ねこです。
なまえはありません。
よろしくおねがいします。
スーツを着た人と話す、変わった夢を見た朝。
僕は炊飯器のスイッチを押したあと、棚からインスタントのわかめスープの箱を取り出した。
おかずは、目玉焼きとベーコンとトマト。シンプルイズベストだ。
「ところでブライトさん、今朝の寝覚めはどうでしたか? 布団、来客用のものなんですけど長らく使用してなくて……」
「それはいいんだけど……『ねこ』が枕元に……」
「良かったじゃないですかー。僕は布団の上に乗っかられたんですよね」
「そういうことじゃない」
どういうことなんだろう、と思い、ふと下を見れば、『ねこ』の視線とぶつかる。
「ささみチキン、茹でるので待っててくださいね」
これは僕がおやつとして買ったものだが、調べたら猫でも食べられるらしい。生で与えるのは不安なので、一応火を通すことにする。
僕がお椀を3つ用意して、そこにスープの粉を入れている間、後ろで冷蔵庫が開く音がする。
「井上くん、このプリン食べていい?」
「プリンってラス1のやつですか? それはちょっとってあー!!」
振り向くと、ブライトさんが立ったままプリンを食していた。食器の収納場所は教えていないはずなのに、スプーンまでしっかり持っている。
このプリンは、スーパーでよく買うお気に入りのものなのだ。お風呂上がりに食べるのが、日々の楽しみなのに。
「いやごめん小腹空いたから。ほら、残りは君にあげるよ」
「もうカラメルしか残ってないじゃないですか……まぁいいですけど」
「まぁいいの?」
ほぼ空っぽの容器を受け取り、カラメルを喉に流し込む。うん、甘くて美味しい。
「そういえば、パジャマ僕のですけど、サイズきつくないですか? ブライトさんの服とか、『ねこ』のごはんと一緒に通販で買おうかと思ってまして」
「特に不便はない……が……『ねこ』のモノも買うのかい?」
「え? そりゃそうですよ。あ、お金は大丈夫です。僕のじゃなくて、母が稼いだものですが」
「そう……まぁ、好きにしてくれ」
ブライトさんが踵を返したとき、僕の頭にある疑問が閃いた。
どうして昨日のうちに気が付かなかったのか、不思議なくらい重要な疑問だ。
「あの! この『ねこ』の名前って、何ですか?」
「……え」
ブライトさんの目が泳ぐ。
「あー……君が決めたらどう?」
「え? 何でですか?」
「飼ってたときは、決まった名前で呼んでなかったんだ……病気で先がないと思っていたからね」
「そ……そうだったんですか……!?」
ああ、僕ったらまた無神経なことを。
名前をつけてしまったら、これ以上『ねこ』に踏み込んでしまったら、お互い辛いだけだから……と、そう考えていたなんて。
「今は治ったから、そんな心配要らないが」
「わかりました! 僕、『ねこ』の名前考えます!」
「……身を乗り出すほどやる気になってくれて嬉しいよ」
ねこです。
はかせのひとは、ねこがねこをすきなひとにねこをつたえられないからといって、うそをつきます。
ほろべ。
ねこはねこです。
えすしいぴいぜろよんぜろじぇえぴいでも、びゃっこでもなく、ねこです。
よろしくおねがいします。
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