壺職人憑依記 ~壺がデスサイズで何が悪い~   作:パラスチミン

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新しい季節

 「はい、そんなわけで~、直接会うのは初めてだねキリク君。どうも死神です、何時もおつかれさ~~~ん!」

 

 「はい、死神様」

 

 「かたいね~」

 

 いや神様目の前にして砕けた態度取れる?俺は無理なんだけど。今俺が相棒である二人の魔壺ポッド・オブ・ファイアとポッド・オブ・サンダーを引き連れているのは死武専の地下の地下、最奥部に位置する死神様のための部屋デスルームである。目の前にいる黒いローブの塊に骸骨をデフォルメしたような仮面をつけているおちゃらけた態度の人が死神様だ。

 

 「にしても~、随分と真っ白になっちゃったね~?大丈夫かい?」

 

 「いえ、傷自体は浅いみたいで、失血しすぎて貧血気味ですけど」

 

 「そうだね~、見ての通りスピリット君にはお仕置きしたから、このたびは無茶させて悪かったよ~」

 

 「あの、デスサイズさん全く悪くないんですけど…というか俺が悪いんですけど」

 

 死神様の手?手というか風船というかとにかくわからないんだけど白い手からは煙が上がっており、いつぞやマカから受けたマカチョップで俺がそうなったように頭を凹ませたデスサイズさんが倒れ込んでる。というか若干出血してる。脳天直撃死神チョップ、なんて恐ろしい攻撃なんだ…!

 

 「あー、それ自体はうん、そうなんだけど~。安易にデスサイズが魔女について行くなんて言ったのが問題なのさ~。ワタシの武器だっていう自覚がないのかね~。そんなに離れたいなら…スピリット君、オセアニアのマリー君と交代するかい?」

 

 「後生ですからそれだけは勘弁をおおおおお!マカと、マカと離れ離れになるのだけはああああああ」

 

 「必死ですね…あの、それで俺に話というのは?」

 

 死神様の足に縋り付いて許しを請うデスサイズさんをまたもチョップの一撃で沈ませた死神様が俺に向き直る。現在全身包帯だらけかつ出血過多であの後ぶっ倒れて輸血された俺、暫く戦えるかどうか微妙なのだ。正直あの時掴んだ共鳴技の感覚を忘れたくないからトレーニングしまくりたいんだけど…メデューサ先生に怖い笑顔で止められたのでやめてるけど。初めて見たよファイアとサンダーがガチ泣きするの…。

 

 「うん、まずは魔女討伐、おめでとさん。よくやったね、その年で魔女を討伐した死武専生はジャスティン君以来だよ。君が狩ったフクロウの魔女の魂はワタシが預かって、もう一つの魔女の魂と残りの悪人の魂を集めきった時、君の武器に渡すよ~」

 

 「はい、ありがとうございます」

 

 「それと~、君の職人ランクを星1から星2にしようって思ったんだけど~シド先生から猛反対があってね。なので間を取って星1.5ということで~。額面上は変わらないけどちょっとだけ上の課外活動もうけられるようになるはずだよん。それで最後に~」

 

 そこまで言うと死神様はその大きな掌でサンダー、ファイア、俺の順に頭を撫でて

 

 「よく生き残ったね。それでこそ死武専生だ。ワタシは君たちを誇りに思うよ」

 

 優しさと温かみを感じる声でそう言ってくれた。無機質なはずの手は温かく、仮面で見えないはずの表情ですら想像させるほどの大きな優しさ。デスルームを辞した後、俺たちはやる気がもりもりわいてくるのを感じるのだった。よっしゃ!頑張るぞー!

 

 

 

 

 「おいーっす。お前ら一週間ぶりー」

 

 かる~い感じで休み時間の教室に入る。ざわざわと騒がしかった教室は俺が入った瞬間シンっと静かになる。俺がドアを閉めるパタン、という音を契機に教室が爆発した。

 

 「キリクだキリク!」

 

 「生きてやがったぞあいつ!」

 

 「魔女倒したってマジ!?」

 

 「キリク~~~!俺様より目立とうなんてお前には100年はええ!椿!俺様達も魔女狩るぞ!」

 

 「キリクくん、お帰り。怪我大丈夫なの?」

 

 「ああ、ありがとマカ。ブラ☆スター、魔女よりまず悪人の魂だぜ。魔女の魂はそれまでお預けだってよ」

 

 「ってことはお前、このままいけば確実にデスサイズ作れるってことなのか?」

 

 「あー、わからん。俺の場合はもう一人魔女を狩る必要があるからな。片方だけデスサイズになっても意味ねえ」

 

 「クールだな、お前」

 

 「褒めんなよソウル、それに今回は運がよかっただけだ。割とマジで死にかけたぞ、失血で」

 

