映画いいよ・・・・第1弾はアマゾンプライムで配信されてるので是非ご覧ください・・・・善意が報われる世界・・・・
くらい。
つめたい。
さびしい。
最低のコキュートスより、ずっと苦しい。
もっとあかるいばしょへ。
もっとあたたかいばしょへ。
もっとなかまをふやしながら。
それでもまだ、まだ、苦しい。
どれだけ温かく明るく賑やかな
ただただ、冷たく暗く寂しい箱の中で、冷たく暗く寂しい想いをする仲間が増えるだけ。
どれだけ嘆いても救いは来ない。血に塗れた自分たちに、悪魔よりも悍ましい地獄を作った自分たちに、救いは来ない。
救いは来ない、と、思っていた。
神は誰にでも、どんな悪人にでも、救いを遣わすことを忘れていた。
魔を破る銀の弾丸。熱くて、眩しくて、泥臭いけど鮮烈で。
心臓から解放される。これでようやく、安らかに眠れる。
けれど。
“彼”が、まだ。
止まっている。ずっと停滞している。
世界が何度巡っても。銀の弾丸を撃ち放ったあとの、空っぽの銃は、暗闇の中に埋まったまま。
神に祈れなくなった自分は、天国には行けないと思い込んでいる。ここが地獄だと思い込んでいる。
“銀の弾丸”を撃つことができなかったと、自嘲したまま止まっている。
嗚呼、神が遣わした
3日後のイースターは、いつ来るのやら。
彼を叩き起こす者を呼んでいたある日、『ねこ』がやってきた。
『ねこ』のあるほうへ。『ねこ』のいうほうへ。『ねこ』のきくほうへ。
もっとあかるいばしょへ。
もっとあたたかいばしょへ。
つめたい、くらい、さびしいところが、『ねこ』の記憶に塗り替わる。
壊れた神輿。
誰もいない屋台。
舞い散る花弁。
もっとあかるいばしょへ。
もっとあたたかいばしょへ。
さくらのさくほうへ。
××××
「単刀直入に言うと、君が死んだ後にSCP-1983が破壊され、さらにその後世界が滅び、再構築したものの財団はなく、確認できるだけでも未収容のSCPオブジェクトが4つか5つ。あと、私は彼の母親公認で、斑くんのヒモになっている」
「はあ?」
「井上斑くんは認識災害を無効化、あるいは弱体化させる異常性を持つと推定されるが、現状詳しいことは不明だ。財団のことは知らないから余計なことは言わないように」
「はああああああ?」
何が何だかサッパリだ。バークレーは、もう一度土の中で眠り直したい気持ちになった。
世界が滅んだ? その後再生された? 財団がない? ブライト博士がヒモ、はクソどうでもいい。目の前の気の弱そうな男が
いや、それよりも気になる事項は。
「……SCP-1983がNeautralizedされたってのは、本当か」
『ああ。君と、あるDクラスの祈りが天に通じたようだ』
つま先から上がってきた息を、一気に吐き出した。
そうか。良かった。あそこにいた奴らは、同じ部隊の仲間たちも、そうでない者も、みんな解放されたのか。
Dクラス職員がトドメを刺したというのは驚きだが、嬉しいことだ。
たとえ死刑囚でも使い捨てでもブライトの残機でも、あの地獄を終わらせた英雄には違いない。
自分が撃てなかった銀の銃弾を、そいつは撃てたのだから。
『寝起きにちょうどいい
「もちろんだ。オレはアンタみたいな上のヤツと話せて光栄だよ」
『こちらこそ。君は尊敬に値する人物だ。何度身体を取り替えても覚えていたよ』
ジャック・ブライト。これまで数多くのSCPオブジェクトの収容に貢献してきた、偉大なる研究者。バークレーにとっては天上人も同然だ。
イノウエマダラはというと、英語がよく理解できていないのか、ずっと首を捻りながら2人の会話を聞いていた。
『じゃあ、これから私が通訳するからスピーカーにしてくれるか?』
「スピーカー……? なあ、ずっと思ってたんだが、この端末はボタンがないのにどうやって操作するんだ……?」
『……あー、なるほど。これはヘビーだな。なら斑くんに渡してくれ』
言われた通り、聖書のページくらい薄いんじゃないかと不安になる電子機器を、持ち主に返す。
マダラは少しやり取りしたあとに、画面をこつこつ触ったあと、膝の上に携帯電話を乗せた。
ブライトの声が聞こえてくる。
『斑くん、こちらのバークレーさんは記憶喪失らしい。名前以外何も覚えていないそうだ』
「えっ!? 大変じゃないですか!! なら警察に相談を……」
『いやぁ、やめておいた方がいい。この国って不法残留してる外国人に厳しいから』
「確かに……」
イノウエマダラが神妙な顔で頷く。
「おいブライト博士、アンタ何の話をしてるんだ?」
『君が記憶喪失で国籍不明の困ったさんというカバーストーリーを流布させている』
「コイツが英語わかんないからってめちゃくちゃなことを……」
自分がイノウエマダラなら、サクラの木の下から発掘された謎の外国人なんて、即刻警察に押し付ける。
なのに、コイツときたら。
『斑くん、ひとまず彼を家に連れてきてくれるか?』
「は、はい。母に相談するのは前提として、それはいいんですけど」
『いいって。よかったねエージェントバークレー』
よくない。防犯意識Neautralizedしてるのか?
「でもその前にお塩さん探してきていいですか? どっか行ってしまったみたいで」
『猫は家に着く生きものだろう? 放っておいても戻ってくるんじゃない?』
「でもー……」
『バークレー、斑くんは飼い猫を探したいらしいから、付き合ってやってくれ』
謎の外国人より飼い猫かよ、とバークレーはツッコミそうになった。
『ちなみにその飼い猫の名前は“お塩”。SCPオブジェクトで、しかも猫じゃないよ』
じゃあ何なんだよ、そいつも、そいつを飼ってるイノウエマダラも、とバークレーはツッコミそうになった。
「お塩さーん! どーこでーすかー? 煮干しありますよー?」
「あ! バカ! コラ!! 勝手に動くな推定一般人!!」
虎を象った変な石を通り過ぎ、さっさと茂みに入っていくイノウエマダラを追って、エージェントバークレーは走り出した。
・SCP-1983
銀の銃弾により救われた怪物たち、その残滓。もはや誰かを閉じ込める力も、心臓を引き抜く力もほとんど残っていない。
エージェントバークレーを見送ってから孤独に消え去るはず、だったのだが・・・・
・エージェントバークレー
寝起きで知る情報量じゃないと思っている。スマホの操作方法が分からない。貴重な常識人枠の予定。
・井上斑、お塩、ブライト博士
がんばれバークレー。コイツら全員、SCP-1983とは別ベクトルに面倒くさいぞ。
この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。
SCP-1983 “先の無い扉”
著者 DrEverettMann
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1983
SCP-1500-JP “和魂祭”
著者 29mo
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1500-jp