自分は思います(アニヲタwikiとかでしか怖いSCPを調べられない人間)。
妙なことになったぞ、と僕は思う。
「私は生命工学の研究者だったのだが……さっき言ったように長らく病気で臥していたものだから、再就職は難しい。身内もいない、職場もない、素寒貧だ。わかるだろう?」
わかるだろう、と言われても。
確かに放ってはおけない。
生活保護申請なんて、こちらが提案するまでもなく先に思いつくだろう。なのに挙げなかったということは、公共機関にすら頼れない事情があるのだ。
けれど、突然家に置いてほしいと言われると、ちょっと回答を逡巡してしまう。
「……僕の家でいいんですか?」
「良いも悪いもない。現状、私の
『ねこ』は僕の膝の上に乗っかり、お弁当のゴミをペシペシ叩いていた。
気に入っているのだろうか? ただ元々の性質が大人しくて、良い子なだけではなかろうか?
……でも、もしブライトさんをこの家に置くことになれば、『ねこ』もこれから暫くは一緒だ。
いや待て、そんな下心とか打算で人を助けてはいけない気がする。ブライトさんは本気で困っていて、僕とあそこで出会わなければ、明日にでも死にそうだったのに。
「ひとまず……その、母に相談してみてもいいでしょうか」
そう言って、スマホをポケットから取り出した瞬間、メールの着信が来た。
誰からだろう、と思って見ると、“先生”だ。
『おイワさんには既に連絡済です。来週の日曜日には帰ってくるそうなので、それまでは彼らを保護しておいてほしいそうです』
一体どこでこの会話を聞いているのか。前からそうだけど、“先生”は不思議な人だ。
『それと、少々席を外していただけないでしょうか。ドクター・ブライトとお話がしたいのです』
え、と思わず声が漏れた。
“先生”が直接誰かと話をしようとするなんて珍しい……どころか、一度だって見たことがない。母とはよく話すようだが。
「すみません、これから“先生”……うちで働いている方が、ブライトさんと2人で話したいそうなんですが。それで僕、ちょっと席外しますね」
「……ああ、構わないが」
スマホをポケットに戻して、居間から出る。声が聞こえるといけないから、居間から離れて、洗面所の方へ向かった。
『ねこ』は、ついてきていなかった。
××××
目の前に、突然ティーカップが現れ、ふよふよ浮くポットからハーブティーが注がれる。
「……SCP-3715。直接会うのは初めてかな?」
『ドクター……貴方のことは、かねがね聞き及んでいます』
手書きメモが、カップのそばに落ちてきた。2枚目も同様にして。
『まさか今こうして会えるとは、夢にも思いませんでした。何せ、財団は……』
「解っている。君たちが
ブライトは『ねこ』とティーカップを交互に見た。
異常存在を一般社会から隔離することで、人々の営みを守ること。それが財団の使命だ。
しかし、今ここにいる2つのアノマリーは、確保も収容も保護も成されていない。
「SCP-3715。君が“先生”になったのはいつからだ?」
『……12年前です。“おイワさん”という女性に拾っていただきました』
「それが井上斑の母親か……」
幽霊が見えている、というだけでも彼女は異常だ。その異常性が、息子の井上斑にどう影響しているかは調べる必要がある。
井上斑。SCP-040-JPのミーム汚染能力を、ほぼ無効化していると考えられる、謎の人間。
『ねこ』を猫と思い込むことでミーム災害を防いだのか、否か。どちらにしろ、そのままなら確実に人類を蝕んでいたSCP-040-JPが、実質無力化状態にある。これは驚くべきことだ。
財団職員としては、彼を野放しにするわけにはいかない。
「────終末を跨いだ有給休暇も、これで終わりか。いやぁ長かった。長すぎて休んだ気がしない」
最優先事項は、確保されたSCP-040-JPを安全に収容するべく、ミーム汚染無効化のメカニズムを解明するべく、『井上斑』の身柄を保護すること。
……そして。
「財団の再建……資金も人脈も権力もない。
だが、死んでも腐っても、自分は財団の一員だ。
「
へらっと笑い、しゃがんで『ねこ』に握手を求める。
まぁ、『ねこ』に握手とか挨拶とかいう概念が理解できるかどうかは知らないが────
と思っていたら、『ねこ』は素直に前足を差し出して、
前足はそのまま、
ブライトの顔面にめり込んだ。
それは、見事な、『共振“猫”パンチ』だった。
××××
「うあああああ!! 痛覚にまで干渉出来るのか!? やめてくれ今この身体しかないんくぁwせdrftgyふじこlp!!」
遠くからブライトさんが何か言う声が聞こえるけれど、内容はよくわからない。
でもきっと、大切な『ねこ』と再会して、ひとときの幸せを噛み締めているに違いないのだ。
そして、僕にできるのは、そんなブライトさんと『ねこ』を支えることだけ。
「これから忙しくなりそうだなぁ」
ねこです。
ねこは、はかせのひとよりつよいです。
よろしくおねがいします。
・ブライト博士(SCP-963)
シリアスとギャグの振れ幅が激しい博士。財団としての活動初日、早速ねこにより全治2日の怪我(幻覚)を負う。
・『ねこ』(SCP-040-JP)
財団神拳を覚えている系SCP。一体どういうルートで知ったのかは不明。ちなみに、同僚が一度それで倒されているようだ。
・“先生”(SCP-3715)
ブライト博士のことは何となく知っていた。『ねこ』に関しての情報を後でブライト博士から聞き、ちょっと肝が冷える。幽霊なので肝ないけど。
・井上斑
完全にブライト博士の嘘を信じている。ブライト博士と『ねこ』に一緒の部屋で寝てもらおうとか考えている。やめろ。
この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承3.0ライセンスに基づき作成されています。
ブライト博士の人事ファイル
http://scp-jp.wikidot.com/dr-bright-s-personnel-file
SCP-963 “不死の首飾り”
http://scp-jp.wikidot.com/scp-963
SCP-040-JP “ねこですよろしくおねがいします”
http://scp-jp.wikidot.com/scp-040-jp
SCP-3715 “それほど繊細でもないお茶”
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3715
SCP-710-JP-J “財団神拳”
http://scp-jp.wikidot.com/scp-710-jp-j