 「じゃあキリクくんもこれでデスっ子だ!」

 

 デスっ子とは、デスシティーで生まれ育ったものというほかに、1度死んだか死にかけた奴の事をそう呼ぶこともあるらしい。デスっ子言葉なんて俺には扱えるような気がしないんだけどな。ちなみにファイアとサンダーは優しいマカの事が大好きなようでよく懐いている。弟や妹がひそかに欲しかったらしいマカも大変二人を可愛がってくれる。ソウルは音楽好きなのでよく持ってるリズムのいいレコードをかけたりして二人が躍るのを眺めてたりする。

 

 まあお隣さん同士よく交流があるんだ。俺がマカとソウルの部屋に行くこともあるし、逆パターンもしかり。ちなみにブラック☆スターも二人の事は気にかけてくれてる。主に武勇伝を聞かせてキラキラした視線を受け取るためにだけど。椿はよく二人にお菓子をくれる、まああれだ、ファイアとサンダーはマスコット扱いなんだよな。サイズ的にしょうがないんだけど。

 

 「ところでキリク、おめーそれ痛くねえのか?」

 

 「風呂入るときが地獄なんだわ。湯舟がヤバい、なあソウル、暫くこいつら風呂入れてくんね?俺シャワー浴びるくらいしかできんのよ」

 

 「うっげ~~~、わかった。適当な時間にお前の部屋行くわ」

 

 「頼んだ。ついでに好きなCD持ってけよ。今度フリーマーケットに出すつもりなんだけど世話になるから先にいくつかやるわ」

 

 「まじか、引き受けてみるもんだな。やり~」

 

 「え~またCD増えるの~?もう仕舞う場所ないじゃ~~ん」

 

 「お前の本のスペースのほうが多いだろうが!その内床ぬけるぞ!」

 

 ぎゃーぎゃーと喧嘩を始めた二人を苦笑いしながら見つめる。こいつら波長が合わないようで合ってるんだよな。初課外活動の時共同任務っつーことで一緒になったんだけどいざ戦闘になった時にケンカしたときはどうしようかと思ったよ。ま、最終的にソウルの腹の中に魂が収まったという結果を見れば問題はなかったっつーことなんだけどな。しかし、ソウルのやつ実技が苦手なマカをうまくフォローしてるよ、コンタクトマテリアルも落とさずに出来るようにしてたし、攻撃と防御の反応もなかなか、肝も座ってるときた。やっぱいい武器だな、こいつ

 

 「キリク君」

 

 「オックスか、どうした?」

 

 「いえ、君が戦ったという魔女について詳しく聞きたいのです。よろしいですか?」

 

 「ああ、いいぜ?何が聞きたい?」

 

 がり勉で有名かつ座学なら僅差でマカよりも優秀な自称、知将雷王ことオックス・フォード、そもそも魔女に遭遇すること自体が稀なため些細な情報でもどん欲に吸収しようとするその姿勢は好感が持てる。俺自身も仲間のためになるなら今回の魔女との遭遇で得た情報は出し惜しみせず広げるつもりだし丁度いい。

 

 俺はクラスのやつらの真剣な顔を眺めながら今回の体験を事細かに語るのだった。ちなみにあの魔女はデスサイズさんが言うには上級入りたてあたりの魔女らしい。ソウルプロテクトという魔女特有の魂反応を隠す魔法が使えたが実力はそこまで高くなかったのがそういう判断の原因だったとか。俺が対処できなさそうだったら問答無用で俺がデスサイズさんを使って戦わなければならなかったとのこと。やっぱあの人ちゃんと考えてるんだな、かっこいいわ。

 

 

 

 

 「あ~~~今日も熱いわ…1年前も同じこと言ってた気がする…」

 

 そんなこともあってはや半年、季節は一周し新入生が入ってくる季節になってきた。相も変わらずコンパクトサイズな俺の相棒たちを背負いながら死武専のクッソ長い階段をえっちらおっちら進んでいく。走って一気に抜けようかなあ…日差しが強いのは慣れっこなんだけどさ。今日は今日でNOTの方の新入生と顔合わせしろってシド先生が言うもんだからそっちに行かないといけないし。

 

 俺はEATなんですけどって言ったらお前の成績なら課外活動しとけば卒業余裕みたいに返された。いやだから俺座学ダメなんだって…下から数えたほうが早いんですよ勉強時間くださいって言ったらお前は頭を使う職業に就くつもりなのか?と言われてそういえば俺思いっきり死武専に就職するつもりだったわと思いだして納得してしまった。そう考えるとNOTと接するのも大事だよなって思いなおしたのである。そこ、ちょろいとかいうな、ついでにバカだろとか思ってるだろ。否定しないけど。

 

 今日は二人とも肩車の気分らしく俺の両肩に一人づつ器用にバランスとって座っている。そういえば1年一緒にいるけどほとんどサイズ変わってないのなんで?もっと伸びてもいいんじゃない?まあでかくなりすぎて抱っことかで苦労するのもアレだからそのままで構わんのだけど。魔武器特有の何かがあるんだろうか?

