そんな作者が書いてるSCP二次創作ですが、よろしくおねがいします。
生きたかった。死にたかった。
働きたかった。休みたかった。
いろんなことを考える自分が増えたり、減ったりするのを眺める毎日。
どちらにしろ立ち止まる余裕はなかった。良いことも悪いことも、全部ひっくるめて大変な人生だった。しかし、出来る仕事は出来る限りやったと思う。
その結果が、
今、ジャック・ブライトは極めて空虚で長い眠りから目覚め、新しい顔をただ見ている。
癖っ気の強い茶髪と、澱んだ碧眼。恐らくコーカソイド系統。身長は170センチ程度。視界が若干ぼやけているので、視力は悪い。
片方のつるがセロハンテープで固定された眼鏡をかけて、ブライトは洗面所を出た。
首にかけた“本体”の重みは、久しぶりに着けたはずなのに、気持ち悪いほどしっくりくる。
電気の消えた、暗い部屋。空き缶や使用済みティッシュが散乱し、その辺を蜘蛛が我が物顔で歩いている。
さっき判明したことだが、水道は止められていた。きっとガスもつかない。机の上にスマホの充電器があったが、この部屋では使えないだろう。
薄汚れた手袋を、床に向かって脱ぎ捨てる。
首飾りをどこかで拾った。そのときは手袋をつけていたから無事だった。が、家に帰ってから、どうしてか戦利品を首にかけてしまった。
そんなことせず、そのままどこかに売り飛ばせば良かったのに。
だが仕方ない。彼には悪いが、ジャック・ブライトを名乗らせてもらおう。
────名乗ってどうする?
正直に言うと、ブライトは前回の世界で全て出し尽くして果てた。ちっとも以前のような気力が湧かない……要するに燃え尽き症候群だ。
いっそ────いっそ、何か知る前に、ここで二度寝するか。
ちょうどそのとき、胃腸が悲鳴を上げた。
餓死で終わるのはキツい。
せめて、食い逃げでもいいから美味しいものを食べたい。
家の鍵は開いていた。盗られるものなんて、今のところSCP-963-1しかないのだし。
××××
『ねこ』と出会ってから、数日が経過した。
その間、『ねこ』はずっと僕のそばにいて、ほとんど離れなかった。
一晩寝たら、ふらっといなくなるものだとばかり考えていたが、まさかこんなに居着くとは。
しかしこの猫は実に不思議である。
というのも、動物を飼うときに最も大変なのがトイレの躾なのだが、『ねこ』はその懸念を裏切った。
庭でしているのかとも思ったが、どこにも排泄の便りは見当たらない。
そもそも『ねこ』は僕に付きっきりなのに、いつトイレに行ったんだろう。全くもって不思議だ。
しかも、『ねこ』はお風呂も嫌がらない。
もう家で飼おうかな。そういうことにしようかな。という邪念が時たま過るのだが、感情に流されるままに命を預かるなんて、無責任ではないだろうか。
そんなことを思いつつ、僕はバイト先のコンビニに行く。先日までは改装工事やら何やらで、店が休業だったのだ。
問題は『ねこ』。
家を出たら当然のようについてくる。多分、コンビニにもついてくる。それは普通によくない。
「コンビニの中には食品とかもあるので、バイト終わるまで外で待っててもらえませんか」
というか野良猫なんだし。外にいるのが当たり前で、何日も民家に泊まっているのがおかしいんだけど。
僕のお願いに対し、『ねこ』は馬耳東風といった様子で、僕の足元に座る。
そういえば、『ねこ』はいつも、目線より下にいる。猫は高いところにいる印象があるのに。
なんとなく思い立って、僕は『ねこ』を抱えた。『ねこ』はびっくりするほど暴れなかった。
軽い。あまりにも軽い。あと、思ったより体温が低い。
「コンビニに着いたら、もうついてきちゃ駄目ですからね。『ねこ』なんてすぐ追い出されますからね。本当ですよ」
××××
その『ねこ』に見覚えがあった。
いや、あれは
それを、どうして、ただの青年が抱えている? まるで、普通の猫でも抱くみたいに。
強烈な違和感があった。
本来、あれは見てはいけない、聞いてはいけない、知ってはいけない、その瞬間に取り返しのつかないことになるような存在のはずで。
こんな風に、冷静に分析なんかしてられないはずで。
一体全体、何が起きている?
「SCP-040-JP……」
日本支部から送られてきた報告書に、一度軽く目を通したくらいだ。それでも覚えている。
というより────アレが元々囚われていた廃屋を、ここに来る道中に見かけて思い出したのだ。
どうしてミーム災害系のオブジェクトがここに?
どうしてあの男は、そしてそれを目撃したブライトも、平然としていられる?
ああ、ひどく頭が痛い。やっぱりあそこで二度寝するんだった。
『ねこ』がこちらをチラリと見やったとき、奇妙な視線に射抜かれて背筋が粟立つ。
────それだけだ。それで、おしまい。
奴はどうやら、こっちに干渉したくてもできないらしい。
「……へえ」
知ってしまったら、もう
・ブライト博士(SCP-963)
いろいろあって蘇った、財団の問題児。世界滅亡の顛末を一から十まで目撃し、いろいろあって若干病んでる。
この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。
ブライト博士の人事ファイル
http://scp-jp.wikidot.com/dr-bright-s-personnel-file
SCP-963 “不死の首飾り”
http://scp-jp.wikidot.com/scp-963