壺職人憑依記 ~壺がデスサイズで何が悪い~   作:パラスチミン

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響け魂の共鳴、炎と雷のコンビネーション

 「これで、ようやっと84個か…」

 

 パートナーを組んで半年、198個必要な悪人の魂の回収も順調だ。ここは南国ハワイ、常夏というだけあってじりじりとした強い日差しが肌を刺してくる。ここでの対象である無差別殺人鬼「辻斬りボウマー」を渾身のレバーブローで粉砕した俺は赤い悪人の魂をサンダーに渡す。

 

 武器形態で吸い込むこともできるんだけどどうやら武器の彼ら彼女らにとって魂とはとても美味しく感じるらしい。最近共鳴を成功させて課外授業に行けるようになったソウル曰く「味はないけど喉ごしがたまらない」のだそうだ。マカは職人の一歩を踏み出せてほっくほく~みたいな感じ。そしてブラック☆スター、どうやら失敗続きのようで段々と椿が不憫に思えてきた。だってよ、確実に成功するって段になって「ひゃっはー☆俺オンステージ!」だぜ?そりゃ失敗するって。椿はよくあんなのを見捨てないな。

 

 「お~、終わったか~?ふぁ~あ」

 

 「デスサイズさん、任務なんですからそんな緊張感なくすのやめません?」

 

 「っせーよ。俺は愛しのマカと離れ離れにされて今傷心中なんだよ~おら、コーラ買ってこいや」

 

 「ファイア、サンダー。こうなったらもうおしまいだぞ」

 

 「んだとコラァ!」

 

 俺が魂を回収してるのを横目でじっと見てただけの赤髪の男、俺の波長コントロールの師匠でデスサイズことスピリット・アルバーンさんがぐでっとベンチで天を仰ぎながらそう命令してくるので魂を美味しそうにもぐもぐしてるサンダーと羨ましそうなファイアの目を隠しつつそう言い含めておく。その姿をマカに見られたらさらに嫌われると思うんだけど。写真撮ってやろうかな。

 

 ちなみになんでデスサイズさんが職人駆け出しの俺と一緒にいるかというと死武専の支部的な組織に死神様からの文書を届けるための使いっぱしりである。自分の武器だからか死神様は扱いがちょっと荒かったりするのかな?さっきの戦闘も適当にボーっとしてるように見えて俺がヤバくなったら助けられるようにか浅く座って瞳だけは鋭くこっち見てたし、やるときはやるかっこいい人なんだけど普段がなあ。

 

 というかデスサイズにもなるとある程度戦えるようになるのかな?武器としての威力はけた違いだっていうし、魔女の防御ごと切り裂くとかもできるってこの前教えてくれたし。魂狩りが終わったのを確認したデスサイズさんはドカッと深く座りなおした。近くのコンビニで買ったコーラを手渡して俺も横に座る。ファイアとサンダーも続いて座った。デスサイズさんが隣に座ったファイアの頭を撫でながらさっきの戦闘の評価をしてくれる。

 

 「ま、悪くないんじゃねえの?魂狩りにも慣れたっぽいしな。しいて言うならさっき足で撃った魂威、ありゃ失敗だな。波長の圧縮が上手くいってねえ、もっと波長をため込んでインパクトの瞬間にドバっと開放してみろ。つーか魂威撃つなら普通腕だろうが」

 

 「腕にはこの子たちがいますから。何らかの理由ではぐれたらまあ、腕でも撃つでしょうけど」

 

 「ったく魂威だったらシュタインのやつに押し付けるかぁ~?あとは共鳴技だな、共鳴までは出来てるけど力の塊をそのままぶつけてるだけって感じだ。作ってみろよ、自分の技」

 

 「壺職人伝統の大技とかないんですかね」

 

 「魔女狩りはある意味特別だからな。お前はお前の技を作るんだよ、壺版魔女狩りをな」

 

