いかけにちょーたのしかった!という満面の笑顔で両手をあげる二人、満足げな顔を見れて俺も得した気分だ。露店で買ったフルーツジュースを上げると美味しそうにコクコク飲んでいる。ん?ありゃあ…へえあいつ音楽聞くんだ。思わず視線をやったのは広場の階段に座り込んだマカが狙ってる魔鎌らしい銀髪赤目の気怠そうな同級生の姿。

 

 「どうだった?」

 

 二人を引き連れて声をかける。話しかけるとは思ってなかったらしいそいつは俺たちに目をやると続くセッションに耳を傾けながらこう答えた。

 

 「あんた、いい音出してたな。ノリやすいグルーヴィーなリズムだ。悪くねえ」

 

 「そりゃどうも。俺はキリク・ルング、壺職人だ。こっちがファイアで、そっちがサンダー。お前は?」

 

 「ソウル、ソウル=イーター。武器だ。種類は…」

 

 「魔鎌、だろ?マカのやつが狙ってるって言ってるから知ってるよ」

 

 「んだよ、あいつの知り合いか?何とかしてくれよあのチンチクリン」

 

 「本気で迷惑してるってんなら止めてやるけど?」

 

 「……ケッ」

 

 ソウル=イーターね。この反応を見る限りマカの猛アタック自体は悪い気してないらしい。面倒くさそうに膝を組んで頬杖付いたソウル、何だよもしかしたらマカのやつ口説き落とせそうじゃん。まあ男として女の子にパートナーになってと迫られるのは悪い気しないのかもな。それはともかく。

 

 「なんで組んでやらねえんだ?理想の相手でもいるのか」

 

 「…いいや。今の俺にゃ何の目標もねえ、あのマカってやつはデスサイズ作りてえんだろ?そういうんならもっとギラギラしたやつ誘えってだけだ」

 

 「なるほどな。よっし、ソウル!武器になってくれ」

 

 「あぁ?なんだよ急に」

 

 「いいから、武器でEATにいる以上誰かと組まなきゃダメなんだよ。職人がいる状態ってのを体験させてやる、ほれ。心配すんな、大概の武器なら使える」

 

 「…わかった」

 

 そう言ってソウルは武器になった。デスシティーで武器化なんぞ日常茶飯事、誰も気にすることはない、赤黒い大鎌を持って、軽く振ってみる。波長は、これね。よし、合わせた。ちょっとだけ重量を感じたソウルが羽のように軽く変わる。ヒュンヒュンとソウルを振り回してみる。周りは武器になった時点で振り回すってことをよくわかってるので安全圏まで退避してる

 

 『…これ…』

 

 「そ、それが共鳴ってやつだ。今は俺が合わせてるけど波長が合わなきゃ持ち上げることすらできん。マカは、どうだった?」

 

 『持ち上げて、振り回してたな。ひでえもんだったけど』

 

 「言ってやるな。勉強は得意だけど実技はちょっと苦手みたいでな。じゃあもう分かってるじゃん、波長が合ってたんだよ、マカのやつと。希望する武器と波長が合うなんてなかなかないんだ、マカだって必死になるさ。あいつ、いい職人になると思うぜ?まだ駆け出し職人の俺に言われても信用できないだろうけどな」

 

 『…サポートする、思いっきりやってみてくれ』

 

 「いいぜ」

 

 コンタクトマテリアル、ソウルが俺の周りを竜巻のように回転する。なんだよ、うまいじゃん。ダンスのリードをする様にソウルが俺の動きを読み取って自分を動かすことで俺の体から離れることも刃で俺を切り裂いてしまうこともなく器用に俺の体を何周も回っていく。バチッと音を立てて俺の手に収まったソウルが光に包まれて人の姿に戻った。

 

 「悪くないだろ?相棒がいる気分ってのは」

 

 「…そうかもな。サンキュ、参考になったぜ」

 

 「あと一つアドバイスすんなら、この街は見てくれじゃなくて魂で物事を見る街だ。マカの外見より、魂を見るんだな、お前の魂に尋ねてみろ」

 

 「…ああ」

 

 そう言って片手をあげソウルは去っていった。俺も休憩を終えて演奏に戻ろうと、したんだけどファイアとサンダーがくぁ、と大あくびをして目を擦っているのを見て切り上げて帰ることにした。コンガを背負い、半分寝てしまっている二人を抱え上げてえっちらおっちら家に帰る。

 

 「あれっ?キリクくんだ」

 

 「マカか。図書館帰り?」

 

 「あったりー。なんでわかったの?」

 

 「そんだけ本抱えてりゃそりゃな。ああ、そうだ。ソウルのやつに会ったぜ?」

 

 「ソウル?誰?」

 

 「名前知らねーのかよ。お前が最近のお熱の銀髪赤目の魔鎌だよ。あいつなかなかいい武器だな、こいつらにはかなわんけど」

 

 「あーーっ!?まさか組んだの!?その二人がいるのに!?欲張りっ!」 

 

 「ちょっと職人がいる状態ってのを教えてやっただけだっつーの。まだあいつはフリーだよ」

 

 ぎゃんぎゃんと俺に噛みついてくるマカを適当に受け流して寮に帰る。3日後、右隣の部屋にひねくれ屋でクールが信条の新入りが増えたのはここだけの話だ。マカから逃げる為に俺の部屋に入ってくるんじゃねえ。痴話喧嘩の仲裁なんてまっぴらごめんだ。




 次回あたりもう1戦挟んでノットの方に入っていけたらなって思います。原作前は捏造のし甲斐があるぜえ…魂集めって原作ほとんどカットしてるしこっちもカットの方針ですハイ。

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