世の中いろいろと苦しいことばかり続きますが、現実で出来ることは出来るだけやりたいし、その上で、こんな二次創作でも誰かの力になってほしいです。
そんなわけで、大変お待たせしました。エージェントバークレー編の続きです。
前回までのあらすじ
またしても何も知らない男・井上斑(19)は、桜の木の下から『エージェントバークレー』を名乗る謎の男を発掘したのだった。
「……えっと、バークレーさん? 名前、ですか?」
英語だったからよく聞き取れなかったけど、『エージェント・バークレー』とか言ってた気がする。
「あ、えー……僕は井上斑です。ま、まいねーむいずいのうえまだら」
ロザリオの彼は黙って頷くと、じっと斜め下を見つめた。未だ埋まったままの下半身を。
「あ……ああ! ごめんなさい、すぐに出しますから!」
「That's a very shabby heavenly pick-up……」
ざっつあべりーしゃびーへぶんりーぴっくあっぷ? 何のことだろう。ジーザス的な意味だろうか。
とにかく、疲れた腕をなんとか動かして掘る。
膝上まで見えてきたところで、バークレーさんはフラつきながらも自分で土から出てきて、その場に座る。
腰には、ガンホルダーのようなものが一瞬見えたし、中身もあったような気がした。ちょっと背筋が凍る。
「██████, ██████」
「え、すみません、もう一度」
「……Thank you so much」
何を言ったか分からずに聞き返すと、簡単な英語に言い直してくれた。
とりあえず、バークレーさんが生きていて良かった。「桜の木の下には死体が埋まっている」説は否定できたようだ。
「
「……ここ……え、えーっと、
何を言っているんだ僕は。そんなの当たり前だ、この人も分かりきっていることじゃないか。彼が、眠っている間に何故か海外から日本まで瞬間移動したとかでない限り。
バークレーさんは僕のアホさ加減に頭を痛めたのか、額を押さえて何事かをブツブツ呟く。
「
「大丈夫ですか……?」
「……██████」
また聞き取れなかった。『えすしーぴー』……SCP? とは聞こえたが、それ以外が分からないし、そもそもSCPって何だ?
ひとまず警察か救急車を呼ぼう。
ところで。
「……お塩さん? どこですか?」
ねこです。
ねこはよばれたところにいます。ねこはねこをみたひとのなかにいます。ねこはねこをきいたひとのなかにもいます。よろしくおねがいします。
ねこをよんだはあなたですか。
あなたはこころがほしいですか。ほしくないのですか。
ねこにこころはありません。ねこはどこまでもねこです。
あなたは“こころをくらうばけもの”ですか。
ねこは“こころをくらうばけもの”です。ねこなので。
あなたはひとですか。ひとですね。こころくらわないのでひとです。よろしくおねがいします。
××××
「……随分とショボい天使様のお迎えだな」
エージェントバークレーは嫌味らしく言ってはみるが、目の前の男が天使でないのは明白だ。
天使といえば白、なんていうのは芸術家たちのファンアート発祥のネタだが、天使の出立ちが春物のジャケットにチノパンなど、絶対にあり得ない。
だが、相手が天使でも悪魔でも、感謝の意を表することは必要だろう。
一度言ったが、英語が通じなかったようなので、簡潔に言い直した。
イノウエマダラ。見た目からしてアジア人。年齢は成年に届くか届かないか。気の弱そうな青年だ。
ここがどこかを尋ねると、日本だと答える。
日本? そんなまさか。日本は平和な天国だって? 冗談じゃない。笑わせる。
バークレーは自分が天国に行けるとは思っていなかった。が、地獄に堕ちるほどのことはしていない自負がある。
というより、現世であれだけの“地獄”を見たのだ。天国の門の前で、ペトロにサインを貰うくらいなら、割りに合うだろう。
「どういうことなんだ……? クソッタレ……SCP-1983はどうなったんだ……?」
そうだ。自分はあの屋敷の、ロッカーの狭い暗闇の中で命を絶ったのだ。
神に祈れなくなった己の代わりに、あの化け物を打破してくれる者へ、望みを繋いで。
「……██████?」
「ああ? どうかしたのか?」
イノウエマダラは、突然辺りをキョロキョロし始めた。探し物をするように。
天を仰ぐと、枝から淡いピンク色を溢れさせた────桜の花が見える。日本では桜が有名なのだと聞いていた。やはり、ここは日本なのだろうか。
バークレーは途方に暮れた。一体全体、何が起こったと言うんだ。
財団に所属している以上、人智を超えた異常事態など日常茶飯事だが、慣れるものではない。
「なぁアンタ。悪いんだが……」
そのとき。
どこからか、携帯電話の着信音らしきものが聞こえる。
イノウエマダラはすぐ気づいて、自分の上着のポケットから薄い端末を取り出した。
「██████?」
誰かから電話らしい。『サクラ』だの、『センセイ』だの、『バーチウッド』だの、『ブライトさん』だのとかいう単語を拾う。
……ブライト?
「██████? ……██████」
電話の内容に頷くと、イノウエマダラはこちらに視線を戻して、端末をバークレーに渡してきた。
極めて薄く、画面が広い。見たことのないモデルだ。日本独自のもの? しかし、裏面に知恵の実のマークが入っている。
とにかく、耳に当ててみた。
聞こえてきたのは、英語だった。
『……もしもし? 君は、本物のエージェントバークレーということでいいのかな?』
「そうだが? アンタ何者だ?」
尋ねながらも、バークレーは大体予測がついていた。
バークレーは一介のエージェントに過ぎず、“上のヤツら”と直接言葉を交わしたことがない。
それでも、“彼”の愉快なウワサは、幾度となく耳にしていた。
電話の向こうの声は、笑みを含んだ声で名乗る。
『ジャック・ブライト。君もよく知っているだろう?
────SCP-1983をNeautralizedした、英雄の片割れくん?』
・井上斑
文系だが、英語が下手。ネイティブのマイルズ先生がいるのにも関わらず下手。
・お塩(SCP-040-JP)
ねこもあるけばSCPにあたります。よろしくおねがいします。
・エージェントバークレー
少なくとも1989年以前には死亡したはずの人間なので、なんとiPhoneを知らない。気分はキャプテンアメリカ。
この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。
SCP-1983 “先の無い扉”
著者 DrEverettMann
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1983