 そう、俺の目下の課題は共鳴時の技が作れてないところだ。魂の共鳴を武器とした際に発生する莫大な力を職人がコントロールし武器に送ることで使ういわゆる必殺技。それが俺には出来てない。例えばオックスなら雷王穿という雷で突き殺す技とか、ブラック☆スターならいろいろあるし、鎌という武器に至っては伝統的大技すらある始末。それに比べて俺は発生する力をそのまま叩きつけているだけで、技とはとても呼べない力任せのものだ。

 

 波長のコントロールを身に着けないことには大技なんぞ夢のまた夢、目下修行中である。コーラを飲み終わったデスサイズさんが立ち上がって帰り道とは逆方向に歩きだした。

 

 「んじゃー、俺は適当に飲んで帰るわ。お前はまっすぐ帰れよ」

 

 「だぁからー、任務中でしょデスサイズさん」

 

 「ばーか、書類届けた時点で俺はもうお役御免だっての。お前は課外活動続いてるんだからさっさとホテルへ直帰しな」

 

 そう言ってひらひらと手を振りながらデスサイズさんは去っていった。女好きなあの人の事だ、どうせハワイのキャバクラにしけこんで盛大に吞んでくるんだろう。デスサイズだけあって高給取りだから懐の心配は全くない。俺は魂を食べて満足げなサンダーとぼさぼさにされた髪の毛を不満そうに弄るファイアの手を取ってホテルの方へ行くのだった。死神様に報告するときチクってやろうかな?

 

 「もっとうまく出来りゃな~、ごめんな。お前らをうまく使えなくて」

 

 俺の呟きにそんなことないよと言わんばかりに首を振ってくれる二人、こんなに小さいのに気づかいもできるのかとちょっと嬉しくなった。いつも通りファイアが肩車でサンダーが抱っこの状態でヤシの木並ぶ海岸沿いのハワイの道をホテルへ向かうために歩いていく。もう夕方か、まさか辻斬りに昼のうちに遭遇できるとは思わなかったから1日開いちまったな。死神様にデスシティーに帰っていいか聞いとかないと。

 

 そう考え事をしながら道を歩いていると一人の女とすれ違う、特段不思議なことでもない、しいて言うならこんな人気もない道を殺人鬼が出ているというのに一人で歩く不自然さくらいか。眼鏡をかけたどこにでもいそうな女だ。気にかける理由もないのでさっさと通り過ぎてすれ違う、腹減ったなぁ…

 

 

 

 

 「バーズ、バーディ・オウルズ、アウルズ、バーディーズ」

 

 すれ違った後ろから聞こえたその言葉と真後ろで膨れ上がった波長、そして殺気に思わず飛びのいた。間一髪で避けられた、不可視の何かが俺の鼻の頭をかすめる。無言の間、お眠だった二人も覚醒して武器になって俺の両腕に収まる。この攻撃、間違いない。魔法だ、そしてさっきの言葉は魔法を使うために唱える呪文、つまりこいつは…

 

 「魔女か、あんた」

 

 「ご明察。悪く思わないで?あなたのその両腕についてるそれが、欲しいだけですわ」

 

 「魔武器のコレクターか、胸クソわりぃ。死武専生に手を出すっつーことは、狩られる覚悟もあるってことでいいんだな?」

 

 「ええ、共鳴技もまともに使えない貴方のような未熟者に負けるほど弱くはないつもりですが」

 

 「言ってろ!」

 

 殺人鬼との戦いを観戦してたらしくクスクスと俺を嘲り笑う眼鏡魔女、その姿はいかにも南国チックだった服装ではなく鳥の羽をより合わせたようなローブに変わっている。これが、魔女か。底冷えする禍々しさ、殺気…強者としての自負が見え隠れしている。震えそうな体に鞭打っていつも通りのステップでやつに近づく。牽制の左ジャブ…!

