壺職人憑依記 ~壺がデスサイズで何が悪い~   作:パラスチミン

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NOTな日々

 翌日の昼休みのこと、俺たちは昼食を求めて死武専の食堂へやってきていた。世界各国の料理を頼めば作ってくれる便利な食堂ではあるが金額は死武専が配るお小遣い基準なので学生の味方で超格安!ではない。週に200ドルだからな、まあ普通のレストランくらいはする。

 

 「俺がデッドチキン、こいつらは…はいよ、ハンバーガーのセットで。ん、あれは…」

 

 注文を済ませて料理を受け取った俺が席を探しているとつぐみたちの姿を見つけた。彼女たちは席に座ってこの食堂では最安のメニューの一つ、かけそば1人前を3人でじっと見つめていた。もうその時点で何となく何があってそうなったかは察してしまったので苦笑いを噛み殺しつつ同じ席に座る。

 

 「わ、キリク先輩!」

 

 「…どなたですか?」

 

 「昨日会ったばっかりでしょうめめさん。EATの先輩ですわ」

 

 「おう、昨日ぶり。小遣いもう使い果たしたのか…?カツアゲでもされたか?必要ならシめてやるけど」

 

 「い、いいいえそういうわけでは!お金がないのは…そうですけど」

 

 「ふーん、そんだけじゃ持たないだろ。奢ってやるよ」

 

 「い、いいんですかっ!?」

 

 「おう。NOTのやつよりゃ金持ってるよ。EATの課外活動には報酬も出るからな。何がいい?ソバか?」

 

 「ごめんなさいキリク君、その役目私に譲ってくれる?」

 

 「エターナルフェザー先輩!」

 

 なんやかんやと話していると、かけそば2人分をお盆に載せたエターナルフェザーだった。どうやら彼女は3人が一文無しになった理由を知っているらしく、それを止められなかったお詫び、とのこと。よくよく理由を聞くと…

 

 「なんだ、キムに引っかかったのか。エターナルフェザー、EATに上がるんだったらキムにビビってたらやってけないぞ」

 

 「分かってる…分かってるんだけど…!怖いのよ!だって何してもお金せびってくるのよ!?」

 

 「まあ、なあ。んでついたあだ名が女子寮の魔女か」

 

 「あれ、男の人と話してる」

 

 「いまだ人気は健在ってコト…あ、殴られた」

 

 「オックス、あいつまだ諦めてなかったのか。あと魔女なんつーあだ名で呼ぶから怖くなるんだよ。別のにしてみたらどうだ?」

 

 我らががり勉オックスがピンク髪のショートヘア美少女、キム・ディールに相も変わらず愛を叫んで殴られるといういつも通りと言えばいつも通りの行動をしているのを横目に俺がチキンをかじりながらそう言う。もうすでに上下関係が作られて頭が上がらないらしいエターナルフェザーが恐る恐る聞いてきた。

 

 「た、例えばどんな?」

 

 「そうだなぁ…女子寮の子狸、とか?」

 

 「なんかずいぶん可愛らしくなりましたわね…」

 

 「あいつ腹の中真っ黒だからな」

 

 「予想外にひどい理由だった!?」

 

 「実際に会った魔女に比べりゃあいつなんざ子狸で十分だよ。怖くもなんともねえ、なんで壁を作りたがってるのかは知らんけどな」

 

 「ま、まあ話は変わるけど!3人ともお金なくなったんだしバイトしなくちゃ生きていけないわ。バイト先のリスト持ってきたから、選んでくれる?」

 

 「ああ、それな。基本的に日払いだから大丈夫だぞ。俺のおすすめは昨日いたDEATH BACKS CAFEだな、いいところだし」

 

 わいのわいのとやってるとエターナルフェザーがバイト先の情報をまとめた紙を卓上に出した。ファイアとサンダーが食べ切れなかったハンバーガーを代わりに処理していると、どうやら行く場所をあっさり決めたらしく俺が進めた場所にするようだ。オックスの事だ、諦めるなんてことはないだろうけど何があいつをそこまで動かすのやら。

 

 

 

 

 「おし、ファイア、サンダー、いくぞ」

 

 はぁい!と両手を上げた二人の頭を撫でまわしてバギーに荷物を突っ込む。1週間分の着替えと万が一の時の医療セット、ついでに水と食料も。何してるかといえば課外活動の準備だ、今日から1週間ほど死武専があるネバダから州を越えてコロラドの方まで行く。んでそこにいる魂食いのアホをぶっ殺して魂を回収するわけ。今回は双子の食人鬼らしい。準備はするに越したことはないんだけど、1日キャンプの予定だからま、快適に過ごす準備をしとこう。

 

 「そういや…もう午後からバイトなんだっけかあいつら。顔出してテイクアウトのなんか買っていくか」

 

