今回のSCPは特にそんなことないので、安心して本家記事を読んでください。
「それ全部食べ切れるかのう?」
「あんたというやつは毎回……ああ、もういい。わしらがそう遠くない未来に仕事をなくすことに比べれば、こんな遣り取りに感情的になることもなかろう」
「もはや治せなくなるものは、人間の馬鹿さ加減しか残らん……嘆かわしい……」
「お主らとの、◾️◾️年間の忌々しい日々が、こんな形で終止符を打たれるとはな」
某県某市の高速道路に在る“メグの素敵な家庭料理”の店。
そこに毎日のように入り浸る4人の初老男性は、この世の終わりのような青い顔で溜息をつく。
これは従業員たちにとっては日常的な光景で、彼らの会話を思考の端に引っ掛けることすらしていなかった。
「なぁウォーレンよ、どうにかならんのか? これでは、我々の給料査定が目に見えとる」
「仕方ないじゃろう! 終末が始まる前に終末が終わっとったんだぞ!」
「どうにか今からでも起こせんのか? 悪魔連中はあれだけ躍起になっていたんだぞ」
「無理だ。下は今、四大天使の収録スタジオになっているらしい」
「上はどうした? 今はナザレの小僧が留守にしているようだが」
「奴なら、日本でバカンスしとるらしいぞ」
「何だって!?」
「儂らと同じじゃな」
フレデリックの一言に、激昂しかけたドワイトが押し黙る。彼の言うことは間違っていない。
まさか、ドリンクバーでもたもたしている内に終末戦争が人間たちで完結してしまうなんて夢にも思わなかった。
もう一度アポカリプス計画をやり直すことは可能だろうが、あの世の住民は、人間たちの最悪の内紛を未だに夢に見る始末だ。
お陰で4人のスケジュールは、当分先まで真っ白である。天使や悪魔どもが早々に転職先を見つけていく中、自分たちは時代にどんどん置いていかれる。
「あー……それなら、シャキータ族の王子はどうした? 諸行無常を説く奴が、この状況に黙っているとは思えんな。奴もバカンスか?」
「アイツなら……神対人類のタイマン勝負に出場するようだ」
「は?」
「対戦相手は七福神らしい」
「お主、ついにボケたのか……認知症は疫病ではなかろうて」
「デマではない。確かな情報だ。ワルキューレの嬢ちゃんが大々的に宣伝しとったからな」
終末が取り止めになってしまったものだから、地域に関わらずみんな暇になったのだろう。
得をしているのは、休息や怠惰を司る神と、Ttt社のみに違いない。
暇が過ぎると、神であろうと人であろうと、可笑しなことを始めるものだ。
「そういえば、アッシュールの世話役当番が我々に回ってくるという話が来とる」
「待て。あれは今、人間が世話しているはずじゃなかったか? スエンが上機嫌で語っていたじゃろう」
「どうもその人間の集団が散り散りになったらしくてな、周辺の神々が悲鳴を上げていた」
「ジーザス、世界はこんなにもおかしくなってしまったのか……」
それもこれも、人間の所為だ。人間たちがフライングであんなことしなければ、全ては予定調和だった。
「もう……わしには何も解らん。……戦争というものを人間に渡してはいかんかった。火は我々で管理し続けるべきだったのだ……」
「後悔ばかりしても仕方あるまい」
「もうすぐ、天におわす主から、
「人間に密接に関わる部署は減るじゃろうの」
溜息を吐くと幸せが逃げる、という迷信がある。その幸せを人間の価値基準に基づく定義とすると、彼らの場合、彼ら自身が幸せではない存在なので問題ない。
そのときだった。パットが、何恒河沙目の「それ全部食べ切れるかのう?」を聞こうとした、まさにそのとき。
すぐ隣の通路で、幼い少年がハンカチを落とした。
終末に関わる者とはいえ、神や天使や悪魔のように、特段人間に対する面倒な感情はない。
「おい坊っちゃん、落としとるぞ」
「えっ……ほんとだ! ありがとうございます!」
赤色の生地に、黒猫の刺繍が入っているハンカチだ。そう値打ちのあるものではないが、少年は大事そうにハンカチを畳み直した。
そして頭を下げると、無邪気に笑って、周りに迷惑にならない程度に小走りで去る。
「あの子は……信心深くはないから辺獄行きじゃろうな」
「最後の審判があったらの話だ」
「あの坊主はこっちの管轄ではないじゃろう。異国の神の気配がした」
「それ全部食べ切れるかのう?」
××××
「おかあさん! さっき、しらないおじいさんが、ハンカチひろってくれたよ!」
「そりゃあ良かった。ちゃんとお礼は言ったのかい?」
「うん! けいごもつかえました!」
「よし。で、何食べるか決まったか?」
「いちごのパフェのやつ……」
「デザート以外にしなよ」
「はーい……」
少年が猫ではないねこを拾ったり、首飾りの男を拾ったりするのは、まだまだ先の話。
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SCP-1295 “メグの晩餐”
著者 D-matix
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SCP-3740 “神はアホである”
著者 djkaktus
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