 

 「バーズ、バーディ・オウルズ、アウルズ、バーディーズ…フェザーブリーズドレス!」

 

 クリーンヒット、だが感触が違う!クッションを叩いたような感覚、目の前のは…風とフクロウの羽根の壁!それがやつを守っていた。纏った雷は羽を焼き焦がすが貫通までには至らない。ならばと繰り出した灼熱の右も同じように防がれる。貫通したらしい熱波がやつの濡れ羽色の髪をなびかせる。

 

 「おぉ、こわいこわい。くふふ…その壺、さらに欲しくなりましたわ。スラッシュガスト!」

 

 「やるもんかよ、ファイア、サンダー!」

 

 やつの周りに風が渦巻き、剣のような形に凝縮されて俺に向かって連続で飛んでくる。幾重にも襲い来る風の刃、それを共鳴し炎と雷を纏った拳で相殺する。授業で習った。魔女には様々な戦闘タイプがある、近接型、防御型、遠距離型、特殊型…こいつは防御型と混じった遠距離タイプ。足を止めて遠距離型の魔法で俺の動きを封じた…ということは次に来るのは大火力の魔法!

 

 「バーズ、バーディ・オウルズ、アウルズ、バーディーズ…吹き飛びなさい!テンペストブレイカー!」

 

 「おおおおおおらああああああ!!!!」

 

 圧縮された竜巻の砲弾、ヤシの木を真っ二つにへし折りながら迫るそれに対して、ファイアと全力で共鳴をする。噴き出した炎を固く握り締めた手の中に収め、向かってくる魔法に対して思いっきりぶつける。渾身の右ストレート、インパクトの瞬間、風が拡散する。ブラフの2重魔法…!爆炎で勢いがそがれながらもなお十分な威力を保った風の刃たちが俺の全身を切り刻んだ。全身から滴る血と走る激痛。慌てて武器から人に戻ろうとした二人をなだめて落ち着かせる。

 

 「あら、いいお顔になりましたわね。私好みの…痛みに歪んだいい顔ですわぁ…!遅ればせながら自己紹介を。ナジェーズダ・アラヴェルドフ、フクロウの魔女ですの。どうかその足りない頭に刻んでお亡くなりあそばせ?」

 

 「へっ、こんなあっさい傷つけたくらいでもう仕留めた気かよ。いい目覚ましだ、ありがとな」

 

 「ふふっ、いつまでそうやっていられるか、楽しみですわ」

 

 「死武専にはな、このくらいの傷でぎゃーぎゃー喚く奴はいねえ。魔女相手に逃げかえるような腰抜けもな。続きやろうぜ、あったまってきた」

 

 「…ムカつく子。フェザーバレット!」

 

 恐怖どころか戦意がみなぎってる俺をどうとらえたのかは知らないが顔をゆがめた魔女はマシンガンのように羽を飛ばしてくる。回避、道を大回りにダッシュで射線を引き延ばさせる。足に力をこめて突撃、左のラッシュ、風の壁に防がれる、クソ、これがある限り攻撃が当てられないか…!

 

 「ぎゃーぎゃーわーわーうるせえと思ったら…魔女か。おいクソ女、死ぬ覚悟できてるか?」

 

 「デスサイズさん!」

 

 「デスサイズ…!ふふ、くふふふふふ!なんていい日なの!?職人のいないデスサイズなんて、私のものになりますと言ってるようなものじゃない!」

 

 「悪いな、俺はカミさん一筋なんだ。おい、俺使えキリク。特別だ」

 

 「…いえ。今から何か掴めそうなんです…!遠慮させてください」

 

 戦闘音を聞いてやってきたらしいデスサイズさんを見た魔女の目の色が変わる。確定だ、やっぱり魔武器のコレクター…!デスサイズさんの自分を使えという言葉を俺は一蹴する。あと少し、あと少しで多分…この魔女を思いっきりぶん殴れる。俺とその相棒ならできる、確かにデスサイズさんを使えば楽勝かもしれないけど…他人の武器より自分の武器のほうが信頼できるから。俺の言葉を聞いたデスサイズさんは面白そうに口角を上げて戦闘位置から少し遠ざかって口を開いた。

