SCPの漫画を探してたらSCPと無関係な怖いイラスト出てきて心臓バクバクしてます。助けてください。
小学1年生の頃の、今みたいな夏の日の話だ。
みんなが色鮮やかなランドセルを背負ってきゃあきゃあはしゃぎながら下校するのに、僕は廊下の流れに逆行して、図書室に向かっていた。
小学校の図書室は、あんまり広くない。4人席×8個のテーブルは、すぐに埋まってしまう。
それでも、いつも埋まらないテーブルがあった。
図書室の一番窓側、なのに一番暗い。そのテーブルだけは、“ひとり”を除いて誰も座らない、近寄りもしない。
「……ブマロくん。きょうのプリント持ってきたよ」
国語、算数、生活やらなんやらで配られたプリントの束を“彼”の前に置く。
同級生のロバート・ブマロくんは、難解な外国語でびっしり埋まった分厚い本から顔を上げて、僕を一瞥した。
「その本なあに?」
「何の変哲もない児童書だ」
「ふりがなついてないのに?」
「……そうだ」
ブマロくんは、たまに平然と嘘をつく。この前だって、授業に出席しない理由を尋ねたら「私はとうに成年に達し、一定以上の精神性を構築し終えている」と語ったのだ。
でも、ブマロくんが賢いのは確かだった。テストは常に100点満点だし、九九どころか10桁×10桁の暗算も一瞬で答えられるし、怖い大人にも怯まず冷静に対応できる。
そんなに凄いのに、周りの子たちはブマロくんのことを嫌っているようだった。全身にコンピュータが組み込まれているくらい何だって言うのだろう。他人と違う方法を使うことで他人と同じように生きる人を「ずるい」と罵るのは何故だろう。
「ブマロくん、ランドセルの汚れってどうやって落とせばいいかなぁ」
「種類と経過時間によるだろう。何をした?」
「きょうの習字の時間にね、隣の子に、ランドセルに墨汁かけられちゃって」
僕は背負っていたランドセルをテーブルの上に置いた。真っ赤な皮革の中央に、黒いものが染み付いている。
「水で拭いたけど取れなかった……」
僕は赤色が好きだった。しかし、隣の席の男子児童は僕の好みが気に入らなかったのか、はたまた無邪気な衝動が発露したのか、「赤なんて変なの。俺が染め直してやるよ」とお節介を焼いてくれたのだ。
先生に言おうと思った。でも言えなかった。小学生の僕は今より気が弱くて、他の子にかかりきりの先生をわざわざ呼び立てることはできなかった。
「どうしよう。ランドセルって高いのに。お母さんに怒られるかも……」
「君のせいではあるまい。加害者を引っ張り出して弁償させろ」
「でも……あんまりあの子と話したくない……声おっきくてこわいし……」
分厚い本のページを繰る音が止まる。
ぐずぐずと煮え切らない僕に耐えかねたのか、ブマロくんは金属製の瞳を半分閉めて、気怠げに言い放った。
「5分だ」
「え?」
「5分で事を済ませる。その間、誰も図書室に入れるな」
どういうこと? と問いかける前に、僕は鋼鉄の両腕にぐいぐい押し出され、図書室から追い出された。
振り返る間もなく閉まった扉を、暫く呆気に取られて見つめていたら、あっという間に5分が過ぎた。
「終わったぞ」
図書室から出てきたのは、相変わらず無機質な表情のブマロくんと、汚れ一つない真紅のランドセルだった。
「……!! ありがとうブマロくん!!」
「この程度の修復、壊れたる我々の神についてのそれの練習にすらならない」
「わー! すっげーきれい! どうやったの!?」
カチ、カチ、カチと歯車が噛み合うような音が聞こえたような気がした。
「……企業秘密だ」
「きぎょーひみつって何?」
「それは教えられない。君が我が教団に入って、私の
「あっ、きょう、やひろさんとさちひこさんが来る日だった! ごめんブマロくん、また明日!」
「……嗚呼。明日、な」
