ねこです観察日記はじめました。   作:彩辻シュガ

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ねこといえば、自分はすみっコぐらしが好きです。

映画いいよ・・・・第1弾はアマゾンプライムで配信されてるので是非ご覧ください・・・・善意が報われる世界・・・・



文書1983-15 ③

 

 

 くらい。

 

 つめたい。

 

 さびしい。

 

 最低のコキュートスより、ずっと苦しい。

 

 もっとあかるいばしょへ。

 

 もっとあたたかいばしょへ。

 

 もっとなかまをふやしながら。

 

 それでもまだ、まだ、苦しい。

 

 どれだけ温かく明るく賑やかな心臓(おもいで)を集めても、苦しいのが治らない。

 

 逃げたい(死にたい)逃げたい(死にたい)逃げたい(死にたい)逃げたい(死にたい)

 

 ただただ、冷たく暗く寂しい箱の中で、冷たく暗く寂しい想いをする仲間が増えるだけ。

 

 どれだけ嘆いても救いは来ない。血に塗れた自分たちに、悪魔よりも悍ましい地獄を作った自分たちに、救いは来ない。

 

 救いは来ない、と、思っていた。

 

 神は誰にでも、どんな悪人にでも、救いを遣わすことを忘れていた。

 

 魔を破る銀の弾丸。熱くて、眩しくて、泥臭いけど鮮烈で。

 

 心臓から解放される。これでようやく、安らかに眠れる。

 

 けれど。

 

 “彼”が、まだ。

 

 起きて(生きて)はいない。眠って(死んで)もいない。

 

 止まっている。ずっと停滞している。

 

 世界が何度巡っても。銀の弾丸を撃ち放ったあとの、空っぽの銃は、暗闇の中に埋まったまま。

 

 神に祈れなくなった自分は、天国には行けないと思い込んでいる。ここが地獄だと思い込んでいる。

 

 “銀の弾丸”を撃つことができなかったと、自嘲したまま止まっている。

 

 嗚呼、神が遣わした自己犠牲(すくいぬし)弾丸(ひとり)は地獄を破壊して飛び立ったが、(ひとり)は使命を果たしたことを知らずに埋まる。

 

 3日後のイースターは、いつ来るのやら。

 

 閉じ込める(引き留める)力は失えど、墓守くらいなら出来るだろう。

 

 彼を叩き起こす者を呼んでいたある日、『ねこ』がやってきた。

 

『ねこ』のあるほうへ。『ねこ』のいうほうへ。『ねこ』のきくほうへ。

 

 もっとあかるいばしょへ。

 

 もっとあたたかいばしょへ。

 

 つめたい、くらい、さびしいところが、『ねこ』の記憶に塗り替わる。

 

 壊れた神輿。

 

 誰もいない屋台。

 

 舞い散る花弁。

 

 もっとあかるいばしょへ。

 

 もっとあたたかいばしょへ。

 

 さくらのさくほうへ。

 

 

 

 

 ××××

 

 

 

 

「単刀直入に言うと、君が死んだ後にSCP-1983が破壊され、さらにその後世界が滅び、再構築したものの財団はなく、確認できるだけでも未収容のSCPオブジェクトが4つか5つ。あと、私は彼の母親公認で、斑くんのヒモになっている」

「はあ?」

「井上斑くんは認識災害を無効化、あるいは弱体化させる異常性を持つと推定されるが、現状詳しいことは不明だ。財団のことは知らないから余計なことは言わないように」

「はああああああ?」

 

 何が何だかサッパリだ。バークレーは、もう一度土の中で眠り直したい気持ちになった。

 

 世界が滅んだ? その後再生された? 財団がない? ブライト博士がヒモ、はクソどうでもいい。目の前の気の弱そうな男が異常存在(アノマリー)? 

