今回は日記形式です。よろしくおねがいします。
◾️月◾️日
今日から◾️◾️市に転勤することになった。勿論、アナも一緒だ。
二度目の人生でこいつとまた逢えるなんて、夢にも思わなかった。これは、きっと神の思し召しだ。
今回は、壊し屋も閉じ込め屋もいない。今度こそ、俺は真っ当に生きるんだ。アナのためにも。
◾️月◾️日
仕事は順調だ。力を使わずに、能力なしの人間と仕事だなんて最初は苦痛でしかなかったが、今はそうでもない。やりがいがある。
今日気付いたんだが、この町にはペットショップがないらしい。この限界集落め。
◾️月◾️日
今日、仕事帰りに変なヤツに会った。
『井上斑』っていう名前の大学生だ。コイツ自体は変じゃないんだが、コイツが飼ってる猫が変なんだ。名前は『お塩』。
何が変なのかは分からない。強いて言うなら名前のセンスが……いや待て。あれは本当に猫なのか? 井上がそう扱ってたからなんとなく俺も猫だとばかり思っていたが、何か違う。
また会う機会があれば、じっくり話をしてみよう。
◾️月◾️日
アナを定期検診に連れて行った帰り、また井上と飼い猫に会った。
やっぱりこの猫は変だ。鼻も口もない。目だけが、じっと、こちらを見ている。今も見られている気がする。
だが、アナはお塩と気が合ったらしい。仲良くじゃれあっていた。
井上は性格も良いし、若いのに落ち着きがあって話がしやすい。猫の飼い主同士、助け合えることもあるだろう。
◾️月◾️日
クソッタレ!! 何で閉じ込め屋の奴がいるんだ!?
しかも、アメリカにいるっていう、トチ狂った無限残機の野郎だ。首飾りを着けていたから間違いない。
ソイツがどうして、井上の家にいるんだ。
井上に聞いたら、「ジャックさんは僕の義理の兄です」って……何か騙されてるんじゃないのか? 絶対そうだ。
……ということは、あのお塩とかいう猫も、やっぱり普通とは違うんじゃないのか。
まぁ、たかだか日本にいた現実改変者ひとりと猫1匹の顔なんて、流石に覚えていないだろう。下手を打たなきゃバレねぇ。
◾️月◾️日
すぐにバレた。
アイツ、前の世界からSCPオブジェクトの報告書を持ち越していた。どうやらSCP-2000-JPとかいうヤツのおかげらしい。
ブライト博士曰く、アナは俺が壊し屋の連中に殺されたあと、SCP-976-JPとして、閉じ込め屋の連中のところで暮らしてたみたいだ。
アナまで壊し屋の連中に殺されていなくて良かった。それが分かっただけでも安心した。
……ところでアイツ、アナがどうやって壊し屋の連中をとっちめたのかについて尋ねても全然教えやがらねぇ。
仕方ないから、壊し屋のヤツらが、顔に引っ掻き傷作って泣いて逃げ出しているサマを想像したら、なんかスカッとした。
◾️月◾️日
仕事でミスをした。
同僚たちは「気にしなくていい」って慰めてくれたが、あんな初歩的なつまらないミスをしてしまった自分が情けなくてならない。
昔の俺なら、力を使って『なかったこと』にしただろう。でも、仕事で力を使うのは絶対にしないと決めている。
前の人生では、この力で沢山の人を不幸にした。壊し屋の連中に殺されたのは因果応報だ。
落ち込んでいるのを察してか、今日はやけにアナがすり寄ってくる。
コイツとずっと平和に暮らすために、俺は真面目に生きるんだ。
◾️月◾️日
SCP-2000-JPってやつが、俺のパソコンの中にいた。
ブライト博士に言われて、俺のことを調べていたらしい。あの野郎、プライバシー侵害で訴えてやろうか。
でもSCP-2000-JPが可愛かったので許した。ずっと猫派だったけど、ちょっと犬にぐらついている。
◾️月◾️日
アナが最近つれない。一瞬でも犬に浮気したことに怒っているのかもしれない。
明日は高めのキャットフードを買ってきて、許してもらおう。
◾️月◾️日
井上の家に行って、アナとお塩を2匹で遊ばせることにした。
ふたりとも仲良しだ。片方は猫かどうか怪しいけれど、アナに猫の友達が出来るのは良いことだろう。
井上の家のお茶は美味かった。また行きたい。
◾️月◾️日
近くで仕事の用事があり、井上の家の前を通りすがったときだった。
ブライト博士が、家の洗濯物を干していた。
ブライトが……あの、無限残機のクソ野郎ジャック・ブライト博士が、民家で洗濯物を干してたんだぞ! ハンガーを竿にかけて、布団をおひさまの下に干してたんだ!