 わーい、と早くもつぐみ御一行に懐いているらしいファイアとサンダーが我先にと後ろに乗り込む。チャイルドシートを自分で絞めて、早く行こ行こと俺を呼んでいる。俺がドアを閉じて鍵をかけると横からマカとソウルの二人が顔を出した。

 

 「あれ、キリク君課外活動?」

 

 「おう、ちょっとコロラドの方までな。お前らもか?」

 

 「ああ、俺たちはネバダの別の町だ。じゃ、死なねえようにな」

 

 「誰に言ってんだよ。お前らも、怪我すんなよ」

 

 「ファイアもサンダーも、無事に帰ってきたらお菓子作ってあげる、いこ、ソウル」

 

 「おう、じゃな」

 

 ソウルとパンとハイタッチする。マカがバギーを覗き込んで二人にそう言い聞かせていた。お菓子!とテンションが振り切れた二人を見てニシシ、と笑ったマカとソウルがソウルのバイクに2ケツして先に行った。俺もバギーのエンジンをかけて寮の駐車場からカフェの方へ出発するのだった。

 

 

 「マスター、テイクアウトで」

 

 「おう、何にする?」

 

 「んー、んじゃクラブハウスサンド、あとBLTと適当にうまいもん入れてくれ。あと…案外似合ってるなお前ら」

 

 「案外って何ですかっ!?」

 

 やってきましたDEATH BACKS CAFE、バギーを店の前に止めて降り、そのまま店内に入ってマスターのところへ向かう。せこせこ忙しそうにしてるつぐみやめめ、アーニャはこの店のなぜだか短いスカートの制服に身を包んでいる。あとアーニャがめちゃくちゃノリノリ、営業スマイルが上手いのなんのって。かっちこちなつぐみに少し分けてやれよ。

 

 「キリク先輩、車持ってたんですね」

 

 「EATのやつは大概移動手段持ってるよ。そうじゃなきゃ州を越えて魂狩りなんてできないだろ?」

 

 「それって、今から?」

 

 「ん、ああそうだな。ちょっとコロラドの方まで行ってくる。1週間くらいいないからその間に面倒事に巻き込まれても助けてやれないからな」

 

 「ガガントスっ!?そ、そんなにひょろく見えますか私たちっ!?」

 

 「死武専に来てしょっぱな喧嘩からの一文無しだからな~…」

 

 あびゃあああ~~という感じで床に沈むつぐみ、めめがよくわからないけどがんばろっ!と励ましている。俺はテイクアウト品を受け取ってバギーに乗り込み、エンジンをかけて出発した。大丈夫かね~、あと一緒にいた男子二人組、NOTらしいが動きが別次元だ。EATと言われても違和感はない、どころか俺たちの学年の平均よりもできるかもしれない。何が目的か知らんがちょっと警戒しておこう。

 

 

 そして1週間後、問題なく魂の数を172個から174個にした俺たちはデスシティーに帰ってきた。懐かしい埃っぽい空気とカッラカラの太陽が迎えてくれる。汚れたバギーをメンテナンスと洗車をお願いするために行きつけの車屋に行って預けたあと、死武専へ報告に行こうと道を歩く。相変わらず俺にくっついて移動するのがお気に召しているらしい二人を引っ付けたまま歩いていると、パン、バシッと何かをはたくような音が聞こえる。なんだ?

 

 聞こえてきた場所に小走りで行くとアーニャがいた。それも怪しい風貌の男に殴りかかられている。かなり焦った表情なので、ヤバいと判断し即座に介入する。アーニャの足を踏んで逃げられなくしたところを右手の人差し指につけている針状の武器で傷つけようとするのを真横から腕を掴んで阻止、がっちりと掴み、逃がさないようにする。

 

 「っ!?キリク、さん…?」

 

 「危ないところだったな。おい、お前最近流行ってる道場破り(トレーター)ってやつか?NOTの非戦闘員襲って何考えてやがる」

 

 「お前も…死武専生か…?」

 

 「ああ、強さ比べしたいんだったら俺が相手してやるよ。骨の一本や二本、覚悟しな。ファイア、サンダー、アーニャを保護しろ」

 

 了解!と敬礼した二人が俺の肩から滑り降りてアーニャのもとへ行って彼女を立たせて下がらせる。こいつは死神様のリストに載ってない。つまり、殺して魂を奪うことは許されない、従ってファイアとサンダーで殴ると殺してしまう可能性があるから武器は使えない。喧嘩とはわけが違う、加減しつつも制圧しなければならない以上、殺す可能性のある武器は使用しないのがベターだ。

 

 「なっ!貴方武器もなしに…!危険ですわ!」

 

 「ただの喧嘩屋にその二人は過剰威力なんだよ。それに、武器がなくて戦えないなんて情けないことを職人が言うもんか。どうする道場破り?大人しく警察に行くか?」

 

 「…お前、昨日はよく眠れたか?」

 