 

 いや、それよりも気になる事項は。

 

「……SCP-1983がNeautralizedされたってのは、本当か」

『ああ。君と、あるDクラスの祈りが天に通じたようだ』

 

 つま先から上がってきた息を、一気に吐き出した。

 

 そうか。良かった。あそこにいた奴らは、同じ部隊の仲間たちも、そうでない者も、みんな解放されたのか。

 

 Dクラス職員がトドメを刺したというのは驚きだが、嬉しいことだ。

 

 たとえ死刑囚でも使い捨てでもブライトの残機でも、あの地獄を終わらせた英雄には違いない。

 

 自分が撃てなかった銀の銃弾を、そいつは撃てたのだから。

 

『寝起きにちょうどいい福音(グッドニュース)だったかな?』

「もちろんだ。オレはアンタみたいな上のヤツと話せて光栄だよ」

『こちらこそ。君は尊敬に値する人物だ。何度身体を取り替えても覚えていたよ』

 

 ジャック・ブライト。これまで数多くのSCPオブジェクトの収容に貢献してきた、偉大なる研究者。バークレーにとっては天上人も同然だ。

 

 イノウエマダラはというと、英語がよく理解できていないのか、ずっと首を捻りながら2人の会話を聞いていた。

 

『じゃあ、これから私が通訳するからスピーカーにしてくれるか?』

「スピーカー……? なあ、ずっと思ってたんだが、この端末はボタンがないのにどうやって操作するんだ……?」

『……あー、なるほど。これはヘビーだな。なら斑くんに渡してくれ』

 

 言われた通り、聖書のページくらい薄いんじゃないかと不安になる電子機器を、持ち主に返す。

 

 マダラは少しやり取りしたあとに、画面をこつこつ触ったあと、膝の上に携帯電話を乗せた。

 

 ブライトの声が聞こえてくる。

 

『斑くん、こちらのバークレーさんは記憶喪失らしい。名前以外何も覚えていないそうだ』

「えっ!? 大変じゃないですか!! なら警察に相談を……」

『いやぁ、やめておいた方がいい。この国って不法残留してる外国人に厳しいから』

「確かに……」

 

 イノウエマダラが神妙な顔で頷く。

 

「おいブライト博士、アンタ何の話をしてるんだ?」

『君が記憶喪失で国籍不明の困ったさんというカバーストーリーを流布させている』

「コイツが英語わかんないからってめちゃくちゃなことを……」

 

 自分がイノウエマダラなら、サクラの木の下から発掘された謎の外国人なんて、即刻警察に押し付ける。

 

 なのに、コイツときたら。

 

『斑くん、ひとまず彼を家に連れてきてくれるか?』

「は、はい。母に相談するのは前提として、それはいいんですけど」

『いいって。よかったねエージェントバークレー』

 

 よくない。防犯意識Neautralizedしてるのか? 

 

「でもその前にお塩さん探してきていいですか? どっか行ってしまったみたいで」

 

『猫は家に着く生きものだろう? 放っておいても戻ってくるんじゃない?』

「でもー……」

『バークレー、斑くんは飼い猫を探したいらしいから、付き合ってやってくれ』

 

 謎の外国人より飼い猫かよ、とバークレーはツッコミそうになった。

 

『ちなみにその飼い猫の名前は“お塩”。SCPオブジェクトで、しかも猫じゃないよ』

 

 じゃあ何なんだよ、そいつも、そいつを飼ってるイノウエマダラも、とバークレーはツッコミそうになった。

 

「お塩さーん! どーこでーすかー? 煮干しありますよー?」

「あ! バカ! コラ!! 勝手に動くな推定一般人!!」

 

 虎を象った変な石を通り過ぎ、さっさと茂みに入っていくイノウエマダラを追って、エージェントバークレーは走り出した。

 

 




・SCP-1983
銀の銃弾により救われた怪物たち、その残滓。もはや誰かを閉じ込める力も、心臓を引き抜く力もほとんど残っていない。

エージェントバークレーを見送ってから孤独に消え去るはず、だったのだが・・・・


・エージェントバークレー
寝起きで知る情報量じゃないと思っている。スマホの操作方法が分からない。貴重な常識人枠の予定。


・井上斑、お塩、ブライト博士
がんばれバークレー。コイツら全員、SCP-1983とは別ベクトルに面倒くさいぞ。


この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。

SCP-1983 “先の無い扉”
著者 DrEverettMann
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1983

SCP-1500-JP “和魂祭”
著者 29mo
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1500-jp
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