しかも、干したそばからお塩に洗濯物を落とされてたんだぞ!
これほど笑えることはない。今までで最高のギャグだ。まだ腹が痛い。
後で井上に聞いたら、自分が大学に行っている間、洗濯物はブライト博士がやってくれることになったらしい。
閉じ込め屋がないから一般人のヒモになってるんだと思ってたが、大変だなアイツも。
◾️月◾️日
会社が休みだから寝た。昼まで寝た。
起きたらアナがまだ寝ていた。俺のベッドで。危うく踏んづけるところだった。
◾️月◾️日
公園に行ったら、下半身のない猫がいた。怪我とか欠損じゃなく、本当に下半身が透明みたいに見える。
暫くしたら、ポラロイドカメラを持った金髪碧眼の女の子が、そいつを抱えて、宥めていた。
なんだか気になる奴だ。恋愛的な意味ではなく。
◾️月◾️日
今日は天気がいい。こんな日はねこをみるにかぎります。
ねこはあたたかいがすきですがあついはにがてです。
はるはあたたかいがそこらじゅうにあります。そとにもいえにも、あさもひるもよるも、あたたかいがあります。
ねこがあたたかいところいるとねこはあたたかいになります。よろしくおねがいしま……何だこりゃ。コイツヤベェ。脳内に直接語りかけてきやがった。うっかり流されちまったじゃねえか。
長らく力を使ってなかったから、気付かなかった。アレは視覚とか言動を操るタイプのやつだ。
井上はとんでもないのを飼っちまったな。
ま、俺のアナは、アイツよりももっとヤベェし、もっと思い通りにならないけど。
ねこでした。ありがとうございまオイ!! またかよ邪魔すんな!!
・アナ(SCP-976-JP)
現実改変能力を無効化する能力を持つ猫。お塩と友猫になったが、「コイツ猫じゃないわね・・・・?」と薄々気付いている。
・アナの飼い主
アナに異常性を付与した現実改変能力者。前の世界ではGOCのエージェントや民間人を殺していたが、現在は真っ当に生き直そうとしている愛猫家。
・井上斑
年上の飼い主友達が出来た。
前回の一件より、ブライト博士を周りには『義理の兄』と紹介しているが、どうしてそんなややこしい文脈を追加してしまったのか。
・ブライト博士(SCP-963)
大量殺人の前科がある現実改変能力者が改心したなんて簡単には信じられないので、SCP-2000-JPを使って監視していた。
最近は大学の講義が始まったので、斑がいない間は洗濯を担当している。
・お塩(SCP-040-JP)
ねこです。ねこはにっきにもいます。よろしくおねがいします。
この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。
SCP-976-JP “スクラントン現実猫”
著者 08_ORB
http://scp-jp.wikidot.com/scp-976-jp
SCP-2000-JP “伝書使”
著者 WagnasCousin, FeS_ryuukatetu, furabbit
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2000-jp
SCP-529 “半身猫のジョーシー”
著者 Lt Masipag
http://scp-jp.wikidot.com/scp-529
SCP-105 “アイリス”
著者 Lt Masipag
http://scp-jp.wikidot.com/scp-105