 

 「あっ、キリクくんおっさきー!ソウル見てない?」

 

 「見てねーよ、元気だなマカ」

 

 「今日はなんだかいいことありそうだと思って!」

 

 後ろから階段をいくつも飛ばして走ってきたマカに追い抜かれてしまった。元気だなーあいつ、俺もゆっくり行きますか。あいつ自分がスカートだっていうの忘れてないか?組手だろうが何だろうが普通にハイキックするし、見えたら見えたで理不尽なマカチョップするし。まあ見ないように目そらしたら攻撃も見えないので理不尽この上ないんだけど。

 

 「ファイア、サンダー。喉が渇いたら言えよ。さっき水のんだから大丈夫だろうけど」

 

 はーい、という感じで手を上げる二人を確認して俺も段飛ばしで階段を駆け上る。熱いのは勘弁だからさっさと死武専の中に入って涼みたい。そう思っていると階段をのろのろと上がる女子生徒を発見した。あー、新入生だなあの感じ。しかも来たばっかりで階段を上るのが初めてって感じだわ。黒髪を短いツインテにした彼女、あのままじゃ倒れそうだ。心配だな。

 

 「あひ~…熱いし階段長すぎ~、でももう少しだって言ってたよね…」

 

 「ま、そうだな。大丈夫か?膝が笑ってるぞ」

 

 「ひょえっ!?あわわわあだだ大丈夫ですっ!こ、このくら…」

 

 「無理すんな、何だったら上まで担いで行ってやろうか?」

 

 「…いやもうすでに二人乗ってるじゃないですか…」

 

 「定員にはまだ余裕があってな。ま、付き合ってやるから頑張れ新入生」

 

 このままじゃぶっ倒れそうなので心配になった俺が声をかけると案外元気な突っ込みが帰ってきた。どうせ始業式はフケるつもりだったしここで先に行って途中で倒れられても目覚めが悪い。NOTはまあ普通の学生ではあるが命を懸けるエージェントを育成するEATのやつらは俺を含めて仲間意識が非常に強いのでこういう場面を見たら助けるか何かしら激励するのが普通だ。多分先に通ったマカも何か言ったんだろうな

 

 「…いえ、それは悪いです…私に構わず先に…」

 

 「今にも倒れそうで心臓に悪い。そのまま先行って倒れてどうこうってなってもな。ほら、こいつらも一緒に行くってよ」

 

 「…うあ~~ごめんね~~~でもかわいい~~」

 

 俺の肩から降りた二人が私たちも一緒に歩くからがんばろ!とぴょんぴょん跳ねてアピールしてる。周りをうろちょろする小さなマスコットにちょっとだけ元気を取り戻したらしい女子はふんすと息を大きく吐いて元気に死武専のクソ長階段を上りだした。俺たち在校生にとっては慣れ親しんだ階段ではあるがNOT用にいい加減エスカレーターかエレベーター設置してやれよと思わなくもない。戦うの俺たちEATなんだからNOTは力のコントロールができればそれで十分、まあ精神力って考えるとあながちこの階段は必要なのかもしれないな

 

 5分でまた膝が笑い出した女子生徒をファイアとサンダーが叱咤激励しだした、フレー、フレーと周りをチョコチョコ動き回って応援している二人に活力をもらったのか最後の力を振り絞って階段を上り切った女子がばたんと前のめりに沈んだ。ちなみに俺含めファイアとサンダーも息一つ切らしてない。伊達にEATやってないんだよね。二人も戦えはしないけど体力はそれなりにあるから。

 

 「と、途中からとはいえ私より動いてたのに全然元気……手紙?」

 

 前のめりのままそう呟いた彼女が見つけたのは手紙とそれの上に乗る重石代わりのジュース、ぺらっとめくるとマカの字だ。「おめでとう、振り向け!」…ね。マカのやつ、ニクいことするじゃん。小首をかしげる女子にちょいちょい、と指で真後ろを指してやる。彼女が振り向いて、瞳を真ん丸にして驚いた。

 

 「ふわーー…」

 

 「口があきっぱだぞ新入生、ようこそ死武専へ。早く階段慣れるといいな」

 

 地平線まで続く真っ青な空とデスシティーを一望できる最高の絶景ポイントに、俺の声が響いた。

 




 というわけでNOT開始です。テンポよくポンポン進んでサクサクッといきたいと思います。頑張るぞー。

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