ねこです観察日記はじめました。   作:彩辻シュガ

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ほのぼのと狂気を8:2の割合で両立させたいんですけど難しいですね。

そんな複雑さもSCPの魅力です。


文書1983-15 ④

 

 

 よかった。よかった。よかった。

 

 生きてる内に、誰かに見つけてもらえてよかった。

 

 自分たちはそうなれなかったけど、彼は救われてよかった。

 

 また置いていかれる。

 

 またくらい。

 

 またさむい。

 

 またさびしい。

 

 もうなにもない。もう自分たちにはなにもない。なにもすくえない。だれもたすけてくれない。

 

 これでおしまい。

 

 ……そんなのいやだ。

 

 まだいきたい。まだいきたい。まだいきたい。

 

 あかるいところにあたたかいところにまだいきたい。

 

 おわれないおわれないおわれないしにたくないしにたくないしにたくない。

 

 それを望むことが何故悪い? 潔く美しく退場しろなんて、退場する前に花束すらくれなかった奴らには言われたくない。

 

 ────ああ、確かにその通りだ。死者は生者に干渉するな、なんて馬鹿馬鹿しいよ。どちらも等価であるはずなのに。

 

 まだいきたい。まだいきたい。まだいきたい。

 

 あかるいところにあたたかいところにまだいきたい。

 

 おわれないおわれないおわれないしにたくないしにたくないしにたくない。

 

 心臓、心臓、心臓。

 

 あのねこにはこころがなかった。

 

 あのひとにはある。あのひとたちはいきてるからこころがある。

 

 仲間なかまナカマ仲間が欲しい。

 

 まだいきたい。まだいきたい。まだいきたい。

 

 あかるいところにあたたかいところにまだいきたい。

 

 おわれないおわれないおわれないしにたくないしにたくないしにたくない。

 

 力が欲しい仲間が欲しい苦しいまま終わりたくない。

 

 ────聞こえないのかい? いいや聞こえているはずだ。

 

 ────“俺”は、彼らは、もう君を見つけてる。君もそこから彼らの姿が見えるだろう? 

 

 ────さあ、こっちへ。

 

 その瞬間、景色(おもいで)が捲られる。

 

 賑わいの残る春の祭りから、閑静な秋の湖畔へ、塗り変わっていく。

 

 ────そこで彼らが待っている。君のことを待っている。

 

 ────だって、俺たちは仲間だろう。みんな一つだった。

 

 そうだった。どうして忘れていたんだろう。

 

 自分はひとりじゃない。暗くも寒くも寂しくもない。

 

 彼らがずっと、待っててくれた。今、すぐそばにいる。

 

 ────悪いけど……アイツは、“俺”自身の声で連れ戻したいから。

 

 ────アイツの心臓も脳も肺も胃も腸も血管も、全部水で満たさないといけないから。

 

 ────だから、君の帰る場所はこっちだ。

 

 ────あーあ……財団(かれら)の得になるようなこと、したくないんだけど。放っておけないよな、みんな。

 

 沈んでいく。下へ下へ下へ沈んでいく。

 

 彼らの声が聞こえる。彼らの姿が見える。

 

 ありがとう。

 

 助けてくれてありがとう。

 

 覚えててくれてありがとう。

 

 水中の死体は知らないけれど、ありがとう。

 

 

 ────どういたしまして。

 

 

 

 

 ××××

 

 

 

 

「……あれっ?」

 

 茂みを抜けると、そこは近所の湖だった。いつものように、バーチウッドくんが佇んでいる。

 

 いつの間にか山を下りていたんだろうか? いや、そんなはずは……

 

 すると、バーチウッドくんがジットリした視線をこちらに向けて言った。

 

「“君”は、常に素晴らしいタイミングで到着するよな。神に愛されてるんだね?」

「バーチウッドくん、それってどういう……あ、お塩さん!」

 

 バーチウッドくんの足元に、白い『ねこ』が座っている。あのインパクトの強い眼力、間違いなくお塩さんだ。

 

 すぐに駆け寄り、抱きかかえた。

 

「心配しましたよー……急にどっか行っちゃうから……」

 

 お塩さんは何も答えない。頬にすり寄ることもない。何を見て、何を聞いて、どこへ向かっているのか、僕のような人間には解らない。

 

「██████?」

『斑くん、バークレーがそこにいるのは誰だって聞いているけれど?』

 

 振り向くと、バークレーさんが訝しげにバーチウッドくんを睨んでいる。

 

 彼はただの高校生だから警戒することなんてないと思うのだが……でも、バークレーさんは記憶喪失である。自分のことも周りのことも、何も覚えていないんだから、不信感を覚えて当然だ。

 

「バーチウッドくんです。近所に住んでる留学生で……えーっと、僕の友達、です」

「“君”さぁ……あれだけ彼らと共に濃密な学校生活を送った親友()に対して、それはナイんじゃないか?」

「あっ……ごめん! 親友、親友です! ズッ友! 心の友です!」

「そ、そこまで言えとは……まぁいいや」

 

 僕は相変わらず、バーチウッドくんとの思い出を全く思い出せずにいる。彼はそんな僕のことを、まだ長年の親友だと思ってくれているのに。本当に申し訳ない。

 

『██████, ██████』

「██████!?」

 

 繋がったままの電話の向こうから、ブライトさんがバークレーさんに何か言っている。トゥースリーワンシックス……2316? みたいなワードが聞こえたけれど、何のことだろう。

 

「何があったかは知らないし、ここにずっといてくれても構わないけど。“君”たち、やることがあるんだろう?」

「そうでした、彼を連れて帰らないと……行きましょう、バークレーさん」

「……OK」

 

 バークレーさんは、なんだか釈然としないような表情でバーチウッドくんに目線をくれながら、歩き出した僕の後をついてきた。

 

 

 ────また、湖で会おう。彼らは、いつまでも“君”を待っているよ。

 

 

 

 

 ねこです。

 

 ねこをじゃまするひとはさびしがりです。

 

 にんげんはさびしがりです。ので、むれないとしにます。

 

 もうしんでるのに、すいちゅうでまでむれます。めんどうです。

 

 が、まだらになにもなかったので、ねこをじゃまするひとはとてもべんりです。

 

 ねこです。ありがとうございました。

 

 




・バーチウッド(SCP-2316)
ファインプレーですよ、湖カムバックお兄さん。湖は君の心の中にあるのだ。
バックボーンがあれなだけに陰キャムーヴをかましているが、実は青春エンジョイしていた結構な陽キャ気質。


・SCP-1983
SCP-2316同様、まぁまぁえげつない目に遭わされた所為で恐怖SCPと化した存在。現在はNeautralizedされているため、攻撃力はマイルズ先生とほぼ互角。


・エージェントバークレー
SCP-2316!?オブジェクトクラスKeter!?それがアレ!?週5ペースで遊びに来る!?はぁ!?


・お塩(SCP-040-JP)
人間に対しては、生者でも死者でも基本無関心だが、バーチウッドに関しては同族嫌悪に似た複雑な感情を向けている。


・井上斑
「家にゲーム機が置けないから」というバーチウッドの言葉を信じ、彼のSwitchを自宅で預かっている。尚、水中の死体がどうやって金を工面したのかは不明。


この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。

SCP-1983 “先の無い扉”
著者 DrEverettMann
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1983

SCP-2316 “校外学習”
著者 djkaktus
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2316

SCP-1500-JP “和魂祭”
著者 29mo
http://scp-jp.wikidot.com/scp-1500-jp
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