ねこです観察日記はじめました。   作:彩辻シュガ

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ねこです。

ほんぺんかられいあつがきえましたのでまえがきにねこはいます。

ねこですよろしくおねがいします。

かしこ


指導者ロバート・ブマロの現状 ②

 

 

 

 

 赤からオレンジ、黄色から翠緑、青から紫、桃色からマゼンタへ。シームレスに移り変わっていく照明を透過しながら、クラゲが舞っている。

 

 ミズクラゲ、ベニクラゲ、アカクラゲ、ブルージェリー……他にもたくさん。クラゲの泳ぐリズムは心臓の鼓動と似ていて、リラックスできた。

 

「クラゲ良いよなぁ、クラゲ……」

「確かに。奴らは美味だ」

「美麗だが、機構が脆弱すぎる。邪悪な肉を捨てて進化(アップデート)すべきではないか?」

 

 イオンくんとブマロくんの観点は、いつも独特だ。

 

 イオンくんは血肉の宴をするタイプのオカルトチックさがあるが、ブマロくんはその逆で、温度も粘度も湿度もないことをよく言う。

 

 薄いヴェールの集団が、ゆらめき、絡まり、虹色の舞台(はこ)の中で呼吸する。

 

「2人はどこか見たい展示とかある? イルカショー終わったら見に行こうよ」

「機械の神の手が回らない箇所こそ、我らの楽園の始点たり得るだろう」

「腐肉臭の分子が一定基準以下であれば何処でも構わん」

「………………」

「………………」

 

 残念ながら、彼らはクラゲでリラックスしないようだ。

 

 クラゲたちが、2人のそばから一斉に、波が引くように離れていった。クラゲに視覚はないが、なんとなく殺気を感じ取れるのだろう。脆弱な身体なりの生き方である。

 

 頭脳だけでなくフィジカルも凄まじい2人だが、「民草を最低限巻き添えにしないように」と暴力だけは控えているようだ。規格外の天才なりに、周囲を気遣っているのだろう。

 

 少し目を離すと、何故か両者が己の拳をさすっていたりもするが、気遣ってはいるのだ。きっと。

 

「と……とりあえず、イルカショー観終わったら、近いとこから回る感じでいいかな?」

 

 そう尋ねると、素直に頷いてくれた。険悪な覇気が引っ込む気配は全くないけど。

 

 

 

 

 ××××

 

 

 

 

「……マダラのこと、止めなくてよかったんすか?」

「あちらは十数年以上前から組織の再建を進めているんだ。対抗する手立てがないよ。それに、『君の幼馴染は世界征服を目論んでいるから縁を切りなさい』なんて言ったら、私の方が縁を切られてしまう」

「そうは言ってもさ……」

 

 縁側の軒先に吊るした風鈴が、バークレーに同調するように鳴る。

 

 その下では、文字通り猫を被っているSCP-040-JPが、身体を伸ばして寝るような素振りを見せていた。

 

 その横の、何もないところから水の入った深皿が現れる。ねこは幽霊を一瞥すると、また狸寝入りを始めた。無害な飼い猫の演技に余念がない。

 

「肉の神と鉄の神か……懐かしい。父の都の広間で顧問を務めた者たちの信徒か」

「“伏義(めかあね)”と“女媧(やるだばおと)”? われは不得手であるな……知己の神があれらに()()()()()ことがありしゆえ」

 

 セスは今は都なき遥か彼方に想いを馳せ、幸彦を名乗る元秋津洲(あきつしま)の王は、元々白い顔を更に青白くして茶を啜った。

 

 日課であるSCP-2000-JPとの交流を終えたブライトはノートパソコンを閉じて、SCP-777-JPに視線を向ける。

 

「ときに幸彦くん、君の姫様はどちらへ赴いたのかい?」

「家業と聞きぬ。姫は竜宮の主なる者であるからな」

 

 日本海上で恐怖のパレードを敢行していないと良いが。

 

 ブライトたちは、先日井上家に調度品を運送してきた海洋生物の群れを思い出して、全身に汗を滲ませた。ねこでさえイエネコと捉えられるレベルに零落したのに、あれらは斑の影響を受けてもアレなのだ。

 

 綿津見八尋を名乗る神は人間────というより蒐集院嫌いだ。ブライトとバークレーはこの頃、家での居心地が悪い。

 

 かと言って、財団の監視の外に出て行かれるのも困る。XKクラスシナリオを、人間2人の力で止められるかどうかは別として。

 

「玄武は昔から几帳面だったからなぁ。(うぬ)も何度か竜宮に不法侵入(おじゃま)しては咬み殺されかけたのだぞ? 逃げ切ったの凄くない?」

「よそ見してると死ぬぞ、ダークスター号」

「はっはっは。(うぬ)は最強だからこれくらいじゃ死なアアアアアアアアア!!」

 

 巨大な鮭にパックリ喰われて、暗星豪のアバターが昇天する。

 

 悔しさでヒヒーンと(いなな)く草食動物に慰め一つかけず、現役高校生を騙る彼は、黙々とイクラを回収し続けた。そのドライさを“君”に対しても発揮していただきたいところである。

 

「アイツもそこまで馬鹿じゃない。危険を感じたらすぐ逃げるだろ。……何だいその目は?」

「ストーカーは並のメンタルじゃ務まらないことを実感したんだよ」

 

 SCP-2316は、本気で何を言われているか分からないかのように首を捻った。

 

 風鈴が鳴る。

 

 財団は、季節問わず、常に肝が凍りついた状態での職務を全うしていた。日本の夏はどうだ。ちっとも快適じゃない。

 

 SCP-2316が勝手にエアコンの温度を下げたが、誰も何も言わなかった。

 

 




・崇高なるカルキスト・イオン、壊れた神の構築者ロバート・ブマロ
夏王朝から仲が悪い(ように見える)。前世界では大規模な戦争の末にメカニトが勝利したが、今回は互いに平和的な関係を築こうとしている(つもり)。


・井上斑
水族館たのしい。


この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。

壊れた神の教会ハブ
著者 FortuneFavorsBold
http://scp-jp.wikidot.com/church-of-the-broken-god-hub

サーキシズムハブ
著者 Metaphysician
http://scp-jp.wikidot.com/sarkicism-hub

SCP-4840 “魔性のランスロットと空中都市アウダパウパドポリス”
著者 djkaktus
http://scp-jp.wikidot.com/scp-4840

SCP-1983 “先の無い扉”
著者 DrEverettMann
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SCP-777-JP “鶴の翁”
著者 tokage-otoko
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SCP-973-JP “エターナル・ダークホース”
著者 perry0720
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SCP-2316 “校外学習”
著者 djkaktus
http://scp-jp.wikidot.com/scp-2316
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