ねこです観察日記はじめました。   作:彩辻シュガ

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日間ランキングに載ってました・・・・!ありがとうございます、これからも頑張ります。

あと、ねこ、先生、ブライト博士はレギュラーなので記事のリンクをあらすじ欄に移しておきました。よろしくおねがいします。


SCP-2316 “校外学習” ③

「ごめんね付き合わせちゃって」

「……美味しかったから良い」

 

 鍋パも終わり、僕はバーチウッドくんを玄関まで見送っていた。

 

 玄関の引き戸の向こうは真っ暗だ。少し寒気もする。

 

「もう外暗いし送ってくよ」

「いいって。“俺”は大丈夫だから」

「でもこんな時間に高校生が道を歩いてたら、変な人に狙われるかもだろ?」

「“君”、周り見てみたら?」

 

 首を傾げた。不審者に遭った経験はないが。バーチウッドくんは心配性らしい。

 

「一人暮らしじゃないし……“先生”もいるし、ブライトさんやお塩さんもいるから平気だよ」

「あーそうかそうか、“君”はそういうやつだったな」

 

 バーチウッドくんは肩を竦めると、背を向けて家を出て行く。

 

 が、一旦振り返って言い残した。

 

「また湖に来なよ。いつでも“俺”たちは待ってるから」

 

 じゃあね、と手を振って、バーチウッドくんは夜闇の中に消えていく。紺色のブレザーが暗がりに溶けていく。

 

 完全に見えなくなるまで見送ると、僕は戸を閉めて、居間に戻った。

 

「バーチウッドくん帰りましたよ」

「んー、ご苦労さま」

 

 ブライトさんはお塩さん相手に、通販で届いた猫じゃらしで遊んでいる。

 

 再会当時は昂っていて、やたらとブライトさんに猫パンチを仕掛けていたお塩さんだけど、今は落ち着いているみたいだ。

 

「ところで井上くん、そのー……バーチウッドくんとはどうやって出会ったんだ?」

「どうやって……?」

「馴れ初めだよ、近所の留学生なんてレア属性と知り合う機会なんて少ないだろう」

 

 確かに、考えてみればそうだ。

 

 僕は彼と出会ったときのことをじっくり思い出して、イメージを鮮明にしてから語り出した。

 

「去年の話なんですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校帰りに、寄り道して近所の湖に寄った。

 

 そこは変わった噂がある場所だった。嘘か誠か、たまに『死体らしきもの』が見えるのだという。僕も前に一度この湖に来たことがあるけれど、そのときは枯れ木と死体を見間違えただけだ。

 

 そこまで町から遠くないところなのに、湖にはゴミ一つ落ちていなくて、どこまでも澄み渡っている。

 

 時間が止まっているような静けさだ。

 

 そこに、バーチウッドくんはいた。

 

『……“俺”のこと、覚えていないのか?』

『え? ……すみません、どちらさまですか?』

『あーあ、そうだった。“君”には彼らの声が聞こえていないんだったな。それならいいや』

 

 なんだか不思議な人だった。

 

『僕、井上斑っていうんですけど、あなたは?』

『……バーチウッド。“君”も同じ高校に通ってただろう?』

『えっと、僕は██████高校なんですが、そんな制服じゃなかったような……』

『────本当に覚えてないのか』

『ご、ごめんなさい』

『いいよ。思い出すまで言い聞かせるだけだから』

『え?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、それからというもの、バーチウッドくんはちょくちょく家に遊びに来るようになったんです」

 

 そういえば、バーチウッドくんの自宅には行ったことがない。いつか行ってみたいな。あの湖の近くとは言っていたけど。

 

「……なんか、申し訳なくて。バーチウッドくんと昔の僕は、とても仲が良かったみたいで、いろんな思い出を語り聞かせてくれるんですが、僕は少しも覚えていないんです」

「ふーん」

 

 お塩さんが僕の膝に飛び乗った。全く温度を感じない、柔らかくも硬くもない、匂いも感じない、不思議な毛並み。

 

 それをゆるゆる撫でていると、なんとなく気分がリラックスしてくる。

 

「その様子だと、永遠に君は思い出さないだろうね」

「え、何か言いましたか?」

「いいや、何も。……ところで、バーチウッドにはタメ口なのにお塩には敬語なのは何故?」

「初対面の人にいきなりタメ口聞かれたら嫌じゃないですか? バーチウッドくんとはそこそこの付き合いだからタメ口で……“先生”は目上の人だから、ずっと敬語ですけども」

「……君は本当に変わってるなぁ、井上くん」

「えー……?」

 

 

 

 

 ねこです。

 

 なべはおいしかったです。

 

 あついはにがてですがあついはうまいです。

 

 またよろしくおねがいします。

 

 が、

 

「マイルズせんせーい、ここの問題わかんないんだけど」

『そこはその、専門外です……ごめんなさい……』

「困るんだよ、アイツと話合わせるためにはニホンの教育指導要領の範囲は履修しないと」

 

 ねこをじゃまするひとはまたいます。

 

 なぜいる。

 

 かえれ。

 

 

 




・バーチウッド(SCP-2316)
広範囲認識災害系SCP。死因は恐らく溺死。
井上斑を“君”認定して湖に連れ戻そうとしている。過去の経験から、財団に良い印象を抱いていない。


・お塩(SCP-040-JP)
汎用性高めミーム汚染系SCP。死とかいう概念なさそう。
井上斑は変わった人間、ブライト博士は面倒な人間、“先生”は給水係だと思っている。バーチウッドには同族嫌悪的な感情を向けている。


・“先生”(SCP-3715)
ほのぼの元教職員系SCP。死因は心臓発作。
斑やバーチウッドのことは教え子のように思っている。


・ブライト博士(SCP-963)
今のところ特性が活かせていない財団職員。死因はたくさん。
禁止リスト並みのトンチキ振りを見せてくれるまでには、まだまだ親密度と心身の回復が足りない。


・井上斑
恐らくこの中で唯一のマトモな生者。
動物大好きだが、人間が嫌いなわけではない。人生楽しそう。


この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。

SCP-2316 “校外学習”
著者 djkaktus
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2316
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