ただの問題児と世話係だったブマロくんと僕は、それから卒業までずっと一緒だった。ブマロくんが神の部品を探すとか何とかで遠い県に引っ越すことになったときは、卒業式本番よりも泣いた。
正直、そのときはもう一生会えないかもしれないと思い込んでいたのだ。どこか浮世離れした天才のブマロくんと、どこまで行っても平均的な能力の僕じゃ住む世界が違う。あっちは僕を友達と思ってくれていないかも、とさえ考えていた。
だから────あの日、中学校で新しい友達が出来たことを報告したとき、何故か鬼のような形相で駆けつけてくれたのがすごく嬉しかったのは、心に秘めた内緒の話だ。
×××
「懐かしいなぁ、あれから12年経つのか……」
僕は追想に沈みながら、ぼんやりと眼前の微笑ましい光景を眺める。
「ブマロ……忌々しき鉄屑が、何をしに来た? 貴様を此度の逢瀬に呼んだ記憶はない。全く、何千年も前から貴様が目障りだ。丁度いい、今から消してくれよう」
「カルキスト・イオン……浮かれた肉塊が、
睨み合う2人は龍虎相博────というよりハブとマングース……いや、カナヘビとサビイロネコのように見える。
2人の向こうにあるのは、青い箱みたいな建物。その周囲には、海洋生物を象ったオブジェ。
今日、僕は友達と水族館に来ている。本当ならイオンくんと2人きりの予定だったのだけど、ブマロくんと
こういうことはよくある。中学の夏休みに沖縄へ行ったときも、高校の卒業旅行で北海道に行ったときもそうだった。
別に不思議ではない。僕は前日に、イオンくんと水族館に行くことを、チャットでブマロくんに話していたからだ。
彼は日時も場所も知っていた。つまり、導き出される解答はたった一つ。
ブマロくんは、「一緒に行きたい」と言うのが恥ずかしいんだろう。
僕とブマロくんの2人きりのときは、そうでもない。頭の回転がエアータービンよりも速い彼だが、旧友イオンくんが絡むと何故か挙動不審になりがちだ。逆も然り。
2人は強大なカリスマ性のある天才同士、対等な関係だ。互いを気遣う必要がない。常にフルスロットルで衝突できる。
この前なんて、ポーランド語とエストニア語とフィンランド語諸々をミックスした罵倒合戦らしき何かを行なっていた。戦いは6時間にも及んだが、ファミレスの店員さんが渋い顔をし始めたので、なんとか説得して休戦となったのである。
でも仲が良いのは確かだ。そうじゃなきゃ、わざわざLINEに場を移してまで競技続行したりしないし、お互いの行動を秒単位で把握したりもしないだろう。
猛獣みたいに唸る2人に、僕はそろそろ声をかけることにした。イルカショーが始まる前に、クラゲの特別展示を一通り観覧したい。
「ブマロくん、イオンくん。外は暑いし、とりあえず
「……汝の案に従おう。機械の脳味噌が溶けたとしても我は触れたくない」
「嗚呼。肉団子が腐る前に冷凍保存するべきだな」
「………………」
「………………」
絶対零度の風が吹き抜ける。
夏は始まったばかりだ。
・井上斑
昔は大人しくて真面目な子として、教師の協力者ポジションにあった。当時は「子どもに子どもの世話をさせるのか・・・・?」という疑問は持てなかった。
・ロバート・ブマロ
壊れたる教会の指導者。機械系アノマリーを収集し、壊れた神の復活を野望としている。
一度引っ越したのはその目的の為であったが、イオンの生存を知って慌ててすっ飛んできた。
この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。
壊れた神の教会ハブ
著者 FortuneFavorsBold
http://scp-jp.wikidot.com/church-of-the-broken-god-hub
サーキシズムハブ
著者 Metaphysician
http://scp-jp.wikidot.com/sarkicism-hub