ねこです観察日記はじめました。   作:彩辻シュガ

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SCP-040-JP “ねこですよろしくおねがいします” ②

 一旦居間に入ると、ティーカップがひとつ用意されていて、そこから湯気が踊っている。

 

 そして、カップのそばには、こんなメモ書きが。

 

『斑くん、いつもお疲れさまです。今日も、買い物ありがとうございました』

 

 これを書いたのは、“先生”と僕が呼ぶ人。我が家の家事手伝いさんだ。

 

 “先生”は、この家のお茶淹れと掃除を担当している。料理とか洗濯は僕がやっている。

 

 “先生”は僕が幼い頃からいるけれど、姿を見たことは一度もない。雇い主の母曰く、「とても人見知りが強いから、顔を知られたくない」らしい。意思疎通は基本的にメッセージカードだが、最近電子メールも使うようになった。

 

 元は高校教師だったのだが、勤めていた学校がなくなって途方に暮れていたところを、母に拾われたそうだ。

 

 たまに僕が勉強で行き詰まったとき、メッセージカードを介して丁寧に教えてくれる。だから“先生”。

 

 僕は鞄の中からメモタイプの付箋を取り出すと、1枚ちぎって、ペンで連絡事項を書いた。

 

『今、家に白い野良猫が上がり込んでいます。買い物帰りのときについてきました。保健所に連絡する予定はありませんが、仕事の支障になるようでしたらお申し付けください』

 

 これでよし。多分。

 

 あったかいお茶を一口飲むと、僕は台所に入って、冷蔵庫を開けた。

 

『ねこ』は冷蔵庫の陰から僕を見ている。

 

 一番上の棚に、煮干しのパックが入っていた。残量は袋の半分。まぁ、2、3尾……4、5尾くらいなら構わないだろう。

 

 小皿を出して、その上に煮干しを乗せる。

 

『ねこ』は十数秒ほど僕を見つめていたが、やがて煮干しをポリポリ食べ始めた。

 

 うん、大丈夫そうだ。

 

 全部食べ終わると、『ねこ』は僕を────否、僕の後方を見つめた。

 

 振り返るが、そこには壁があるだけだ。

 

「……猫が虚空を見つめるのって本当なんだな」

 

 

 

 

 

 

 ねこです。

 

 ねこはいます。

 

 ねこはどこにでもいます。

 

 どこにでもいるねこはそこにもいます。

 

 はいおくにいます。ざいだんにもいます。えのなかにいます。てえるにいます。どうがにいます。けいじばんにいます。

 

 のが、いまはねこをすきなひとのそばにいます。

 

 ねこをすきなひとはねこがいます。といいません。

 

 ねこをすきなひとはねこをねこだとおもっていますいます。

 

 ねこはねこです。

 

 ねこはいました。はいおくにいました。ながいこと、だれもねこをみませんでした。

 

 ねこをすきなひとがねこをみました。ねこです。ねこがそこにいます。

 

 ねこをすきなひとはねこをねこだといいます。

 

 ねこをすきなひとはねこをひろめません。

 

 ねこはいきるもののなかにいます。ねこはしんだもののなかにいます。

 

 が、ねこはしんだものをすりぬけますので、ずっとはねこはいません。

 

 ねこです。ねこはどこにでもいます。ねこはどこにもいません。

 

 みるくをいれてくださいです。

 

 ねこをすきなひとがいないときにみるくはあります。

 

 ねこをすきなひとがいなくなりました。

 

 みるくがいれられました。

 

 ありがとうございました。

 

 ねこはどこにでもいます。ねこはどこにもいません。ねこはいまねこをすきなひとのそばにいます。

 

 ねこです。

 

 よろしくおねがいします。

 

 

 




この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。

SCP-040-JP “ねこですよろしくおねがいします”
http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp

SCP-3715 “それほど繊細でもないお茶”
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3715
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