ねこです観察日記はじめました。   作:彩辻シュガ

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ブライト博士のキャラが未だに掴めません。


SCP-963 “不死の首飾り” ②

 結局『ねこ』はコンビニまでついてきてしまった。

 

 しかし、バイト仲間は『ねこ』を歓迎してくれたし、事情を聞いた店長は「自分がバックヤードで面倒を見ておく」と言ってくれた。

 

 ハラスメントによる過労死問題が常態化する昨今の世には珍しく、僕は職場環境に恵まれている。

 

「いらっしゃいませー」

 

 軽快な入店音が響く度に、ほとんど脊髄反射で挨拶が出る。

 

 最初はレジ打ちが苦手だったが、今は好きだ。僕は単純作業が向いているらしい。

 

 今の時期は花見シーズン直前で、桜餅がよく売れる。店内は、どこもかしこも桜色。パンもおにぎりも冷凍食品もお弁当も、みんな春に染まっている。

 

『ねこ』は違う。『ねこ』は真っ白だ。しかし、冬を想起させる寒々しい白ではない。

 

 あれはなんというか、“無”。白い色、というより、何もないから白、というか。透明ではない、“無”。

 

 そういえば、猫の種類もまだ分からないんだった。なに猫なんだろう。猫の本は沢山読んできたが、見た目じゃさっぱりわからない。

 

 そうこうしていると昼休憩の時間になり、僕はバックヤードに引っ込む。

 

 ドアを開けた先に、『ねこ』がいる。当たり前だけど。

 

「すみません、店長。『ねこ』、大人しくしてましたか」

「いやー、大人しいどころか1ミリも動かなかったよ。すごいね、この猫」

「寝てたんですか?」

 

 猫は1日12時間から16時間寝るという。諸説あるが、猫の語源は『寝(る)子』から来ているとも。

 

 しかし、店長は苦笑いしながら首を横に振った。

 

「ずっと起きてたよ。なのにちっとも暴れないし、本当に野良なの?」

 

 やっぱり『ねこ』は、普通の猫とは違うようだ。

 

 見下げると、『ねこ』が僕を見上げている。

 

『ねこ』は何を考えているんだろう? 僕に会うまで何をしていて、どこにいたんだろう? 

 

 

 

 

 ねこです。ねこはねこです。

 

 ねこをしったひとのところに、ねこはいます。ねこをしったひとがしらないひとにねこをひろめます。

 

 ねこはどこにでもいます。よろしくおねがいします。

 

 が、ねこをすきなひとはねこをどこかにいかせませんません。

 

 ねこをすきなひとがほかのひとにねこをわたします。

 

 ねこはほかのひとのところにいます。ほかのひとのところにねこはいません。

 

 ねこをすきなひとは、ねこがほかのひとのところにいるとおもっています。だから、ねこはほかのところにあります。

 

 ねこをすきなひとがねこをつれもどすと、ねこはねこをすきなひとのところにあります。ほかのひとのところにねこはいません。

 

 ほかのひとはねこをねこだとおもいます。ねこだとおもいません。ここにねこがいます。といいません。

 

 ねこです。よろしくおねがいします。

 

 

 

 

 ××××

 

 

 

 

「今日はありがとうございました……」

「いやいや、その猫ちゃん賢い良い子だから、全然楽だったよ。早く帰って褒めてあげなよ」

「えっと……」

 

 仕事上がりに店長にそう言われて、困惑する。

 

 数日間生活を共にしたとはいえ、『ねこ』は僕の飼い猫ではない。

 

 たまたま数日居着いただけのものを、飼い猫とするのはどうなんだろう。

 

 でも、ごはんもあげてるし、たまにお風呂にも入れるし。

 

「お母さんに相談してみようかな」

 

 コンビニを出て、街灯もまばらな帰り道。『ねこ』は暗闇でも白くて目立つ。僕を見上げて、沈黙している。

 

「どう思います? というか、うちに住みたいって思ってるんですか?」

 

 問いかけても答えない。そもそも猫に人間の言葉が通じるのだろうか。

 

『ねこ』と出会った日にも通ったゴミ捨て場を過ぎたところで、誰かに呼び止められた。

 

「そこの『ねこ』連れてるキミ! ちょっとお話いいかな?」

 

 振り向くと、まず目に入ったのは赤い光。その人が首からかけていたペンダントの、大きな赤い宝石が闇の中で煌めいていた。

 

 ……どこかで見た覚えがあるんだけど、何だったかな。

 

 服装は普通にパーカーとジーンズとスニーカー。警察とかではなさそうだ。いや、私服警察の可能性もあるけど。

 

「……えっと、何でしょうか」

「ああ、固くならないで良い。多分……少なくとも公務員ではないよ、()()私は」

 

 茶色い髪はところどころハネがあって、眼鏡の奥には、青にも緑にも見える目……碧眼ってやつだろうか。それがある。

 

 その人は、僕の腕の中にいる『ねこ』を見て、一瞬口の端を引き攣らせると、咳払いの後に整った笑顔で告げた。

 

「私の名はジャック・ブライト。────その『ねこ』の、“元”飼い主だ」

 

 

 

 

 




・『ねこ』(SCP-040-JP)
一般人にまで普通の猫だと思われるミーム災害系SCP。ねこのセリフ書くの楽しいです。よろしくおねがいします。


この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。

SCP-040-JP “ねこですよろしくおねがいします”
http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp
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