 「生憎、どこでも快眠できる体質でな。寝不足とは無縁なんだよ」

 

 道場破りのその言葉で引くつもりがないのが分かった俺が軽く構えると、無言でそのまま突っ込んできた。軽く腕を曲げる構えは恐らくほぼ我流の螳螂拳、確かに一般人にしては鋭い拳筋をしているが、それだけか。小汚いフェイントも混ざってるがスケスケだ。軽く腕を取ってそのまま背負い投げ、受け身もとらせず思いっきり地面に叩きつける。

 

 「ぐがっ!?」

 

 「ああ、その指のやつ毒でも仕込んでるのか?切っ先からなんか濡れてるな」

 

 掴まれてない腕を振り回してくるので軽くバックステップをして離れる。その際に指につけてる刃の先端から何か液体が染み出しているのを確認した俺がそう呟く。なるほどね、ここ最近なぜか死武専生が襲われる事件、毒で弱らしてボコってたのか。それともこいつが別なだけか?ともかく、捕まえるのが先決。

 

 口元を乱暴で拭って立ち上がった道場破りが改めて構える。顔色はフードに隠されて見えないが何だか不気味だな。後ろからどたどたと音は聞こえる。半分振り返ってみると戦闘の音を聞きつけたのかつぐみとめめ、それとカフェで働いていた男二人組が来るところだった。ちょうどいいや。

 

 「あっ!キリク先輩、アーニャちゃん大丈夫!?」

 

 「え、ええ。彼に助けられましたわ…」

 

 「ナイスタイミングつぐみ。そのままアーニャ連れて帰れ。男子二人はこいつのした後、ふんじばって警察までもってくからそれ手伝ってくれ。戦えるのは分かるがNOTなんだろ?3人が気になるならどっちか一人は女子寮まで送ってやってくれ」

 

 「…ええ、わかりました。クレイ、僕が残ります。3人を頼みましたよ」

 

 「わかった!」

 

 金髪の男子、おそらく武器の方に庇われて3人が足早にその場を後にする。これで後腐れが無くなって本気でいける。一撃KOが理想だけど、普通に血を見るだろうからいくら死武専生とはいえNOTには少々刺激が強い。トラウマにでもなったら困るだろうし。まだ配慮できるレベルの強さの相手だ。じりじりと、俺に向かって距離を詰めてくる道場破りを見つめながら残った男子が口を開いた。

 

 「手伝いましょうか?」

 

 「いらねえ。隠さなくていいのかよ?」

 

 「もうバレてるようですからね」

 

 話す俺たちの様子にそれを隙と見たのか道場破りが一気に突っ込んでくる。右の爪を俺に当てようとするコンパクトな動き。多分毒を打ち込んで自分の有利に持っていきたいのだろう。お生憎様、もう次はねえよ。左手で相手の右手首を叩いて大きく態勢を崩させる。そのまま一気に距離を詰めてやつの胸に右手の掌を当てる。そのまま魂の波長を集中して、インパクト!

 

 「魂威!」

 

 バリィッ!!!と雷のような音が一瞬鳴って相手の身体が大きくビクンと跳ねる。やつは口から煙を吐いて鼻と目から血を流して倒れ込んだ。死んではいない、かなり過激な倒し方だが命に別状はないように加減したからだ。ぱちぱちと残った男子が拍手をしている。

 

 「お見事です。かなり洗練された魂威ですね」

 

 「お前、何者だ?魂威の名前知ってるのにNOTにいるなんておかしいだろ。何してる?」

 

 「星茜と言います。端的に言えば課外活動で、入りなおしました。どうやらあなたとは接点が多そうなので先に明かしておいた方がいいと思いまして」

 

 「先輩でしたか、失礼しました。事情は察しましたので、何も聞きません」

 

 やはりおかしいと思ってはいたが…多分この人EATに所属してる先輩だ。何らかの依頼を受けて改めて死武専に入学しなおしたということか、それで多分つぐみ、めめ、アーニャの誰かと関係がある。俺が3人とよくつるんでるから軽く事情を明かして不審な動きをしても突っ込まないでくれということとある程度協力してくれということをあえて言っているんだ。

 

 「ええ、それといつも通りでお願いします。では、彼は僕が引き渡しましょう。魔女の手先かもしれませんから」

 

 「…わかった。ファイア、サンダー…秘密な」

 

 近くに寄ってきていた二人にそう言い含めた俺はロープワークのためにバックに詰めていた縄を使って道場破りを雁字搦めにしてやるのだった。

 




 サクッとノットを終わらせて原作に行きたいので巻きで巻きで行きます。道場破りのシーン星くんさらっと魂威使ってたけどあれでごまかせるつもりだったのだろうか…どう見ても非戦闘員(大嘘)って感じだったけど…

 次回もよろしくお願いします。あと感想くれると執筆が加速します。ください(ド直球
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