 

 「ま、いいだろ。おいクソトリ女、万が一こいつがお前に殺されたら大人しくついてってやるよ。俺の教え子に勝てたら、の話だけどな」

 

 「まあ、素敵な提案。じゃあ、さっさとご退場願おうかしら!?バーズ、バーディ・オウルズ、アウルズ、バーディーズ…」

 

 デスサイズさんの言葉に魔女が狂気を感じる笑みを見せる。続く呪文、くる、さっきの風の砲弾が。形にしろ、今までの魂狩りで得た経験を。どこに攻撃が来る?どう受ける?はたまた躱す?躱したとしてどう攻撃をする?いや、やることはいつもと一緒だ。まっすぐ突っ込んで、どてっぱらに一撃かます。シンプルイズベスト、何事もこれに尽きるんだよ。

 

 「ファイア、サンダー…気張っていくぜ!ビリビリ燃えろ!魂の共鳴!」

 

 「あなたのそれでは私の風は破れませんわ。さようなら、テンペストブレイカー!」

 

 まともに受ければミンチになる嵐の砲弾。かといって迎撃すれば拡散して風の刃が全身を切り刻む。ならどうするか、ギリギリかすらせて躱す。右へステップ、前へ、ここで地面に向かって魂威を足で撃つ。不完全ながらも威力はそれなり、狙い通りに俺の体は吹っ飛んだ、嵐の砲弾に掠る形で。着地と同時に共鳴で送った波長がファイアとサンダーから帰ってきた。

 

 今なら、できる。頭の中のビジョンを形にできる。左手にバリバリ稲妻が走る、右手が赤々と燃える。魔女の余裕たっぷりの笑顔が凍り付く。躱されるとは思ってなかったのか、それともこの土壇場で共鳴技を作ってくるとは思ってなかったのか。どうでもいい、その薄っぺらい風の膜なんて吹き飛ばして一発入れてやる!

 

 「TTT(トリプルティー)FFF(トリプルエフ)!!!!」

 

 左の稲妻の魔壺が先に走った。閃光のような雷を纏った三段突き、一撃で邪魔な風を割り、二撃目で纏う羽根を残らず消し炭に変え、三撃目は風に大穴を開けた上で魔女のどてっぱらに突き刺さった。体をくの字に曲げた魔女が顔を痛みにゆがめるのが見える。だけど俺の攻撃はまだ終わってない、左が来たら次は右だろ。フィニッシュブローってやつだ。

 

 赤を超えて白く見えるほどの炎熱が込められた魔壺が体を曲げたことでさがった顔に思いっきりぶち込まれる。当たった瞬間込められた炎が解放され、魔女の全身を焼き尽くす。そのまま振りぬかれた炎の魔壺、黒焦げの魔女がまだ燃えつつも地面にめり込んで蜘蛛の巣状の罅が広がった。それでも収まらない炎は地面すらも溶かしてようやく止まる。

 

 「どうだ、その風、ぶち破ってやったぜ…!」

 

 黒焦げの体から出てきた緑色の魂に向かって俺はそう憎まれ口をたたいてやるのだった。




 魔女撃破、速すぎかもしれないですけどこの小説は最速でデスサイズにする話なのでしょうがないね。一応技解説をば

 「TTT」

 オリジナル技。サンダー・タイタン・トライデントの略。頭文字合わせてTTT。ポッド・オブ・サンダーの雷を纏った3段突きで威力より速度重視。当然普通に殴るよりかは強い

 「FFF」

 原作に登場した技。フレイム・フリント・フィストの略らしい。ポッド・オブ・ファイアの炎を圧縮して纏う全身全霊のパンチ。原作では残念ながら不発。今作では頼れるフィニッシュブロー

 お目汚し失礼しました。次回か次々回あたりからノットの話に入っていきたいと思います。

 良ければ感想評価よろしくお願いします
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